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戦闘準備完了?

七功先輩を起こし、空間の外に出た僕達を3人の先輩が出迎えた。

「博二に優勢したみたいだな、凄いじゃないか珀露」

「そーそー、もう榎口より強いんじゃねぇの?」

「さ、さっきは手加減してたんだよ! 本気でやったらオレは負けないぜ!」

「はいはい」

「む、信じてないだろ?」

「はいはい」

「おぅい!」

表方先輩と榎口先輩が騒ぎだした為、僕は裏井先輩に訊ねる。

「もしかして、榎口先輩と戦ったのは……」

「あぁ、下駄箱に手紙を入れたのも俺だ。あの時はわざと忘れたフリをして、博二に珀露の相手を頼んだんだ」

「なぜわざわざ……」

「それはまぁ、珀露の実践訓練と、後、妙な力がないかの観察……案の定、ビンゴだったな」

「……」

そうだ。先輩方に僕の変化も見られたんだ。

「……すみません。隠すつもりは無かったのですが、タイミングが掴めなくて」

「別にいいさ、実は珀露もそうじゃないかと薄々感づいてたんだ」

「え?」

「七功の事を聞いた時一瞬間があったからな、ひょっとしたらと思ってな」

「……」

バレてたんだ……

「まぁいいさ、これで大体の戦略が分析出来たから万全の体勢で挑めるぞ」

「え?」

「皆、聞いてくれ」

裏井先輩が全員の視線を集める。

その瞬間、昼休み終了のチャイムが鳴った。

「昼休み終わったぞ?」

「すぐ終わる。俺達の課題の日付が決まった。明後日の放課後だ」

明後日の放課後。その日に僕と緋鳴の初めての課題が行われるのか。

「メンバーや作戦等は時間の都合で放課後に発表する。では、解散」

裏井先輩の声で僕達は行動に移った。

「なぁなぁ榎口、アタシと変わってくんない?」

「は? 何をだ?」

「そりゃ道すがらにでも」

さっきまで喧嘩していた表方先輩が榎口先輩と共にまず出ていった。

「行くぞ七功」

「うん。ハクロウくん、緋鳴ちゃん、また後でね」

裏井先輩が七功先輩を連れて行き、僕と緋鳴もその場を後にした。




そして放課後、僕はチームの部屋に訪れた。

僕が入ると、すでに全員が揃っていた。

「改めて自己紹介するぜ、オレは榎口博二。チームレインボーの新メンバーだ」今までメンバーだと知らなかった榎口先輩も含めて。

「さて、昼休みに話した通り俺達の課題は明後日に開かれることとなった。相手はチームアルファベット。またの名を『個人教育委員会』」

個人教育委員会?

「個人教育委員会とは、チームに入っていない一年生に課題を行わせる為に学校側が作ったチームだ。そのメンバーは基本的にどこかのチームに入るんだが、稀に卒業までそこに居続ける者もいる。武器は全てレンタルで、その形が英語のモチーフにしている事から、アルファベットというチーム名がつけられたんだ」

「つかさ境太。アタシ等毎回初戦アルファベットじゃね?」

「毎回と言っても去年一回だけだろ。それに彼等はメンバー制限が無いから人数が多い、その為にチームの大半は初戦にアルファベットと戦うんだ」

「へぇー」

「だが……学校は何を考えたんだろうな」

裏井先輩は大きくため息をついた。

「俺達の相手には、レンタル武器の上で一番強いとされる、Aを使うと言っていた」

「えー!」

七功先輩が驚きの声をあげ、

「お? なに暦? 今のダジャレ?」

「ち、違うよぅ! 普通に驚いただけだよ!」

わたわたと手を振って誤解を解いた。

「ただ、A以外はそこまで強い相手は用意しないと言っていたが。アルファベットにはダイヤの原石が眠ると言われているからな、油断は出来ない。そこで」

裏井先輩はホワイトボードに赤いペンを走らせた。

「Aには俺とシイ……と思ったんだが……」

「アタシは今回パス、榎口が快く変わってくれるって言ってくれたからさ」

表方先輩はひらひらと振った手を榎口先輩に向けた。

「オレには『面倒くさいから変わってくれ』と聞こえた気がしたんだが?」

「んな事ないよ、ちゃんとお願いしたって」

「……って言ってるんだが、どうする境太?」

「……分かってるさ」

裏井先輩は再びため息。

「という訳だから、Aは俺と博二でかかる。後の七功と横矢と珀露は、3人組で動いて出会った相手と戦ってくれ」

「りょ〜か〜い」

七功先輩がぴしっ、と敬礼、

「「はい、分かりました」」

僕と緋鳴が並んで頷いた。




という訳で、僕と緋鳴にとって初めての課題が行われる日が明日に迫った今日。すでに昼休みで、僕と緋鳴、七功先輩の3人でお昼ごはんを食べていた。

最初は七功係として僕と先輩だけだったが、ある日その事を緋鳴に言うと、『あたしも入ります!』その事を先輩に言うと、『たくさんで食べた方がおいしいよね〜』とあっさりと承諾され、以来この形が当たり前となった。

「いよいよ明日だね!」

話題は明日の課題の事に。

「頑張ろうね緋鳴ちゃん!ハクロウくん!」

「珀露です……ですが、正直言って自信がありません。いきなり最強と言われる武器を持つ人が相手だなんて」

「大丈夫だよ、ハクロウくん。それは境くんとエグチくんがどうにかしてくれるんだから」

「ですがそれって、残りの4人は私達が対処する。ということですよね?」

緋鳴の言う通り、先輩方2人がA1人に、チームは全員で5人なので、残る4人は僕達3人で挑まなければいけないということだ。

「だ、大丈夫だよ2人共!境くんはあまり強く無い人を揃えるって言ってたじゃん!」

「僕だってあまり強く無い人だと思います」

「あぅ」

「アルファベットにはダイヤの原石が眠っているかもしれない、油断はするな、とも言ってましたけど」

「あぅ……」

言い返せなくなった七功先輩は下を向いてしまった。

「むぅ〜、せめてエグチくんじゃなくてシイちゃんが境くんと一緒なら良かったのに」

裏井先輩と表方先輩が?

「お二人は強いのですか?」

「もっちろん! わたし2人に勝った事無いし、何より2人が組むとね、3年の先輩達でも苦戦するくらいなんだよ」

3年の先輩が苦戦。そんなに強いんだ……

「境くんとシイちゃんって幼なじみでね、昔から仲良くて、コンビネーションばっちしなんだって。でもシイちゃん気分屋だからさ、急にあんな事言って…」

言いながらご飯を口に運ぶ先輩、

「だーれが気分屋だって?」

「んぐ!?」

その後ろから現れた表方先輩がこつんと先輩を叩く。

「んぐむぐ!?」

「七功先輩!?」

僕は慌ててお茶を渡すと、先輩は一気に飲みほした。

「ぷはぁ〜、もぅシイちゃん! 急にびっくりしたじゃん!」

「あっはっは、ゴメンゴメン」

怒る七功先輩を見て表方先輩はけらけらと笑い、先輩の隣に座った。

「で? 何でアタシの話になってたわけ?」

「それはね…」

七功先輩は大まかに説明した。

「なるほどね。アタシと境太はホント、兄弟みたいに育った仲だからさ、お互いに一つ上の兄弟が居るけど、2人で居るのがホントに長かったな」

そう語った表方先輩は、懐かしむようにしみじみとした表情だった。

「……」

しかし、さっきから静かだった緋鳴を見ると、妙な表情だった。

緋鳴はどうも、表方先輩が苦手らしい。性格とか、雰囲気がダメだとか。

今も無言でお弁当を口に運んでいる。

「ふむ……」

表方先輩はちらりと、本の一瞬だが緋鳴を見ると、

「お互い、幼なじみ持ちは大変だよね」

僕の方を見てそう言った。

「はい?」

幼なじみとは、緋鳴の事?

「よくマンガとかであるじゃん? 幼なじみと昔から仲良すぎて、恋人の対象にはなりにくいやつ」

その言葉に、緋鳴がピクッと反応した気がした。

「でもさぁ、アタシと境太はそんなの遠の昔の話」

昔を表現したのか、両手を繋いで後ろに伸びをする。

「一緒に居るのが当たり前過ぎて、恋愛感情以前。あるいは未満。一緒に居ないのがおかしく思えてんの」

手を下ろして、体を直す。

「だからといって感情がゼロかと言えば、そんなわけ無い。思った気持ちを伝えられれば、きっとどちらにも届くんじゃねぇかな……お、ウマイ」

「あー!」

七功先輩の弁当箱から唐揚げを取って口に放り込んだ。

「せっかく楽しみにしてたのに!」

「油断した暦がワルいよ」

「もー! シイちゃんもー!」

ぷんぶんと怒る七功先輩をけらけらと笑う表方先輩。

その先輩を、緋鳴がじっと見ていた。

「……」

何を言うでもなく、ただじっと。


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