表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/57

26.武芸大会Ⅱ

 ご愛読ありがとうございます。

 武芸大会番外編にて、主人公2人の激突編。

 もう1人の主人公の来歴が明かされます。



 優勝者の表彰式に与楽の妻として元公爵令嬢リューシャもエスコートされて登場している。

 彼女自身、ベスト8まで進出してクルーガと対戦になった時点で棄権。クルーガに勝利を譲った形になっている。


 与楽という少年。

 なんとリューシャ、クルーガ、シオーヌ、シードという少女達を妻としていたのである。

 確かに野に埋もれていた才能を発掘するには成功したものの、なんとも波乱含みの展開となったのである。



 この与楽は赤子の頃に捨てられて良寛和尚に拾われて保護されて育つ。

 良寛没後に旅の行者慈雲に見出されて、以降は旅の空で修業しつつ育ったらしい。

 身分としては一応僧侶という扱いではあるが、特定の寺院に籍があるでもない野良法師とでもいうような存在である。


 旅の中で慈雲と共に妖怪退治や魔物退治をしていたが、慈雲の敗死により天涯孤独になる。

 それでも旅を続けていたのだが、この4年の間に旅の途上で魔物や盗賊に襲われているクルーガ、シオーヌ、シードといった少女達を助けて、命を救われた少女達はそのまま旅に同行するようになったという。

 この時代の仏教は宗派によっては妻帯を認めているので、特に女連れであることは問題にはならない。


 リューシャの場合も他の妻と似たり寄ったりの事情だが、出会いは半年ほど前のことになる。


 学校卒業後に公爵家に来ていた縁談話を彼女は拒否。そのままアテナ神殿に出家して巫女として暮らすようになった。その頃でも貴志にわずかな未練を持っていたのだ。


 北方には女神アテナを主宰神として信奉している地域があって、彼らは伴天連とは違って弾圧の対象にはされていない。あくまでアテナは八百万の神々の一柱として扱われている程度だ。王宮の世俗の権威に対しては従順なのである。


 彼女の奉職していた神殿のあった街が、ある日ワイバーンの群れの襲撃に遭ってしまった。街から住民が攫われてしまって、慌てて戦闘可能な者が追跡を行った。

 多少なりとも戦闘魔法を行使できる彼女も当然従軍した。


 もっとも、森の中に入った所で逆に包囲されてしまって、絶体絶命の危機に陥ってしまう。何しろ相手はワイバーンなのだ。少々、腕に覚えのある程度のハンターや少数の騎士団程度では手に負えない。


 そこに突然と登場したのが少年と3人の少女達だ。彼らは30匹近くのワイバーンを苦も無く撃破していった。


 戦闘終了後に自らの命と街を救ってくれた褒賞に何か欲しい物はあるか?とリューシャに聞かれた与楽は悩まず彼女に嫁に来いと求めたという。


「褒賞か・・・。

 カネには困らないし、地位も欲しいとも思えないな。

 そうだね。

 褒賞をくれるというのなら、キミのこれからの人生を僕に捧げて欲しい。妻として共に来て欲しい。キミは美しい、そして街の為に死を賭して戦おうという気高い勇気もある。

 3人の妻達と同様にキミは妻になるにふさわしい女性だ。」


 流石にそれには難色を示したリューシャだったが、街に戻って与楽は神殿にワイバーン30匹分のギルドへの売却代金30億をポンと寄進。


「リューシャの結納代わりに受け取ってください。襲撃された街の再建にカネがいくらあっても足りないくらいでしょう?」


 怪我人多数、家屋の損壊も馬鹿にならないとあって、神官長はこれを受け入れた。


「リューシャよ。神殿を救ってくれた勇者殿に神殿の巫女が嫁ぐのはおかしいことではない。それに今目の前で苦しんでいる民に救済を与えられるのはこの資金でしかあるまい。

 貴女には彼に救われた恩があり、この街を救って貰った恩がある。

 貴女にできる恩返しとは妻となって、彼の御仁をお支える以外の何があるのだろうか?

 公爵家を出ている貴女に、この街の民を救えるのだろうか?」


 家の都合を無視して、自分の好きな男の幻想を求めて出家した彼女。

 公爵家とは縁の無い街の再建に実家から資金を引き出すのは無理だ。それを求めるのなら気の進まない婚姻を受けるしかないだろう。その相手は60才の老人だ。

 結局の所、彼女の自由になる生活などありはしないのだ。

 家に帰って気の進まぬ結婚をするか、神殿の勧めに従うか。

 それとも、ここから更に家出をするか。


 さらに、与楽の妻だという3人の少女達は治療魔法を器用に使うようで、街の怪我人たちを治療して介抱していた。

 女神のような美しい容姿の少女。

 銀髪で妖精のような可憐な少女。

 ピンクのツインテールのまだあどけなさの抜けていない可愛らしい少女。

 彼女らの活躍で、夫である与楽の評判が高くなっていたこともある。

 街の住民達にも巫女の嫁入りを祝福する空気が出来上がっていた。


 結局、これも運命と結婚を承諾したリューシャであった。

 与楽達と街の住民達は、褒賞はリューシャという雰囲気になってしまっていたのである。既にリューシャでも覆せない空気だった。


 彼女が出家して巫女になったといっても、その内に実家に帰って来るだろうとタカを括っていた公爵家では大騒ぎになった。


 何しろ、ある日突然に結婚したという手紙が公爵家に届いただけである。

 それも相手はどこの馬の骨ともわからぬ旅の山伏だという。幼い弟を傀儡にして実家で権勢を振るいだしていた叔父たちが激怒して、帰って来いと言い出したが彼女はそれをバッサリと無視。

 ムキになって実家から追跡兵まで送り出してきたけれど、転移術を使える与楽の前ではそれも空振りに終わる。


 その日の気分で自由気儘な旅暮らし。

 依頼されて妖怪退治や魔物退治、たまに加持祈祷。

 根無し草の生活ではあるが庶民達からの依頼で悪者退治の旅というのは、やがてリューシャにも楽しくなって行った。


 ワイバーンやティラノ、トリケラ辺りを簡単に始末できる一行にとって、カネに不自由することは無い。高位のハンターよりも余程稼げる。

 旅暮らしの中で危ない場面など遭遇したことが無い。彼は大量のティラノやトリケラの群れに出くわすと、“ひと財産できるな!今度はお前達に何を買ってやろうか?”と喜ぶくらいだ。公爵家の元令嬢のリューシャが驚く程度にカネ回りは良い。


 食うためのカネには困らない彼らは、困っている庶民から頼られると気軽に依頼に応じる。少々の危険を危険だと思わない程には強いパーティでもあるのだ。

 弱き者を助ける山伏という与楽の姿は、神殿で巫女をやっていたリューシャには好ましく思えたというのもある。

 要するに時間が経つにつれて、リューシャは与楽にホレて行ったのである。


 婚姻を受け入れ、神殿で挙式して。

 当然、夫婦の契りを結んで。最初はおっかなびっくりで痛いだけ。それでも女に慣れている夫に愛されていると彼女も次第に幸せ気分に溺れるようになっている。

 何度も肌を合わせるうちには情も沸くということでもある。


 他の3人の妻達にしても、夫にベタ惚れ。盛んにリューシャにのろけ話を聞かせて来る。自分達の窮地を颯爽と救ってくれた与楽を英雄視して脚色交えて(?)いかに素晴らしい夫であるかリューシャに自慢しては夫に甘えるのである。妻に甘えられると優しくナデナデ、スリスリ、ハムハムと応じる夫。


 目の前でのろけられるとなんとなく出遅れて敗けの気がする。そうなるとリューシャもムキになって夫にすり寄る。そうこうするうちに、いつしか彼女の貴志への想いは消えていた。

 彼女達の話と自分の救われた状況を考えると勇者に救われて妻になった姫君という、よくある絵本の話のヒロインになったような気分になってしまうのである。



 やがて実家の対応が面倒になったリューシャ。与楽の名を上げるのに絶好の舞台として武芸大会参加に踏み切ったのだ。

 優勝すればどこの馬の骨呼ばわりされないだろうと。


 女房たちが総出で出場したのは、敵がどんな技をつかうのか全く分からない大会なので、できるだけ強敵の手の内を測ろうとしたものだった。


 出場者の中でワイバーンやティラノ、トリケラ辺りを一蹴できるのは魔法学校の生徒と少数のAランクハンターくらいのもので、他は大した実力者はいなかった。

 結果的には上位入賞者を与楽一家で独占する形になっている。

 在野の戦力発掘なので現役軍人の参加は不許可だったのである。


 リューシャにとって予想外だったのは、夫がアノ貴志を瞬殺してのけたことだった。

 自分の夫が強いということは彼女にも十分に理解できている。それでも学校在学中に見た魔法の授業における貴志の実力からすると、夫では分が悪いだろうと彼女は考えていたのだ。

 夫は魔法師ではない。本人は神通力だと言うが、瞬間移動系の術と千里眼の術。それと怨霊や妖怪を鎮める修験道の技らしい呪術的なまじないを使うくらいだ。

 大量に強力な従魔を召喚できて、派手な攻撃魔法を放つ貴志相手では分が悪いだろうと思っていた。


 与楽にとって相性が良いというのだろうか、魔法抜きの武芸だけでは慶次郎にタコ殴りにされる貴志である。

 いつもの“急々如律令”を貴志が唱え終える前に、与楽と貴志の勝負は終わってしまったのである。




 柳生但馬が審判として、“はじめ”の号令をかける。


 次の瞬間には与楽は貴志の後方にいて、手にした錫杖が貴志の後頭部に叩き込まれていた。


 兜は吹き飛び、そのまま後頭部から血を撒き散らしながら、白目を剥いて失神する貴志。


「へっ?」と驚く顔をしたのは与楽。


 但馬も観衆もそろって絶句。


 凍り付く時間の中で、動いたのはレキュアとシェイラだけだった。

 慌ててすっ飛んできた2人。

 レキュアはスグに治療魔法を貴志に発動させて、シェイラは貴志をかばって与楽を威嚇する。


「あの・・・」と但馬の目を見る与楽だが、王家指南役は絶句して凍り付いたままだ。


「怪我の方は大丈夫そうかなあ・・・?」と気まずそうにオズオズとレキュアに尋ねる与楽。


「多分、大丈夫。死んでも生き返る筈だから」あっさりとトンデモナイ事を口走るレキュア。


 予想の斜め上の返答に絶句する与楽「ナニソレ・・・」


 再び沈黙は支配する闘技場。


 やがて、「うーっ、痛い。慶次郎教官にコテンパンにやられた時みたいだ」と涙目で起き出す貴志。


「あなた、傷は治しましたがご気分は如何ですか?まだ痛い場所はありますか」レキュアは必死である。彼女の夫は彼女の胸に抱かれている。


「頭の中がグルングルン回っている感じ、気持ち悪い・・・。

 ああ、完璧に敗けたなあ。召喚する以前に負けるとは思わなかったなあ・・・」


 年上の女房にお嬢様抱っこされている子供だが、正2位の魔物退治の総責任者である。

 一国を挙げての武芸大会の優勝者が15才の子供で、その挑戦を受けて立った最強の存在が13才だからこの国はどうなっているのか。


 漸くと正気を取り戻した柳生但馬。すまし顔で宣言する。

「勝負あり。勝者与楽!」


 会場もようやくと騒然として来る。

 ドラゴンを身近で見られて、運が良ければ伝説のドラゴンブレスが拝めるのかと期待してみれば、タダの錫杖で一撃入れて終わり。


 “違う、これじゃあない!”という声や、まさかの竜殺しの敗北という結末に呆気にとられる者やら。


 “これでいいのか?”と深刻に悩んでいるのは与楽。噂の竜殺しにしては実に呆気ない。


 “なんでこうなるの?”と悩んでいるのは軍事筋の連中。頼りにしている竜殺しがこれでは困るのである。


 “何でこんな奴がいるのだ!”と大声で叫びたいのが柳生但馬。一瞬の内に距離を詰める術なら新陰流にもあるが、それと与楽の披露した技とは異質なものだ。


 “新しい玩具が出来た!”と喜ぶ慶次郎。武芸はからっきしの貴志と違って、錫杖を使う山伏の少年の技は立派に武芸である。


 かつて振られた男にあっさりを勝った夫に、何か落ち着かないリューシャ。

 他の3人の妻達は大喜びだ。


 貴賓席のBOX席にいた出雲一家は一同絶句。まさかとしか言いようがない。



 同じく貴賓席で見ていたこの国の責任者は、目をつぶって顎に手を当てて何事か考え込んでしまった。


 やがて表彰式の準備が出来上がり、与楽と上位入賞の妻達が正装に着替えて登場して来る。妻としてリューシャも同行して来ている。


 ここで奏者役の役人が褒美を与える予定であったが、突如として目を見開いた王がおもむろに口を開いた。


「久しいのうリューシャよ。出家してしまったと聞いて心配しておったぞ。このような男と出会っておったとはのう。

 また、面白い男を見つけたものよ。


 リューシャよ、お主が只今よりイルマータ公爵家の当主じゃ。未だ幼い弟は25才になるまで家督の継承を見送るものとする。

 そして、与楽とやら。貴様には子爵位を与える。公爵家を支えて行け。

 3人の妻達にはそれぞれに名誉女男爵位を授けるものとする。

 公爵家の繁栄は我が国繁栄にもつながる大事である。心して務めよ!」


「御意、陛下の御心のままに。

 リューシャ・イルマータ、この非才の身の上ながら全力で務める事を宣誓いたします」


 山伏と3人の妻達は後ろで大人しく控えていた。

 彼らは貴族の振舞い方など知らないのである。

 親の顔を知らない旅暮らしの山伏である与楽。

 騎士爵家の娘である3人の妻達も一応は貴族扱いされる階級の末端には違いないが、本来お目見えが出来るような立場ではない。家を継ぐことなどない筈の身の上だ。

 この国のやんごとない方の前で、如何に振舞えばいいのかなど全く知りもしないのである。


 さて、王家としては貴志を瞬殺するような強力や奴は、是非手元においておきたかった。

 幸いにリューシャなら王家の親戚である。そこの婿扱いで入れておくなら都合が良い。

 王家の末端の末端ではあっても、一応安心できる。


 そもそも10才になるリューシャの弟では実際の所で領地経営が成り立っていないのである。後見人と称する親戚筋が出張って来てやりたい放題。公爵家には相当ガタが来ていた。

 リューシャが嫌った婚姻話も、嫌がらせ以外の何でもないような酷い話だったのである。


 そこにアノ竜殺しを瞬殺する男の武力を背景にして、如才ないリューシャに内政をやらせる。それなら現在いる寄生虫のごとき連中は一掃されるだろう。

 武力の背景のない少女ではゴミのごとき親戚筋は排除し難いとしても、最強レベルの男とその強力な妻達も一緒なら何とでもなりそうだ。


 野に隠れている才能を発掘したい。

 それに向けた武芸大会であったが、成果は上々だった。


 武芸の才能が無いらしいとは、慶次郎にタコ殴りされていたから割と知られていた貴志であったが、それでも今までは召喚術だけでなんとかなっていた。

 しかし、それが通用しない男がいた。貴志が本気でも勝てない奴がいる。

 これでは貴志も否応なく武芸の面でも強化せざるを得ないだろう。

 今日の試合が実戦だったら、貴志は死んでいておかしくないのだから。


 リューシャが出奔という話は王宮にも届いていて、その相手は3人の妻と共に全く危なげなく30匹のワイバーンを狩り上げたことと、割と困っている庶民の為に働いているらしいことは分かっていた。

 まるで昔の隠居したご老公が少しばかりの伴揃いで世直し旅でもしているかのようで、実は密やかに楽しそうだと思っている王族も少なくなかった。

 その男は予想以上に強かった。実にいい人材が出て来てくれたものだと思える。

 暫くは公爵領がどうなっていくのか、楽しみではある。


 リューシャ本人が想像以上に強力な戦闘力を発揮していたのが少し不思議ではあった。

 学生時代の実力とは異なるような次元の強さだ。旅暮らしが彼女を鍛えたのか、男の存在が彼女を強くしたのか。ライバルになる3人の妻達も強力な存在であったことでもある。


 いずれにせよ、王宮としては公爵家という名前の独立した強力な魔法師部隊を得た訳である。武芸大会を実施して大成功という所だろう。




 さて、翌日の昼。

 王宮では武芸大会優勝者祝賀パーティが開催されている。

 本来の主役は優勝者の与楽である。

 けれど、誰の目から見ても主役はリューシャ・イルマータである。いまや堂々たる公爵家当主の座に就いたのである。このパーティは実質上の公爵家当主就任祝いだ。

 もとより、彼女は北方の出自で金髪碧眼、超絶美形でスタイル抜群であった。学生時代に王都にいた頃に比べると、16才とは言え人妻になってぐっと色香を漂わせるようになっている。

 王宮での公式なパーティの場でも彼女は当たり前のごとく主役として振舞い、それを周囲も当たり前のことと受け止めてしまう。

 学生時代なら無理してそういう振舞いをしている部分も見受けられたが、今では自然とその場を支配するような力強さをも感じさせるようになった。


 より美しく、より強くなって王族の一員に戻って来た彼女を王族たちは歓迎した。

 やんごとない立場のばーちゃん、かーちゃん、年の近い娘。

 久しぶりの再会を大いに喜び、結婚を祝福される。


 そして、会場で目を引いているのは、彼女の近くにいた3人の少女達。

 まるでアテナ神殿の女神像が歩いているような錯覚をさせるような美しい茶髪の少女。

 銀色の髪を持つ妖精のごとき印象を与える優しそうな少女。

 そして、ピンク色の長い髪をツインテールにしている勝気そうな、しかしまだ幼さの抜けていない少女。

 いずれも豪華な衣装に身を包んで、会場の目を集めて楽しませている。


 もっとも、外見につられて不用意にチョッカイを掛ける者はいなかった。昨日の闘技場で彼女達にコテンパンにされた者達の印象はまだ新しい記憶だ。彼女達を怒らせると人生の終わりを迎える羽目になるかもしれない。

 この王宮には近年まで美しくても迂闊に手出しできなかった青と赤の魔女がいたのである。女の外見に騙される上級貴族はいない。

 それに竜殺しを瞬殺した彼女達の夫も怖い・・・。


 完全に主役に収まったリューシャに率いられて、王族や閣僚に挨拶をしていく美しくも強力な3人の娘達。

 その後ろから着慣れない貴族の衣装を取って付けたように身に着けて、ついて行く今回の本来の主役。

 さながらベテラン観光ガイドに引き連れられて王都観光するお上りさんそのものという風情。


 やがて本多忠勝の元にも挨拶に訪れる。その動きに合わせて周囲にいた軍事筋の連中も近寄って来る。


「ご無沙汰いたしておりますわ、本多様。

 改めて公爵家に就任いたしましたの。こらからなにかとお世話になることも多いかと存じます。夫と側室一同、お見知りおきくださいませ」


「姫様にはお久しゅうござる。

 公爵ご就任祝着至極にて候。

 また、ご婚儀の件、誠に目出度き儀にて候。遅ればせながらお祝い申し上げ候」


「まあ、本多様。

 そんなに形式ばらずに、気軽にお話頂いて構いませんわ。王族の末端に戻ったとはいっても今はパーティですもの」


「されば、姫。

 まこと強き男を見つけたものですな。昨日は驚かされましたぞ」


「ええ、素晴らしいお方に出会えましたの。我が夫の与楽ですわ」


「始めまして、与楽と申します。昨日、子爵に列せられました。軍務卿様に御意を得ましたこと光栄に存じます」


「王国軍筆頭、本多忠勝にござる。貴殿の戦振り昨日とくと拝見いたした。見事な武であるな。いずれ狩りなど共に致したいものでござる」


「それは楽しそうですね。こうして着慣れない服をきているよりも、山の中を駆けている方が落ち着きます」


「まあ、与楽様。こうした事にもなれてくださいませ。公爵家の夫ともなれば、王家の一員でしてよ」


「急にそんなことを言われてもなあ。リューシャも旅暮らしは楽しかったろ?」


「それはあなたとご一緒ならどこでも・・・。そうじゃありませんわ、もう立場が変わってしまいましたの」


「うん、わかっている。少しずつ慣れていくさ。

 軍務卿様、こちらは私の側室になります。クルーガ、シオーヌ、シードです」


 彼女達は黙ってお辞儀をするだけだった。貴族の末端に過ぎなかった彼女達には、本日の相手は雲の上の存在過ぎた。

 完全にビビってしまっていたのである。


「うむ、皆揃って見事な腕であったな。そなたたちにも期待しておる」

 与楽は近接戦闘無双で、遠距離戦闘や広域殲滅用のスキルはありません。

 貴志は逆に火力偏重主義で、対人近接戦闘ではただの人。

 だから、タイマンになると今回のような結果になってしまいます。

 では、貴志がドラゴンを使役した場合どうなるのか?

 それは次回のお話で!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ