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クーデレ系乙女ゲームの悪役令嬢になってしまった。  作者: 瀬名ゆり


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39 皮肉なことにも、あなたの発言によってね

新章突入です!




「オレのパートナーになってよ」



 そう黄泉から告げられたのはあの放課後から2日目の朝。


 突然の愛の告白ともとれるそれに、私のクラスは大騒ぎ。


 黄泉よ。相手を間違えてないかい?


 君が好きなのはあの金髪碧眼メイン攻略キャラの『一条青葉』であって、こんな日本人形みたいな悪役令嬢じゃないでしょう。


 ……それとも、何か辛いことがあって衝動的に私に?



「……悩みがあるなら話くらい聞くわよ?」

「何考えてるかわからないけど、絶対それちがうから〜! いいからオレのダンスパートナーになってっ!」

「……ダンスパートナー?」

「まあ! 雅様ご存知ありませんの?」



 近くにいた黄泉の親衛隊に嘘でしょという顔をされる。そんな顔されるほどメジャーなイベントなのか?


 なんでも麗氷では、毎年3・4年生合同でダンスパーティーが開催されるらしい。サマーとウィンターを交互に。しかも3校揃ってだ。


 ちなみに今年はサマーらしく、6月という決して遠くはない予定にみんな急いで準備をしているみたい。



「優さんがいるのに、キミ知らなかったの?」

「お兄様が小学3年生の時、わたくしは3歳ですよ?」



 覚えてるわけがないじゃないの。

 でも、小学3年生のお兄様かぁ……。きっと素敵だっただろうなぁー。

 よし、今日は帰ったらすぐにアルバムをチェックしましょう。決定っ。



「それは必ずペアで参加なの?」

「強制ではないよ」



 ならどうして私とペアになりたいのか。黄泉も私もソロで良くないか?

 下手に彼とペアを組んで婚約者候補ではとないかと噂になったら、ただでさえ男の子の友人が少ない私の恋が遠のく気がする。うん、ここは断ろう。



「……黄泉、申し訳ないけれど、」

「そろそろ朝礼だから、返事は昼休みでいいよ」



 じゃあね〜と言ってにこやかに去ってく黄泉。


 え、ちょっと待ってよ!


 呼び止める暇もなく自分のクラスへ帰っていく。



 や、やられた……っ!


 大勢の前で誘うことで、既成事実を作る気か。



 周りはすっかりお祝いモード。

 まだペアになると決めたわけじゃないとみんなの興奮を鎮めようとするも、むしろ煽るだけ。


 「素敵です」とか「お似合いです」と好意的な声が多い中、「……やっぱり西門さんかぁ」と声も。


 ……やっぱりって何!? 私には黄泉しかペアになってくれる友人がいないとでも!?


 いるわよ、それくらい! 前野くんとか赤也とか!


 あ、前野くんは私より桜子ちゃんと組んでほしいからダメだ。それに赤也はまだ2年生だ。い、否めない。


 さすがに学級委員長である白川くんが鎮めてくれたけど、なぜだか私も怒られた。副委員長として騒ぎの原因になるのはいかがなものか、と。



 ……わ、私は被害者なのにっ!



 踏んだり蹴ったりだ。




***




 昼休み。今日は4人の集まりも瑠璃ちゃんとの集まりもないから、いつもならクラスメイトと過ごす。いつもなら、ね。


 だが、今朝の様子を見ていた彼女たちは、黄泉様の所に言って返事をしてあげてくださいと、とても協力的だ。


 ……うん、ありがとう。でもね、あなた達が思うような返事じゃないよ? 私は断りに行くんだからね?


 黄泉のクラスへ行こうとしたら、知っていたかのように彼が廊下で待ってた。実際私のクラスの彼の親衛隊から情報は得ていたらしい。……今年のクラスも情報漏洩するのか。



「……ペアのことなんだけどね、」

「待って、先にオレが話してもいい〜?」

「えっ、あぁ、どうぞ?」



 私の言葉を制止する彼がいつもより少し強引で。すぐに断ろうと思っていたのについ譲ってしまう。



「……青葉と、ケンカした」

「え、えええ! どなたが!? まさかっ……」

「そう、オレが……」



 どうしようと頭を抱える黄泉。



「黄泉と、……一条くんが? 喧嘩? どうして、そんなことに……?」



 一条くんのことが大好きな黄泉が彼とケンカしたなんて。……にわかに信じがたい。一体何が原因で?



「元はと言えば、キミがっ! ……あっ、いや、何でもない。……はぁ〜、死にたい。どうしてあんなこと言っちゃったんだろう」



 「でもオレは間違ったことは言ってない、あれは青葉が悪いんだ」と言いつつも、後ろ髪引かれるのか、黄泉は再び「どうしてあんなこと言っちゃったんだろう」と自問自答を始める。



 ……とりあえず、死なないで、生きて。



「後悔するくらいなら、喧嘩なんてしなきゃいいのに」

「……知らなかったんだ! ……好きな相手とする喧嘩が、こんなにも辛いことだなんて。したことなかったから、……今まで1度もね」



 ……あぁ、そうですか。ならさっさと謝って仲直りでも何でもすればいいのに。けど、今回は黄泉から折れるつもりはないみたい。


 それって、黄泉にとってはそれほど許容し難いことを青葉がやらかしたっていうことよね? 本当に何をやらかしたのよ『一条青葉』は。



「……その~、追い打ちをかけるようで悪いんだけど、ペアのことで話があってね?」



 こんな状態の黄泉に更に畳み掛けるようで申し訳ないけれど。こういうのはさっさと言った方がいいと思うの。


 言い難いからって、返事をする期間を伸ばし続けると、そのままどんどん長引かせてしまいそうだしね。



「オレとはイヤってこと?」

「いやってわけじゃないんだけどね? ほら、わたくし達、親しいじゃない? もちろん、友人としてね! ……でも、ペアを組んだら変な憶測が飛び交うんじゃないかって、……その、不安で」

「憶測って? 例えば? 婚約間近、とか?」



 イエス。まさにそのことよ、私の懸念事項は。


 黄泉に気を遣って言葉を濁しているけれど。私が言いたいのは、黄泉とペアを組んで婚約者だと思われたら困るってこと。



 恋のチャンスを逃さないようにするためにも、ここははっきりと断っておかなきゃね。



「心配するだけ無駄じゃない? もうとっくに、みんなそう思ってるから」

「えっ! 嘘!?」

「ちなみに候補は他にもいるよ。青葉とオレと、それから赤也くんも」

「どうしてそんな噂が!」

「前者はそう公言している人がいるから~。心当たりない?」

「…………お父様ね」

「当たり」



 ちなみに後者は私が1番親しげな男の子だかららしい。そりゃあ、親しいわよ。当たり前じゃない、姉弟なんだから。


 今日家に帰って真っ先にやるべきことは、お兄様のアルバムチェックよりも、お父様との事実確認みたいね。


 ……青葉と黄泉から証言を得ているから、ほぼほぼ黒でしょうけど。一応お父様にも弁明の機会は付与するべきよね?



 お父様との話し合い、今から楽しみだわ。



「つまりキミの心配はなくなったってこと」

「……なくなった? むしろ悪化したわよ」

「もう憶測が飛び交ってたら、飛び交うかも〜なんて、心配はなくなるよね〜?」



 ……う、うん。確かにそうかもね。


 でも気づいてるかしら?

 その心配はなくなったけれど、新たに発生したのよ。


 皮肉なことにも、あなたの発言によってね。



「でもね、黄泉。わたくしは……」

「そういえば! ……この前、オレの信頼を裏切ったのは誰だったっけ〜?」

「それはっ、」



 まさか今ここで、その話を持ち出されるとは思っていなかったから、かなり狼狽えてしまう。だけど、それは。



「その後きちんと謝罪したつもりだし、あなたはわたくしを許してくれたわよね?」

「うん、許したしもう気にしてないよ〜」

「……じゃあ、」

「でも、あの時オレのお願いを聞いてくれるって言ったのに、結局聞いてくれてないってことになるよね?」

「ごめんなさい……」

「あっ、誤解しないで、別に責めてるわけじゃないから〜」



 てっきり私は彼の気が変わって、やっぱり私を責め立てるつもりなのかと思って、再びネチネチ攻撃を受け入れる心の準備をしなくては。なんて、身構えてしまったけれど……どうやら違ったみたい。


 謝罪を求めているのではないのなら、じゃあ黄泉は何のために今その話をしたの?



「代わりといってはなんだけどさ~、今度のダンスパーティーで一緒に踊ってほしいなぁ〜なんてお願いはだめかなぁ?」

「……黄泉、本っっっ当に申し訳ないんだけどね、」

「わかってる! キミは理由もなく、オレの信頼を裏切るような真似をする人じゃないもんね!」



 理由ならある。だけど今度は前回とは違ってすごく自分本位な。


 そう思うと、何だか憚られるような気がして、さっきまでの私の勢いはどこに行ったのか衰えてしまう。


 本当はこの前のこと少しショックだったんだよね〜とか、雅のことすっごい信頼してたから尚更さ〜なんて言われてしまえば、もう断るなんて無理だった。



 ……私の負けよ、黄泉。



「それで? ペアの返事は?」

「……光栄だわ。ダンスパーティー、一緒に頑張りましょう?」

「うん、雅ならそう言ってくれるって思ってた〜」



 彼の満面の笑みを見て、確信した。


 今朝のことといい、今あの時の話をしたことといい。私は彼に嵌められた。


 気づいたところでもう遅い。


 私には彼と踊る選択肢しか残されていなかった。




ダンスパーティー編です。



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