表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/57

27.霊玉の行方

 ご愛読ありがとうございます。

 “相手を殺すと失格ですもの。それでは、わたし達は本気など出せません”

 なんと武芸大会で手加減していたことが発覚する上位入賞者達。

 それでは本気はどんなもの?

 ドラゴンを圧倒する程度でした・・・。


 軍務卿に挨拶が済むと軍事系伯爵家当主の元に挨拶に訪れるリューシャ一行である。


「ご無沙汰しております出雲閣下、昨日は余りお話できなくて申し訳ございません」


「いや、こちらこそお久しぶりです、姫様。

 いい結婚をしたのですね、おめでとうございます。

 それにしても強い奴がいたものです。すっかりノサレテしまいました。まるで前田教官にノサレタ気分」


「申し訳ありません閣下、あの一発がまともに入るとは・・・」

 気まずい思いで切り出したのは、妻の横にいた与楽である。


「与楽殿のあの一発は避けられませんでした。そもそも全く見えなかったし。

 ところであれだけ強いのならウチの追討軍に来ませんか?人手不足で困っているのですよね」


「・・・魔法というものがさっぱり使えないような私ではお役には立たないでしょう」


「えっ、そうなの??」

 竜殺しとそれを瞬殺する男の会話に密やかに聞き耳を立てていた、周囲の人間からも一瞬どよめきが生じた。


「ええ、私は行者ですので修行の結果呪術の心得はありますが、生来の素質に依存する魔法は全く使えません。魔石を使って派手な魔法を撃ちだすということは私にはできません」


「あの瞬間移動は魔法じゃないの?」


「あれは神通力です、神足通というものです。修行を積めば誰でもある程度は習得することも可能でしょう。後は坊主らしく、まじないの類くらいしか使えませんし」


「柳生さんは、アノ瞬間移動は真似できないと言っていたけれど」


「でも、似たようなことはできるのでしょう?忍者は似たことをやりますよ、山伏と忍者は似た修行をしますから」


「ふーん、そうなんだ・・・」


「それに出雲閣下。夫はしばらく公爵領にいていただかなくては困りますわ。

 弟の代わりに親戚筋が領地を好き勝手にしていますの。

 少し荒っぽい事をしてでも、領地経営を元に戻さないと。夫の武威なしに女手一つでは何もできませんわ。夫は私に必要な方ですの」


「そう言えば学校でもそんな事を。残念だけどなあ」


「ところで勿忘草様はお元気ですの?」


「うん、元気だよ。子供の世話があるから今日は来ていないけれどね。

 王宮の公式行事だと宮廷魔法師のレキュアとシェイラは、公務として参加義務があるから2人がヨメとして参加してる」


「そうでしたの。お2人には王宮で魔法の手ほどきをして頂いたこともありましたの。今は幸せそうでなによりです」


「魔法の手ほどきか、そういえば姫様は学生の時よりも随分強くなっているよね。昨日は凄かった、富士でオイラがしごいている連中よりも上じゃないかな?どうやったの?」


「4人の妻で切磋琢磨しているからですわ。夫の役に立ちたいから、妻も強くなりたいですもの」


 リューシャがふと与楽を見ると年下のシードが、夫の腕につかまって子猫のようにスリスリと甘えている。知り合いのいないパーティに退屈しているのだろう。


「ね、油断していると夫に構ってもらえませんもの。女として自分を磨いていないと、置いて行かれてしまいますわ」


「ふーん、ウチの2人は仲いいけれどな」


「あら、私達も仲は良いのですよ。姉妹に近い関係かもしれませんわね。間違いなく家族という一体感がありますもの。知り合いはいない、初めていく見知らぬ街へ旅暮らしをしていると、いつの間にか家族になったなという気がして来ますのよ」


「深窓のご令嬢が旅暮らしか。それで強くなったのかな。変わったね、姫様も」


「ええ、良い夫のおかげです」心底幸せそうな微笑を見せるリューシャ。周りにいる者まで彼女に魅力に引き込まれそうな良い笑顔だった。


 この日、リューシャ一行は王宮に宿泊。彼女は今や王の姪にして公爵家の当主なのである。

 翌日には与楽と3人の妻達は富士の貴志の演習に臨時参加。リューシャは王宮で領地継承に関する打ち合わせを閣僚たちと。


 富士へは瞬間移動でサッと移動。

 で、肝心の演習内容はというと、まずはお約束とばかりにティラノとワイバーンの組み合わせから。


 4人だからとティラノとワイバーン各20匹を召喚されると、何故か与楽1人が40人に分身して、獲物の背後に瞬間移動。そして刀身4mの大太刀をザクリと魔物の延髄に突き立てた。

 延髄を断ち斬られた魔物達はそのまま消滅して行く。挙句に「あ、魔石は残らないんだ」などと与楽はブツブツ。

 それでも気を取り直して、「これくらいなら皆も大丈夫じゃないかな」と余裕で言ってのける。


「4人で40匹のつもりだったんだけれどなあ・・・。何故、人間が分裂するの??」とブツブツ呟く大将閣下。


「じゃ、次は私やる!」

 ハーイ、と言いたげに元気一杯に挙手したのは11才のシード。ピンクのツインテールである。

 本日は金糸の刺繍がある白いブラウスに、ピンクのベストに同色のフリフリのミニスカート。同じくピンクの手袋に同じ色のロングブーツ。白いモフモフのファー付きのマント。

 装甲らしいものは一切ない。

 手には魔法師らしく1m程の杖を持っている。

 最近、にわかに流行しつつある魔女っ子モードという奴らしい。

 魔法師というと黒や紺のローブを着けてというイメージを打破して、若い娘は可愛らしい魔法師を目指そうというムーブメントである。


 相手になるティラノとワイバーン各20匹を召喚されると、彼女は詠唱を始めた。

 “The person that I call for death.Give me power Athena!”

 すると、おもむろに魔法の杖が光り出す。杖を魔物達へ差し向けると、杖の先からいくつもの光の矢が放たれて片っ端から魔物に突き刺さる。

 一撃必殺である。1発の光弾が刺さると魔物は瞬時に消え去って行く。

 “テイッ”と可愛らしい声で気合を入れつつ杖が振るわれること5~6回で魔物は消滅していった。



「では、次は私だな」

 凛々しく申し出て来たのは14才のシオーヌ。

 如何にも女騎士らしい軽さと堅牢さをバランスさせたハーフプレート姿。

 青い装束の上に、白銀の甲冑は、彼女の銀の髪に合わせたのであろう。

 一見すると優しそうな顔付き、長い髪はポニーテールにまとめられている。

 手には両手剣を構えており、楯は装備していない。


 “北風のボレアースよ、疾く来たれかし。古の神話に習い、かの魔物どもの生命を略奪されたし”詠唱しつつ剣で天を断ち斬る。

 すると、俄かに突風が吹き荒れ、巨大な竜巻が吹き上がってくる。

 40匹ほどの巨獣達はあっという間に巻き上げられて、空中でバラバラに切り裂かれていく。

 やがて、大量の残骸と化して地上に降り注いでくる魔物の成れの果て。


「最後はわたしですね」

 歩く女神像とでもいうべき16才のクルーガ。

 白い装束の上には金の縁取りのある白銀のハーフプレート。そして鳥の翼をモチーフにした飾りをつけた兜を着けている。右手には槍、左手には円形の楯。

 その姿は正しく戦の女神もかくやという風情である。

 もっとも、彼女を見た周りの人間が女神みたいだと余りにも五月蠅いので、自棄になっての女神風のコスプレをやっているのに過ぎない。


 “こんな重い物を着けて戦闘するなんて馬鹿でしょう?”


 “馬鹿な者達は形で騙されるのだろう?形も大切ではないのか。主殿も私達が褒められると嬉しそうだしな”


 “しーちゃんみたいに魔女っ子モードの方が動きやすいし、それに可愛いのに・・・。もうっ”

 クルーガとシオーヌという妻同士だけが知る現実である。


 さて、彼女の戦闘は強烈だった。

 “天空のゼウスよ、不浄なる邪竜を撃ち落せ!大地のガイアよ、地の底に邪竜どもを封印せよかし”

 詠唱が済むや否や、空には雷が舞い踊りたちまちワイバーンを叩き落す。そして大地は裂けてティラノとワイバーンをまとめて地面の底深くに飲み込んでしまう。

 そして、全てが終わると、何もなかったかのように元の地面に戻って行く。


 彼女には甲冑も槍も楯も全く必要がなかった。



「なあ、武芸大会の時って手加減してた?」正2位大将閣下の御下問である。


「あの大会って、相手を殺すと失格ですもの。それでは、わたし達は本気など出せません」

 歩く女神像はサラリと言い放ってくれる。見てくれは良いけれど、性格は怖そうと密やかに思う貴志であった。


「ああ、そう。じゃあ、俺は何で殺されかかったんだろう?レキュアの治療が遅れてたら、俺はやばかったんじゃね?」と理不尽を感じる閣下。


「竜殺しが簡単に死ぬとは誰も思いません、それに模擬試合は武芸大会ではありません」


「そうなんだ・・・」釈然としない閣下であった。


 もっとも、理不尽はこの場に居合わせた多くの人間が感じていた。


 まず地方領主から選抜されて推薦されて来た、演習参加中の精鋭現役兵士達。

 自分達が半べそかきながら逃げ惑うような手に負えない凶悪な相手を、実に簡単に消し去って行く者達がいる。自分達は地元では精鋭部隊なのである。それをヒラヒラした服着た小娘が楽々と超えて行く。

 自分達の汗と涙と少々ちびったションベンは何だったのだろうか?

 この格差は一体なんだろうか?


 もっと泣き崩れたのは追討軍の隊士達だった。

 俺達って2年近く延々と扱かれてさ。やっとここまで来てさ。

 でも、そんなのを見事にすっ飛ばして行く子供達がいてさ。

 俺達って、いらないのじゃないのか・・・orz。


 小隊長達はただ血涙を流していた。

 持って生まれた物のアリやナシや。どうにもならない物が確かにある。

 チャンスに恵まれていないだけで、この子供達は普通にドラゴンを倒すだろう。自分らは小隊長と言われてみても、目の前の子供達には束になっても勝てる気がしないのだ。



「うんじゃ、次はコレを相手にしてみて」

 気を取り直した閣下が呼び出したのは50mほどのドラゴンであった。

 普通の人間ならこの段階で逃げ出すのが当然である。


 ところが与楽は咆哮を上げるドラゴンに恐れる気配も見せずに、分身を繰り出しドラゴンの眼前に転移する。

 文字通り、目の前に現れた同じ姿の2人の少年を見て一瞬驚くドラゴン。

 2人の与楽は刀身4mの大太刀をドラゴンの両目に突き立てる。


 突然の事に悲鳴を上げるドラゴン!


 しかし、次の瞬間には延髄と喉元にもそれぞれに分身が現れてズブリと巨刀が突き立てられている。

 延髄に刺突を食らった瞬間には全身をビクッと振るわせて、やがて痙攣しつつ倒れ込む。

 口から血と泡を吹きだしながら、ゴロリと横たわるドラゴン。


 そのドラゴンの胸を4人の分身が振るう巨刀は容赦なく切り裂いて行く!

 激しく血飛沫を撒き散らしてドラゴンは絶命して消えて行く・・・。


「嘘、魔法は使えないんじゃないの?なぜ刀でドラゴンが斬れるのさ!ドラゴンのウロコを切り裂く刀なんてあるはずないじゃん!」


 大将閣下は大慌てである。自分は反則級の召喚術で凶悪な従僕を従えての竜退治である。目の前の奴は巨大とはいえ刀でドラゴンを滅多刺しにして殺してしまった。


「ああ、これは天羽々あめのはばきりというご神刀です。なんでも古の世では首が八つある山ほどの巨蛇を切り裂いたとか。竜や蛇相手なら遠慮なくぶった切れるみたいですね。ドラゴンを斬ったのは初めてですけれど」


 全身に返り血を浴びて壮絶な様相のままで与楽は答えてきた。


「白狐の妖怪を退治に古い社を訪れたことがありましてね。悪さをするというので懲らしめたら、この刀を差し出して命乞いをして来まして。まあ、反省して悪さをしないということなので許してやったんですけれど」


「・・・!白狐を殺して不思議な魔石というか、珠を手に入れた?」


「いえ、妙に懐いて来たのでそのまま飼っています。今日はリューシャと一緒にいる筈ですよ」


「その白狐、俺にくれないか」


「これでも僧侶の端くれです。調伏して命乞いしてくるようなら封印するくらいで命までは取りません。珠とやらを得る為に殺すなら差し上げられません」


「正2位の命令だと言っても?」


「公爵家として正式にお断わりいたします、伯爵殿」


「王家に直談判すると言ったら?」


「まあ、閣下に決闘でも申し入れますかね。

 もう一度やりますか?今度はドラゴンを召喚してからでも構いませんよ。ドラゴンといっても2度目なら怖くない」


「テメー、上等じゃ・・・」


「いけません、お館様。

 公爵家ご当主の夫君に何をなさるのです、相手は王家に連なるお方です。王族への反逆罪に問われてしまいます!」


「なんでだ、シェイラ。出雲だって公爵家だろ?」


「公爵家相当の格式だというだけです。正規の公爵家ではありません。反逆を企てるのなら出雲の社はいつでもお取り潰しになってしまいます。

 陛下がこの方をリューシャ様の後ろ盾にすると決められた以上、この方々と無用な軋轢など作ってはいけません。


 王宮には力が必要。だから、強力なお館様を受け入れる。私とレキュアも受け入れられてきました。

 でも、王家からすれば所詮私達は他人です。そして、リューシャ様は陛下の姪にあたります。

 リューシャ様の弟君にはいずれ王女が降嫁されるでしょう。そうなればリューシャ様は陛下に感謝する。夫君と妻達の力はいつでも王家の為に振るわれることでしょう。

 お館様は以前リューシャ様の求愛を拒否している。それに側室腹とはいえ王女の求愛すら拒否している。ある意味で王宮からお館様は距離を感じてしまうのです。

 お館様は私とレキュアを側室に欲しがっても、王女と公女を拒否したのだから。

 王宮にすれば追討軍に匹敵しうる戦力を、より近い関係の人間に預けたいのです。そうしないと安心できないのです。

 ここで、この方々と軋轢を生じては出雲家の将来がありません。

 追討軍はひたすら強敵相手の危険な戦場に送られて使い減りさせられるだけでしょう」


「俺はあの王女かリューシャを娶るべきだったのか?」


「ええ、でもお館様は勿忘草様を選んだ。それが全てです。それでも私とレキュアはお館様のお傍におります、いつまでも」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 同時刻の王宮。


 リューシャは皇太后、皇后、王女らとティータイムを楽しんでいた。


「まあ、じゃあこの子が加護を与えると、リューちゃんみたいに魔法が上達するのね」


 皇后陛下は膝の上で丸くなっている毛玉をご機嫌でモフモフしている。

 “気持ちいい触り心地ねえ”

 “お婆様、私もモフモフしたいですう”

 “次は私の番よ”

 いいトシをした元女の子から正真正銘の女の子まで、モフモフの魅力は絶大であったようだ。


「それで、この子にどうすれば加護をもらえるのかしら?リューちゃん」


「この子は甘いものが好きみたいで、美味しい物を与えてあげて。そして暫くモフモフして仲良くなって懐かれるようになると大丈夫みたいです」


「あら、じゃあ私も魔法が使えるようになるのかしらねえ」


「お母様、昨日パーティの間この子の面倒をみていたメイドが急に魔法が使えるようになったと喜んでいたわ。きっと私達だって!」


「わ、わたし魔女っ娘王女になりたい!モフモフさせて!」


「それでは私は魔女っ娘公女ですか!?

 あっ、でも与楽さんは魔法を使えないままだから、ある程度素養が無いと駄目なのかもしれないわ」


「そういえばリュー姉様は元々魔法を使えたものね。私はどうだろう・・・。

 お願いシロちゃん、私を魔法使いにして頂だい♡」


「キューン」皇太后の膝で為すがままにされていた白狐。甘えたような声を出して、王女の元にヒョイとジャンプ。

 王女はそれを胸で受け止めて頬をスリスリ。白狐は気持ちよさそうに目を細める。


 結果、やんごとない方々は見事に魔法が使えるようになりました。

 もっとも、冷えた紅茶を温めるとか、コップの水を冷たくするとか、冷えたクッキーがいつでも焼き立てのアツアツで楽しめるようになったとか。

 便利といえば便利。微妙に残念と言えば残念。


 それではと元々生活に便利な魔法をソコソコ使えるメイドを連れて来て試してみたら、中々に強力な魔法が使えるようになって。

 本人は“やった、私って王宮務めの魔法師になったんですよね!”と大喜び。

 見事、彼女はメイドから王宮魔法師にジョブチェンジを果たした。

 給金5倍である。本格的な魔法師は貴重なのだ。


 これにはビックリの皇太后は慌てて自分の倅と本多、柳生を呼びつける。


「・・・ワシには懐かんのか」


「某も怖がられてしまいますな」


「まあ、魔法無しでも拙者は」


 おっさん達が来るとサッとリューシャの胸に逃げて、ハッシとしがみ付いて離れないキツネ様。


「そうではなくて、この子をどう扱うかです!

 どうやら与楽殿やあなた方には加護が与えられない。殿方にはそれほど懐かないということなのでしょう。

 それでも女子なら加護が与えられる可能性があります。

 素養がありそうな者を公爵家に短期研修名目で送り込むことにでもしましょうかね」


「そうなると早めに公爵家を綺麗にしないといけませんわ」


「されば十兵衛と隠密衆に始末させてしまいましょう。どうせ悪行の証拠ならいくらでも揃ってございます。リューシャ姫様と弟君を除いた親戚衆はこの際退場させます。その腰巾着も一緒に。流石に姫を60才過ぎの老人の妻にしろという馬鹿共は全部始末します。

 されど、公爵領を支える文官が必要になりますな」


「ありがとうございます、柳生様。お世話になりますわ。

 文官には学生時代の先輩方や同級生の優秀だった方を頂きたいのです、陛下」


「それは構わん、すきに持って行け。先代に仕えていた者の多くは既に解雇されておるのだろうが、集められる者は集めよ。現地の勝手がワカラン者だけでは面倒じゃろう」


「それと少し手勢を出しておきましょう。

 不意打ち、夜襲、毒殺、はぐれ者でもやる気になればやり方はいくらでもあり申す。姫を暗殺して弟君が残れば元の木阿弥でござる故」


「本多様のお気遣い、誠にありがとうございます。

 それと陛下。この際、弟の婚姻相手をご相談したいのですけれど・・・」


「マークの奴か、5才上の年上女房で良ければ娘をやるぞ?」


「あ、私リュー姉様の妹になりたい!マー君ならカワイイし、お嫁さんに行く、行く」

 大切だから2回言ったらしいお姫様。


「で、あるか。それで良い」


「お父様、マー君を王都に留学してもらうのはダメですか?」


「なんじゃ、早々に年下の夫を尻に引く気か?まあ、好きにせい」


 かくして、白狐の霊玉は貴志の手に渡ることも無く強力な魔法師を育てる為の役割を果たして行くことになる。

 公女や側室達と訓練できるのが女性だけに限定されたために通称“魔女っ娘の巣穴”いうあだ名を頂戴しつつ。

 公爵家に短期留学してやたらと強い側室達と訓練すると、魔法がやたらに上達するという伝説を残しながら。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 リューシャが閣僚達と公爵領の新官僚体制の打合せを行っている時に、富士演習場の司令官から王宮に急報が入る。


・与楽子爵が訓練にて、出雲閣下の召喚したドラゴンを神刀で斬殺。

・神刀を与楽子爵に与えたという白狐を出雲閣下が欲し、与楽子爵に提供するよう命令。

・与楽子爵はこれを拒否。出雲閣下と与楽子爵が一触即発の状態に。

・シェイラが出雲閣下を制止。



「両雄並び立たずかの」


「夫が陛下の御心を乱す真似をいたし、衷心よりお詫び申し上げます。かの白狐はやはり特殊なものだったようですね」


「出雲が欲しがるほどに貴重なものであったのだな。魔法を強くする白狐、魔法が使えぬものには神器を与える白狐か。稲荷神の化身かの?」


「元は人間に害をなす妖狐であったそうです。夫に調伏され霊力を封じられ、今に至っております」


「禍つ神が転じて福の神か?せいぜいキツネには王家の為に働いてもらおうかの。

 しかし、出雲はそなたの夫にやられて、まだ強くなりたいと願っているようだのう。

 いい刺激になったようじゃ。まあ、面白いことになりそうじゃ」

 王家の腹黒い部分が見え隠れして来ますが、この先は異民族の北方領を王家が乗っ取るようなお話になっていきます。勿論、お約束の旅の途中での冒険譚が入り混じって来ますけれど。鬼退治やら国定忠治の捕り物などなど。

 次回はその前に女魔法師の悲劇を少々・・・。


 ところで、話別のアクセス解析が見られるようになったのですが、第12話が一番人気でした。レキュアの愛情物語みなさん気に入って下さったのでしょうか。今回はシェイラが貴志を守るお話でもあるのですが、妻達の夫への愛情はこの小説の軸でもあります。

 与楽と妻の愛情物語は第29話をお待ちください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ