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28.魔法学校の涙

 ご愛読ありがとうございます。

 今回は前半ホッコリ、中盤は血生臭く。最後は女同士の友情パワーで大団結!

 まるで少年誌の熱血モノみたいですが、事件の根っ子は性根が腐っているお話です。


 富士の演習場に出雲と与楽を一緒には置いておけぬとなって、ひとまず与楽と側室3人衆を魔法学校の臨時講師として派遣することにした王宮。

 ここでいう王宮とは宰相と軍務卿だったりするが、何かと面倒事を引き受ける役職であったりする。

 さて、今回は武闘派への指導ではなく、むしろ女生徒達への底上げ指導をやって欲しいというリクエスト付きである。


 元々は新入生としては100人入学して来て、卒業まで至るのは半数ほど。この抜けてしまう半数をなんとかならぬか?という依頼である。伴天連連中との抗争は、場合によってはポルトガルとの戦争に発展する可能性がある。


 使える戦力は多い方が良いのである。今となってはエリート教育専門機関とばかり胡坐をかいている訳にはいないのだ。ついて来られる者だけを指導するのではなく、少しでも使える者をしっかり育てないと困る。

 なんといっても戦は数なのだ。局地戦なら少数精鋭でもよいかもしれないが、一国の運命が掛るとなれば国家総力戦の構えが必要になる。


 幸いにレキュアとシェイラが交互に教官をやっていることもあって、女子生徒の底上げが軌道に乗りつつはある。

 彼女達は理論立てて懇切丁寧な指導をする。それに黒奈が補助教員として付いていて、それなりに成果が出ている。


 けれども、どうしても退学して行く者が後を絶たない。

 授業にはちゃんとついて行っていて、落ちこぼれるということではない。

 特にカネに困っている訳でもない筈なのは、エリートの卵だから寮が完備されていて最低限の衣食住、さらに教材まで支給されている。この学校に在学している分には困らないし、卒業後はエリート魔法師の道が開けるのである。


 それなのに退学して行く者が後を絶たないのである。

 追討軍によるスパルタ講座はあくまでも希望者限定の講座なので、希望しない者は特別に怖い思いをすることもない。


 この現状に王宮の文部卿や軍務卿としては、微妙な気分になっているのだ。

 なんとか100人全部しっかり育てられないものだろうか?

 ここで白羽の矢が立ったのは、武芸大会上位入賞者にして美形の側室衆だ。

 見た目の良さと腕の良さで、特に脱落者が多い女生徒達に“頑張ろう”という切っ掛けを与えことができないだろうか?

 与楽一行は割と切実な悩み事の解決を求められているのである。


 校長はこの点、古い思想の持主だった。魔法師とは結局の所は才能なのだ。才能無き者はいくら指導してもやっては行けぬ、魔法で無駄な努力などするなら他の分野で頑張ればいい。何と言っても貴志やレキュア、シェイラといった存在は異例に過ぎる。彼らは努力ではなく才能なのである。

 結局の所、魔法学校とは才能あるものに、しかるべき技能を与える場所でよいではないかと校長は考えている。

 彼は与楽という稀有な存在を発掘できたことだし、むしろ野に隠れている才能を探す事に注力すべきではないかとさえ考えているくらいだ。


 与楽一行としては、特別に荒事をやるでもないのならと気楽に引き受けていた。

 そもそも与楽とは文字通り楽を与える人間になれという良寛和尚の願いから名付けたものだ。

 慈悲とはすなわち与楽抜苦である。神仏の本質はそこにある。

 他人の苦しみを取り除いて、楽しみを与えるような人物になっておくれ、それが良寛の願いであった。


 魔法学校の女生徒達に魔法が楽しいと思わせれば良い。

 それならばいい考えがある。

 クルーガがそう言いだして、結果的に側室3人がお揃いのコスチュームで魔法学校を訪問することになった。


 クルーガは黄色と白のストライプ、シオーヌは青と白のストライプ、シードはピンクと白のストライプ。

 3人でお揃いのデザインで、色違いのブラウスにベスト、フリフリのついたミニスカート。

 手袋とブーツも同系色でまとめて。


 整った美しさを誇るクルーガであってもまだ16才の少女である。可愛らしい衣装を着て、無邪気にほほ笑むと女神のごとき美しさというよりも、ちゃんと可愛らしい魔女っ子になってくれる。

 これがより幼い14才の騎士を気取る少女や11才の魔女っ子フリークの少女なら、なおさらのこと問題ない訳で。


 本日は3人揃って可愛らしい魔女っ子という演出での登場と相成った。

 魔法学校だと16才~20才くらいまでの学生達が中心になっている。年齢の近い女子学生達にとっては黒や紺のローブで全身を覆うようなスタイルよりも、クルーガやシオーヌの愛くるしいスタイルの方に憧れるというものである。


 彼女達の体験授業というのが高度10m制限付きの鬼ごっこである。

 飛行魔法が使えなくても身体強化くらいは使える者が多い。ジャンプで10mくらいなら普通に届く。


 かくして、午前中はキャイキャイと騒ぎながらの女の子だけの空中追いかけっこである。


 まだ幼さの残るシードが、

「鬼さんこちら、シオねえコッチ!」

「あーん、クルねえ速いよ~!」

 などと、いい感じでムードメーカーを務めてくれる。


 仲の良い3姉妹が長い髪とヒラヒラのスカートを風になびかせて、笑顔で宙を舞うという光景だ。

 武芸大会上位入賞者という強面という印象が一切なくなって、微笑ましい感情になるのは自然のこと。

 何時の間にか女生徒40名を巻き込んだ賑やかなお祭りめいた雰囲気が広がって行く。

 魔力切れになりそうな者にはオークあたりの魔石が与えられて、それで十分に遊べるのだ。


 昼時頃にはすっかり仲良くなって、一緒にご飯を食べて。


 午後からはクルーガが音頭を取って、女性徒総出の大規模魔法陣の構築だった。

 学校の校庭を目一杯使って、複雑な文様を皆で協力しあって構築して行く。

 キャーキャーと大騒ぎしながらも和気藹々に構築された魔法陣。


 その中心に、昼食で出されたサクランボの種を置く。


 そして、全員で魔力を注ぎ込んで魔法を発動させる!


 “Fleurs cerise, fleur tôt”


 女性徒40名の詠唱に応えるように、種は芽を出し大地に根を張る。

 やがて葉が芽生え、茎が伸び・・・。

 見る見るうちに見事な桜の樹になって行く。


 ここでクルーガが気合を入れる。


「さあ、みんな。もうひと頑張りお願い!」


「「「桜の花よ、早く咲け」」」


 少女達の声に応えるかのように、桜の樹はどんどん大きくなってやがて蕾を付ける。


 そして、ついには見事な花を咲かせだす!


「やったー」


 ピンク髪のシードが飛び出して桜の周りを舞うかのようにヒラヒラと飛び回る。

 ピンク髪と衣装の少女が桜の花の周りを飛び回る様は、さながら桜の妖精のごときであった。


 つられて生徒達も飛び出して行く。皆で手を取り合って空中でダンスが始まる始末である。

 ついには講師で来ていたシェイラまで加わっている。

 ピンクの少女と深紅の美女が舞い踊る様は、何か幻想的ですらあった。



 巨大な魔力の発動は、王宮務めの魔法師達にも当然感知された。


 “なんだ!巨大な魔力を感知したぞ!”


 “遠視の術者はスグに確認しろ、急げ。”


 “あのー、魔法学校の校庭で桜が咲いてます・・・。”


 “あんだ??”


 “魔法の実験でもやったようデス”


 “そんで、あれだけのデカイ魔力かい・・・”


 まあ、異常な出来事が起きれば報告するのが仕事という人間達もいる訳で。


 報告する者がいれば、報告を受ける者もいる。


 被害が無ければそれでいいや、と捨て置く者が普通に忙しい奴。


 “面白そうねえ”となるのは基本的に暇しているヒト達。


 “季節外れのお花見してから、温泉にでもつかりましょうかねえ”などと言い出すような、やんごとない方々も王宮にはいらっしゃる。


 かくして、ただでも忙しい人が余計に忙しいことになる。

 主に柳生家の親子や公儀隠密の皆さんなどに。


 毎度おなじみ十兵衛兄弟に半蔵一党が半ば諦めの境地で警備にあたる中、やんごとない親娘孫、ついでに姪っ子までついてお花見に。


 やんごとない方々が到着した時には、ピンクの少女と深紅の魔女が競い合うように校庭中の花を魔法で咲かせている最中で。


 警護について来た十兵衛は思った「昔から赤い魔女は良く知っているが、あんなにはしゃいでいる顔などみたこともないな」、何か不思議な気分だった。


「シェイラが笑っている顔など、初めて見ましたね。リューちゃんの仲間は不思議な子達なのねえ」


「だって与楽様の妻ですもの、皆に幸せを与えますわ。与楽抜苦こそ神仏の御心、そうした人になれという良寛様の願い。それを受け止めた夫ですもの。」


「リュー姉様は本当に良い方にお会いされたのですね」


「ええ、本当に。でも、きっと姫様にも幸せを与えてくれますわ。マークもしっかりと教育しておきます」


「うふふっ」


「それはそれとして・・・。魔法で花を咲かせるというのなら、米や麦でも育つのかしら?」


「はい、私でもできましたし。教えて上げればレキュアやシェイラでも荒地の開拓ができるのではないかしら」


「・・・まあ、それは便利ねえ」



 魔法師はこの時代には戦闘要員に重きが置かれて、戦闘に向かない者なら治療、あるいは飛行や瞬間移動を活かした伝令や輸送という働きが求められた。

 ある意味で完全に生産面に対しては未着手な分野と言っても良い。水魔法を使える者でも、本格的な干ばつが起きたら手出しなど出来ないのが現実だったのだから。

 それが一気に未開地の開拓そのものが魔法による力技が可能なのかもしれない。

 目の前の桜にはそれだけの可能性があるらしい。

 やんごとないご婦人たちにはその可能性を理解できてしまった。



 革新的な技法に皇太后と皇后が喜んでいる最中。

 校庭の片隅でそれは起きた。


 十兵衛は警護の都合上、校庭全体を見張っている。

 その視界の中に、女生徒が3人程泣いているのが入る。

 それが気になったのか、シオーヌが彼女達に声を掛けたようだ。

 暫く話をしていると、シオーヌが真っ青になって殺気を放っている。その姿に異変を感じたのか今度はクルーガも近くに寄って行った。

 暫くするとクルーガが、3人の生徒達を抱きしめだした。

 遠くからでも、一緒に泣いているらしいのが分かる。


 一体何事か?

 不審に思う十兵衛の目には、さらにそこへ追討軍の緋羽織を着た要員が3名近寄っていくのが見えた。

 彼らは実習の教官なのだろうか、異変に気が付いて声でもかけたのか。


 しかし、彼らは泣いている女性徒の手を引いて、にやけた顔で連れて行こうとしているらしい。

 女生徒は行くのを嫌がっていて、クルーガとシオーヌがそれを制止しようとして。

 追討軍兵士と揉め始めたようだ。


 “警護の助っ人するでもなく女相手に何やっているんだ、目立つ羽織を着てあの馬鹿共め!”と十兵衛は内心毒づいたものの、すぐさま警護対象のやんごとない方々を馬車へ誘導することにした。


 もっとも、警護対象のつもりであった1人はさっさと飛び出していたけれど。


 十兵衛の憂鬱をよそに、更に事態は悪くなる。


 何事か追討軍の兵士が言ったらしい瞬間に、銀の少女は実剣を振り抜いたのだ。

 見事に袈裟斬りが決まって、辺りを血に染める。

 斬られた兵士は明らかに致命傷である。


 これに慌てて残りの2名の追討軍兵士も抜こうとして、しかし、抜く前に地面に倒れ伏す。

 クルーガとリューシャ両名から、ほぼ同じタイミングで雷撃を喰らったようだ。


 そこに小隊長の佐助と与楽、追討軍兵士7名が歩いて来た。魔物対策の実践講座で稽古でもやっていたのだろう。


 倒れている3名の同僚に気が付いた追討軍兵士は色めき出すが、佐助が手で制した。

 クルーガが佐助に対して何事かを怒鳴ると、なんと!佐助が土下座した。

 呆れた顔の与楽・・・。



「十兵衛、何事か確認して報告なさい。わたくし達は温泉で待ちます。お母様、参りましょう。半蔵、馬車の支度を」


 温泉といっても本来は開国主神社王都別宮。

 正真正銘神聖な場所である。

 そうした場所で十兵衛とリューシャから報告された話は、とてもではないが神聖とは程遠い内容だった。


 魔法学校に入学した平民の女性徒は、ほとんど全員。貴族でも2女や3女あたりなら当然のように。

 教授や貴族子弟とその取り巻き男子生徒から、思いついたときに手籠めにされているという。

 師範代として教員をしている追討軍兵士も共犯者である者が含まれていた。

 魔法学校を退学していく女性徒はこれを嫌がる為で、そうした体質を嫌がる男性生徒も相当数辞めているそうだ。


 泣いていた3人の女生徒も被害者で今日限り退学しようとしていて、最後の思い出作りになったとシオーヌに話しかけたそうだ。


 当然、あまりの理不尽に激怒したシオーヌ。そして彼女の漏らした殺気に気が付いてクルーガが駆けつけてきて同じ話を聞いて、やはり激怒。


 そこにノコノコと追討軍の兵士がやって来て、いつもの調子で彼女達を連れて行こうとした。

 見慣れない顔のシオーヌにまで、兵士はいらぬ事を口走ったらしい。

 そして、完全に激怒したシオーヌはバッサリとやった。


 シオーヌとクルーガは武芸大会の時とイメージが全くちがった可愛らしい衣装と、それに合わせて髪型も変えていたので、兵士達はあの強豪とは気が付かなかったそうだ。

 見慣れない可愛らしい娘だと、迂闊に手を出そうとして逆に斬り殺された。

 そして、慌ててシオーヌに掛ろうとした2名の兵士はクルーガとリューシャの手に掛った。


 佐助が土下座したのは、クルーガが怒り狂って全員手討ちにしてくれると言ったからで。

 彼女達の正体を知った佐助は、ひたすら詫びたということらしい。

 この場で小隊全員揃って手打ちにされるか、それとも女準男爵への無礼を働いたのだから追討軍が捕縛されて王宮から処罰されるか。佐助には土下座することしか、頭に浮かばなかったという。


 佐助としては、神龍襲来騒ぎの時には服部忍軍と喧嘩して御庭番を数人殺して、島原では味方の軍勢に甚大な被害を与えて。今度ヘマしたら切腹ものだろうと常々覚悟はしていたらしい。部下が公爵家の一族に無礼を働いたとなれば、自分の命運は尽きたと思ったらしいのである。

 こう書き出しただけで、確かに勤務評定としては相当にダメなのは確かだ。


 しかし、十兵衛をがっかりさせたのは、シオーヌがバッサリと兵士を切り捨てたのは単なる剣技で魔法でも何でもなかったということだった。騎士団候補生として修業していたものの、実際に騎士団での勤務経験はないという彼女。

 14才の少女に一撃のもとで袈裟斬りにされる兵士が、果たして精鋭部隊と呼べるのか・・・。



 十兵衛はあらましを調べた所で、配下に実際の加害者の捕縛と被害者の事情聴取を命じて報告に参上したという訳だった。


 皇太后陛下は瞑目し、皇后陛下は眉を顰め、王女は可哀そうなことをと呟いた。


 母と妻と娘と姪から報告を受けた陛下。

「これでは魔法師が増えぬ訳だな・・・」と溜め息を漏らしたという。


 宰相、法務卿、文部卿、軍務卿は大慌てであった。

 確かに貴族なら平民の女を手籠めにしても罪には問われない。しかし、学内では身分制度は適応されないという校則になっている。


 校則よりも、国内法が上位にあるのだから、自分達は貴族の特権を受けるのは当然である。やりたい放題の貴族子弟側ではそう言い立てるのである。


 ましてや魔法師である自分達と魔法師の素養がある女生徒の間なら、強力な子供ができるかもしれないではないか!と居直る。


 貴族ではない教授や貴族子弟の腰巾着などは、どのみち犯罪者で確定だ。

 刑罰としては宮刑、すなわち去勢である。ちょん切られて、そのまま死ぬまで働けという沙汰である。魔法を使える奴なら、そのまま使う。しかし、“男として”はもう使わせないという厳しい処分となった。


 問題は追討軍だった、一応はヒラ隊員でも騎士爵待遇されている。本来、騎士爵というのは貴族ではなく武士という階級を差すのだが、慣例的に貴族待遇されている面もある。


 貴志自身はこの問題を全く認識していなかった。所詮は子供である、組織運営までは無理なのは確かだ。


 レキュアやシェイラは昔から実力があって余計な手出しする奴は半殺しにしてきた。そして、学校で女友達などいなかったから、こうした学校全体の暗部を知らなかったのだ。


 児雷也、才蔵、佐助は知っていたけれど、半ば容認していた。キツイ職場故に息抜きも必要だという認識だった。


 結局、貴志は管理不行き届きで減俸1年。

 小隊長達には厳しく官位・爵位はく奪の上、減棒1年。

 犯行に直接関与した隊士は宮刑。

 犯行を知っていて無視していた者は、結局全員だったから全員減棒1年。


 問題としては再発防止策なのだが、貴志は官位が上がり過ぎていて命令権限のある者が極端に少ない。そこで、平時においては柳生但馬の配下に置かれて、有事にのみ本来の権限行使を行うものという変則的な対応となった。

 貴志の官位が高いからと隊士達が図に乗ると、あっという間に粛清するぞ?という意味合いだ。



 貴族子弟に関しては揉めた。

 だから、宰相、法務卿、文部卿、軍務卿と雁首揃えて苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。

 軍人であれば問答無用で軍事裁判で処分できるのであるのだが、タダの貴族ということだと貴族法を適応せねばならない。

 貴族というのはそもそもエライということになっているのだ。基本的には平民に対して越権御免なのである。

 法務局内の大会議室でのグダグダな議論は続いている。


「グレイ伯爵家としては貴族法の規定通りに処理していただきたい。貴族が平民ごときの女子など何をしても問題ではありません」


「左様ですな、阿呆伯爵家としても貴族法の規定通りの処理をすべきかと存じますな」


「しかし、学校規則では学内において身分制度は適応されないということになっています」


「国内法、特に貴族法を無視した校則など作るのがおかしいのですぞ、校長。貴族というのは尊重されるべき存在だからこその貴族ですな」


「左様、流石は阿呆伯爵殿ですな。グレイ家も賛成です」


「貴族法を読んで見たが、決闘という行為が公式に認められている。貴族同士が揉める場合には、実力で物事を決するようだ。私クルーガは女男爵として、今回の犯人に対して決闘を求めたい。

 法務卿様、貴族法に基づくなら、それは認められるのでしょうか?」


「おお、勿論じゃ。貴族の本質は武であるからのう、最後の白黒は決闘というのが最終手段じゃ」


「めっ、名門であるグレイ伯爵家が成り上がりの女風情の決闘など受けては、家名に傷が付こうというものです。お断わりですな」


「そ、そうですじゃ。貴族といっても、なったばかりの平民上がりではないか!名門阿呆家の名折れになってしまうようなのは、おお、お断わりですなっ」


「あら、名門でいらしたのね。それにしては嫡男が平民の婦女子を相手にしないといけないなんて。名門のご嫡男なら相応しいご令嬢とお付き合いされるべきではなくて?

 それとも、ご令嬢方から嫌われるから平民相手をしないといけないのでしょうかしら?」


「な、何を言うか!公爵家の令嬢ともあろう身分で、山伏風情に嫁いでおいて!」


「うふふっ、これでリューシャ・イルマータが決闘を申し入れる名目が立ちましたわね。

 法務卿様、イルマータ公爵家は夫与楽様をただ一人の介添人として、グレイ伯爵家と阿呆伯爵家に決闘を申し入れます。


 夫を侮辱されたのですもの、本来ならこの場で伯爵風情など手討ちにしても貴族法では問題ありませんわ。

 でも、今回の件ではそれはできませんの。しっかりと処断しておかない限り魔法師を志す女の子がいなくなってしまう。

 伯爵家にはケジメを付けて頂きます」


「ふむ、この宰相徳川の名において、その決闘を許可するものとする。

 なお、決闘を許可した以上は逃げる家は、お家断絶とすると心得よ!」


「な、なんとっ・・・」

「さ、宰相閣下!」


「そ、そうじゃ!倅は廃嫡にして、勘当にしますのじゃ。阿呆家とは無関係ですじゃ」


「そうか、廃嫡か。それもよかろう、しかし、決闘は阿呆家で許可したからのう。

 廃嫡にした元嫡男は貴族ではない故に平民として処罰しておくといたそう。元嫡男は奴隷として鉱山送りに致す」


「か、閣下・・・」


「それでは残るは、子爵が4家、男爵4家、騎士爵10家であるな。

 女男爵家と言っても3人だが、お主らの夫と正妻を入れれば5人か。決闘なら当人に加えて、介添え5人の6人での戦いになるがよいのか?」


「いえ、閣下。夫やリューシャ殿のお手を煩わすまでもありません。3人だけで十分です」


「いやお待ちください、クルーガ殿。その決闘には、このシェイラとレキュアも入れて欲しい。それで5人として頂けないだろうか?」


「何故ですの?」


「流石に教えていた子達が酷い目に遭っていたのは女として許せないわ!

 あの子達にはちゃんとした魔法師になって欲しかったのに・・・」


「そうね、シェイラの言うことは私も思うわ。クルーガ様、シオーヌ様、シード様、わたくし達も戦いの末にお加えくださいませ」


「お二方のお気持ちはわかりますが、ご主人のお許しを頂かなくてもよろしいのですか?」


「あの方なら分かってくれます。それは心配していませんわ」


「お二方の加勢を頂くなら、18家をまとめて相手にしても大丈夫だろうと思えますね。

 こちらこそ、宜しくお願いいます」


「ふむ、これで道筋は見えたな。これで良かろう」


 次回は決闘で決着だ!

 強力魔法でクズどもなんざ、微塵に砕け!

 魔女無双編、乞うご期待です。


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