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初勝負

そして、昼休み。

僕達は榎口先輩に指定された修練所へと訪れた。先輩はまだ来てないようだ。

「全くもぉー、エグチくんったら呼び出しておいて遅刻なんて」

「先輩、エグチではなく、えのぐちですよ」

「あれ、そうだっけ?」

七功先輩は妙に名前を間違える。仮に僕のは伸ばして読むから仕方ないとしても、一文字抜くのは中々難しいんじゃ?

「ところで七功先輩、榎口先輩とはお知り合いで?」

「うーん、わたしとは別のクラスだからね、境くんが同じクラスだから知ってると思うんだけど、昨日は知らないって言ったんだよね?」

「はい」

その腹いせにかどうかは分からないけど、何故先輩ではなく僕を呼んだのだろう。それが一番の謎だ。

「でも、境くんとシイちゃんどこに行ったんだろ」

この事を先輩方に伝えようとした七功先輩だが、見つけられなかったらしい。別クラスの裏井先輩ならともかく、同じクラスの表方先輩も見つからなかったそうだ。

「携帯にも出ないし……ひょっとして、エグチくんにやられたんじゃ!」

「それは無いでしょう」

「それはないですよ先輩」

「そんな訳ねぇだろ」

三人のツッコミが入る。

「あ、あはは……へ?」

七功先輩がきょとんとした。

え? 三人?

「待たせたな」

もう一つのツッコミは、入り口からこちらに歩いてきた榎口先輩のものだった。

「あー! ちょっとエグチくん! 境くんとシイちゃんをどこにやったの!」

「いやだからそれオレじゃねぇって」

冷静なツッコミ、榎口先輩は七功先輩をよく知っているようだ。

「てか、確か稲影一人だけ呼んだ筈なんだが、なんで七功がいるんだ?」

「エグチくんがハクロウくんを呼び出したりするからだよ!」

「榎口だっての」

珀露ですよ、先輩。

「……はぁ、まぁいいや。稲影ってのはお前だな?」

榎口先輩が僕を指差して訊いた。

「……はい」

何故だ? 僕の下駄箱に手紙を入れるような人がそんな質問を?

「とりあえず自己紹介だ。オレは榎口博二、二年だ」

「稲影、珀露です」

「手紙で大方分かってると思うが、今はっきりと言おう……オレと、勝負しろ」

「……」

やはり、戦いになるのか。

「ちょっとエグチくん! ハクロウくんは一年生でまだ実戦したことないんだよ!」

「んなこた分かってる。だからちょうどいい、ハンデとして、お前達は三人でかかってきていいぜ」

そう言った榎口先輩の表情には余裕が見えた。おそらく七功先輩よりも強くて、一年生の僕と緋鳴がまとめて来ても勝てる見込みがあるんだろう。

「むぅー、それでいいんだね?」

ふくれっ面になりながら七功先輩が聞き返す。

「負けやしねぇよ」

榎口先輩はあっさりと返した。

「言ったねエグチくん! その言葉、絶対に後悔させてあげるからね! さぁ行くよハクロウくん! 緋鳴ちゃん!」

七功先輩により半場強引に、筐体の中へ入った。





「体現せよ、記すものを」

僕たちが武器を構えるのを見てから、榎口先輩はカードを取り出して唱えた。

カードが光に包まれて形を変え、先輩の武器へと姿を変えた。

先輩の手に握られていたのは、

「さぁ、どっからでもかかってきな」

先輩の身の丈ほどある、大きな斧だった。

その武器の大きさも去ることながら、実戦未経験の僕を含めた三人は榎口先輩との間合いを開けて構えていた。

「……どうするのよ、珀露」

隣に並ぶ緋鳴が小声で聞いてきた。

「……とりあえず、あちらの動きを見よう。このまま時間切れになってもいいし、榎口先輩が痺れを切らして来たら僕が盾になるから、緋鳴は隙をついて攻撃を……」

「行くよエグチくん!」

え……?

「ライトアロー!」

緋鳴に作戦を話している間に、痺れを切らしたのは七功先輩のほうだった。

光の矢を作り、榎口先輩へと放つ。

「効くかよ」

榎口先輩は斧を自分の前へ、斧に当たった矢が消滅。榎口先輩は無傷だ。

「……先に先輩に作戦を教えたほうが良かったみたいね」

「うん……」

まぁその作戦ももう使えないけど……

「仕方ないわね。あたしが前に出るから、珀露は七功先輩と後ろから援護して」

「分かった」

僕の武器は銃、近接であの斧には敵う訳ない。

「行くわよ!」

緋鳴が前へ跳ぶ。

「ファイヤーボール!」

火球を飛ばしつつ、間合いを詰める。

「甘え!」

榎口先輩が斧を一線、それだけで火球は消え去った。

「はぁ!」

緋鳴が薙刀で突く。先輩は斧を引き戻して前へ構えて盾にする。

「へぇ、なかなか粋が良い一年だな……けど」

斧を振り、後ろに下がり間合いを取った。

「やっぱり経験が無ぇな、まだ甘いぜ」

「珀露!」

緋鳴の声を合図に、僕は引き金を引いた。

僕の武器、六角形の銃には六種類の弾を射ち出す機能がある。今撃ったのはその内の一つ、特に特化したところの無い通常弾。この弾丸は、緋鳴達が使う魔法と同じエネルギーを使っているので弾切れがあり、射ち切った場合は少しの時間経過が必要になる。だから、考えて射たないといけない。

「うぉ!?」

予想外の攻撃に驚きながらも、榎口先輩は弾を避けた。

「うへぇ……表方みたいたな遠距離タイプか」

表方先輩の武器って遠距離型なんだ。

「やっぱり、お前を第一に倒した方が良さそうだな」

「!?」

僕を睨んだ榎口先輩は、緋鳴の横を抜けて僕に向かってきた。


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