第4話「初登校 そして時計」
色々あって翌日。家に帰ってから直ぐに眠った所為か、早くに起きられた。
ちなみに家の中は予想通りというかなんというか。全く前の家と内装どころか、食器の数や椅子の位置。冷蔵庫の中身から隠してあったAVの場所まで克明に再現されていた。
いや、姉ならばこれぐらいやるが。
「おはようございます」
「もう朝食出来てるから」
「あざーす」
昨日言われた通りに隣家にお邪魔している。正直、今すぐ縁を切りたいのだが、それも学校の場所を教えてもらうまでだ。それ以降は、絶対に関わらないと心に決めている。
「ごめんなさい。ついでにひーちゃんを起こしてきてくれないかしら」
「なんのついでなのか全くわからないけど。まだ2日目なのに遠慮ないっすね」
まあそれぐらいならいいかと2階へと上がっていく。確か”一”の部屋だったか。
「起きろ朝だぞー」
「ぅうん……」
容赦なく顔を叩いていく。栞も栞で容赦がなかった。しばらくやって反応がなければ無視しようかと思ったが、今日はむくりと起き上がり栞の方へと顔を向ける。
「き……」
「き?」
「着替えさせて」
「後、バストを20ぐらい大きくしてから出直せ」
起きたようなのでそのまま踵を返して階下へと降りる。机の上には既に朝食が用意されていた。どうやら今日は和食らしい。
「目玉焼き美味しいです」
「それはよかったわね」
「王様は見当たらないんですけど」
「あの子は委員会の仕事で朝早いのよ。あの子の寝顔を見たかったらもうちょっと早く来ないと」
「味噌汁はやっぱ赤味噌っすわ」
完全にお母さんの話はスルーしていた。それよりも豆腐とジャガイモというなんともいえない味噌汁の具材を食すことの方が大切である。明日以降は関わる気0なわけだし。
そんな感じで朝食を食べていると、のしのしと階段からゆったりとした音が聞こえてくる。
「うぅー」
唸っているし、起きているか寝ているかといえば完全に寝ている気がするが。どうやらひーちゃんが起きてきたらしい。
ただ、完全に落ちている瞼からも分かるとおり、起きてくるのもやっとだったらしく、椅子に座った段階で再び寝息を立ててしまう。
「ごちそうさまでした。早く学校の場所を教えてください今すぐ!!」
「うん。ついでなんだけど」
「ついで多いです。早く教えてください」
「この子も連れて行ってくれない」
「嫌です。早く教えてください」
ほらきたと言わんばかりに面倒ごとを押し付けられそうだった。こういうのは最初が肝心なのだ。ここで屈したら明日も押し付けてくるに決まってる。こういうのは最初が肝心なのだ。
「この子ね。普段から面倒だなんだいってマイペースに生きてる子なの。他人に言われたからって自分の意思は変えないって頑固さもある。その子があなたが起こしたら1発で起きたの。わかる?」
「わからないのは学校の場所と、目の前のババアの頭の中身だよ」
「……チィィィィィィィィ!!」
「すげえ舌打ちだな」
既に不満そうな顔を隠そうともしないお母さん。なにがなんでも娘の世話を押し付けたいという思惑がありありと浮いている。
「とにかく。俺はそういう面倒ごとはいいので早く教えてください。学校に遅れるから」
「…………」
少し考えたような顔をして。お母さんは寝ているのか起きているのかよくわからない娘の耳元でなにかを囁く。それを聞いた娘が端から見たらヤバイぐらいにビクビクしながら、すっと立ち上がり。
「……なんです、これ?」
「お似合いじゃない!! カメラカメラ」
「じゃねーよ!! 後、パシャるの止めて!!」
おもむろに椅子に座っている自分に抱きついてきた娘を一緒に写真で写すお母さん。どう考えても既成事実の作成中だった。どう考えても母親の指示ありきだが。
「いいじゃない。女の子に背中から抱かれて嬉しくない?」
「絶望的に胸がないので感動も糞もないよ。これなら背中を壁に擦り合わせるのとなんにも変わらないから。後! 首筋に生暖かい何かが垂れてるんだけど!!」
「……そういう趣味でもお母さん気にしないわ!!」
「てめえの娘の不始末ぐらいなんとかしろよぉ!!」
既に涎でベタベタになりつつある気持ち悪さを体感しながら、彼はこの日一番の魂の叫びを出していた。
「学校なんだけど。ここを真っ直ぐ行けばそれっぽい建物が見えてくるから」
「おい」
胸がないからかなんなのか。あまり重くもない娘を担がされて、ようやく手に入れた情報は呆気ない程に軽いものだった。
「その子は正面口あたりに放置してくれればいいから。じゃあよろしくね!!」
「マジか……マジか」
思わず2回も呟いてしまうような事態だった。出会って2日目の青春真っ盛りの男に娘を預けるとか。お母さんは家の中に入ってしまい出て来ないし、どうやら本当にこのまま行くしかないらしい。
「よいしょっと。いきなり起きて暴れないでよ」
「あい」
「絶対起きてるだろ、叩き落とすぞ」
既に若干キレているも、律儀にもそのまま学校へ向かってしまうあたり、彼の人となりが表れているようだった。
司令室。この部屋の主は1人、資料と睨めっこをしながらも、どう頑張っても事実は事実として受け入れなければと考え頭を抱えていた。
普段は役職柄、部下には弱みなどを見せることは決してないが、部屋に1人の時は別である。
「経歴などは別に問題ないんだけど。両親とかどうなってるのかしら」
戸籍の両親欄には我が国の首相の名前が書かれていた。もちろん、両者に血の繋がりがないことなどとっくに調べがついている。どころか、恐らく両者に面識はないし血縁関係になっていることすら想像にもしていないだろう。
こんなもの、調べる人間が調べれば直ぐにわかってしまうようなとんでもない爆弾である。偽造書類は偽造なのだが、これを彼が知ったらと思うと同情を禁じえない。
まあその頃には世間は首相の隠し子発覚などという世紀の大事件でもちきりになっているだろうが。
「この時期を選んだのも……嫌がらせよねえ」
現在、3月に入ったばかりのまだまだ肌が寒い季節。栞にとっては残り1ヵ月で高2に進級である。
帝都学園。街の西側に位置する幼稚園から高校までを一括でぶち込んだ帝都で唯一の教育機関である。西地区の殆どの面積を有する巨大な学園であることもさることながら、申請さえあれば学生以外でも校内の施設を使用可能である。
ゆえに、校舎だけを見ればその広さだが、施設だけに区切ると街のあらゆる場所に学園の施設が存在している。
「ちなみに。申請さえあればこの学園は誰であろうと施設や資金の貸し出しもしよう。ここまでで質問はあるかい?」
「ないっす」
学園について。正面玄関に娘を叩き落して。職員室への道は正面玄関にあったマップで簡単に見つかった。で、目の前にいるのが自分の担任らしいのだが。
「そうか。あぁ、君にまだこれを渡していなかったね。このタブレット端末がこの街での身分証になるから無くさないように。本来はしれ……いやババアか。あのババアが我が家で怒り心頭でね。私がこうやって君にこれを渡すのを任されたんだよ」
「うっす」
「君の境遇にはまあ同情出来ないところはない。幸い私は生活指導の教官も兼任しているから、人生に悩んだら相談に来るといい」
「うっす」
「……ふむ。緊張するのも無理はないが私のクラスはブッチぎりのクズばかりだ。君みたいな糞の役にも立たないゴミが入っても問題ない」
「うっす」
別に緊張しているわけではない。こういう場でこそ、長年培ったコミュ力を見せ付けるべきである。本来であれば、女の担任だしテンション上げで応対出来るところである。
ただ……
「えっと。姉ちゃんと姉妹だったりします」
「あぁ。ババアの妹で君の担任で、恐らく姉妹の中で君の姉を一番嫌いなのも私だ。次に会ったら首を捻り切ろうと思っているから、会ったら教えてくれ」
「……あっはい」
「ちなみに姉妹は私を含めて、5人いる」
「うっす」
衝撃的な事実がさらっと挙がった気がするが。いや、姉妹が12人いるとか言われても今更驚かないし、目の前の姉ちゃんより年上のお姉さんが自分になにかしら良い印象を持っていないのもわかる。
一番、なんとも言えないのがその左目である。
目の前の担任の左目に入っている場所に義眼が入っていた。確かに義眼をしている人なんて今まで見たことなかったのだが、いやハッキリ言うが。
(あれって時計だよね)
眼球のような時計が左の瞼にきっちりと納まっていた。まさか、幾らテンション上げたって『時計が目にあるなんて。時間が直ぐに分かっていいですね』とか『亡くなった恋人に会うために、目を犠牲にしたんですか?』なんて幾ら彼でも聞きようがない。
そんな彼の挙動不審な動きに気付いたのか、担任は自分の左目を指差してニッコリと微笑む。
「時間が直ぐにわかって便利だろう」
「あっ! ちょっと待っててください」
栞はゆっくりと歩きながら、職員室の窓を開ける。
「見えへんやん!! 鏡とか使わないと確認できないでしょ!!」
全くもってその通りだった。なんのジョークかわからないが全く笑えなかった。叫ぶだけ叫んで満足したのか、栞は笑顔を浮かべて元の場所へと戻る。
「お待たせしました」
「糞の弟分だということを差し引いても、多少なりとも君に興味が湧いたよ」
興味が湧いたと言われてから。どうにも目の前を歩く担任の機嫌が良い様な気がする。
「この学園はいわゆる競争社会になっている」
「はい?」
「始めに渡したパンフレットを読んでもらうとわかるけど。基本的にこの学園は自由だ。力があればなにをしても許される。”下”も100年前には競い合うから協調する社会なんて糞みたいな教育をしていたけど、ここは更に面白い」
『証拠がなければ犯罪じゃないっていうじゃない。この学園で役職なんてなんの意味もないから。強い奴が偉い。それだけよ』
「クラスだってそうさ。学力で1学年A~Dに分かれている。頭が良ければ上に上がれる。単純だろう」
「そうなんですか。でも俺は頭が良くないから難しいかな」
「そういう人間が上がる方法もある。暴力で担任をボコボコにして推薦をしてもらえばいい」
「それは……」
冗談ですよねと言おうとして口を閉ざした。その顔があまりにも自分の姉の恐ろしい顔に似ていたから。姉は一応、分類として分けるならば尊敬という感情を持ってはいるが、あの顔だけはどうやっても好きになれない。
そういう類の、してやったりの顔である。
「金で買収してもなんでもいい。この学園では強いものが強い。下での常識は全く役に立たないから覚えておくといい」
「わかりました」
「それと。君がこれから編入するD組だが。よく”Dead End”のDだとか、”Destroy”のDだとか言われてるけど全然違う。君はDの意味がわかるかい?」
「で、で、デカち――」
「”Die”つまり死ねのDさ。ようこそ、くそったれた教室へ」
「俺から特になにか言うことはありません。星野、ゆま、女優……以上です」
「あぁ、確かに異常だね。君の頭とか」
自己紹介になっていない。クラスメイトが全くその自己紹介ともいえないなにかに反応していないのは、別に彼が滑ったわけではないらしいが。全く彼に興味がないのか、クラスメイトの殆どが各々に別事をしている。
そもそも、担任が既に椅子に座って手持ちの文庫本を読んでいるのでなにもいえないのだが。
「君の席は……一番後ろの適当な席で」
「わかりました」
適当な席といっても空いている席は2つしかなかったので、その内の1つに座る。座ってわかったことだが、どうやらこの学園では黒板を使っての授業をやっているらしい。
今はどこでもPCでの授業ばかりなので驚いたのも1つだが。
(ノートや筆記用具を揃えなくちゃいけないのか。出費が……)
変なところでケチだった。文房具一式を揃えるのにどれだけの金が必要か考えていると、前の席に座っているクラスメイトが話しかけてきた。
「なんだお前。書くもんとか持ってないのかよ」
「PC授業だと思ってて」
「仕方ねーな。ルーズリーフと鉛筆、貸してやるよ」
「さんきゅ」
ルーズリーフはともかく。栞は鉛筆などは初めて見たのでしげしげと眺めてみる。タッチペンなどの先が丸いものは見たことがあるが、こういう古臭いものも新鮮なのかもしれない。
しかし、どうやら目の前に座っているクラスメイトは自分になにか聞きたいことがあるらしい。鉛筆を貸してくれたのは善意だろうが、本題は別にあると。
「なあ。自己紹介のあれ、どこまで本気なんだ?」
「国民的AV女優、星野ゆまのことか。あれならすべて本気だけど」
「国民的? 歌を歌ったり握手会をやったり。アイドル崩れをやって本業そっちのけの中途半端な女のなにに本気になるってんだよ」
「おい! それを言ったら戦争だろうが」
気付いたら目の前の男子に掴みかかっていた。確かにこいつの言っていることは事実ではあるが、好きな女を貶されたら誰だって怒るだろう。つまりそういうことなのだ。
「おいおい、うちの弟になにしてくれてんだよ」
「……双子か」
「おう。新入りが粋がってんなあ」
2人の間に入ったのは柄の悪そうな女だった。いや、目の前の男と瓜二つなところからも、恐らく双子なのだろう。純帝国人なのか、黒髪に自分と殆ど変わらないほどの背丈。顔は確かにそっくりだが、確かに雰囲気的には女の方は頭にリボンをつけている。
まあそれをとったら見分けなんて、制服ぐらいでしかつかないだろうが。
「戦争ならいつでも受けてやんぜ、オゥ!?」
「まあ待てよ姉貴。つまりよ、俺はこう言いたいのよ」
「なんだよ?」
「僕の方が星野ゆまを好きってことだよ」
「Hey!!」
「Yeah!!」
2人が上機嫌にハイタッチをする。今まで戦争言っていたのに、この態度である。そのままの勢いで栞と双子は揃って肩を組む。
「俺の名前は栞!! 気軽にジョニーって呼んでくれ」
「僕はマイケルでいいぜ!!」
「あたしはキミーだ、よろしくな!!」
「HAHAHAHA!! 足が臭そうな名前だな」
「っていうか、全員本当の名前じゃねーじゃねーっすか」
そんなツッコミを入れたのは栞の斜め前に座っていたひーちゃんだった。今朝玄関に放置してきたのだが、どうやら自力で教室まで上がってきたらしい。というよりも、栞も彼女がマトモに起きているのを見るのは初めてである。かなり眠そうな顔をしてはいるが。
「お前は……駄目子!!」
「そうそう。だめ……駄目子!? なんすっかそのあだ名」
「名は体を表すっていうしな。大体、そんな名前だろ」
「あーーーーーーまあそれでいいっすよ」
今更訂正するのは面倒だったのか、手をフリフリしながらそのまま机に突っ伏してしまう。明らかにあだ名にしても駄目ななにかだったが、本人が納得しているのでいいのだろう。
「ま、お前も学校でわかんないことがあったら僕や姉貴に聞けよ。遠慮はいらないぜ兄弟」
「秘密のパンチラポイントとかはあたしらの好感度を上げないと教えねーけどな」
「へへっ。全く、転入早々お節介な双子に絡まれちまったぜ」
類は友を呼ぶのか。栞の学園転入は特に問題なくことが始まった。
「弟。購買ってどこにあるんだ」
「なんだお前。昼飯は購買派かよ」
「いつもは自分で作るよ。今日はこっち来たばかりでなんの準備も出来なかったからさ」
「……まあそれはいいんだけど。背中のそれはなんだよ?」
「俺にも全くわからん」
購買の場所を聞こうと立ち上がったところで、のそのそとやってきた寄生生物に取り付かれた。全く、どういうことなのかわからない栞も困惑している。
「とにかく。飯食ったら校内の案内してやるよ。どうせ授業はもう終わりだしな」
「えっ!? 今日って半ドンなの?」
「半ドンって……下はどうかは知らないけど、うちは授業は午前までで午後からは自由だぜ。補習したかったら先生に言ってやってもいいし、部活やその他の活動やってもいいしな」
「あたしらはこのまま帰るけど」
「じゃあ俺も帰ろうかな」
初日にこれ以上頑張ってもしょうがないし、栞は急務でやらなくてはいけないことがあった。その為にも時間は1秒たりとも無駄には出来ない。
とりあえず背中でガッチリ自分を掴んでいる寄生虫を離そうと悪戦苦闘していると、教室のドアからいかにもお嬢様みたいな女が入ってきた。
お嬢様みたいというか……
「髪型が縦巻きロールの人ってまだいたんだ」
少なくともあんな目立つ髪形をしている人を栞は他に見たことがない。しかも、取り巻きっぽい人を2人ほど連れていらっしゃるし。
確かに美人だけど見た目からして裕福そうな家庭の人みたいだし。自分には関わらないだろうと思っていたが。
「あなたが栞さん?」
「そうですけど……」
まさかの自分に用事があったらしい。どこか見下されているような視線と高飛車な声に少しだけ圧倒されるも、自分に何の用だと身構える。
「少々お話がありますの。後で1階の空き教室まで着てくれるかしら」
「……えっ!? はい」
「では後ほど」
状況が理解できていなかった。一体、なにが起こったのか。それを聞こうにも既にお嬢様は教室から出て行ってしまっている。この不可解極まる状況だったが、持ち前の灰色の脳が既に1つの結論を導いていた。
「なるほど。そういうことか……」
「だな!! それでお前は幾らの壷を買うことにしたんだ?」
「そういうのじゃないよ!!」
そういうのではないらしい。それを聞いた弟は訝しげな顔をする。
「だったらなんだってんだよ」
「……水、水じゃないか!! パワースポット的な高いやつ」
「なるほど!! 後で僕たちにも飲ませてくれよ」
「そういうのでもないよ!!」
そういうのでもないらしい。全くもってわからないのか、双子は顔を見合わせてわからないといったジェスチャーをする。それを見た栞はやれやれとため息を1つした後に、口を開く。
「彼女は俺に一目惚れをしたんだよ。イケメンに生まれるのも困ったもんだね」
「……おまえさ。自分の顔、鏡で見たことある?」
「あるよ!! それとそれどういう意味!?」
「老け顔だって言ってるんだよ。なんか加齢臭? みたいな臭いもするし」
「顔が出てないからって上手くごまかしてたところを突きやがって!! こういう顔が好みの人だっているかもしれないだろ!!」
余程言われたくないことだったのか、栞が割りとマジで怒っていた。まあ老け顔というより少し20代後半漂う顔つきはしているのだろうが。
怒っている栞を尻目に、当の本人たちは、両サイドから栞と肩を組む。
「栞選手。今のお気持ちは?」
「えぇ、あの……カイエン乗ってて青山に土地買って、彼女もいるってやばいっすか? うわぁ頑張ろうビッグになろう」
「ま、お前が決めたんならあたしらがなにか言うことじゃないさ」
「ビッグになって来いよ」
「うん、行って来るよ!!」
栞は2人に背中を押されて行ってしまう。その姿をどこか親から離れていく子供を見るような目で見ていた2人は、目頭に浮かんだ涙を拭きながら声を張り上げる。
「行っちまったな」
「あぁ。あいつならきっとやり遂げてくれるよ」
「さて!! ここで祝勝会の準備をしないとな!!」
「おうよ!! 不幸のどん底に落ちてるあいつを励ます意味も込めてな!!」
「失敗するの前提っすか」
まあ駄目子も失敗するだろうと思っていたが、問題なのは自分の帰りを手伝ってくれるタクシー代わりの彼が無事なのかどうかなので。願わくばせめて傷は浅くあって欲しいと祈るしかなかった。
某カレー店に甘いカレー 1甘から5甘が出ていました 正直いって10辛食べるより5甘の方がきつかったです 食べる時は1甘から試しましょう