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7.メイド

大勢の方に読んで頂いてありがとうございます。意外なアクセス数に驚いております。今後もご贔屓をお願いします。


さて、メイドさんって、キーワードは設定していませんけれど登場です。

ちなみにキーワードに「年の差」「魔女」の設定をしていますけれど、彼女達の登場は次の8話をお待ちください。彼女達の純愛は12話、魔女としての無双は22話になります。


「ふえっ!?側室になりたい貴族NO.1なんてランクがあるの?」


「そりゃ、どこぞのやんごとない姫君から、公爵、侯爵、伯爵家のご子女の皆さんの注目を独り占めしているでしょうに。

 それ以下の家柄の皆さんならメイドでもいいって、大騒ぎしていますよ。」


「へっ、そうなの・・・。

 面倒なのは嫌だな。俺は今の嫁さん一人でいいのに」


「それですよ、それ。

 散々な冒険の果てに嫁を得て、その妻をひたすら大切にする。

 それなら側室になっても大事にされるだろうって、ご令嬢の皆さんが憧れるんです」


「そうなの?」


 横で聞かない振りしながら聞き耳立てていた騎士爵家のお嬢さんに聞いてみる。


「はい・・・」


 俯いて赤い顔しながらしっかりと顔を縦に振ってますよ、お嬢さん。


「あの・・・。

 伯爵家の主ともなれば、側室の5人位いても宜しいのではないでしょうか?

 伯爵様は、今後も側室は娶らないお気持ちなのですか?」


 今度は有馬侯爵家のお姫様が突っ込んできた。

 この娘さんは風系統と治癒魔法が割と強力で、その修行にこの学校にいます。


「俺は12歳です。若いというよりも幼い当主でしょう?

 今は十六夜とノンビリ暮らしたいです。

 10年くらいしてからでも、側室なら遅くないでしょう」


「ああ、奥方様は大切にされておられますのね・・・。

 確かに年齢的に12歳で妻がいらっしゃるのは早い方ですし。

 殿方が22歳で側室を娶るのも、おかしくはございませんわ。

 でも、その頃では私達の年齢では、もうご縁はありませんもの。

 折角、稀代の英雄”竜殺しの君“が、近くにおられるというのに・・・」


「私達の年齢だと、5年くらい待ち時間は許されるでしょうね。

 20歳を超えるようでは、伯爵様には相手にして頂けないでしょうし。

 そのチャンスに女の人生をかけてみるか。それとも家の都合でつまらない結婚をするか。


 並ぶことのない勇敢な英雄。

 その超絶な武技は並ぶものなし。

 そして海よりも深く妻を愛する心根。

 許されるなら、妻の一人として愛されたいと願いますわ。

 私、リューシャ・イルマータは御身の求愛を心からお待ちいたします」


 今のはプロポーズ?社交辞令?

 今度は公爵家のご令嬢が来た。ご当人は15か16歳だったか。

 幼い弟さんがいて、父が死んだために彼女が当主代理を務めるために修行中だとか。弟が当主を継げば本人は身軽になるから側室でも問題ないらしい。

 むしろ、弟の後ろ盾として強力な夫が切実に欲しいらしい。


 因みに、彼女は北方の出自で金髪碧眼、超絶美形でスタイル抜群です。

 この国では北方をメインに2割くらいは異民族が存在する。その異民族との融和の為に王家と血縁を結んだ家系で陛下の姪にあたる本物のご令嬢だとか。

 このクラスにいるのだから、多少なりとも魔法の素養もある。


「あのね、アノ恥ずかしい劇はご覧になりましたか?


 俺は決闘だと騙されて、卑怯にも目の前で妻とお腹の子を襲われて・・子供を殺された。

 まだ、俺達とってはつい最近のことです。


 劇の中のおとぎ話なんかじゃないんだ。理不尽に子供を奪われたんだよ、俺達は。

 でも、二人でやり直す。諦めない。


 今度はヘマなんて絶対にしない。

 俺は何が何でも妻と子を守る。その為にどれだけのカネをつぎ込もうが関係ない。

 俺の邪魔する奴など、魔法で容赦なく蹴散らすまでだ。


 妻は俺にとっての宝物なんだよ。

 俺は妻の為に生きる。邪魔をする奴には容赦などしない。


 子供を奪われて傷心の妻を目にしている俺に側室を取れだと?

 寝言は寝て言え。

 そんなバカなことを言える神経が俺には分からない。

 そんな奴など人間だとは思えない」



 散々カネを稼ぐために他者の命を奪って来た血塗れ戦士。

 その全開の殺意を押さえられない。

 竜殺しの英雄?

 バカ言え、俺は最愛の妻のお腹の子を守り切れなかった悔恨の男だ。


 暴走する俺の激情。


 令嬢達はただ震えるだけだった。


 昼休みになって十六夜が様子を見に来て、一通り事情を話したら。


「あなたのお望みの通りにすればいいと思います。

 面倒ならこの先、爵位を返上してもいいでしょう。

 また、お社の森でハンター暮らしでも、私はあなたについて行きます。

 出雲の神官家は貴族ではありませんので、側室を娶る習慣はありません。

 後継ぎが出来ない嫁は離縁して、後妻をとるのが習わしです。


 でも、もしあなたが側室を望んでも、それでも私は構いません。

 あなたは竜殺しの英雄です。

 あなたの器を私ひとりでは、支え切れないこともあるでしょう。

 地位とか、名誉とか、お金とかではなく。

 本当に只あなたのことを想ってくださる方なら、そうした方となら、ご一緒にあなたのお傍にお仕えすることができると思います」


 お昼ご飯を二人きりで食べて。

 ・・・ご一緒致しませんかと誘って来た王女様をお断わりして。

 その日は、午後の授業をサボって帰りました。


 早く帰って来た俺達に、義父がどうしたんだと聞いてきた。

 正直、側室、側室と周りが五月蠅い。

 いい加減、二人で静かに暮らしたいと、ブーたれた。


「婿殿は末の王女は嫌いかね」


「性格悪そう」

「そうですね、少し我儘な所が見受けられます」


「特に何かできる訳でもなさそうだし」

「はい、成績は並程度のご様子です。側室腹ですので権限もありません」


「余程、二人に嫌われたらしいね。でも、美人で有名な方じゃないかな、婿殿?」


「でも、あの性格だとどうにも。可愛らしさが無いのは嫌です」


「そうかね、まあいい。私も娘が可愛いしね。

 実の所を言うと陛下と王太子、出雲当主とその後嗣にのみ伝えられる秘伝があってね。

 王は出雲には弓を引けない。

 間違いなく王女とその取り巻きは知らないだろう。

 出雲の巫女が嫌うような真似を陛下は絶対にできない。

 そうなっている。

 細かいことは婿殿にも、娘であっても話せない。

 だけれど、あまり王女云々で神経質にならなくていい。


 まあ、娘に小皺が目立つようなトシにでもなったら、側室くらいはいいだろう。

 婿殿は天下の英雄だ、そのくらいは出雲家でも構わないよ」


「まあ、お父さんったら!」


「でも、何か気が楽になりました」


「うん、あとはゆっくり私の孫でも作っていなさい」


「もう、お父さん・・・」


「はい、頑張ります!」


 お許しが出たので真昼間から仕込んでいました。

 お嫁さん。

 色白で、細くて折れそう。

 でも、一度赤ちゃんが出来た時から、出るところがしっかり大きくなっています。

 大変に柔らか。そして温か。ずっとスリスリしてたい。

 お互いの温もりを確かめ合うのはとても幸せです。

 生きてるって実感できる。

 十六夜、大好きさ。



 ふふっん。

 翌日は絶好調だぜい。


 前田様がタッタカと馬で駆けて来たので、こちらも戦闘準備です。

 別宮の倉庫から良さげな槍と、ひたすら丈夫そうな刀を貰って来ている。

 今度は簡単には折れ無いモンねーだ。


「ほう、やる気で準備万端かね。大いに結構。イザ一勝負参る!」


 やる気で準備万端はあなたでしょう、前田様。

 生徒連中は挨拶する間もありゃしないままで、俺との一騎打ちが始まっちゃいました。


 最初から俺も槍で真っ向勝負仕掛けます。

 前回の槍よりも頑丈なだけに、やけに重たい。

 大振りなんてとても無理。

 シンプルに最短距離で刺突のみ!


 でも、重い分だけ前回よりもおっそい突きになっている。

 これじゃ駄目だな。

 えーい、気合じゃ!


「おりゃあ」


 うん、気合だけなら悪くない。気合だけなのが残念だ、とも言うが。

 えいやっと心臓めがけて一撃行っておく。


「だりゃあっー」


 ひえーっ、倍返しの気勢あげられちゃったよ。

 アンタは口から衝撃波でも吐くのかい。

 気合だけで吹っ飛びかねないつーのよ。


「やっぱり熊だろう、この前田熊次郎!これでも喰らえ」


 何度でも行きます。うりゃうりゃっと。



 ・・・で、気が付いたらまた女子の膝の上でした。

 有馬侯爵様のお嬢様ですね。蓮花さんと言います。


「ううっ、またぶっ飛ばされた」


「はい、20分くらい丁々発止でしたけれど、最後は前田様の槍が見えないような速さで」


「俺の槍が巻き取られるような感じで飛ばされて、その次に石突の凄いのを貰ったね」


 うー、痛いなあ。


「お体は大丈夫ですか?」


「正直、腹の中身がジンジン痛いです。でも、悔しいから熊退治してくる」


 ええい、この大熊め。


「前田様は。熊なのですか?」


「でっかくて強いのは熊なんです!」


「まあ!うふふっ。それでは伯爵様、ご存分に」


「おりゃ、前田熊次郎。この出雲の金時が退治してくれる!尋常に勝負せよ」


 ぬううっ、本日は口先絶好調ながら、2回ぶっ飛ばされて意識が飛んでます。

 何度も蓮花姫様お世話になります。でも、嫁にする気はありません。


 武芸の時間は魔法的な防御をOFF状態にしているので、本当に痛い。

 魔法を使ったら、武芸の稽古にならないから諦めている。


「くっそ、痛い。タンコブ出来てやがる」


 ううっ、痛いモンは痛い。


「すぐに治療しましょうね♡」


 蓮花姫さん治療術を使おうとしてくれていますが、お断りしてしまいます。


「自分で治療しないと、実戦では役に立ちません。周りにいつも治癒魔法術師がいる保証はありません。前田家中の方に、あの時の俺が治癒魔法を使えていれば・・・」


 あの時はまともに治癒魔法が使えなかったんだよなあ。

 今なら、相当に救えるはずだけれど。


 その前田家の本当なら当主になるはずだった方が、目の前で教官をやっています。

 人生の不思議。

 理不尽さ。

 なんだか嫌になります。


 周辺はというと、前回よりも一層死屍累々であります。


 上級生の武芸組が乱入していたんだそうです。

 天下の前田利益に稽古つけてもらえるチャンスなんて普通はありませんからねえ。


 んで、叩きのめされたと。

 でも、それがまた皆の自慢話になって行くのでしょう。


 死屍累々の皆さんには、だーれも治療魔法を使っていませんね。

 女の子達って怖いわ。

 蓮花姫様は俺以外に治療魔法使う気ゼロ。


 何たる格差社会なんでしょ。

 高級貴族のボンボン諸君、悔しければ君らも強くなりたまえ。

 蓮花姫の膝枕は気持ちいいぞ。まあ、口には出さないけれどな。


 すでに片隅の方では、俺のメイド志望のお嬢ちゃま達が炊き出しの準備に入ってます。

 屍となっている生徒達は元軍人の教官連中が荒っぽく蹴っ飛ばして起こしていく。

 良い処のボンボンも容赦なく蹴飛ばされてる。

 あんなのを見ていたら、お嬢様達は恋愛の対象にはしないだろうね。

 ちと、憐れかも。


 また、皆で車座になってメシを食っていると前田様が悪戯っぽく


「出雲殿聞いたぞ。娘御どもから側室にしろと迫られているそうではないか」


「出雲のお義父さんに相談したら、出雲家には側室を娶るような風習は無いから無理に娶らなくてもいいと。十六夜に小皺でも出るようになってから考えればいいって」


「「「「え゛ーっ」」」」


 女生徒の皆さんハモるのが上手いです。


「そんな~。私達が先にお婆ちゃんになっちゃう!」

「ひどいわ~」

「側室取りましょうよ~」


 前日の俺の殺気って全然効果ないじゃん・・・。


「若様!メイドは必要ですよ。メイド。

 お嬢様が身籠ってお腹が大きくなったら、お世話する人間が必要じゃないですか。

 氏子世話役頭の娘としては、お嬢様の世話役もやらなきゃいけませんよね」


「お嬢様って?あれ、君は誰の娘?」


「吉蔵です。吉蔵の娘で黒奈です。」


「ごっつい顔の吉蔵さんの娘さん?全然似てない・・・」


 いかにも下町のオヤジという吉蔵さんの娘にしては、やけにあか抜けていて綺麗な娘さんです。全然、親に似てないの。

 ちょっとドングリまなこで明るい表情に長い漆黒の髪。でも、全体的には和風で巫女の代理位できそうな佇まいです。

 十六夜は可憐で儚げ、月の光が似合いそう。花に例えるなら百合。

 でも、黒奈さんだとお日様の光が似合いそうな、向日葵といった感じ。


「そうです。お嬢様と同い年の妹がいるので、昔からお嬢様にはお世話になっています」


「多分、今年中にはそうした要員は必要になる筈だけれど、学校中退でもいいのかい?」


「まあ、それはおめでたい。是非、お役に立たせてください」


「氏子衆の娘さんからメイドを募集するのは間違いないけれど、応募してみる?」


「喜んでお願い致します」


「吉蔵さんの所の黒奈さんか・・・」


 祭事の担い手の中核になる氏子の世話役。出雲家ではその中から、特に信用できそうな人を選んで世話役頭を指名している。そうした世話役頭なら間違いなく出雲本家の巫女姫である十六夜を大切にする。そういう所の娘さんなら十六夜の世話係として信用して大丈夫。


「ちょっと、黒奈さん。氏子世話役頭ってなんですの?どうやったらなれるのですの?」


「黒奈ずるーい!」


「各々方、抜け駆けだー」


「あの、本当にメイドさん募集するだけですけれど。側室じゃなくて」


「お手付きになればいいだけですわ。同じことです!」


「いや、俺の赤ん坊がちゃんと生まれなきゃ困るでしょう、ちゃんと妻を世話する奴じゃないとダメだって。そこは譲らない。

 だいたい有馬侯爵家の姫君が格下の伯爵家でメイドなんてダメでしょう」


「ううっ、ズルイですわ。

 そうですわ、小さい赤ちゃんがいるのなら治療魔法師をお抱えにするべきです。

 出雲家抱えの治療魔法師を雇うべきですわね。

 伯爵家ではなくて、公爵家に準じる出雲家のお抱えなら侯爵家の娘くらいで見合いますわ。

 そうですわね。そういたしましょう!」


「出雲本家にしてみれば、お抱え魔法師って分家の俺のことなんですけど」


「いけずですわね・・・」


 蓮花姫様半べそ。

 しかし、くどい娘だな。


 そんな事をやっていたら、十六夜が来ていた。

 今日は男同士の世界というよりも女の闘いの局面という印象だったのかもしれない。

 それに、王女に付き合っているのは面倒なんだろうな。


 俺が有馬のお姫様を相手にしていた間に黒奈さんが十六夜に何か話しかけていて、話しの途中で十六夜が「まあ!」という感じで胸の前で手をポンと叩く。

 気安い感じで話していたから仲は良いのだろう。


 そして、俺の所に寄って来て、

「確かに出産準備に入るとメイドを増やさないといけません。氏子衆の皆さんから決めることになりますけれど、やはり私のことを良く知っている方がいいです。黒奈さんや里奈さんなら私も助かります。

 あなたが宜しければ父に報告して、氏子衆の皆さんの調整をしておきますけれど」


「うん、今度こそはしっかりと出産まで持っていきたいから、準備はできるだけ万全にしておきたいよね。十六夜の身の回りの世話をしてくれる人だから、君と上手くやれる人なら俺に異存はないよ」


 愛しい妻をギュッと抱きしめて、髪の毛をナデナデっと。


「是非、宜しくお願いします。若様、お嬢様のお世話はお任せください!」


 ノリノリの黒奈さんです。なんかスキップでも始めそう。


 ちなみに氏子衆の皆さんは、俺のことを“若様”とか“伯爵様”と呼ぶ。

 そして、十六夜のことを“お嬢“とか”お嬢様”と呼ぶ。まあ、彼女の場合は奥方様というよりも、見た感じが普通にお嬢様のほうがシックリするんだろう。結婚してからも変わらずにお嬢様のままで呼ばれている。赤ちゃん出来たら変わるかな?

 婆ちゃんが大奥様で、義母さんが奥様だから、将来は若奥様とか呼ばれるのかも。

 黒奈さんの呼び方というのは、神社関係者の身内的な呼び方をしている訳です。



「・・・ずるいですわ」


「黒奈ズル!」


「裏切り者」


「抜け駆け」


 女性陣のクレームうざいです。


「えーと、黒奈さん。

 さっきは、なんと言って十六夜に話しかけたのかな?」


「えっと、お嬢様おめでとうございます。良い赤ちゃんを産んでくださいね。

 私、メイドとしてしっかりお嬢様のお手伝いをしますって」


 ちょっとビックリしながらも、ハキハキと回答してくれました。


「はい、黒奈さんには満点を上げましょう。

 えーと、ズルとか、裏切り者とか文句言った方は何か忘れてませんかね?」


 イラッとした俺は嫌味攻撃だ。


「「「あっ」」」


「「「お、おめでとうございます」」」


「まだ、出来たと決まったわけではないのですけれど」


 お腹をこすりながら、少しテレ顔の十六夜。


「でも、時間の問題だしね。今度は万全の準備で臨もうね」


「はい、あなた」


 一瞬で二人の世界に入り込むのは若さの特権さ。


「奥方様、お抱え治療魔法師を用意しておくのも宜しいのではないでしょうか?」


 あ、まだ頑張るんだ姫様。


「主人が最近は治癒魔法も覚えて下さいましたし、祖母と妹も治癒魔法は達者に使いますので」


 おお、正妻は断固側室として認めんらしい。ピシャリと断った。

 ちなみに、妹ちゃんはホントに凄いです。


「ふむ、これがおなごの戦かね。正妻はやはり強いな」


 前田様はすっかり毒っ気を抜かれてます。


 ところで、


 “やり直す。諦めない。”

 “俺にとっての宝物なんだよ。”


 3日後には学園内に留まらず、何故か王宮魔法師の皆さんまで使い始めていました。

 まあ、“チッコイ”やら“チョイです”よりはマシだけれどねえ・・・。


 火炎魔法や風魔法の実演しながら

「こんな魔法ごときはチョイです。

 あ、でも火の玉がチッコイ。やり直す。諦めない。

 魔法は俺の宝物なんだよ」

 みたいな使い方するの。お前ら本気でやれよ、オイ。




 別の意味で、やり直して来て諦めない向きもいて・・・。


 俺達が学校にいる間に王都の開国主神社別宮まで、有馬家の王都屋敷執事という方がおいでなさったそうです。


 曰く、氏子世話役頭とやらには、どうしたらなれるのかと。


 対応に出た義父は事務的に対応したそうです。


「貴族の方には、ご寄進いただければ氏子名簿に登録いただけます。


 これで氏子として、ご祭事に参加いただけます。


 また、侯爵家の皆様には、毎年輪番で氏子総代としてご祭事に参加していただいております。


 氏子総代とはご神事に際して、氏子の代表として行事の進行を司るお役目になります。


 輪番で細川様、京極様、上杉様、武田様、前田様、毛利様、伊達様の順でお願い致しております。


 今年は毛利様に総代をお願い致しておりますので、有馬様には来年の伊達様に続いてご当番をお願いすることになりましょう」



「氏子総代とはあいわかった。ふん、伯爵の黒田では氏子総代になれぬな。

 して氏子世話役頭とはなんぞや」


「開国主神社近隣の住民、そして自ら氏子名簿に記載することをお望みの方が氏子になります。


 氏子衆は人数が多ございますので、町々の顔役方に世話役をお願いしております。

 そして長年世話役をお務め頂いた方には特にお願いして世話役頭として、神社の運営にも参加頂いております。


 但し、貴族方につきまして世話役は氏子総代が兼ねるお役目になりますので、貴族の方は氏子世話役や世話役頭になることはございません」


「ふむ、身分の違い故か」


「はい、左様にございます」


「王家や公爵家では氏子総代にならぬのか?」


「王家よりは祭事に際して勅使をお下しいただきます。

 王家と公爵家では、お血筋の上で伊勢のお社でお役に就くことになりましょうな」


「ふむ、国譲りか。

 事情はあい分かった。

 侯爵家として氏子総代は家名の面目を施せよう、良い話じゃ。

 大殿のご裁可が必要になる故、しばしの時を貰おうぞ」


「はい、お待ち致しております」



 有馬の執事様は侯爵家の仲間内で仲間外れになっていると気が付いて、慌てて国元に早馬を走らせたそうです。

相変わらず主人公の癖に慶次郎にボッコボッコにされる貴志。所詮ガキですから、魔法無しじゃ勝てません。そんな奴でも10話じゃちゃんと主人公やりますのでお楽しみに。

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