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黒と青と赤(銀)

「俺が援護する。構わずに突っ込め」

「……ハクロウ? どうしたのその口調」

青七先輩は変化した僕を見て首を傾げた。そうだ、青七先輩は僕が多重人格者だって知らないんだ。

『後で説明しますので、今は課題を…』

「説明は後だ。今は前の戦いに集中しろ」

ちょ、黒泊露、先輩なんだから敬語で。

「……分かった」

気にした風もなく。青七先輩は両手の剣を構えた。

「なんだか2人の雰囲気が変わった気がするけど。私だって負けないよ!」

赤星さんは体制を立て直して両手のナイフを構えなおした。

僕達の変化に気づいているみたいだ。後で説明しないといけないな。

「……行くよ」

先輩が先手を取った。一足で間合いを詰め、両手に持つ剣を赤星さんへ振るう。

キン! ナイフで防がれるが、間を開けずに続けて攻撃を放った。

『す、凄い……』

今は黒拍露に体を貸している為、言葉には出なかったけど僕は思った。

青七先輩の動きは、僕はもちろん、黄七先輩や赤七先輩よりも出来上がっている。まるで戦い慣れているように両手の剣を振るっていた。

けど、それに対抗している赤星さんも凄い。同じ課題初心者とは思えなかった。

そんな2人の動きが凄すぎて、黒拍露も銃で狙えない。まるでこのままいつまでも続きそうな感じだが、経験故か若干青七先輩が押してきている。

と、思った瞬間、

「……青き水よ 今刃に集まりて その身を飛ばせ」

青七先輩が何か呟いた。

あの感じ……まさか。

「……水刃の波撃」

先輩が左右の剣を交差に振って空を切る。すると刃から青色の水の斬撃が飛び出した。

やはり、詠唱魔法! でもあれは……

「それは当たらないよ!」

赤星さんが手を伸ばしてナイフを斬撃に向けると、斬撃はその手前で消えてしまった。

「……?」

表情こそ変わらないが先輩は首を傾げて疑問を感じていた。

そうだ、青七先輩は赤星さんの秘密を知らない。早く伝えないと、魔法を無駄使いしてしまう。

『魔法は効かないんです! 武器で攻めてください!』

「魔法が効かない? なら俺が出来るのは一つだな」

『え? どういう意味……』

黒拍露は急に走り出した。今のは、先輩に伝えてくれって意味だったんだけど……

「チャンス到来!」

赤星さんが攻めに移った。秘密を知らない先輩が再び剣を構える中、

「シルバーブレッド!」

赤星さんのナイフから小さな弾丸が飛び出した。直径2センチほどの物で、詠唱ではない魔法みたいだ。

「……アクアウェーブ」

先輩も対抗して、片方の剣を振るって水の刃を飛ばした。

弾丸と刃がぶつかり、瞬間、刃がナイフに触れたように消えて弾丸だけが進んだ。あの弾丸にも、赤星さんのナイフと同じ能力があるのか。

弾丸は更に近づき、青七先輩に―――


カキンッ!


―――当たる寸前で、間に入った黒拍露が手に持った銃に当てて防いだ。

「ハクロウ……どうして?」

「魔法が効かない、銃弾が使えない俺にはこうすることしか出来ないだけだ」

「……魔法が効かない?」

『いえあの、ナイフで防がれなければ一応は効くんですけど……』

「なんだそういうことか。なら、俺に任せろ」

黒拍露は一歩前に出た。

いやだから、今のも先輩に伝えてほしかったんだけど……

「おい、拍露」

『え? な、なに?』

「さっきの呪文みたいなやつ。お前はないのか」

『う、うん。ないけど』

銃弾自体が魔力だから、詠唱魔法で弾切れを速めてはいけないと思って考えていなかった。

「そうか、ならいい。俺が勝手に造る」

え? それってどういう意味……

「少し時間を作ってくれ」

黒拍露はまた青七先輩に敬語を使わずに話しかけた。

「ん……何か策があるなら、手伝う」

そう言うと先輩は、両手の剣を交差に構えて赤星さんの元へ走り出した。

再び互いの刃が交錯し、やはり青七先輩が押し始める。

「むむ……やっぱり直接戦ったらこっちがフリか。だったら!」

大きく下がった赤星さんは、右手でゴーグルに触れた。すると起動音のようなものが聞こえて、ゴーグルのレンズが光りだした。

そこへ、青七先輩が剣を振り下ろす。

「見えた!」

赤星さんはそれを横に避けた。そこから先輩の連撃が放たれるも、全てを難なく回避してしまった。まるで、そこに攻撃が来ると見えているみたいだ。

「このゴーグルすっごい!」

どうやらあのゴーグルによる効果らしい。ただ、見えているからなのか先ほどから回避ばかりしていて攻撃に移る気配がない。

それに、

「ここからならどうだ」

「え?」

赤星さんの真後ろに黒拍露が来ているのにも気づいていなかった。

「黒に染まりし我が獲物 その身まで染めして 破壊の言葉を創れ」

今考えたばかりの詠唱魔法を唱えると、銃口の中心に黒い光の塊が現れて、

「ブラック・ブレイク」

引き金を引くと、黒い弾丸は正面の赤星さんの体を貫いて地面に落ちた。

刹那、弾丸の落ちた地面が爆発。一番近くにいた赤星さんが巻き込まれた。

「うわぁ!?」

爆破の衝撃をまともに受け、手からナイフを落とした赤星さんはそのまま仰向けに倒れた。

その体に青い光がまとわれる。後一撃の合図だった。

「うぅ……動けないよー」

赤星さんは悔しそうに僕を見た。

「いやー、稲影くんて強いんだね。最初は勝てるかもって思ってたけど、あれは演技だったんだね」

「違う。今の俺とさっきの俺は、違う俺だ」

ちょ、ややこしいこと言わないでよ。

「へ? どういうこと?」

「詳しくは元に戻った俺に聞け、普段の俺が答える」

しかも全部僕に押し付けた! 元々説明するつもりだったけど!

「うーん? よく分からないけど、後で聞けばいいんだね」

「あぁ、そうすれば全部話してくれる」

「……ハクロウ。早く終わらせないと」

そこへ青七先輩が声をかけた。

そう、こうして話している間にも赤星さんの体力は回復していて、光が消えたらまた戦う必要がある。

『後一発当てるんだ』

「だ、そうだ。悪く思わないでくれ」

黒拍露は赤星さんに銃口を向けた。

「別に思わないよ。でも、後でちゃんと説明してもらうからね。拍露くん」

ゴーグルを上げてにっこりと笑った赤星さんは、いつの間にか、僕を名前で呼んでいた。


そこに、黒拍露は引き金を引いた。


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