8.側室
ご愛読ありがとうございます。
いよいよ、キーワードの「年の差」担当のお姉さん登場です!
決闘騒ぎの時に治療していたお姉さんです。12才の主人公に対して22才の側室。
彼女達は強い。王国最強兵器です。余りにも強力過ぎた異端の魔女。
辺り一面を氷の世界にする青い魔女、そして何でもかんでも燃やし尽くす赤い魔女。
彼女達は自分が仕えるべき、強い男を待っていたのです。
伯爵家にとって、いつか出世して氏子総代になる、というのはステイタス・シンボルとして憧れの対象なのだそうだ。
伊達家が伯爵家から侯爵家に昇進したら、翌日には正宗公自ら別宮に乗り込んでこられて、刀剣と神馬を奉納されたと有名な逸話があります。
侯爵家というのは実質的に古い名門か100万石か、そのどちらかに近い立場の方です。
氏子総代を務めているのは、そうした名家。相当な名誉職ではあるはずです。
でも、有馬の殿様は氏子登録していなかったと。
翌日、蓮花姫様はほっぺをプクッとさせて、
「伯爵様、酷いですわ。有馬侯爵家だけ除者だなんて!」
「宗教団体ですので、来たい方はいつでも歓迎。でも、興味ない方は無理にお誘いできません。特に高家の方々にはね」
「でも、でも!教えてくださってもいいじゃありませんか!」
「俺にしても出雲になって数か月の身の上で、知らないことばっかりだしね。
侯爵家の皆様の事情など、ハンター上がりごとき身の上では分かりませんよ」
「ずるいです。黒奈さんのお父上はご存知でしたのでしょう?
事情に通じてらしたではないですか」
「いや、強烈なおじさんだから。
一回会ったら忘れない人ね。全く、父娘が似てないの。
そう言えば、細川様や毛利様の姫様方も学校にはいらっしゃるでしょう?
有馬様の姫君は侯爵家同士交流しないのですか?」
「上級生と一年生ですので、余りお会いする機会が無いのですわ」
「昼食で何度か一緒になっていたような気がするけれど、あの方々違ったかな。
元々、妻とは顔見知りだったから、お声を掛けられて同席した筈では」
「でも、なんとなく・・・」
「俺にはプレッシャーかけるのに、優しそうな姫様達を恐れる有馬の姫様が不思議だ。
侯爵家の交わりを求めるのなら、俺に求めても無駄。それは侯爵家の姫君同士で行うものです」
「そうですけれど」
ますます、プクッとする有馬姫。
年上女に甘えられると邪魔くさく感じてダメだな。
あちらさんは竜殺しに守られたいのかもしれないけれど、俺が守りたいのは十六夜だけ。
すれ違いの根っ子はここだろう。
完全にお姉さんという感じで、こちらが甘えられる感じだと年上でも気楽なのかもしれぬ。
ちなみに、8歳の妻の妹に甘えられると、とても可愛いと思う俺です。
今日も前田様にぶっ飛ばされて気を失っています。
でも、今日は違いがありまして。
気が付くと膝枕の上なのは同じ。
膝枕しているのは黒奈さん。
「主君の介抱は家臣の務めです。未婚の姫君が妻帯している殿方に膝枕などはしたない。
有馬のご家名に傷がつきますから、ご遠慮ください!」
と、頑張って姫様を断固排除したのだとか。
「出雲の家禄を食むものが、出雲当主を守らずになんとしますか」
おお偉いぞ、黒奈!
職人の娘なのに武家の人みたいだ。
アカの他人はアッチ行けとやられた姫様は、赤い目をしてハンカチ握りしめていました。
いい加減、次の幸せを自分で探してくれないかな。
「でもさ、黒奈。
俺は最悪の主かもしれないぜ。
十六夜の為なら楯になって死ね!と平気で言う奴だぞ、俺は」
「覚悟はできています。
竜殺しの武威を以ってしても、及ばないことがある。それは確かでしょう。
ですが、これからは私も及ばずながら御身をお手伝い致します。
たとえ、この身が果てようとも最後まで若奥様をお守り致します。それが私の生きる目的なのですから」
「十六夜が君を選んだ理由がそれか。
迷惑をかけるな、これからよろしく頼むぞ。黒奈」
「はい、ご主人様」
ああ、俺はついに家臣を得たらしい。
にっこり笑ってくれる黒奈を可愛いと思った。
クラスの女生徒はorzでしたね。
「出雲殿は、拙者には無いものを得たな。
良い妻と良い家臣だ。
おなごにはおなごの士道あり、か。大事にすることだな」
前田殿は、爵位とかカネとか龍殺しの称号ではなくて、良い妻と良い家臣を自分には無いものだと言った。
うん、俺の自慢です。俺の宝物ですから。
「メイド志望が勝ったのか」
「名家の姫ではなく」
「女騎士でもなく」
「勝利のカギは忠義?」
「主と妻へのな」
「姫様もう諦めて、こっち向いてくれんかな」
「お前じゃ弱すぎるだろ」
「俺もメイドさん欲しい」
「お前の所なら沢山いるだろ」
「あんな事、普通のメイドが言うわきゃないだろ」
男共の虚しい会話であった。
さて、武芸の時間は槍、剣、弓、馬術が全部一緒になって、前田利益にぶっ飛ばされる時間と化して久しい。
お忘れの方も多いでしょうが、このクラスというのは武芸と魔法の両方を使える奴がいるクラスです。
魔法の教練時間も勿論あります。
但し、こちらの教程も通常の規定を完璧に無視して進行しておりますです。
その責任者というのは天海様。
王宮筆頭魔法師様という肩書のその方。
伝説級のドラゴンの素材を入手して、夢のまた夢と思われていた魔法道具が作れるだろうと見通しが立って。
そもそも、ドラゴンをぶっ倒してしまうような奴はどんな奴なのだと興味を持って学校まで弟子を連れて足を延ばしてみたらしい。
そうしたら訓練用の一角から美味そうな香が漂っていて、ワイワイと車座に座ってメシを食っている。教官らしい年寄りが昔話をするのを、竜殺しとアノ前田利益と学生が一緒になって聞いているのを見かけて。
妙に楽しそうにしているからと、つい乱入して来たのがケチのつき始め。
傾奇者の口車に乗せられて、気が付いたら、ついつい筆頭魔法師の意地とメンツをかけた術くらべになっていた。
筆頭としての意地で召喚獣の出し合い勝負に。
筆頭が先手を取って、巨大なガマを召喚してみせる。
筆頭のガマが頑張って10mくらい。人だって上に乗ることが出来るほどのサイズ。
ところが、俺は嫌がらせに15mくらいのサイズアップしたガマを召喚。
止せばいいのに、前田様が囃し立てる。
筆頭殿は頭に血が上って、今度はオロチで勝負だと20mのオロチを召喚。
こちらはその2倍サイズを召喚。
止せばいいのに、また前田様が囃し立てる。
筆頭殿、さらにムキになって今度は大鷲勝負だと言って15mの大鷲を召喚。
俺、止めときゃいいのに自重せず50mの鳳凰を召喚。
前田様腹を抱えて大笑い。
筆頭冷静さを失って、召喚術の得意な弟子を引きずり出す。
弟子の児雷也様、15mのガマは召喚に成功するも10mの大鷲までしか召喚できず。
前田様、ますます腹を抱えて大笑い。
オオガマやオロチが教練場をウロウロ徘徊し始めて、女子生徒が悲鳴を上げて卒倒。
一部生徒は白目を剥いてます。可哀そうに。
慌てて学長と副長が飛んでくる。
筆頭殿、学長室まで連行され事情聴取という名の苦情と説教!
前田様、大満足で女性専科の教官を務めに移動。
ノリノリで歌会をやっていたらしい。
あれ、責任者は前田様かな。
俺じゃないよね。
次の魔法の授業では呆れた児雷也様は欠席で、替わりに霧隠才蔵様が筆頭殿の鞄持ち。
筆頭殿、召喚術はツマランから火炎魔法勝負だと言い出す。
筆頭殿、演習場の標的に対して過剰な大火炎を放出。標的ごとケシズミにしてしまう。
的が無いから空に向けて火炎を放出しろと言うので、デッカイ火柱を上げる俺。
暫くして、町奉行と火盗改めのお役人が前後して飛んでくる。
筆頭に事情を聴くと、そのまま首根っこを引っ掴んで、申し開きはご老中の前で願いますと連行する火盗改め様。鬼平様強い。
連行される筆頭を冷たい目で見送って、淡々と放射系魔法についてレクチャーする才蔵様。
丁寧な指導でした。
その次の魔法の時間では、児雷也様、才蔵様に加えて女性のレキュア様が筆頭に同行。
今度は水魔法で勝負だ!と言い出した筆頭に3人がかりで飛びかかって縛り上げる。
丈夫そうな革袋に放り込んで、さらに上からも縛り上げて、児雷也様と才蔵様が抱えて退場してしまう。
残ったレキュア様が水魔法についてレクチャー。
大規模な氷結魔法を披露してくれて、応用編として治療術を特に懇切丁寧に指導。
これは大いに役立ちました。
凄く優秀な人だ、この人は。
「こんなに親切で優秀な美人さんなら、お抱えになって欲しいくらい」と、ポツリと俺が口に出したら。
「もう22歳なんですよ。でも、強力な女魔法師は大人になると老化しませんし。
愛があればトシの差なんて。勿論、まだ乙女です・・・初めては優しくして・・・」
などと頬を赤らめてブツブツと。
ちなみにレキュアさんは、北方系だそうで珍しい見事な水色髪です。どっかで見たかな、この髪の色?
クラスメイトの9割からは殺意の視線。残り1割は半べそで泣き崩れていました。
えーい、俺は女の家臣を召し抱えてはいかんのかい!
ちなみに、女性の強力な魔法師は20歳過ぎるくらいからほとんど外見が変わりません。
一見22~23歳に見えても、実際は150歳超えているとか驚異的な美魔女もそれなりにいます。
男の場合はそれなりに老けて行くけれど。
授業が終わって帰ろうかという頃に、児雷也様と才蔵様がやって来て。
「お抱え魔法師をお探しとか。是非、私共も家臣の端くれにお加えくださいませんか」
「えーと、王宮のお抱え魔法師って待遇が悪いのでしょうか?
普通なら魔法師にとって憧れの地位なのではないでしょうか?」
「そ、それが聞くも涙の物語、アホな上司の下ではこれ以上働けません。
強力な竜殺し様の下で、力を振るいたいと存じます・・・」
「あらら。将来は騎士団よりも王宮のお抱え魔法師にでもと思っていたけれど。
これでは、将来は騎士団にでも行くべきかなあ。
本多様は怖いけれど、間違いなく信頼できる御方だし。上司にするなら信用できる方の下がいいよねえ」
「なんですと!
そうか、御身が我ら全員の頭目になって頂ければ、我ら一同安心できるというものです。
そうです。御身には我々一同が力を合わせてお仕え申し上げます。
今、しばしご猶予をお願い致します」
翌朝、配達された瓦版を読んでいたら
王家からの発表
・筆頭魔法師天海は老中参与に異動。
・柳生宗矩を新設の役職である王宮魔法師大目付に任命。
・筆頭魔法師は空席とする。
・妖魔/魔物対策室を新設する。室長には児雷也を任命。
・同室の非常勤参与として出雲貴志を任命。
ぎゃー、寝耳に水の一行が!
聞いてないよー。
柳生様からお呼びが掛ってお城まで行ってみたら、本多様も怖い顔して一緒に待っていました。
「正直、天海めは部下の評判が悪くてな。
お抱え魔法師が一斉にお役御免を申し出おったのだ。
致し方ないので、公儀大目付役に加えて魔法師大目付けを柳生殿が兼務。
当面、魔物対策が必要な場合は現場を児雷也に仕切らせる。お主にも出てもらうぞ。
天海と腕利き部下共よりも、お主の方が強力となっては筆頭の名はお主が名乗るべきだか、暫し大人の貫目が付くまでは空席にしておく。筆頭を名乗るには見た目も重要なのだ。
お主には、将来王宮魔法師として働いてもらう。お役目に励むよう」
本多様からあっさりと言い渡されました。
なんか、12歳にして将来確定です。
妖魔・魔物対策室とやらに案内されたら児雷也さんが待っていて、
「お頭、我ら一同お頭と同じ戦場に立てることを光栄に存じます。
お頭が成人の暁には晴れて筆頭にご就任いただきます」
ですって。
対策室長からお頭と呼ばれる身分になっています。
訳が分からんぞ。
対策室には武闘系魔法師が40人程度配属されていて、緊急事態になると即時出撃することになる。
独立した有事即応部隊。
俺は普段は学校に行って、登城しなくてもいいらしい。児雷也さんが番頭役を果たしてくれる。
王宮お抱え魔法師として隠密向きの魔法師は、柳生様の部隊に配属されて公儀隠密のお手伝い。柳生十兵衛様と諸国行脚するでしょうかね。
治療系など支援系魔法師は、基本的に本多様の配下で騎士団と行動することが多くなる予定だとか。
そして正面切っての武闘派は、対策室に所属する。
おまけに、
「なにかと不慣れで大変でしょうから、専属で秘書にレキュアとシェイラをお付けいたします。ご自由にお使いください」
出雲家の家臣ではないから給料は王家持ち、でも、使い方は俺の自由と。
便利なものだけれど、役職に就くというのはこうしたこと。
「戦場での妻としても、夜伽専用秘書でも、子作りの練習相手でも、この身も心もご自由になさってくださいませ、お頭様」
ビックリ発言しているレキュアさんの横で、シェイラさんも頷いている。
あのね、レキュアさん。何を言ってなさるのかな、基本全部同じじゃないの。
戦場での妻ってお役目なんてあるのかい?って言ったら。
高級士官なら、女性騎士をそうした扱いにするのはよくある話だそうで。
「お手付きして頂いても、妻とか側室としての扱いなどいりません。
子を為すのが伯爵家の面倒になるなら、薬で避妊し続けてもかまいません。
ただ、私を見て下さい。人間として伴に歩んでください。
私は、異形・異能の娘です。
北方民族といえども水色の毛髪の者などおりません。
私は突然変異なのです。水の精霊にでも呪われたのか。
生まれつき水魔法に関しては常人をはるかに超える力を持っていました。
人として強力過ぎる力を持つ故に、家族に捨てられ、王宮魔法師達にすら恐れられてしまう。
異形の化け物として恐れられてしまって、近寄るものなどいません。
王宮では、人間としてすら見て貰えません。
私の力を恐れる必要が無いのはお頭様だけでしょう。
お願いです。
私を人として見てください。私を人間として扱ってください」
この人は本気だ。涙流して訴えてる。
一緒にいるシェイラさんは、火炎系に突出した異能の持ち主で、本当に燃える火炎のような髪の色をしている。
余りにも強力過ぎる力の持ち主。
迂闊に喧嘩でもしたら、相手を簡単に殺してしまう。
カッとして無意識に魔法が発動すれば、簡単に相手を殺す。周辺に甚大な損害すら与えてしまう。
レキュアさんは未だ魔法を十分に制御できない子供の頃に森を一つ凍らせてしまったことがあるそうだ。それ以降王宮魔法師に預けられて育った。
シェイラさんは、3歳の時に兄妹喧嘩で兄に火傷させて、屋敷も焼いてしまったそうだ。これで親が恐怖してしまって、彼女を寺に預けて、寺でも扱いあぐねて王宮に助けを求めた結果として王宮魔法師に。
そんな、親ですら扱いに困る相手を嫁にするような男などいないという訳だ。
そもそも、王宮でも化け物扱いされて腫れ物扱い。
無意識にでも、強烈な魔法が発動してしまうから、誰も迂闊には近寄れない。
でも、規格外の竜殺しと言う存在が現れた。
彼女達が異能だとしてもドラゴンとは比べられるはずもない。
彼女達にとって、最後の希望がドラゴンを葬る俺ということだ。
竜殺しなら、自分を受け入れて人間扱いしてくれるのではないか。
レキュアさんは、優しそうな目つきのとても美しいお姉さん。
シェイラさんは、文字通り触れればやけどしそうな壮絶な美人です。
きつめな顔立ちで肌の色は色素が抜けているような真っ白、それでいて髪は燃えるような赤。飛び切り辛口の美女。
そしてこの二人は、俺が大人になっても今のまま精霊のごとき美人の超絶魔法師であり続ける。
対策室というのが独立の殴り込み部隊という扱いなら、異能の持ち主くらいで丁度いい。
俺について来たいという部下なら反対する理由などない。
ましてや、美人で優しい。
子作りの“練習”は、間に合っているけどね。もうすぐ“成果”が出ますし。
男の器量を見せてみろと、王宮の連中に試されているみたいなことでしょうか。
この二人を使いこなせる魔法師は俺だけ。
二人に女の幸せを与えられるのも俺だけでしょう。
二人を活かすも殺すも俺次第。
“御身が我ら全員の頭目になって頂ければ、我ら一同安心できる”とは、こういう意味なのか。
“秘書”の二人には、そのまま神社まで来てもらって十六夜と対面して貰います。
妻が側室を拒否するなら、あくまで部下として割り切るか。
「これだけ美しい方々なら、あなたは必ず将来お手付きにするでしょう。
美しいままで老いることのない愛人。それも強力で有能な部下。
私は老いて皺だらけで醜くなるというのに・・・。
正直、胸がモヤモヤします。
薬で避妊し続けて構わないというのなら、そうしてください。
主人の子を産み育てるのは私の仕事。
主人を戦場で守り、共に戦うのはお二人の仕事。
共に主人のお情けを頂くのは致し方ないことでしょう」
切なそうな十六夜を初めて見た。
いずれ自分は捨てられてしまうと思ってしまったようだ。
「あのね、十六夜。
十六夜も若いままで維持することくらいできます。
子供の2~3人産んだら、そのまま若いお母さんでいてもらうつもりです!」
「まあ、そんなことが出来るのですか?」
「魔力が強力な女魔法師がトシを取り難い。だったら外側から魔力を注ぎ込んでしまって、無理やり加齢を遅らせることはできる。
どうやら十六夜と妹は、魔力への適正が高い。
二人も十分異能な体質だと思うけれど普通の人間なら体が割けてしまうような圧力の魔力でも、体が受け止めることが出来る。
その代り、そうしている限り子供はできないだろうね。体の老化する時間が止まれば、お腹の中で子供が育つ時間も止まるから。
それにね、君には蘇生魔法もかけてある。寿命で死なない限りは殺されても生き返る。」
「うふふ、見た目は若いままで、ある日寿命で死ぬのですね」
「そのある日は300年後くらいね。俺が寿命で死ぬと、魔法が切れるから一緒に死ねる」
「まあ!一緒に死ねるのですか」
「その代り子供達が先に死ぬだろうね。それは諦めるしかない」
「それは寂しいかもしれません。
でも、良かった。
あちらのお二人は若くて、私だけが老いて行くのは地獄です・・・」
「子を産み育てるのは十六夜の仕事。
戦場で共に戦うのは二人の仕事。
ちゃんと3人を愛せるかどうかは俺の器量ってことかな」
「このシェイラ、お頭さまを戦場で必ずお守りいたします。
なにとぞ、この我が心と血と肉体をお受け取りください」
「このレキュア、我が全てを御身に捧げます」
「うん、よろしくね」
側室を2人作ることになりました。
正直、実習の時に見たレキュアさんは手に入れたいと思いました。
性格は良い、懇切丁寧に指導してくれる。
能力的にも素晴らしい。
金属みたいな光沢のある髪。
色素が欠けているような白い肌。
精霊に呪われたというけれど、顔つきなんかは精霊と言われてもおかしくないように整っている。
体型も黒髪・黒目の民族と違って、腰の位置が高い。足が長いの。
それに大人の体型というか。生徒の多くの双丘が王都郊外の高尾山くらいとすれば、レキュアもシェイラも富士山というか。圧巻です。
シェイラさんは一見怖そうなんだけれど、口を開くと実際にはやさしい。
大人の女性の心配りをしてくれる世話女房タイプ。
十六夜が将来見捨てられるのではないかと不安になるのも仕方ない。
この世のものとは思えない存在感が二人にはあるのだから。
二人には子供を産ませないということで、自分の精神を保つのだろう。
そうでもしないと正妻という意味が無いと。
でもねえ、2匹目のドラゴンを殺して高位魔法が使えるようになって真っ先にやったのが俺と妻への蘇生魔法の適応。
そうそう簡単に死に別れることは考えていません。
300年くらいは、妻といちゃいちゃするつもりです。最初から世継ぎが出来たら妻の加齢を止める気でした。
20歳過ぎくらいの色香漂う十六夜のままで300年愛し合う。
漢の憧れでしょう。
高位魔法の正しい使い方というものです。
逆に20歳前には、何人かの子供を作っておきたいのです。
それで、出産準備にカネにモノを言わせて別宮隣接地域のお隣さんには補償金をタップリ出して立退いて頂いて、敷地を拡大しておいて境内の強化を実施中です。
家族と一緒の住居だったけれど、敷地内に離れというか小さいけれど頑強な砦めいた屋敷を建設中。空堀と塀を巡らせてある。ここが出産場所になる。
王国最強兵器が登場してきた以上、いよいよ揉め事が本格的に始まります。
貴志はこれから本格的に戦いに巻き込まれます。大軍勢が動員される戦場で12才の子供を支えるのは、大人である彼女達の務めなのです。これは彼女達にしかできません。