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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第一章:始まる!?僕の異世界ライフ
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おまけ:宿屋の看板娘と不審者の夜

メル視点です

 私の名前はメルです。

 モルカドの街の宿屋“グランマの家”でおばあちゃんの手伝いをしています。


 いきなりですが、聞いてもらいたいことがあります。


 最近、おばあちゃんの宿屋に不審者がやってきたのです。

 変な格好にぼさぼさの髪の毛、それに目があいてるのかわからない位小さいお兄さんでした。足元をみると靴もはいていませんでした。怪しいです。年齢は多分二十歳を超えてるとは思うのですが、言動が幼稚でいくつかはよくわからないです。

 さらには身分証に宿屋の判子が押されてました。宿屋の判子が押される人は本当にどうしようもなくなった駄目人間だけがおされるものです。だからこの人は駄目人間の不審者なのです。


 それに、その不審者は生活魔法も知らなかったのです。

 後々尊敬できる冒険者のマリ―さんも最初は使えなかったと言っていたけど、それでもやっぱりあの年で生活魔法を知らないというのは変だと思います。


 そんな不審者ですが、昨日も一昨日もすごいボロボロになって帰ってきました。その前の日には新しくなった洋服をこれ見よがしに見せつけて来ましたが、気のせいかもしれないけどなんだか少しゴミくさかったです。

 一体何をやっているのでしょう。不気味です。

 でも、そんなボロボロになったり汚れたりしているのに、いつも夜は裏庭でこそこそと何かをしています。危ないから近づかなければいいのに、おばあちゃんはよく不審者のところにいってお話をしています。


 そんな様子を見て、私は不安でいっぱいです。

 いつおばあちゃんを襲うのか心配でしょうがないのです。おばあちゃんに言ったらまた怒られるだけだと思うので、帰ってきたら本人にガツンと言ってやろうと思ってます。


 そんなことを考えていたら遂に不審者が帰ってきたようです。


「メルちゃん、ただいま」


 今日もいつも通りボロボロになっています。

 メルちゃんって言うなとあれほど言ったのに、この人は懲りずに私のことをメルちゃんと呼んできます。私も、もう名前については諦めました。好きに呼んでくれって感じです。


「おかえりなさい。今日もボロボロだね。お兄さん」


 私はいつも通りちょっぴりつっぱねて言います。

 いつも私が少しきついことを言うと、不審者は心底悲しそうな表情をします。でも、すぐに元に戻ってへらへらしながら言うのです。


「いや~、カラスたちがはりきっちゃってさ。でも、ほら、洋服は破れてないでしょ?だから言うほどボロボロじゃないんだよ」

「あ、そう」

「もうすこし興味もってよ~」


 なんで私が不審者に興味をもたないといけないのでしょう。

 私にはやらなければいけないことがあって忙しいのに。


「ところでお兄さん」

「なに?」


 今こそガツンといってやるのです。


「おばあちゃんにあんまり近づかないでよね!お兄さんなにするかわからないんだから」

「――――!?」


 不審者は流石に堪えたのかしょんぼりとした表情をしています。いつもならすぐにへらへらしだすのに、今日はそのまましょんぼりとしたままです。


「わかった?」

「うん、わかったよ。ごめんね。じゃあ、そろそろシャワー浴びるから戻るね」


 不審者はしょんぼりとしたまま、背中を丸めて二階の部屋へととぼとぼと歩いて行きました。

 なんだか酷いことを言ってしまった気分です。でも、おばあちゃんのことを思えばこそですから。


 それから私はしばらくお昼の片づけをしていました。

 おばあちゃんは横で明日の準備をしています。


「どうしたんだい?」


 私がおばあちゃんを見ていたせいでしょうか、おばあちゃんがそう尋ねてきました。


「ううん、なんでもない。私がおばあちゃんを守るから安心してね」

「なんだかよくわからないけど、ありがとうね」


 そうです。私がおばあちゃんを守らなければいけないのです。

 ちょっぴりざわざわしていた心が落ち着いてきました。


 片付けもある程度終わったので、私は裏庭を覗きに行きます。

 すると、やっぱり不審者が庭の端っこに座って何かをやっています。


 私はなんだかむかむかしてきたので、不審者の元まで歩いて行きました。

 

「ちょっと、お兄さん、何やってるの?」


 私は少し怒って言ったのに、不審者はまたもへらへらしながら応えてきます。


「あ、メルちゃん。みてみて、あったかいでしょ~」


 そう言って、手を私にかざしてきました。

 どうやら魔法でそよ風を作り出しているようです。確かになんだかあったかかったです。


 しかし、先ほどはしょんぼりしてたのにもうよくなったのでしょうか。言いすぎたかなと悩んでいた私がなんだか馬鹿みたいです。


「セルフドライヤーだよ。偉大なル―○ウス先生を知らなければ思いつかなかった発想だなぁ」


 正直全く何を言っているかわかりません。


「一体お兄さんは何をやってるんですか!?」

「え!?うーん、魔法の練習だよ」

「魔法の練習?」

「うん、夜風に当たりながらのんびりできるからさ。あ、ここでやっちゃまずかったかな?」


 不審者はきょろきょろと挙動不審になっています。

 私が怒ると思っているのでしょうか。


 しかし、いつも何をやってるのかわからなかったけど、まさか魔法の練習をしていなんて。私はてっきり初日の時みたいに女の子の裸を覗こうとしているんだと思ってました。


 ちょっぴり申し訳ない気持ちになります。


「もう、魔法使えるようになったんだね?」


 私が怒らなかったことで安心したのか、またもにへらと笑いながら応えます。


「うん、簡単な魔法だけだけどね。今みたいに暖かいそよ風を作ったり、水を温めたりはできるようになったよ。昨日は熱くし過ぎちゃったけど―――」


 もしもそれが本当なら、いえ、本当なのでしょう、現に先ほど私に風魔法を披露していますし、かなり努力をしていたはずです。

 私が魔法を使えるようになった時は、まだまだ小さかったけど、大変だった記憶がありますから。


「―――それもおばあちゃんが毎日丁寧に教えてくれたおかげだけどね。あ、でも、もう近づかないようにするから安心してね。一人で頑張ってみるから」


 私はこの人をちょっぴり誤解していたのかもしれません。

 いつもボロボロになって帰ってきてたのに、それでも魔法の練習をしていたんですから。真面目な人じゃなきゃこんなことはできないはずです。


「ちょっとだけなら」

「え?」

「ちょっとだけならおばあちゃんと話してもいいよ!でも変なことはしないでよね」


 私が言うと不審者は、いえ、もう不審者と思うのは失礼ですかね。お兄さんは、一瞬驚いたような表情をして、すぐに満面の笑顔になりました。


「わかったよ。ありがとう」


 まだ完全には信用したわけではないですけど、少しは信じてもいいのかもしれません。



「実はさっそく質問してみたいことがあったんだよね」

「どんなこと?」

「必殺技をつくってて、アドバイスをもらいたくて」

「必殺技?」

「うん、実はさ―――」


 そう言って、お兄さんはしゃがみこんで砂を持ちました。

 そして、それを思いっきり振りました。


「こうやって、砂を思いっきり投げつけた時に一緒に風魔法を使うことでさらにスピードを上げて通常以上のめつぶしをするって技なんだけど。どうかな?」


 お兄さんが腕を振ったポーズのまま、顔をこちらに向けてきます。

 かっこいいつもりなのでしょうか。


 どう答えたらいいのでしょう。

 私は少し考えてから話し始めました。


「それなら、最初から砂も魔法で作った方がいいんじゃない?」

「え!?砂も魔法で作れるの?」

「水や火だって魔法で作れるんだから当然でしょ?」

「いや、水とかは空気中の水素とか酸素を使ってるのかなって思うし、火もなんとなく受け入れやすいんだけど、土ってなんか想像できなくて」


 お兄さんはよくわからないことを言っています。


「よくわかならい。でもほら、こうやるんだよ」


 私はそう言って、ぱらぱらと魔法で砂を作って見せました。


「うわ!?すごい!本当に砂ができてる。うわ~、これなら本当に必殺技見たいになるね。何も持っていないところからいきなり眼つぶしとか最高にかっこいいんじゃない!?」


 お兄さんは私の魔法を見て、なんだか異常にテンションがあがっています。

 なんだか私も気分がよくなってきました。


「このお礼はクレープでお願いね」

「クレープ?良いよ!今度ごちそうするね」


 お兄さんはそう言って、親指を立てました。


「じゃあ、もっと練習してみよう!」

「おう!」


 こうして、私達は夜の宿屋でしばらく必殺技の練習をしました。

一回こういう○○視点というのをやってみたかったので挑戦してみました。

なんだか新鮮で楽しかったです。

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