本編4
一日中ごろごろできるっていいよね~!……あれ、何だかいつもと感覚が違う。まるでお泊まりしに行ったときみたいな……?
「……えっ!ここどこ!?私は誰!?」
はっ!誰かの声がする!
「私は美瑠璃!」
はっ!私の問いに誰かが答えた!
……あれ?どっちも私じゃん、びっくりしたー……。
寝ぼけてるときって、ボケる気ないのにボケちゃうよね~、あははっ!
「……って、ちょっと待って、本当にここどこ!?」
まず、私が今いるのは布団の中。ベッドではないみたい。そして、この部屋はちょっと埃っぽくて、棚が沢山あって、物置みたい。
あ、電気のスイッチを発見!着いた!明るい!でもあんまり明るさが変わらないなー。つまり元々この部屋が明るかったってこと?……確かに明るかったかも。
あ、窓発見!あそこに見えるのは見覚えのない……じゃなくて見覚えのあるマンションだった。
そうだったそうだった、ここは陸くんちなんだった。
そう!私美瑠璃は、今日から自由の身なのだ!何しよっかな~。
うーん、何しよっかな~。
うーん、ううーん、何しよっかな……?
うーん……えーと……暇、かなー……。
「……暇、だなー……。」
「それならバイトをするのはどう?」
「うわぁっ!?誰!?」
「僕だよ。」
「おれおれ詐欺!じゃなくてぼくぼく詐欺?」
「……陸だよ。」
「え?陸くん?……何でいるの?」
今、何時?陸くん寝坊して遅刻?それとも今度こそさぼり?
「だってここは僕の家だから。」
「そうじゃなくて、学校は?」
「……もう終わったよ。今は六時半だよ。」
「えっ?」
じゃあ何でこの部屋は明るいの?
……あ、これ、西からの光?
「……私、二十四時間以上寝てたんだ……こんなの初めて。」
「それなら、疲れていたんじゃない?一年間も飛んだみたいだし。」
「あ、なるほど、そうかも。確かに昨日は疲れてた。」
あ、声に出しては言えないけど、疲れた原因は、勿論陸くんだからね?
……それにしても。
「お腹すいたぁー!陸くん、今日晩ごはんどうするの?」
「僕は美瑠璃ちゃんの家で、四人で食べてくる。美瑠璃ちゃんは自分好きなものを買って食べて。家、今何もないから。あ、千円貸しておくね。」
「ありがとう、助かる~。」
「返すのは一年間半後くらいまでなら待つよ。」
「うん。……え!?」
今、何て言った?
「え、何で驚いているの?」
「何でって……返さなきゃいけないの!?鬼!」
どうしよう!?一日分だけなら大したことなくても、一年となると……何円になるんだろう?
……あ。陸くんも、私がこれから使うお金を全部負担するのは大変だよね……。
「ごめん、鬼っていうのは撤回する。もしかしたら一年半より後になるかもしれないけど、絶対に全額返すね。」
「美瑠璃」の貯金、何円あったっけ……ううう。
「よかった~。返してもらえなかったら、僕のおやつ代がなくなるからどうしようかと思ってたんだ。」
「そうだよね。おやつがなくなると困るよね。」
「うん。なくなったら僕死んじゃう。」
「そうだよね。水と空気とおやつが揃ってないと生きていけないよね。」
……あれ?今、私、何て言った……?……まぁいっか。
「だから、美瑠璃ちゃん、暇なんだったらバイトしたらどう?『美瑠璃ちゃん』は結構浪費家みたいだから、一年後、返すのが大変になるんじゃない?」
「あ、そうだよね……。よし、『美瑠璃』と遭遇しなさそうな場所で、知り合いもいなさそうな場所で……」
って、探すのが大変……!
「がんばれ、美瑠璃ちゃん!」
「……がんばるよ、陸くん……。」