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#15 事変 ④

【現在の状況】


 反政府組織“クルガル民族戦線”が蜂起。属州各地で軍事行動を展開中。


 同時に陸軍の過激派がクーデターを起こし、首相官邸を占拠。

 かつての戦友に請われたジョフルとエンリルは、首相官邸で拘禁中の首相と魔術大臣を奪還しに向かう。

 

 一方、国王カリオス10世は突如として行方不明になっていた……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


10:30 首都ニューリア 首相官邸前



「うおおお!逃げろ、逃げろ!」


 背後から銃声がする中、俺は官邸へ向け全力で駆けていた。


 隣を飛ぶエンリルが俺を罵倒する。


「みっともないな!少しは戦う気概を見せたらどうだ!?」


「無理だろ!1人も殺せねぇんだよ!目的達成が優先だ!」


 官邸への入口の前に、銃を持った兵士の集団が控えてる。

 こちらへ多数の銃口が向けられた。


「邪魔だ、退けっ!烈風の咆哮(ヴェント・ルジトス)!」


 杖を振り、前方へ衝撃波を発する。


 隊列を組んだ兵士が一遍に吹き飛んだ。


「化け物が……!早く止めろぉ!」


 どこからか指揮官らしき声が聞こえた。


 全てを無視し、裏口らしい官邸の扉を蹴破りながら、中へ跳びこむ。


「追え!追え!」

 

 背後からの叫び声を確認しつつ、番兵らしき兵士を殴り倒した。

 先は細い廊下になっている。


「都合がいいな」


「ああ。多対一にはこういう地形が望ましい」


 少し先へ駆け進む。


「撃て!」


 背後から号令が聞こえた。防御結界を展開しながら振り返る。

 細い廊下に、多数の兵士が押し込められる状態になっていた。


猛襲せる雷霆エクスぺディ・フルメン!」


 杖の先から、何十本もの稲妻が兵士の列に向け放たれる。


 電撃にてられ、身体を痙攣させながら、1人、また1人と倒れゆく兵士たち。


「一網打尽ってやつだな」


 動けそうな者がいない事を確認し、前へ進んだ。


「反乱を起こしたのは、およそ1個中隊。まだまだ中にいやがるぞ」


 俺に向けて発射された銃弾をエンリルが止める。念動力みたいなものらしい。今度教えて貰おう。


 杖を振り、光弾で銃を持つ兵士を倒す。


「問題はまだ宰相が生きているかだな。私は人間がいる人数は分かるが、それが宰相か否かまでは分からんぞ」


「殺されててもおかしくないな。早く行こう」



       ◇



10:32 首相官邸 第一応接室



「報告ッ!10分前、検問を魔術将校らが突破!こちらへ向かっているものと思われます!」


 アルバロス王国首相、オリバー・フロイデンは、銃口を突きつけられながらも冷静であった。


「今なら君たちも赦されるやもしれん。どうだね、今のうちに投降してみては」


「黙れ、売国奴め!」


 銃口を頬に押し当てられ、やれやれという風に首を振るフロイデン。


 外から悲鳴が聞こえてきた。


「連中が来ます!()()は化け物だ!止められません!」


 どうやら救援がすぐそこまで来ているらしい。魔術大臣ヒューゴー・ガリスが安堵のため息を吐く。


 リーダーらしき将校は少し思案すると、部下から銃を受け取り、ガリスへと歩み寄った。


「最早これまでだ。しかし、なればせめて、祖国のために爪痕を残そう」


 銃口をガリスに突きつける。


「ひっ、やめろ、やめなさい!」


「黙れ!元はといえば、貴様らが陛下を惑わし、国を混乱させんと企んだのが根元であろう!」


 将校は唾を飛ばしながら叫んだ。


「貴様の様な佞臣を討ち取って初めて、この国は明日への一歩を踏み出せるのだ!」


 興奮しているらしく、芝居がかかった身ぶりをする。


「何が人権だ!何が議会だ!とどのつまり、陛下の王権を侵害せしめるのみではないか!」


 銃口がガリスの側頭部に食い込む。

 その瞬間、フロイデンが怒鳴った。


「待て!」


 覇気のある声である。動きを硬直させる将校。


「撃つなら、儂から撃て」


 自分自身を指し示す。


「その男は素晴らしく優秀な男だ。思想や主義主張に関わらず、その男を殺す事は国益に反する。だから、まず儂を殺せ」


「何をおっしゃるのです、閣下!」


 ガリスの悲痛な叫びが周囲に広がる。


「本気だとも。このオリバー・フロイデン、70年の生涯に渡り、常に全身全霊を以て祖国に奉仕してきた。最期とて同じ事よ」


 将校がフロイデンの方向へ振り向き、そちらへ向け銃を持ち直した。


「いいだろう……!貴様が国益に資する方法など、死ぬのみだ。望み通り誅殺してやる」


 銃口がフロイデンの額と相対した。


「撃ちたければ撃つがいい。だが忘れるな。そんな事をしようが、国も、社会も、変わりはせぬ。貴様らの浅ましい思想も、行動も、全てが無意味だ」


 毅然と将校の瞳を見つめる。


「私は愛国者である。私の行動は、一挙手一投足に至るまで、全てが祖国のためだ。我が生涯、我が思想、我が選択、全てただの一点も曇りはしない!」


 フロイデンは吼えた。

 気迫に押され、将校は引き金を引くのを一瞬躊躇する。


 その瞬間、応接室の扉が、弾ける様に破られた。

 同時に将校が泡を吹いて失神する。


「フロイデン!無事か!?助けに参ったぞ!」



       ◇



10:35 首相官邸 中



「なんだ、この反応は……!?」


 首相の居所を探しながら駆ける中、突然エンリルがそう呟いた。


「どうした、何か見つけたのか?」


 立ち止まって問う。


「この奥、廊下を右に曲がった先に、化け物がいる……!」


 エンリルの眉間に皺が寄っている。


「どうして今まで気づかなかったのだ。この強さの気配に……いや、むしろこのレベルの者なら消す事も容易いか。であれば何故、気配を隠すのを止めた……?」


 ぶつぶつと呟くエンリルを放っておき、俺は前へ歩みを進める事にした。


「いつまで腕組みしてるんだ。急がなきゃいけないんだぞ」


 一歩踏み出したところで、廊下の曲がった先で、1人の兵士が吹き飛ばされたのが確認できた。


「……なんだ?」


 俺が首を傾げると同時に、エンリルが叫んだ。


「分かった!」


「何をだよ」


「私が気配を読み取ったのではない。()()()()()()()()()のだ!相手もこちらに気づいている!なればその意味は……!」


 金属が衝突する音が廊下に響き渡る。


 一瞬の出来事だった。


 俺の視界に映ったのは、鎧、男、そして剣。

 

 装飾のなされた刃が、エンリルの展開する防御結界に食い込んでいる。


「意味は……っ、”警告”だ!」


 男は、長い金髪を流れる様に生やし、白を基調とした中世風の鎧を纏っていた。


 そこに刻まれるは、王家の紋章。


 まさかこいつは、いや、()()()()は……


「お初にお目にかかる、黒竜帝エンリル殿。いや、()()()初めてではないか?」


 エンリルの口角が上がるのが見てとれた。


「貴様、勇者カリオスか!?」


 

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