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30.公爵領への旅Ⅰ

 ご愛読ありがとうございます。

 決闘の後始末と旅の準備編になります。

 どうも女性が物語を引っ張り始めると、男と違ってちゃんと後始末をしてくれる。

 酷い目にあった女の子達の後の面倒までちゃんと考えてくれる。

 これが男だと、気に入らない奴をぶった切ってそれでオシマイということなんでしょうけれどね。



 決闘は決着した。


 恐らくは淡い期待をしただろう貴族席で見ていた犯人の家の者達は、がっかりと肩を落としている。


 告知はされなかったけれど、子爵家以下の家もお取り潰しは免れないだろう。

 女5人相手に為す術なく、無残にやられただけだった。

 貴族を楯に刑罰を拒否した結果、家を失ってしまったという余りにも愚かしい選択。

 馬鹿な子弟など最初から見捨てて、僅かばかりの賠償金でも被害者に与えておけば。

 そうすれば御家安泰であったであろう。


 女だから。

 子供だから。


 そう侮った結果、全てを失ってまった・・・。



 権威主義、あるいは男尊女卑主義の守旧派貴族の恨みは、今度は学校に向かった。


 女公爵家当主に下手に手出しするなら、王家が黙ってはいないだろうからだ。

 リューシャ本人が血塗れになって、実際に戦ったのである。

 彼女は甘やかされて育ったボンクラな子供ではない。

 見た目の美しさと、生まれの高貴さだけの少女でもない。

 自らの意志で、自らの力で、敵をねじ伏せたという戦功を立てたのである。

 本来の貴族の姿をしっかりと実践してのけた。

 文句を付けようが無いのだ。文句を付ける方があっと言う間に消されるだけだ。



 だから腹いせは学校に向かった。

 校則を無視した連中を棚に上げて、風紀の乱れを放置したのは学校の責任だとやり出したのだ。

 もっとも、教授連中が率先して貴族子弟と結託していたのだから、学校の責任は確かに重いのは間違いない。

 文句を言われるだけの事を放置していたのは間違いないのである。


 その責を負って魔法学校長は自ら自刃を選択した。

 校長は自ら文部卿の元に出頭し、切腹を申し出て即刻受諾された。

 彼は本来なら殺人犯が処刑される場所に連行され、そこで切腹させられた。これは名誉の死ではなく、実質的な処刑だという意味合いを世間に見せる為だった。



 王宮では決闘を許可した時点で、こうした結果は予想していた。

 まず、馬鹿な貴族連中は一掃できるとは踏んでいたのだ。

 それにエリート教育を標榜して、入学生の半数を使えない状態にしていた魔法学校の校長に対して王宮からの不満は大きかったから、更迭したくて機会を待っていた面もある。

 魔法学校出ではない魔法師でも、富士の演習場でしごかれると相当の使い手に成れる。だったら、魔法師というのは単に素質だけではなくて、教育に依存する部分も多い筈なのだ。


 ただ、全くの予想外だったのは、女魔法師達の圧倒的な強さだった。

 シェイラとレキュアはあくまで例外的な存在であると長年考えられてきたのである。所が必ずしもそうではないらしい。


 クルーガと言う少女の魔法も強烈だったし、シオーヌとてもシェイラやレキュアに引けを取らない様子だ。

 或は魔法という物は女の方が適正は高いのではないのか?


 出雲は強力な魔法を使うが、現状では彼に比肩する魔法師と言うと存在しない。

 2人の側室の後には格が落ちるが小隊長達3人が次に来るような魔法師になる。他には元老マーレイ・アンドレッティくらいだろうか。


 魔法師のランクとして考えるなら、


 出雲>シェイラ≒レキュア>小隊長3人組>マーレイだった。

 勿論、軍人としての魔法師はそれなりに存在するけれど、彼らの力は上記のメンツには及ばない。


 しかし、どうやら違う事になるらしいのである。


 出雲>シェイラ≒レキュア≒リューシャ≒クルーガ≒シオーヌ≒シード>小隊長3人組>マーレイと言うあたりの可能性が高い。


 リューシャがここまで強力な魔法師になるとは、最近まで想像できなかった。

 魔法の素養があることは知られてはいたけれど、武芸大会では信じられないような非常に強力な魔法を見せつけた。

 原因は白狐と夫との旅暮らしの中での稽古のお陰だと言うが、側室達も同じく強い事を考えると嘘ではないだろう。

 リューシャは半年ばかりの修行で一気に才能が開花したということになる。


 そうなると他の女魔法師だって修行次第で化けるのかもしれない。


 実際に男の魔法師を富士の訓練に1ヶ月派遣して、トコトン限界までシゴキ上げると相当にレベルが上がるということは実証済みの話だ。

 女性版のそうした事が出来ないのだろうか?


 それに大名家としても魔法師への需要と言うのは大きい。

 島原でもそうだったが、ピンポイントでの突破力であり、リリーフ・エースとして大いに役立つ。強力な魔法師部隊はどの家でも喉から手が出る程欲しいのである。


 ましてや女魔法師なら子供を産めるのだ。大貴族家の側室や小貴族家の正室に魔法師の血を入れることは悪い話ではない。

 貴族家の子女で魔法の素養があるなら、しっかりと鍛えてから貴族家に輿入れさせるというのは望ましい。

 平民の娘でも貴族の側室に入れてしまうのなら問題でもないし、分家なら正室としてもいい。これは平民の娘としては大出世といえる話だ。大歓迎されるだろう。王宮に務めている平凡な官僚の妻に収まるよりも、名門貴族の側室の方が遥かに暮らしは優雅になる。

 だれも困らない、むしろ皆が幸せになれるような話だ。

 これを不可能にしていたのが、王立魔法学校だったのだからなんともタチが悪い話だ。


 好ましいのは魔法師として優秀であることと、そして貴族家に輿入れしても対応できるような婦人だ。

 そうした両面の教育が提供できる教育機関の設立が必要になる。


 現在の魔法学校にはそうした物を望むのは無理だ。

 だから、王立女子魔法学校を新規に創設すればいい。

 最初から学生側から身分に応じて正妻希望か、それとも側室でも構わないのか希望を出させておく。

 学校側では見た目、魔法、女子力(礼儀作法や家事能力)の3面で評価してしまう。

 後は、年に一度くらい王都で学生達の御披露目をやって、貴族家から希望を募る。それを王宮側で調整することで、貴族家の婚姻政策そのものを王宮で掌握してしまえばいい。

 貴族家の魔法師バランスを王宮で握るのだ。


 これを言い出したのはリューシャである。


 男の世界に婦女子を入れるから問題が起きるのである。

 素養のある婦女子“だけ”を集めておいて、最初から有力貴族への婚姻というニンジンをぶら下げて修行させればいい。頑張れば良い家に嫁げるとなれば、おなごなら絶対にやる気になる筈だ。


 魔法の指導は出雲の側室と与楽の妻妾、そして王宮の間接部門で燻っているような女魔法師を抜擢する。燻っている彼女達すらも高家に縁組させればいいのだ。

 あるいは隠居した女魔法師を採用しても構わない。


 女子としての礼儀作法については、王宮の現役儀典関係者や隠居した関係者にやらせればよい。子育てが終わって暇になった元王宮メイドならいくらでも探せるだろう。


 瞬間移動できる術者自体はソコソコにいるのだから、公爵領に学校を創設しておいて講師陣が王都から出張する形でも運営上は問題にはならない。

 場所にしても、公爵城は無駄に広い。万単位の軍勢が篭城できる場所なのだから、50人1学年で4年制の学生、それに講師陣が加わっても宿舎など全く問題にもならない。

 貴族子女なら公爵城で寝泊まりするのなら、安心できるだろう。平民の子女にとっては、完全に夢に見るような憧れの暮らしだ。


 じゃあ、それで進めようかという線でまとまり掛けたのだが。


 ちょっと、マテ!


 物言いを付けて来たのは有力侯爵家の正室婦人会である。どうせ礼儀作法を教えるのなら、自分達も月に1度くらい講師をやっても構わない。

 それに富士の演習場で鍛えられた精鋭の女魔法師を講師に出しても良いと言い出したのである。


 別に機密にするような話では無かったから、軍事筋の有力大名家ではソコソコに話は広がっていた。むしろ、彼らの家に嫁がせる要員を育てようという話なのだから、前宣伝は必要だったのだ。


 どうせなら、使えそうな娘を青田買いしてしまえと言う魂胆丸見えではあるけれど、高家の正室連中の御眼鏡にかなう人材育成こそが主眼である。

 そうやってこの国の戦力を高めて外敵に当たろうというのは悪い話ではない。

 話は良いように大きくなったが、それはそれとして王立女子魔法学校の創設は動いて行った。


 公爵領で新学校の創設とはいえども、現在でも魔法学校は存在していて在校生は存在している。

 新校長には新しさは無いけれど、元老のマーレイがワンポイント・リリーフで登板。

 女生徒に対するケアの意味合いも含めて、女生徒と男子生徒の講義は完全に分離。

 王宮の研究職や軍の女性魔法師を臨時講師に招いての、先行的な女学校の試行状態へと変化している。


 また、退学してしまっていた元女学生に対しても、復学の勧誘をリューシャ名義でおこなっている。出雲の側室と与楽の側室が学校の監視に当たるから、もう滅多なことはやらせないというメッセージを付けてだ。

 やたらに強い女魔法師軍団が不良貴族を一掃したことは知れ渡っているから、彼女達を慕って復学してくれることを期待していたのである。


 これを受けて復学してきた女学生は30名。魔法を捨てたくないという娘達だが、傷物にされて女としてまともな貴族家には嫁げないという切実な事情を抱える下級貴族の娘達でもある。貴族社会ではどうしても嫁入り前の娘の貞操問題は付き纏う。

 貴族家への嫁入りは断念して、下級の陪臣家や官僚辺りを斡旋する必要がある娘達ということになるのだ。この辺りを含めてリューシャは面倒を見るつもりだ。


 官職を持たないクルーガ、シオーヌ、シードは王宮での行事以外は暇である。だから、魔法学校で講師代わりをしていても大丈夫。

 シェイラとレキュアは元々、講師をやっている。

 そして、彼女達を前にして女生徒に何かしようという男子学生などいないのである。


 完全に女学生の用心棒と言う感はあるが、彼女達は女生徒に慕われているのも事実だった。トンデモナイ大技をバーンと披露してのけるのである。単純に魔法師候補生として、憧れてしまうという面と、その強力な技で自分達を守ってくれるだろうという期待だった。


 被害に遭った女学生が魔法学校の寮で安心して暮らせるのか?という疑念が、関係者から出て来た事でリューシャがひと働きしている。


 現在、王宮の客室を占拠しているリューシャ一行であるが、本来なら王都にも公爵家の屋敷は存在している。臣下としての頂点にいる公爵家の屋敷だから、貴族の邸宅としても別格で相当に広く豪華なものだ。

 それでいてリューシャの弟マークは領地にいる。当主であるリューシャは王宮暮らしである。

 現実問題として公爵当主も、将来の公爵候補も住んでいないけれど、屋敷の管理の為に使用人達は働いている。リューシャの親戚筋が主顔で使用人を使ってふんぞりかえっているのである。

 使用人にしてもリューシャの父親時代に仕えていた者は解雇されて、彼女が知らないような連中ばかりが屋敷にいるのである。

 リューシャは父親の時代に仕えていた者を柳生の手の者に探して貰って再雇用。その再雇用した面子と与楽を伴って屋敷に乗り込んで告げたのである。


「私は公爵家の当主です。給金は私が支払っているのです。私が知らないような者を屋敷に置いておく訳にはいきません。この屋敷で働いているあなた方は、この家の当主の為に働いているのではありませんから、全員解雇します。

 私の縁者であっても、私の為に働いていない者を家臣とは呼べません。この屋敷で暮らしている者は今から全員出て行きなさい。一切の財産の持ち出しは禁じます。私の財産はあなた方の財産では有りません」


 解雇を言い渡しているのは、つい先日の決闘で容赦なく伯爵の首を斬り飛ばした公爵家女当主と武芸大会無双の夫である。

 屋敷にいた者達は大急ぎで逃げ出して行った。


 すっかりと、誰もいなくなった屋敷を再雇用した使用人達に整理するよう命じ、リューシャは復活させた王都屋敷の執事に告げたのである。


「ここを暫くは魔法学校の女子寮にしたいのよ。女の子達が60人位住めるようにしておいて頂戴。使用人が足りないようならあなたの権限で集めて貰って構わないわ。

 そのうちにマークが王都留学に来るから、その時にはここを使うことになる筈だけれど」


 復活した執事氏、伊達に長年公爵家の雇い人を務めていない。柳生屋敷を訪れると、柳生家の家令に面会して女中衆を融通して欲しいと依頼してのける。


 代々の家臣といっても、家臣には人数の枠が決まっている。次男や三男などには家臣になれない者も当然出て来るのである。ましてや女性ともなると簡単には雇ってもらえない場合が多い。

 柳生家は権限の割には所領が小さいから、家臣の枠も多い方ではない。そうなると仕事を探しているような縁者というのはそれなりに存在しているのである。柳生の縁者が全員隠密や剣術家になる訳でもないのだ。

 今回、自分達が柳生の世話になったから、お返しに柳生の縁者を採用してあげるという訳だ。

 権限は大きいけれど、決して格式が高い訳ではない柳生家。

 対して、正真正銘のイルマータ公爵家である。公爵家のお女中ともなれば、それは相当な名誉ある職業であるのだ。

 極端な話、上杉家でも前田家でも執事氏が同じことを言いに行けば、大喜びで人を出してくるだろう。

 ある意味、相当な利権をお礼として執事氏は差し出したのである。

 採用された家の者は柳生家の家臣だから、当然家臣連中は柳生の殿様に非常に感謝することになる。柳生家の求心力は強まり、忠誠心が果てしなく上がって行くことになるのだ。


 かくして、王都にあるやんごとない公爵家が、あろうことか学校の女子寮になってしまった。


「ど、どうしよう。私、部屋を汚したら怒られてしまうのなあ」


「でも、やっぱり凄いわっ。こんなお屋敷で暮らせるなんて夢のよう・・・」


「メイドさんも、執事さんも、なんか凄いよ~」


「・・・お屋敷の中で迷子になってしまいそうよね」


「ううっ、貴族のお嬢様というのはこういうお屋敷で暮らすのね、緊張しちゃう・・・」


「貴族でも下級貴族じゃ、絶対無理だからねっ」


「安心して、侯爵家の王都屋敷ですら全く規模は違うから!」


「ウチの伯爵家なんて、メイドさん達の宿舎の離れみたいなものよ・・・」


 生徒さん達はおっかなびっくり、でも瞳の中にはお星さまキラキラという感じだった。


 リューシャはこうした事ばかりに注力していた訳ではない。

 むしろ、こうしたことは余計な仕事である。しかし、女性というものはどうやら相手を殺してそれでオシマイという男性的な価値観だけではないということなのだろう。後の面倒までしっかり見ておく辺りは流石なものだ。


 リューシャ本命の仕事は公爵領の統治をするにあたっての家臣団の編成である。

 現在、公爵領にいる親戚縁者を排するなら、その家臣団も排除しなければいけない。

 実質上の統治機構をゼロから再構築するようなものだ。

 そして、この面では夫は何も役には立たない。元は旅の行者で旅暮らしだけしか知らない人間なのだ。

 側室連中では、クルーガとシオーヌは帳簿くらい付けられるし、内容を理解できるようだが、如何せん騎士爵家と公爵家では規模が余りに違い過ぎるのである。彼女達では感覚的にピンと来ない様子だった。


 かくして、行政現場で上が詰まっていて出世が止まってしまっている連中や、王立法科学校か王立経済商科学校のエリート組から公爵家で一旗あげたい者を募ったのである。

 官吏としては王宮で一旗あげるのが理想の出世街道である。

 しかし、イルマータ公爵家は臣下である貴族家の筆頭である。

 新卒学生には本来は果てしなく高嶺の花である。

 勿論、王宮での出世を諦めた者の次善の選択肢としても、非常に魅力的な職場なのである。

 “イルマータ家で財務担当です”というセリフを王宮の官吏の前で言うなら、相当なハッタリ効果が生じる。平民であっても、下級貴族の2女や3女辺りからの縁談すら舞い込んでくるのである。


 そして、急編成であるが500人程の騎士団を募っている。

 公爵領で親戚縁者を排除するのは造作も無い。武力としてはリューシャ本人と夫と側室だけでも楽々制圧できる。

 それでもどうしても人数がある程度必要な局面は存在する。拠点の警護や人心慰撫には目に見える戦力が必要になるのである。

 公爵家の当主のお国入りのお伴としても、ある程度の見た目を意識しておかないといけない。

 500人に留めたのは、王国軍から500人の援軍を貰うからだ。

 こちらの要員はあっという間に確保できた。

 美しき女公爵の騎士である。そして、紛れもなく強力な一家なのだ。

 夫の武といい側室の魔法といい。

 かくして、武門の血を滾らせる人間達にとって、“我こそは”と売り込みに躍起になって来た。売り込みを巡って決闘騒ぎになりかかり、結局は軍務卿が裁定に入って優先順位を付けたほどだ。公爵家と縁を結びたい貴族家から2男、3男の売り込みが熾烈を極めたのである。


 500人と言っても、そのうちで100人は女性という指定だったから、男子の競争は至って厳しいものだったのだ。

 貴族家の顔を立てつつも、実力を重視して。ついでに武芸大会で与楽の合格がでたような選手も採用しつつ。


 100人の女騎士というのは、女当主だから身辺警護は女性が都合いいし、女子魔法学校の警備も女性の方が適役だろうという配慮だ。こちらの枠も相当に熾烈を極めたが、基本はリューシャの顔見知りが優先されている。ナニブン彼女の身辺警護なのだ。


 かくして、官吏予定者100人程と軍勢1,000人。

 こうした採用に関わる費用は一切、公爵領から出てはいない。

 全て、リューシャの手持ち資産から捻出されている。正しくは彼女の夫の甲斐性である。


「ねえ、あなた。おカネが欲しいのだけれど」


「ふーん、いくら?」


「50億くらいかしら」


「うーん、ちょっと待ってて。今から稼いでくる」


 2時間後


「3カ所のハンターギルドの振り出した手形で21億、18億、23億になったけれど、これでいいかな?」


「ありがとう、あなた。愛してる!」


 夫は血塗れである。ちょっと魔物の森に行ってワイバーンとトリケラ、ティラノで稼いだようだ。50匹ではキリが悪くて、群れごと始末したら少し金額が多かったらしい。

 行政面ではサッパリ役立たずの夫だが、綺麗な女房を貰ってカネに不自由をさせない程度の甲斐性だけはしっかりあったらしい。


「ワイバーンの肉だけは少し手元に残してある。厨房に渡して晩飯にでもしてもらおう」


 訂正;綺麗な女房を貰って喜ばせる程度の甲斐性があるようだ。

 なぜなら、陛下はワイバーンの竜田揚げを食わせておくと機嫌が良いらしい。エチゴの酒で竜田揚げを食わせておくと、大抵のお願いを聞いてくれるという王女の証言がある。

 ワイバーン5匹貰ったと料理長から報告を受けた陛下は、早速軍務卿を相手にご機嫌で一献傾けたらしい。


 どうでもいい話だが、旅暮らしの長い与楽は大抵の獲物は塩と山椒を振って串焼きにする癖がある。


 いや、彼は自力では焼くことしかできなかったのだ。

 師匠と死に別れたのが与楽12才の時。当時の彼は自力では獲物を焼いて食うことしかできなかったのだ。


 人間らしい食事の味と人里での人間生活の仕方を与楽に覚えさせたのはクルーガなのだ。

 魔物や妖怪相手に無双する反面、人里暮らしの経験がほとんどない野生児。

 それが与楽だった。


 それでは将来困るだろうと、クルーガは頑張って与楽を人間らしく矯正していった。

 リューシャは当たり前のように与楽を王宮に連れて来たけれど、いつ与楽の野生児が露呈するかクルーガは気が気ではなかった。


 戦闘以外の局面では、決して与楽を一人にしてはいけない。何をしでかすか分からないのである。

 そのことをリューシャは知らない。彼女が与楽を知ったのは、大分まともに矯正された後の姿だったのだ。


 考えようによっては、政治には口を出さずに、カネが必要なら稼いできて、気に入らない奴がいるとなればアレしてくれる。リューシャには理想の夫ではあった。


 次回は鬼退治です。

 青鬼、赤鬼。

 ご祈祷と騎士団の突撃!集団戦って血沸き肉躍る感じがあっていいですよね!


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