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始まりの出会い

あれは僕がこの高校に入学したての頃。

田舎にあった中学からここに受験して、無事に合格。同じ中学から受けた2人も無事に合格し、3人で全寮制であるこの高校の寮へと引っ越した。

そして入学式。クラスを確認して……驚愕した。

知り合い2人と別のクラスになってしまったからだ。

隣り合う教室の前で別れ、僕は自分の席についた。

周りからはがやがやと話し声が聞こえる。全員一年生の筈だから初対面の人が多いだろう、僕みたいに知り合いと一緒に受験した人もいるだろうけど。

「はぁ……」

ため息を一つ。僕はいわゆる人見知りで、ああいう会話に入っていくのが苦手だ。別に話しかけてくれればそれに対して応答する。そのまま会話を続けることだって可能だ。ただ、会話に入っていくというのがどうも苦手なんだ。

入学式直後の担任がくる前、ほぼ初対面どうしの中での会話のチャンス、友達を作る大チャンスの中、僕は一人席について窓の外を見ていた。出席番号的に左側が窓なのが幸いだった。

ここは四階だから眺めが良い、校庭の向こう側、街の方までよく見える。

「ねぇねぇ」

誰かに呼ばれた。振り向くと、前の席の人が背もたれを前にしてこちらを向いていた。

「わたし赤星(あかほし)夏希(なつき)。よろしくね」

「は、はい」

赤星さん、出席番号一番の彼女は、二番の僕に話しかけてくれた。

僕も自己紹介をする。

「稲影珀露です」

「よろしくね、稲影くん」

「はい、こちらこそ」

それから少し、お互いの事を話した。

赤星さんはこの近くに家があるらしく、近いからという理由でこの学校を選んだらしい。

「稲影くんは?」

「僕は、まず都会に出てみたいってのが一つで、もう一つは課題、かな」

「あー、そういえばそんなのがあるんだっけ」

この学校には、他には無い特別な授業がある。

それを中学の時初めて聞いた印象は、面白そう、やってみたい、だった。

なんでもこの学校を選ぶ人は、この課題目当て、あるいは、家が近いからという二組に別れるらしい。

「わたしが後者で、稲影くんが前者だね」

「そうですね」

僕達は笑いあった。初対面の僕に対して、赤星さんは気さくに話しかけてくれた。

良かった。クラスで孤立はしなさそうだ。




担任が教室に入ってきて自己紹介をした後、番号順に生徒達が自己紹介。その後にクラス委員を決めた。

こうして決まったクラス委員が担任と入れ換わりに教壇に立ち、他の係を決めていった。一クラス25人の為、必ず何かの委員会に入るのが決まりごとで、僕は初めて聞く名前の係に入った。それで今日の内容は終わり、生徒達は放課後に突入した。

「稲影くんも寮だよね? 一緒に帰ろうよ」

赤星さんが誘ってくれたが、

「すいません。既に先客が、知り合いが隣のクラスに居るので」

「そっかー、じゃあ一緒に行ってもいいかな? 紹介してよ」

「はい。行きましょう」

僕を先頭に、教室の扉へ向かう。

扉を開けた、


「キミに決めたぁ!」


廊下から大きな声とビシッと指され、指が僕に向けられていた。

「は……はい?」

とりあえず、訳が分からない。教室の扉を開けた瞬間、見ず知らずの人に使命されるなんて。

「キミ、課題に興味は無いか?」

課題。僕はそれが目当てでこの学校に来たんだ。

「はい。ありますけど……」

「じゃあ問題無しだ! ぜひ俺のチームに入っていくれ!」

「はぁ……」

チームというのは、課題を行う際のまとまりのこと。全学年バラバラなので、部活みたいなものだ。

「あぁ、後、何かを記したりするのは得意か?」

何かを記したり? 課題の結果でもつけているのだろうか?

「得意では無いですが、人並みには出来ます」

というか何故僕は質問に淡々と答えているんだろう。

もうきっと2人は待っている筈。もしかしたらこの状況を見てるかもしれない。

「ふむ……まぁいっか、決めたって言っちまったし」

「いえ、あの……何がなにやら分からないのですが…」

「よし、確保」

はい?

「りょ〜か〜い」


瞬間、視界が真っ暗になった。


「!?」

何かを被せられたというのは分かった、あの人の仲間の仕業か。

「え、えぇ!?」

赤星さんの声が聞こえた。そして何故か僕の足が床から離れて体が横向きになった。

コレは……運ばれる!?

あ、あの! 急に何なんですか!?

声を出したが聞こえていないのか。聞かないフリなのか。おそらく後者だろうが返答は無く、僕はそのまま運ばれていった。




暗い視界の中、視覚が使えない分他の感覚―――具体的には触覚と聴覚が冴えた。

2人に抱えられて揺られながら何処かへ運ばれている。揺れの具合から階段を降りているのが分かった。その回数的に、今は一階か。

「よーし、到着」

僕を指さした男の人の声。目的地についたらしい。

ガラガラと扉が開く音、僕は再び運ばれる。

「どこに置くの?」

男の人とは異なる声、多分僕に袋を被せて捕まえた人だ。声を聞くに、女の人かもしれない。

「そこの椅子に座らせておこう」

「は〜い」

久々に床に足がついた。そして肩を上から押されて膝を曲げさせられ、その下にあった椅子か何かに座らされた。

「コレでよし、と」

「そういや、シイの奴どこ行った?」

「さっきまでは居たよね」

「せっかく適任者を連れてきたってのに、しゃあねぇ。探してくるから少しの間頼む」

「おっけ〜」

ガラガラと扉の音がし、また聞こえる。会話の内容的に誰かを探しに男の人が出ていった音だ。

「それにしても、別にいいよって言ったのにな。一人でなんとか出来るのに、境くんは心配性なんだから」

女の人が何やら呟いている。境くんとはさっきの男の人のことだろう。

その時、僕は気付いた。

頭上から光が見える。袋の口が上にあるのだ。それに手も動く、袋から出ることが可能だった。

僕は両手を上に上げて袋の口を掴んだ。

「うわぁ!?」

女の人の驚く声が聞こえたが構わずに僕は袋を下に下げた。座っている為に、腰までが袋から出た。

急に明るくなったので最初は少し眩しかったが、次第に目が感覚を取り戻し、辺りを見回す。

教室の半分ぐらいの大きさの部屋に、机や椅子や白板が置かれている。空き教室を利用した物置だろうか?

そして声が方向を見ると、そこには僕に袋を被せた女の人が机に座っていた。

「あ、あー……えーと……」

何やら慌てているみたいだ。

「あの……僕をどうするつもりなんですか?」

「え、えぇとね。わたし達のチームに入ってくれる人を探してて……それで、境くんがキミを選んだわけなんだけど……その……」

何やらもごもごと口ごもっている。

「ご……ごめんなさい!」

と思った矢先、両手をパンと合わせていきなり誤った。

「わたしのチームってね、どうしても必要な役割があるから、一人も入らないのは避けたかったの。でもその可能性があったからこうして無理やり拉致するしかなくて……だから、ごめんなさい!」

「はぁ……」

そういう理由だったのか……

「キミだって、こんな無理やりな勧誘するチームになんて入りたくないよね? わたしはやめようって言ったのに、境くんが…」

え? ちょっと待て……

「そういうわりには、ノリノリで袋被せましたよね? 了解、とも言いましたし」

「あ、あはは……」

図星みたいだ。両手を合わせたまま頭だけが落ち込んで雨乞いのような妙な姿になっている。

それにしても……この人、二年生なのだろう。この学校には二年生から制服着用の義務が無くなるから。私服の人が多い、この人もそんな一人だろう。

一年の時からこのチームにいて、三年生が抜けた今、あの男の人と男の人が探しに行った誰かとこの女の人だけなのかもしれない。課題自体は3人以上7人未満で行うから問題ないだろうけど、一人への負担は大きいに違いない。

「……」

いい機会なのかもしれない。課題は意欲的に行うつもり、つまりどこかのチームに入るのは決定事項だった。

なら、僕も課題がやれて、このチームも助かる。これは良いことづくめじゃないか。

「あの……」

妙な姿勢の女の人に声をかける。

「うん?」

頭が上がり、こちらを見た手はまだ合わせたままだ。

「僕でよろしければ、力になりますけど」

「え……?」

女の人は目を丸くした。

「具体的に何をするのか聞いていないので知りませんが、僕の出来る事でしたらお手伝いします」

「ほ、ホントに?」

「はい」

「じゃあ……チームに入ってくれるってこと?」

「役割次第では、そういうことになりますね」

「あ……ありがとう!」

僕の両手をギュッと握った。

「これで境くん達も助かるよ!」

「よろしくお願いします。僕は稲影珀露といいます」

「わたしは七功暦! よろしくね、ハクロウくん!」

……え?

「あの……ハクロウではなく、はくろ、なんですが」

「え? ハクロウくんでしょ? 分かってるよ〜」

「いえ……その……」




これが、僕と七功先輩との出会い。

そして、ハクロウと呼ばれ始めた時―――




―――と、そうじゃなかった。なぜ七功先輩のしゃべり方が変わったか、でしたね。

ですが、ここまで話せばもうすぐです。


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