本編6
いくつか教科書やノートを忘れた振りをしないといけない科目もいくつかあったけど、何とか乗りきった!嫌~な苦手範囲の授業が終わって、ゴールデンウィークになった!…… でも、その前に二週連続で同じ科目の同じ持ち物を忘れてしまった。丁度その授業の担当の先生は私とあまり仲が良くない先生だったので、 仲が良くなかったのはこの持ち物忘れのせいだったことが判明した。あー、何故か分かってすっきりした~。もうその先生のことはどうでもいいや。…… よくないか。
でもそれはどうしようもないことだから放っておいて…… ゴールデンウィーク!ごろごろでき…… ない。「美瑠璃」が傷心旅行に二週間も行っていた理由、それはゴールデンウィークに四人で旅行に行くから~!なので。
「美瑠璃」が帰ってくるのは、ゴールデンウィークの旅行が終わった次の日のお昼くらい。皆が出掛けている隙に家に入って、学校を休んだり旅行に行っていなかったりなんてしていない振りをするんだ。私もしたし。あのときは、自分の演技がすごくて皆私に騙されているんだと思っていたけど……美瑠璃はいたんだから、そりゃ騙されるよね……。
とにかく、折角行くんだし、旅行を楽しもう!
と思っていたんだけど……旅行先で熱を出して、旅行中ずっと意識朦朧……もうだめだ、お医者さんプリーズ。じゃなくて、お医者さんのところまで連れていってー。来られるのは、ちょっと……。
結論。旅行、楽しくなかった。というか、何も出来なかった……。
そういえば、旅行の思い出を、入れ替わっていたためほぼ初対面のクラスメートにせがまれたとき、熱出して覚えてないって嘘言ったっけ。これで嘘じゃなくなっちゃったな。
帰ってきてからは、最後に一日学校に行って、「美瑠璃」と入れ替わって、陸くんの家に帰った。
その後、バイトを探して、喫茶店とコンビニで働くことになった。
喫茶店のバイトは私のお気に入り。たまにお客さんとのんびり話せることもあって楽しいから。
「いらっしゃいませ~。何め、いさま、ですか……」
……訂正。このバイトは危険だった。
「え、美瑠璃?お前、学校さぼって何やっているんだ!?」
従兄の蒼史くんに出くわしました。
私は近所のお姉さんから聞かされてる大学に通っている、ってことにしたんだけど、蒼史くんは私とは違って、本物の大学生です。
「さぼりじゃないよ!確かに私は美瑠璃だけど、別人だから!後で説明するから!……それで、何名様ですか?」
「……一人だ。」
……皆さっきの聞いてないよね?……他の人にもさぼりだと思われたら首にされるところだった、危ない危ない。
それから……すぐに帰ってくれると思ってたけど、蒼史くんはそのまま私の仕事が終わるまで待ち続けていた。……蒼史くんこそ大学は?もう終わったの?……まあいっか。
「それでね、お金を返さないといけないから、バイトしているんだ。あ、もう『美瑠璃』は学校から帰ってきているはずだから、確認しに行く?」
「あー……、さようなら。」
「えっ!?蒼史くん!ねえ!ちょっと!話聞いてよ!」
「あ、ごめんなさい、俺、急いでるんで。」
「他人の振り!?信じられないのは分かるよ。けど、だからって他人の振りすることないじゃん!」
「……あ、もしもしー?」
「か、完全無視!?」
頭がおかしいと思われたかな、やっぱり……。
「……蒼史くん、信じてくれなくてもいいから、無視はやめて。すっごく悲しいから。」
「……じゃあ、その代わり、」
え?
「美瑠璃の休みの日に一緒に出掛けよう!」
……え、表情的にもっときつい条件なのかと思ってたけど、そんなことなの?
……あれ?前にもこんなことがあったような?
「叔父さんが亡くなってからは、たまにしか会えていなかったから、一緒にどこかへ行きたいんだ。」
そっか……。
「わかった!今度遊びにいこうね!」
「ありがとう。」