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31.公爵領への旅Ⅱ

 ご愛読ありがとうございます。

 今回は鬼退治でお宝をゲットするお話です。

 是非、ご一読くださいませ。



 軍事金は十分。

 官吏予定者100人程に軍勢1,000人と必要な要員も揃って。

 そこに公爵本人と夫、その側室3人。それにお世話係のメイドなど小者20名程。


 公爵家のお国入りとしては少ない程度の伴揃え。この位の人数だと流石に瞬間移動という訳にも行かずに、2ヶ月程かけての行軍となる。


 基本的には街道沿いの宿坊に泊まるから、食糧などは余り多くを持つ必要は無い。

 文官もいるから移動は基本的に馬車だ。

 リューシャ達は豪華な装飾を施してある箱馬車。

 文官、軍人ともに地位の低い者達は幌馬車。軍人でも指揮官クラスや騎兵だと馬での移動だ。


 ・・・当初はそう考えていたのだが、所詮は山伏である与楽。馬車に揺られるのが何とも駄目だった。

 高級な馬車で板バネくらいは付いているから、一切のサスペンションを持たない安い幌馬車と違って極端な振動はないのだが、それでも馬車に揺られると与楽は酔ってしまう。


 小さい頃は師匠と共に深山に歩いて分け入って。呪力が増してくると瞬間移動できるようになって。与楽は馬車に乗って長距離移動などしたことが無いのである。


 貧乏騎士爵家出身のクルーガやシオーヌは、まだ大丈夫だった。けれど、9才の頃に与楽に出会って行動を共にするようになったシードも与楽同様に馬車は駄目だった。


 仕方がないのでこの2人は騎乗で移動にしたのだが、与楽もシードもまともに馬の訓練などはしたことが無い。多少は馬に乗った事があるという程度の与楽が、おっかなびっくりでシードを背負って行くことになった。


「馬に乗ると結構高い位置になるんだな。ちょっと、自分の術で宙を飛ぶのと違って怖いかも」


「えへへっ、与楽と2人でゆっくり旅できるのは久しぶり~。前はよくオンブして貰って旅してたよね。なんだか懐かしい・・・。一杯、甘えちゃお。大好き♡、与楽」


 与楽の背にピッタリと引っ付いて、スリスリしてみたり、ホッペにハムハムしてみたり。

 子猫みたいに盛んに甘えているシード。戦いの局面では結構キツイ目つきになるのだが、心を許している相手に甘える時は完全に子猫モードになる。

 ピンク髪をツインテールにしている11才の女の子が、甘えん坊をしている姿は同行している臣下には微笑ましく受け入れられている。ある意味、旅の途中でのマスコットキャラとして癒しを与える役となるようだ。


 まあ、馬車の中から3人ほどの恨めしそうな視線が刺さっているのだけれど。


 王都から北方にある公爵領に向かうには、しっかりと整備されている街道を使える。

 北方の要として整備された公爵領なので、そこに至る為のインフラは相当に整備されているのである。


 王都の近郊には譜代大名がいて、離れて行くと外様大名になる。そこから更に北方に向かうと白い肌に青い瞳、金髪や銀髪あるいは茶髪といった特徴を持つ民族のいる領域になって行く。


 この領域には2系統の民族がいる。


 一つは流れ着いたバイキングの末裔と言われている。

 彼らの体つきはガッチリしていて、彫の深い顔つきである。女性の場合は魅惑的なグラマラスな体付きになる。

 彼らは狩猟民族の色彩が濃厚で、漁猟や狩猟を好む傾向が強い。現在では広大な土地を活かして牧畜も盛んに行っている。

 リューシャ、クルーガ、シェイラ、レキュアなどはそうした血を引いている。


 別に、小柄で細い体つきをしている民族もいて、バイキングとは別の地域からやって来て住み着いたらしい。若い女性の場合は妖精めいた可憐な体つきなのだが、年月を経るとでっぷりしてくるケースが多いようだ。

 こちらは典型的な農耕民族だが、彼らは米よりも小麦を好んでメインに作っている。

 シオーヌやシードなどは、こちらの血を引いている。


 こうした地域の取りまとめ役がリューシャのイルマータ家の役割なのである。

 その公称石高は実に320万石という巨大な大名家である。


 その公爵当主の旅となれば、行く先々の大名家や代官などは気を使わざるを得ない。

 譜代大名にとっては陛下の姪に失礼があっては家門の名折れ。代官にとっては実質的には主君も同様である。気を使う事この上ない状態で迎えることになる。

 特に、馬で移動する場合は事前にここに泊まる筈という宿場街は決まって来る。

 その町に領主の居城がある場合は必ず招待されて晩餐会でもてなされるのが礼儀である。

 代官が執政官の街なら、大名家が宿泊する専用の本陣と呼ばれる宿屋に宿泊するが、執政官が街の入り口で出迎えて挨拶するということになる。


 リューシャからして見れば格下にあたる、譜代大名や代官達は非常に気を使って腫れ物にでも触るかのような態度で一行に接して来る。

 こうした相手に対して彼女は鷹揚に高貴な姫君として振舞って、相手を労ってあげる事を忘れない。

 主君筋の姫君であるのだ、譜代の家臣団を大事にしているという風を演じるくらいの猫かぶりは、リューシャにとっては造作も無い。そういう育ち方をしているのだ。


 旅は順調に下野の国まで進んでいった。

 だが、そこで一行は足止めされてしまう。


 衣川が氾濫してしまっていて、橋が使えなかったのだ。

 北方と王都を繋ぐ幹線が使えないというのは大問題である。

 掛っていた橋はちゃんとしたモノだったし、少し離れた位置に迂回路の橋もあった筈だがそちらもダメになっていた。


 大雨で増水したなら数日の内には水は引くだろうから、橋を架け直せばいい。非常時に簡易的な橋を架けるだけならそれほどの日数が掛ることも無い。


 だのに、もう1ヶ月以上も橋の架けなおすことができていないのだという。


 領主の戸田氏に照会した所、魔物の森から何故か出てきてしまった魔物が跋扈していて工事をできないのだという。


 現在、魔物の追討に手勢を派遣しているのだが、敵はどうやら赤鬼と青鬼を首魁として、相当数の鬼を従えているらしい。

 “らしい”というのは、派遣した斥候部隊がやられてしまって戻れない状態の為で、敵の実態が良く分かっていないのだ。


 通常なら魔物の森から魔物が出て来ることは滅多にない。たまに起こると対処に困ることになってしまうのだが。

 リューシャにしても滅多に起きない筈の魔物の人間の街への強襲を受けて、結果的に与楽に救われた訳ではある。


「赤鬼や青鬼というのは、オーガやオークとは違う。

 現世にいる鬼というのは半分霊的な存在で、むしろ妖怪の類だと考える方が良い。魔物を狩るハンター達や通常の騎士団では、簡単には処理できない。

 妖怪退治の専門家-陰陽師や行者といった者ではないと、逆に殺されるだけだろう」


「あら、要するにあなたなら大丈夫ということね?」


「まあ、そういうこと。半分霊的な存在だから、肉体を滅ぼしてもダメなんだよね。霊的な部分を封じないと、簡単に復活できてしまう」


「どうやれば封じられるのかしら?」


「ちゃんとした祭壇を作って、一晩真面目に呪法をやって。それで霊的な部分を弱めてから、肉体を破壊する。残り滓の弱った状態の霊を何かの神器にでも封じて。後は祠でも作って保管しておくしかない」


「それしかできないのなら、早くやりましょう。あなた。」


「そうだねえ、近くの密教の坊さんにでも手伝って貰うかな。祭壇作らないと駄目だし」


 領主の号令で僧呂が集められて、突貫工事で祭壇が作られて神具類も準備されていく。

 なによりも火を盛大に焚くから、結構な薪が用意された。


 日が暮れてから、30人の僧侶と共に鬼調伏の行が執り行われる。


 与楽と僧侶が一丸となって、一晩中ご真言を唱えつつ火を焚く。

 周辺地域の穢れを払い、聖なる神気を呼び集める。

 これで鬼の邪気を押さえ付けてしまって、まともには行動が出来ないようにしてしまうのだ。


「オン アビラウンケン バザラ ダドバン」

「オン アビラウンケン バザラ ダドバン」

「オン アビラウンケン バザラ ダドバン」

「オン アビラウンケン バザラ ダドバン」


 一晩中、火の粉を浴びながら半ば炎に焦されつつ、ひたすら勤行である。

 精神と肉体の限界までひたすら精神を集中して、神威請来を希う。

 周辺地域を一気に浄化しようとすると、まだ15才で体が出来ていない与楽1人ではとても無理。その為の助っ人の僧侶30人である。


 緊急招集された僧侶達も、鬼の調伏と聞いて真っ青になったが公爵家当主直々の命とあっては命懸けで頑張った。

 周辺の人間が困っていると聞いて、うら若いお姫様が自ら千の軍勢を率いて陣頭に立っているのである。

 ここで踏ん張らねば一体何のための日頃の修行か!


 僧侶達は頑張った。半数以上の者が一度はぶっ倒れた。

 それでも、お互いに頭から水をぶっかけあって、歯を食いしばりなんとか立ち上がってはご真言を唱え続ける。

 朝日が昇る頃には全員精根尽き果てていたが、それでも最後までやり遂げて見せた。

 行を終えると、行者達は全員昼過ぎまで死んだように眠っていた。


 何故、昼までだったのかというと、事前に与楽が昼に起こすように命令していたからだ。

 敵は霊的に弱っている。鬼の肉体を破壊するのはこの時をおいて他にはない。


 タップリと水分補給をして、握り飯にかぶり付いて。


 鬼の霊圧は行を通じて分かっていたから、敵の居場所は分かる。

 ここからは兵を挙げて、鬼を討つのみ。


「騎士たるもの、弱きを助け邪鬼を打ち払うべし!」


「「「うおおっー」」」


 その士気や天をも貫けとばかりに気合満々の兵士達。

 彼らには今回の旅に向けて、上等な装備が供与されている。街道の諸侯や庶民達に精鋭だと見えてくれないと困るから、大判振舞いをしていたのだ。


 騎士としては上等な装備を主君から与えられれば、否応なく盛り上がろうという物である。ましてや今回の相手は、民衆を苦しめる憎き邪鬼である。

 主君である美しき女公爵に、イザ出陣と宣言されれば気分は最高。

 元々が脳筋の体育会系集団なのである。乗せられると簡単にノル。


 嘶く軍馬。

 響き渡る馬蹄の音。

 こすれ合う甲冑の金属音。

 周囲を圧する気配を放ちつつ行軍すること10kmほど。


 そこには、いたのである。





 千余にも及ぶ敵の大軍が。


 身の丈は優に2mを超える筋肉質の巨体。

 手にするのは棘が無数に生えている金棒。

 体の色は赤いのと青いのが半々くらいか。


 ただし、全ての個体がグッタリして地面に伏している。一晩かけた調伏の術が効果を発揮しているのだろう。


 これは絶好のチャンスである。


「全軍突撃よ!」


「ぬおおっ~」

「かかれ~」

「死ねや!」



「ぐぎゃあっ」

「ぐおおっ」

「だああっ」


 戦場はあっという間に阿鼻叫喚。

 血の池地獄もかくやと言わんばかりに、地面は血に染まってゆく。


 身動きできない鬼が一方的に兵士達によって討たれて行く。

 完全に一方的な殺戮である。


 数としては鬼の方が多少多いのだが、戦況としては一方的に人間有利。

 このままで行けば問題なく、鬼を壊滅させることが出来るだろう。


 そう思われた時に、なんと鬼が白旗を上げた。


「「「???」」」


 これに人間側が大いに面食らった。

 鬼が白旗なんて知っているものなのか?


 意外千万な出来事である。


 敵方の中でも巨体な2匹の鬼が、白旗を上げつつ土下座を始める。

 事の意外さに、兵士達も戦闘を中断してしまった。


「お前ら、一体なんの真似だ?」

 与楽が鬼に問うた。


「モウ、ワレワレニ タタカウ チカラハナイ。

 コウサン スル。

 イノチ ダケハ タスケテ ホシイ」


「二度と悪さをしないと誓うか」


「コノ オソロシイ ジュツ デ チカラ ガ ダセヌ。

 ニド ト ヒト トハ タタカワヌ。

 タスケテ ホシイ。

 タスケテ クレル ナラ オニ ノ タカラ ヲ ワタス」


「緊箍児を受けるなら、命を助けてやってもいい。悪さをすると頭が割れるぞ?」


「ソレデ イイ・・・」


 緊箍児とは斉天大聖孫悟空の付けていた頭の輪である。悪さ防止策には手頃な物だが、どこでそんな物を与楽が入手したのかは不明だ。


 鬼が出してきたお宝は結構な量の金銀宝石。


 そして、神器と呼ぶべき珠だった。

 青鬼が差し出したのは水満玉。

 赤鬼が差し出したのは水引玉。

 氾濫する河川の水を引かせて、橋を架けなおすのには丁度いい品物であった。


 戦功を立てた兵士達には褒美に金銀を与えて。


 頑張った僧侶達にもお布施を上げて。


 領主には橋を架け直させて。


 鬼達は大人しく山奥に立ち去って。


 これで一件落着という所だった。



 ・・・筈なのだが、リューシャ姫の鬼退治という話が周辺に広がって、仮設橋の再建を待つ3日間に方々から引っ切り無しに来客が押し寄せるようになってしまった。


 近隣の町や村の名主たちが河川の氾濫を沈めたお礼に貢物を献上しに来るのは分かる。

 足止めされていた商人達も、大いに感謝しに来るのも分かる。

 僧侶達もお近づきの印にと貢物を持ってくるのは、元アテナ神殿の巫女としては微妙な気持ちになるリューシャである。




「ねえ、あなた。私が鬼退治した事になっているのだけれど?」


「そりゃ、指揮官はリューシャだったし」


「でも私って、“邪気を打ち払え”と“全軍突撃”しか言っていないのよね。

 何もしていないまま終わってしまったし」


「まあ、公爵家のご当主様なんだから陣頭指揮を執ったというのは、それでキミの御手柄ということでいいんじゃないのかな」


「そうなのかしら?」


「なんでこう、クルーガといいリューシャといい、自分で相手を倒さないと収まらないのかなあ。いいじゃないさ、他に戦いたい奴がいるんだからやらせておけば」


「あなたは強すぎるのよ。妻としては、少しでも近づきたい・・・。愛しい夫の傍にいたいと願うのは駄目なのかしら?」


「まったくもう!そんなに綺麗な顔で上目使いして僕を見つめられると、我慢できなくなっちゃうじゃないか」


「あなたにもご褒美を上げないといけないわ。わたしのことを差し上げますから、ご自由になさってくださいませ。愛しい旦那様♡」


「もう!」


「アンッ、そこは・・・」


 翌日はやたらとリューシャの肌がツヤツヤしていたそうな。褒美をもらったのは彼女の方だったらしい。



 さて、旅は順調に進みいよいよ関東の範囲から東北という範囲に移りつつある。

 ちなみに、北の方でも黒髪の黄色人種がメインに住むエリアを東北地方、さらに北方の金銀茶の白人が暮らすエリアは北方地方と呼ばれている。

 リューシャのイルマタータ家は北方随一の盟主ということになる。


 さて、関東地方は概ね譜代や親藩で占められている。

 これが東北地方に入るとまず福島には本多家の領地があって、東北への目付としてデンと構えている。

 その周囲に伊達、上杉、武田という外様の大物が本拠地を構えているのである。他にも佐竹、最上、南部、津軽といった面倒な家も多い。各家ともそれぞれに過去の因縁を抱えている連中だ。


 最近の“亀田の変”(19話からの騒乱の公称)の原因ともされる佐竹による亀田への干渉、また最上家の内紛などもあって、この地方は些かきな臭い状態でもある。


 柳生但馬などは、厄介ごとの元凶である佐竹と最上は改易したくてウズウズしている。

 それを佐竹と最上とて理解しており、ピリピリとした神経戦が行われている。


 今回のリューシャ達は、太平洋側を通っているので本多領から伊達領、津軽領といったあたりを通過することになるので、そういった揉め事は避けて通れそうではある。

 譜代の本多家は勿論として、外様といっても伊達家にしてもすっかりとリューシャと友好的な関係である。この辺りで問題は無いだろうと思われていた。


 そう、大名家を巡るような問題は生じなかったし、魔物を巡る問題もなかった。

 けれど、ちょっとした問題には巻き込まれてしまった。


 関東と東北では、王国からすると管轄が違う。

 関東で罪を犯した者が、関東の大名領/代官領を抜けて東北に逃亡を図る場合は厄介ごとが生じる。

 関東を総括する奉行は存在しているのだが、東北の外様領に紛れ込まれると関東奉行の権限外になる。

 関東奉行配下の追討使は、東北と言っても本多領あたりでなら活動しても咎められることはない。軍務卿の支配地で犯罪人が行動するようなことは本多家としても体面的に都合が悪いから、本多家の家臣たちは基本的に関東奉行の配下に対しても協力的だ。


 これが伊達領や武田領に逃げ込んでしまうと、関東奉行の配下ではどうにもならない。犯罪人がいるならそれは伊達なり武田なりで捕縛すると言われてしまうだけだ。


 だから脛に傷を持つ者は素性を偽り、関東から抜け出て伊達や武田に逃げ込もうとする。


 例えば、ただいま本多勢とイルマータ連合軍が必死に追いかけている国定忠治などだ。


 ことの発端は数年前に遡る。

 干ばつが酷い年で農作物がさっぱりダメになった時がある。

 税の減免は行われたが、肝心の食い物に欠くような農民は大勢出てしまった。

 干ばつは関東地方に限った事では無かったから、王家や各大名家では蔵の備蓄米を切り崩して何とか凌がざるを得なかった。


 こうした騒然とした国情の中で、大商人や富豪なども施しを行う者もいた。

 そうした中には、侠客なども含まれていた。


 上州を縄張りにしていた博徒である国定忠治も、百姓にカネを配っていた者の一人だ。

 これだけ聞くと美談なのだが、その資金源が賭博と旅商人からの強奪だとなると奉行所も放置はできない。

 しかも、刃傷沙汰を引き起こしていて相当な人数が死傷している。


 当然ながら奉行所から関東追討使が派遣される。

 忠治はその情報を知るやさっさと東北方面に脱出してしまう。

 百姓たちは概ねカネを配る忠治に対しては友好的で、場合によっては匿ってしまうことすらあったのだ。

 モンタージュ写真など無い時代のことだ。人相書きといっても、どうにでも誤魔化せてしまえる。

 荷運び人足に素性を偽って、関所を越えて逃げていく忠治の一行。

 それを匿う百姓たち。

 結局、関東追討使としては誠に遺憾なことに逃げられてしまっている。


 そんな忠治はそろそろホトボリも醒めた頃だろうとばかりに、上州に舞い戻ろうとしていた時に事が露見した。


 本多領を北上して行くリューシャ一行の中には、関東奉行配下からの転職組も何人かいる。

 上がつかえていて出世が遅くなりそうと踏ん切りをつけて、新天地の公爵軍に身を投じた連中だ。身元はしっかりしているし、即戦力として使えるからリューシャとしても大歓迎だった、かくして幹部候補として即採用となった連中でもある。


 こうした連中には関東追討使に参加して、忠治の子分衆と一戦交えたような人間もいた。

 習い性なのであろう、道行く者につい目を向けてしまうというのは。


 そして、発見してしまったのである。


 街道筋で公爵一行を避けて、休憩している15~6人ほどの連中。


 人足を装っているけれど、間違いなく忠治とその子分達であると。


「ぬっ、貴様は国定忠治であろう!ここで見つけたが100年目。大人しくお縄に付けや!」


 彼は元の職業意識が抜けていなかったのだろう。ついつい反射的に大声を上げてしまった。

 そして、槍をかかげて突撃を敢行した。

 次回は国定忠治を捕える大捕り物。

 何故か河童の大群が乱入して来て大騒ぎに!


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