閑話2 2人の大将軍
「ようやく見つけましたよ」
かつてのクルガル帝国大将軍、グールヴァンはそう声を発した。
洞窟の中。声の向いている方向は暗すぎて、何があるか分からない。
「なんだ、貴様か。思っていたよりも遅かったな」
暗闇の深奥より、声が返って来る。
「ええ。誇り高き大将軍ともあろう者が、洞窟の中でコソコソしているとは思っていなかったものでして」
そう嘲り笑うグールヴァン。
「長きに渡る封印で力がすっかり衰えてしまってな。今まさに、それを取り戻している最中だ」
そういう声と同時に、果実を齧る音がした。
洞窟の光が当たった部分には、イチジクの実が転がっている。
「左様ですか。そう、アナタの復活には、あのお方も驚いていらっしゃいましたよ」
グールヴァンはそう言うと同時にイチジクの実を握って暗闇の中へと投げた。
何者かがそれを掴んだ音がする。
「あのお方とは?」
グールヴァンの口角が、裂けんばかりに持ち上がった。
「ワタクシ共の間であのお方と言えば、1人しかいないでしょう」
しばらくの間、静寂にイチジクを齧る音が響き続けた。
洞窟のアーチ構造に、音が反響する。
「……なぜエンリルがまだ生きている」
「アナタと同じですとも。”復活”というやつです」
再び、沈黙が広がった。
「貴様が仕組んだのか、グールヴァン」
「いいえ。残念ながら、別の者に先を越されてしまいました。最も、こうしてその計画に乗っかる事はできていますがね」
不気味に笑う。
話の相手が、どうやら立ち上がったらしい音がした。
「……そうか。生きているのか……あの小娘が……」
愉悦と憎悪が混ざった、低い声。
「ならば決着を着けられるな。300年前のあの日の決着を……!」
グールヴァンは身を翻し、洞窟の外を向いた。
「まぁ、ワタクシからお伝えする事はこれだけです。後は自分でお探しになる事だ」
暗闇の方向から足音がする。
「力づくでも聞き出す、と言えば」
せせら笑うグールヴァン。
「無理でしょう。その身体では」
シルクハットを脱ぎ、丁寧にお辞儀をする。
「せいぜい良き生涯を。クルガル帝国大将軍、ガラハッド殿……!」




