本編3
「うーん、まだ眠いよー。うるさーい。今何時ー?……え!?もうお昼前!?ちっ、遅刻だーっ!!母さん何で起こしてくれなかったの!?……あ!まさか、母さんも寝坊!?母さん母さん母さん母さん!寝坊だよ遅刻だよ寝坊だよお昼だよ寝坊だよ遅刻だよ寝坊だよ遅れるよっ!……あれ?私寝巻き着てない?……あ。」
そうだった、私は一年戻って、この家の住人が留守の間に忍び込んで、お昼を食べたらすぐ、住人が帰って来る前に、この家を出られるように、十二時に目覚ましを鳴らしたんだった。何だか泥棒になった気分。まあ、泥棒は寝ないだろうし、私も何かを取っていこうって訳でもないんだけどね。
にしても、弁当箱と水筒、変えてなくてよかった~。母さん、今朝不審がらずにおかず詰めてくれたし。ラッキー。
さあ、お腹も一杯になったし、家を出ますか。
さあ、当てのない旅へしゅっぱーつ!
……え、どうしよう、ボケたつもりだったけど、行き場所ないし、本当にそうするしかない……!?
……あ、何だかむかついてきたかも……。
「陸くん……!もうちょっと真剣に考えてよ!住人がいない間だけ家にいてもしょうがないんだけど!住人がいる間のことも、ちゃんと考えてよね!問題は衣食住だよ!……あ、やっぱりそれだけじゃ足りないかも。うーん……お金?空気?椅子?ペット?……分かんないけどそういうことだから!はぁ。……じゃあねー。」
「……えっと、美瑠璃ちゃん、それを言うためだけにうちに来たの?」
「そうだけど?それが何か?」
「お金なら貸してあげられるよ。それで服とか食べ物とかを買えばいいよ。家はこっそりうちの部屋を貸してあげる。空気は換気をすればいいと思う。椅子は折り畳みだけど、これどうぞ。ペットは、美瑠璃ちゃん以外は僕達三人とも動物があまり好きではないから、飼えないと思う。ごめんね。」
「え…… あ、ありがと、陸くん……」
「うん。」
ありがたい!けど……「空気は換気をすればいいと思う」って……うん、確かに、屋内なら間違ってはいないかもしれない、けど、さ……それも真面目に考えたんだね……。
「ふう……じゃあ今度こそ帰るねー。また明日~。」
「また明日?もう寝るの?さっきまで寝てたんじゃなかったの?」
「寝ないよ?帰るだけだし。……あ、私、帰る場所ないんだっけ……」
「空室案内するね。」
「お願いします……」
さっき部屋を貸してくれるって言ってくれたばっかりなのに、私ってば……。
それにしても、良かった~。陸くんに話して正解だった!
……あれ?そういえば私、何で、真剣に考えてくれていなさそうだから、っていうだけで陸くんにむかついていたんだろう?
陸くんにむかついて、助けてくれたから結果的には良かったけど、ちょっとズレてない?まるで陸くんみたい。
……はっ!陸くんってズレていたのか。
よし、これからは陸くんがずれたときは、こっそり「どこかズレてる陸くん」って呼ぼうっと。