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知り合いは逸材

ゴーグルを外して見た顔は…

「あ、赤星さん……?」

「やっほー稲影くん。まさか最初の課題で会うとはね」

まさかの知り合い、それどころかクラスメイトの赤星さんだった。

ひらひらとナイフを持つ手を振ってこちらに挨拶してきたので、僕は頭を下げて返した。

そういえば、赤星さんもチームに入ったと話していたけど。まさかアルファベットだったなんて。

「課題って面白いよね。まるでゲームの中みたいで、戦っても怪我しないし、魔法も使えるし、最高だよね!」

赤星さんは嬉しそうに声あげた。家から近いから、という理由でこの高校を選んだはずだけど、とても課題も楽しんでいるみたいだ。

「それにね、なんだか私、逸材だって言われちゃったんだ」

逸材……浦井先輩の言っていたダイヤの原石って意味だろう。

じゃあ、赤星さんかなり強いんじゃ……今だって、二年生の七功先輩と互角以上に戦っていたんだから。

「そういえば稲影くん、あの時の言葉覚えてる?」

「あの時?」

「『手加減しませんよ』って」

あ……確かに、言った。

「だから稲影くん! 勝負しようよ!」

返事を聞く前に赤星さんはゴーグルをかけ、前へ走り出した。

「ハクロウくん!」

「くっ……」

心配する七功先輩の声を聞きながら僕はグリップを握って赤星さんに狙いを定め、引き金を引いた。

真っ直ぐに飛んでくる弾丸を赤星さんは軽々と避け、ナイフを刺すように突いてきた。慌てて身をひねるとギリギリ回避に成功。至近距離にまで近づいた赤星さんに銃口を向ける。

この距離なら、避けられないはず。

引き金を引いた。弾丸は赤星さんに迫る。

しかし、赤星さんは避ける動作をせず、左手のナイフを盾の代わりにか前へと出した。

次の瞬間、ナイフに触れる直前で弾丸は消えてしまった。

「えっ……」

おかしい、当たったならぶつかった音があっていい筈なのにそれが無くて、むしろナイフに当たる寸前で消えてしまった。

「スキあり!」

赤星さんは僕の懐に入ってナイフを突きつけた。

しまっ……!

「危ない!」

ナイフが僕の体に届くより早く、七功先輩の杖が間に差し込まれて直撃は間逃れた。

「えぇい!」

先輩は杖を振って赤星さんを遠ざけ、僕の隣に立った。

「大丈夫ハクロウくん!」

「は、はい。あいがとうございます」

赤星さんが強かったり、銃弾が消えたりと驚かされることばかりだったけど、今は考えている場合じゃない。

僕は改めて武器を構えた。

「あの子、ハクロウくんの知り合い?」

「はい、クラスメイトで、席が前後でもあります」

「そうなんだ。でも気をつけてハクロウくん、あの子、魔法が全然効かないんだよ」

魔法が効かない?

「魔法の類いを使うとね、ナイフを前に出しただけで消されちゃうんだ」

そんな……じゃあどうすればいいんだ。

動きが早くて直接攻撃が当たらないのに、弾丸などの魔法の類いは謎の力で消されてしまう。

弾丸に頼り過ぎている僕や、魔法に特化した七功先輩とは相性が最悪過ぎる。

でも、負けるわけにもいかない……幸いなのは、赤星さんは僕と同じ一年生だということだろう。まだ空間での操作を完璧に慣れている訳ではない筈。

きっとどこかに…

「スキあり!」

赤星さんはもう一度僕に狙いをつけてナイフを刺すように構えて突撃してきた。

僕は慌てて武器を振り下ろして対抗するが、あっさりと避けられて切り付けられ、すぐに間を広げた。

「左右からいくよ!」

「は、はい!」

七功先輩が左に動いたので僕は右に移動。赤星さんを挟む形になり、

「ライトアロー!」

先輩は光の矢、僕が弾丸を放つと、赤星さんは左右にナイフを向けて逆方向からくる攻撃を同時に消してしまった。

そういえば、赤星さんが魔法を消す時、必ずナイフを前に出している。確か七功先輩もそう言っていた。

それはつまり、ナイフを出したから消せた、とも考えられる。絶対に消せるならわざわざそんなことをふる必要は無い筈だから。

もしかして……

僕は弾丸を飛ばしつつ、赤星さんへと近づいた。

それに気づいた赤星さんはナイフで弾丸を消しながらこちらを向いて構える。

ナイフがギリギリ届かない距離まで近づいたら、更に一回引き金を引く。

ただし、今度は今までの通常弾ではなく、広範囲に広がる散弾を。

「うわ!? そんなのも出せるんだ!」

驚きながらも赤星さんは今まで同様ナイフを前に出して盾にする。

すると、ナイフと周囲の弾丸は消えたが、数センチ離れた物は消えずに地面や赤星さんの肩の端に当たった。

やっぱり、赤星さんのナイフが魔法を消すんだ。

よし、完璧に消せるわけじゃないと分かればまだ勝機はある。

でもその為に散弾ばかり使う訳にはいかない。通常弾以上に消費の早い散弾を使い続ければすぐに補給が必要になって、その間にナイフの餌食になってしまう。

せめて黒拍露なら攻撃を避けられるかもしれないけど、そうなるとまた別の問題が現れる。

銃には6つの銃口がり、それぞれから異なった銃弾を放てるのだけど、それはこの銃が僕が使っている白黒だった場合。以前黒は拍露になった時、銃は黒一色に染まった際に、白色だった散弾の銃口が埋まってしまった。つまり、散弾は使えないということだと思われる。

そもそも黒拍露が出てくるとも限らないし……どうすれば……

その時、

「ハクロウくん!」

七功先輩が僕を呼んだ。赤星さんを挟んだ向こう側の先輩を見ると、赤星さんもそちらを向いた。

「わたしが時間を稼ぐから、ハクロウ君は境くん達に連絡して!」

きっと僕達だけでは勝てないと判断したんだ。七功先輩は杖を横に構えて、

「光よ 形なきものよ 型を示しここに集まり 形を持ちて放たれよ!」

あれは詠唱魔法……でも、それは確か。

「シャインレーザー!」

杖の先端から、黄色の光が一直線に放たれた。

先輩、それじゃダメだ!

赤星さんはナイフの先を前に向け、光線を当てた。そうするとナイフに当たる寸前で光線は消えてしまう。

そのままナイフを動かさずに赤星さんは七功先輩の近くへ、光線の届かない懐に入ると、もう片方のナイフで切りつけた。

「きゃあ!」

後ろに押されて先輩は地面にしりもちをつき、赤星さんはそこに追い打ちをかけるようナイフを振り下ろす形になった。


あのままじゃ先輩が!




なんで、こんな時に限って出てきてくれないんだ!




黒拍露じゃなくてもいい!




どちらでもいいから、出てきてくれ!




トクン





        ドクン





「「あ……」」

僕と七功先輩、2人の声が重なった。

互いに自分とは違う異なった自分を持つ2人が。

今、同時に変化を始めた。

そして……




ガキン!

赤星さんのナイフが防がれた。

変化した七功先輩の、同じく変化した武器によって。

「あれ? 確か、杖だったような」

「……アレは、黄色のワタシの武器。ワタシの武器は、コレ」

あの独特な喋り方、そしてあの武器。

間違いない。青色の七功先輩だ。

青色の七功先輩、青七先輩の性格は寡黙でクール。必要最低限しか話さないので、7人の中で一番声を聞いた数の少ない先輩だ。

まるで黙々と任務を遂行するエージェントみたいな、そんな雰囲気を持つ青七先輩は、おそらく、今までの黄七先輩よりも課題向きだと思った。

青七先輩は自身の武器、二本の剣で赤星さんのナイフを防ぎ、素早く起き上がると両手の剣をふるった。

ギン! ガキン! ガキンガキン!!

「わ、わわ!」

赤星さんは押され気味に何とか防いでいるといった感じだ。

明らかに、青七先輩が優勢だった。

それに、

タン!

「たっ!?」

肩に弾丸を受けた赤星さんはこちらを見た。

「こっちも忘れてもらっては困る」

黒拍露に変化した僕が銃口を向けていた。


近接戦に特化した青七先輩と、能力が向上した黒拍露。

今からが、反撃の時だ。

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