プロローグ
すみません。サブタイトル変更しました。
「こら、やめなさい!あ、もうちょっと、本当に止まって」
「きゃははははは~」
僕の必死の制止を聞かず、少女は家の中を爆走する。
何度も倒れそうになる家具を受けとめながら少女の後を追うも、その速度に全く追いつくことができない。
「たく、本当に無駄に広いんだから。この屋敷は!ボッスン!頼む」
「カー」
僕の合図でボスガラスのボッスンが少女の行く手に立ちふさがった。
しかし、少女はそれをにやりと笑ってボッスンの横を潜り抜ける。
「にひひ~」
ボッスンの横を通り抜けた少女はにやにやと笑って手を振っている。しかもなんとその手には黒い羽を手にしていた。
「カ―!?」
ボッスンはわけがわからないと言った表情を浮かべて地面に激突する。
どうやら通り抜け際に、ボッスンの羽を引きちぎったようである。
「大丈夫か!?」
僕はあわててボッスンの様子をうかがうも、ボッスンは「カ―!」っと一鳴きすることで先に行けと訴える。
「わかった。後は任せて」
僕はすぐさま体制を整えて、少女の後を追いかける。
そうこうしているうちにも少女はどんどんと先へと進んでいたようで、廊下を走っていると思いきや、既に軽快に階段を上っていた。獣人の特徴なのかその身のすばしっこさは人間のそれをはるかに超えていた。
暴走列車のように止まることはないのではないかと思われた少女であったが、何か気になるものでも見つけたのかふとその足をとめた。どうやら階段の横に飾ってある物に興味を示したようだ。
「ん?なにこれー?」
少女は屋敷に置いてある物の中で最も危険なものに手をかける。
それはテレサが大切にしているというトロフィーであった。マリ―とテレサが冒険に出かける際、これだけは絶対に傷つけないようにと言われ、清掃する際も念いりに気を使っていた代物であった。
「それは駄目!絶対触らないで!」
僕は階段の下からあわてて彼女を止めようとする。
しかし、彼女はそんな僕の様子が面白いのか、にんまりと笑った。
「あ、手が滑った~」
少女の手からトロフィーが滑り落ちる。
瞬間、世界がスローモーションになったかのように感じ始めた。
階段上から落ちて行くトロフィー。距離にして約三mか。
僕は全力でトロフィーに向かって飛び込んだ。
――――それは、本当に、駄目なんだ~
両腕をこれでもかと伸ばす。
しかし、僕の頑張りは儚くも届かず、トロフィーは見るも無残に砕け散ってしまったのであった。
「あ......」
「きゃははははは~」
少女はまたも楽しそうに走り始めた。
僕は全身から冷や汗が止まらなくなる。
このままじゃ、まずい。どうにかしなければいけない。
頭の中がこのトロフィーのことで一杯になった時、無情にも、最悪のタイミングで、最悪の人物が帰ってきてしまったようである。
バシーン!!!と勢いよく扉があけ放たれた。
「帰ってきたわよ~。――――!!?」
「ただいま帰りました~。ってうわ!?なんですか。これ」
僕はおそるおそる、扉の方へと振り返る。
すると、そこにはポカーンとした驚きの表情を浮かべるマリ―の姿と、まさに怒髪天を衝くほどの怒りの形相を浮かべたテレサの姿があった。
「これは、一体、どういうことよ~!!!!!」
ドガ-ン!!!
テレサの後ろで雷鳴がとどろく。僕は、すぐさま、ジャンピング土下座を披露した。
「すみません!!!!これには深ーいわけがあるんです!!!!」
「あーん!?どんな理由があったってアンタは死刑よ!!!!!」
僕の土下座ごときではテレサの怒りは収まらず、テレサの怒りの魔法が僕に放たれた。
魔法が僕に直撃し、信じられない痛みが全身を襲う。
痛みが全身を駆け巡る中、僕は全力で後悔していた。
―――――ああ、なんであの時奴隷なんて買ってしまったのだろうかと。




