ヒトリナナイロ七変化
気がついたら。僕達は空間の外に出ていた。
裏井先輩達に出来事を説明しようとしたら、
「まずは終了の礼だ」
と言ってチームを横一礼に並べられた。前には相手のチームアルファベット、僕の前には赤星さんがいた。
「以上で、課題を終了します」
審判の合図で互いに礼。その後は敵味方関係無く、互いの勇姿を称えあう。
「いや~珀露くん強いね、完敗だよ」
自然と一年生は一年生、二年生は二年生で集まった。
「そして横矢さん、外から見てたけど2人同時に倒しちゃうなんて」
「いえ、実家が道場で、昔から武道をしてただけですから」
「かったいな~横矢さん、ため口でいいのに」
「う……」
緋鳴は昔から道場で大人と話してきたので、どうも敬語が慣れている。親しくない人物にはつい敬語を使ってしまうんだ。
「緋鳴ちゃん、って呼んでいい? 友達になろうよ」
「……う、うん。いいわよ、よろしく、赤星さん」
「夏希でいいよ」
「それじゃあ、よろしく、夏希」
「うん♪」
緋鳴と赤星さんが友達になった。
僕もまたチームアルファベットの一年生男子、片方は僕が最初に戦った人で、もう片方は緋鳴と最初から戦っていた2人と友達になれた。
「という訳で~……珀露くん!」
急に、赤星さんが僕の両肩を掴んだ。
「は、はい!?」
「さっきの説明、してくれるんでしょ?」
さ、さっきってのは……僕の変化の事だよね。
「あ、あれは、その……」
あまり知られたくはないんだけど……話すって言っちゃったし……
「ちょ珀露、まさかアンタまた」
「う、うん……また黒だったけど」
「あぁ、そこはまぁセーフね」
一応、ね。
「さぁ! さぁさぁ!」
しかしこの状況で言い逃れられるほど僕は器用では無い。
なので、僕は赤星さん達に変化のことを話した。
「へぇ~、多重人格」
「あんまり、驚かないんだね?」
「そりゃあ実際に見たし、私のお兄ちゃんもそんな感じだから慣れてるから」
赤星さんのお兄さんって何者なんだろう。
「それに、まぁそこまで驚いたら悪いかなって思ってさ」
え……?
赤星さんの言葉に、男子達も頷いていた。
「多重人格だろうがなんだろうが、一つの個性、って事だもんね」
一つの個性……まさかそんな言われ方をされるとは思わなかった。
その時、向こうの二年生が赤星さん達を呼んだ。この後チームで反省会があるらしい。
向こうがあるのだから、僕達にもあるんだろう。
「うぃ~っす、お疲れ~」
そこへ表方先輩が手をひらひら振りながらやって来た。
「見てたぜ2人の戦い。こりゃ一年生でも上位に位置してんじゃねぇかな」
「そ、そんな事はないでしょう」
さすがに言い過ぎかと……
「いいや、シイがそこまで言うなら誇っても問題無いぜ」
後ろから裏井先輩の声が聞こえる。振り返ると先輩方が揃って並んでいた。
「とりあえず部屋に戻る。反省会と、七功の変化を記録するぞ」
えっと……空間の中って時間が分からなかったからな……
「時間が分からない場合は大まかに書いていいぞ。空間内ならよくある事だからな」
「あ、はい」
空間に入った時間から……十分くらい経ってから動き出して、戦い始めたから……これぐらいかな。
変化は黄色から青色……理由は、戦闘により、と。
「聞いたぞ、青七と黒い稲影で原石を倒したんだってな」
原石とは、赤星さんのことだろう。
「横矢は一年生2人に同時に戦って勝利……こりゃ俺達のが原石を掘り当てた感じだな」
「そ、そんな、自分なんて変わらないと強くないですよ。原石なんかじゃありません」
「いいや、お前は恐ろしい力を秘めてるよ。その力、制御出来れば学年一位も目じゃないぜ」
「……」
「しっかし、こうもまぁ個性ありまくりのメンバーが揃ったよな」
裏井先輩が皆の方を見た。僕も目を向けると、
「つう訳で、今回一番活躍しなかったのは榎口で決定な」
「おぅい! まだ何も話してないのに何でそうなるんだよ!?」
「だってそうだろ? 境太はリーダーを倒した。横矢は2人一辺に勝ったし、稲影と暦は原石に勝ったんだぜ、ただ二年生1人に勝っただけの榎口で決まりじゃん」
「で、でもよ! 七功と稲影は2人で1人だぜ?」
「暦や稲影はアンタと違って戦闘経験が少ないからいいんだよ。つか、アンタが経験有り過ぎるんだね」
「くっ、まさか戦闘経験が仇になるとは……」
「でもま、冷静に考えたら大半戦ったの青色だから、ある意味じゃ暦が一番かもね」
「えぇぇ!? 好きで変わったんじゃないのにー!?」
「じゃあ暦はあのままで勝てたの? 1人で、魔法を無効化出来るあの子に」
「うっ! うぅ……」
「あ、あはは……」
皆楽しそうに話していた。
実際には表方先輩が榎口先輩と七功先輩で遊んで緋鳴が横で苦笑してるだけだけど……本当に個性が違い過ぎる人達がああして仲良くお喋りをしている。
「……十人、十色」
ふと、僕は呟いた。
「どうした?」
「いえ、少し前から思っていたのですが……」
僕は自分なりの考えを話した。
すると裏井先輩は、腕を組み。
「それは、ちょっと違うんじゃねぇか」
七功先輩を見た。
「俺もな、七功を初めて見た時は似たようなの考えた事があったんだ。けどな、七功に幾つ人格があろうが、アイツは1人だ。七つの人格があるという一つの個性を持った。な」
「……」
七つの人格があるという一つの個性……いくら多重人格だとしても、それは一人の中で起きている事。七功先輩という一人の個性。
「それは、お前にも言える事だぜ」
そう、僕もまた多重人格者という個性を持った一人に過ぎないという事。人格が幾つあっても、個性は一つ、一人につき一色。
十人いたら、十色になる……
ふと、裏井先輩を見た。
チームのリーダーで、皆のまとめ役。リーダー気質の個性。
向こうで話している皆を見た。
表方先輩は皆をからかっているようでよく考えている……ようで実は自由奔放な人。風まかせな個性。
榎口先輩はよくからかわれる。けどそれでもわざと敵役になってくれる人。仲間思いな個性。
緋鳴は僕を追ってこのチームに入った。いつも僕を助けてくれて、自分をちゃんと持っている。これもまた個性に違いない。
そして―――七功先輩。
黄色のようにほんわかだったり、
赤色のように熱血だったり、
青色のようにクールだったり、
他にも色んな個性があるけど、それらになってしまうという。一つの個性。
1人で七色の個性、ヒトリナナイロ七変化する。虹色のような個性。
「ん?」
そちらを見ていた僕に、七功先輩が気づいた。
「ハクロウく~ん、ハクロウくんもこっちおいでよ」
手招きで呼ばれる。
「行こうぜ」
裏井先輩にノートを閉じられる。
「はい」
僕は席を立ち、七功先輩達のところへ向かった。
そして、一言、
「珀露ですってば」
変わった僕の変わった学園生活は、変わった個性の仲間と共に始まったばかり。
素直も元気も熱血も冷静も無口もおしゃべりも寡黙も饒舌も気分屋も。その一人の中にある以上、一つの個性になるのです。
これでこの物語は、一応の終わりを迎えました。過去に書かれていたもの通りに。ただ、まだまだ謎が多すぎますね、七人の内三人しか出ていませんし。
今は完結としますが、いずれ続きを書いていきたいと思います。
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それでは、




