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第1章 ─ 脇役として転生する

この物語の正式な始まりです。気に入った点や気に入らなかった点など、お気軽にコメントしてください。

この世界は乙女ゲームの世界であり、将来ヒロインと攻略対象たちが救うことになる世界だ。

従って、特に敵キャラクターたちを巻き込んだ物語が自然に進行している。


私たちがいるのはブランシェット公国。この世界ではヨーロッパ風の君主制が支配しており、首都の宮殿は文字通りおとぎ話から抜け出したような場所だった。


その廊下を、輝く鎧を着た身長2メートルの男が、起きたばかりで欠伸をしながら歩いていた。

彼の髪は灰色だったが、まだ30代に入ったばかり。

無精ひげは身だしなみに気を遣わないことを示していた。

左目には火傷のような傷跡が目立つ。


この男の名はジェイソン・アーレン・レオーネ。公国最強の男として知られている。


ジェイソンはゲームルームにつながるドアを開けた。

そこには美しい双子の少女たちが積み木で遊んでいた。

金色の髪は床まで届くほど長かったが、二つのおさげに結われていた。

姉は赤い瞳としっかりとした眼差しの、第一王女アンネローゼ・アリソン・ルル・ブランシェット。

一方、妹で第二王女のローズマリー・ビアンカ・ルル・ブランシェットは猫のような青い瞳をしていた。


ローズマリーはジェイソンに抱きつきに走った。

「ジェイソン、来てくれたの!」

「ご機嫌よう、ローズマリー殿下」


同じトーンで姉にも挨拶すると、文句を言われた。

「ご機嫌よう、アンネローゼ殿下」

「ふん。遅いわよジェイソン、どこにいたの?」

「寝過ごしました」

「淑女との遊びの約束に遅れるなんて、どんな騎士なの?」

「夜遅くまで警備していた者です」

「じゃあそんなに遅くまで警備しなければいいじゃない」


物語が示す通り、この双子は将来ヒロインに対抗する恐ろしい悪役令嬢となり、戦争を引き起こすことになる。

その物語の始まりは、帰宅途中に魔物に襲われて死亡した彼女たちの両親、王と王妃の死だった。

ジェイソンも同行していたが、最強の戦士として唯一の生存者だった。


あれから数日が経ち、少女たちは生まれ変わったかのように泣き、涙で濡れた顔も次第に落ち着いていった。

両親の死後、彼女たちはジェイソンと奇妙な情緒的絆を形成した。同じ境遇だったからだ。


使用人が近づき、彼に何かささやいた。

「申し訳ありませんが、殿下。任務が入りました。国境付近で魔物が目撃されたとの報告です。他の騎士たちが臆病者ばかりなので、私が退治に行かなければなりません」

「でもまだ遊んでいないわ!」

「誠に申し訳ありません」

年下の王女が近づき、彼の手を握って言った。「気をつけてね?」 彼は「必ずそうします」と答えた。


◇◇◇


出口に向かう途中、ある男に出会った。

中背で少し猫背の、テレビ番組で見るような平均的な貴族の服装をした男。

長い茶髪、疲れた顔、くすんだ茶色の瞳、そして火をつけたくなるような小さなひげ。


「また美しい朝にお会いできて光栄です、レオーネ子爵」

「同様に、ベルクマン伯爵」


彼の名はハリー・アーレン・ベルクマン。伯爵で、この国で最も高い階級の一つだ。

公国は元々王国の一部だった公爵領だったが、ある事情で分離し、いくつかの小領主の支持を得て独自の国となった。

公爵家である王室が最高位であるため、この国には侯爵の称号は存在しない。

この不愉快な外見の男のように、最上位は伯爵止まりなのだ。


ジェイソンが進もうとすると、ベルクマン伯爵に止められた。

「どうやら最近、両親の死後から殿下たちと非常に親密になっているようだな」

「子供たちはただ私に情緒的に依存しているだけです。私は陛下たちの遺志に従い、騎士としての義務を果たしているまでです」

「ああ、そうだろうな。ははは」

ベルクマン伯爵は何かの理由で笑いながら去っていった。


◇◇◇


ゲーム通り、公国の主要な国境は王国と接している。

この事実は何十年にもわたって市民と政治家に深い不快感を与えてきた。

そして二つの派閥を生んだ。


一つは主に貴族からなる主戦派。彼らは元々の領土を取り戻し、王国に復讐することを望んでいる。

もう一つは反戦派で、民主主義を支持する派閥だ。彼らも王国への復讐という点では同じだが、官僚的手段を使うことを選ぶ。


戦争を支持する貴族たちは、愛国的であるという理由で流血を気にしない。一方、官僚的手段を選ぶ者たちは不必要な流血を避けたいと考えている。


ジェイソンはどちらの派閥にも属していない。どちらかに加わることを意味するからだ。彼は残りの人生を深く考えずに生きることを好んでいる。


国境に到着すると、渡された情報が詰まった書類を確認した。

「最近、農場や畑で作物や家畜が食い荒らされているとの報告がある。あなたに処理を任せる」

「自分たちの息子を送れないほど無能な連中め。少なくとも宮殿でベルクマンの死んだ魚のような顔を見なくて済むならましだ」


馬から降り、目標を探して森に入った。

しばらく歩くと、何かを齧っている大きな狼の群れを見つけた。

普通の狼より大きく、小さな角があった。


ジェイソンは素早く剣を抜き、バターを切るようにそれらを斬りつけた。

これは簡単かもしれないが、魔物は人間よりはるかに速く、敏捷で強い。しかしジェイソンは平均的な騎士よりもはるかに強かった。

彼は剣の達人と見なされていた。


「何か良いものがないか見てみよう」

魔物の狩りや駆除では、死ぬと塵になるものとならないものがいる。残ったものからは売れる部位を採取できる。

とても儲かる商売だ。


しかし価値あるものは何も見つからなかった。

すると遠くに何か変なものがあるのに気づいた。近づくと、転がった馬車があった。


持ち上げて価値あるものがないか調べていると、驚くべきものを発見した。

「子供か?」


馬車の下には、土と汚れにまみれた小さな少年がいた。

ジェイソンは生命徴候を確認するために近づいた。

「まだ脈はあるが、非常に弱っている」

「この辺りで馬車を見かけるのは珍しくないが、この地域は魔物や盗賊で知られている。だからおそらく逃げているか、帰宅途中だったのだろう」


彼は少年をどうするか考えていた。

「ここに置いていくことはできない。瀕死の少年を運任せにするほど心は黒くない」

「両親はどこにいるんだ?」


突然、ある考えが浮かんだ。

魔物が齧っていたものに近づき、嫌悪の表情を浮かべた。

おそらく彼の両親だった者たちは、すでに骨だけになっていた。


ため息をつき、少年を持ち上げた。

「誤解するな。私は善人ではない」


◇◇◇


ベルクマン伯爵は髪の毛が逆立つほど驚いていた。

「これは何だ!?」

「子供です。魔物狩りに行った場所で倒れているのを見つけました」

「正気か!?」

「いいえ」


ジェイソンが少年を連れて帰ると、宮殿全体が騒然となった。

「捨ててこい。王国のスパイかもしれん」

「まだ幼い少年です。自分の名前も知らないでしょうに、どうしてスパイだと言えるのですか?」

「わからんことだ。そして女性や子供を殺さないのが私の主義だ」

「ははは」


伯爵は笑い出し、ジェイソンは睨みつけた。

彼は怖くなり、態度を改めた。

「両親が亡くなったので、宮殿で働かせるために連れてきました。人手はいくらでも必要です」

「そういうことなら、公国にとって貴重な戦力になるかもしれん」


彼の骨ばった蒼白い指がジェイソンを指した。

「はっきりさせておくが、このガキはお前の責任だ。何かあったら、お前だけが責任を取ることになる」

「...承知しました」


ベルクマン伯爵は軽蔑の眼差しでジェイソンを見つめ、独り言のように呟いた。

「偉そうな騎士面をしているが、ただの偽善者め」


伯爵から離れると、使用人たちに少年を清潔にさせ、着替えさせた。


夜が更ける頃、少年は目を開け始めた。

ジェイソンは椅子で眠っており、小さな物音で目を覚ました。

少年は青い髪と青い瞳をしていた。この国では珍しい特徴だ。

ジェイソンは驚いたが、気に留めなかった。


椅子を引きずり寄せ、冷めたスープを少し与えた。

「いくつか質問があるから答えてほしい。まず第一に、私の言うことがわかるか?」


言語の壁は同じだったが、言葉が違う外国から来た可能性もあった。

少年は頷き、ジェイソンは続けた。

「よし。お前は誰だ?どこから来た?ここがどこか知っているか?」

少年は頭を掻き、首を横に振った。

「ここはブランシェット公国だ。どうやってここに来たか覚えているか?」

再び首を横に振った。


ジェイソンはため息をつき、少年はおそらく記憶喪失だと理解した。

(混乱しているようだ。それに子供がスパイになることなどできない。話すこともできないのだから)

(話せないとなると問題だ)


「正直に言うぞ、少年。お前の両親は亡くなった。お前だけが生き残った。お悔やみを申し上げる」

少年は黙っていた。両親の死を聞けば大きなトラウマになるはずだが、彼は平静だった。

何の表情も浮かべないのを見て、ジェイソンは言った。

「聞け、少年。お前に選択肢は二つある」

「親戚の元へ連れて行くか、宮殿で使用人として暮らすかだ」

「どちらを選ぶ?」


「何を言っているのかわかりません」

少年はついに口を開いた。ジェイソンは一つ問題が減ったと安堵した。

「何か思い出したか?」

「いいえ。どうやってここに来たのかもわかりません」

「そうか。それなら最初の選択肢は消えたな。今日からお前は平民の使用人としてここで働くことになる」

「ついて来い。試したいことがある」


二人は機密保持者が入ることを許された部屋に向かった。

魔法道具の倉庫だ。

ファンタジー世界なら当然あるものだ。

「狼たちがお前を食べなかった理由が気になる。あの大きさの馬車をひっくり返すのは大したことではないはずだ」

「ここに手を置け」

「これは何ですか?」

「魔力測定器だ。どれだけの魔力があるか教えてくれる」


魔法の道具は、大きな球体と手を置く場所がある工具箱のように見えた。

少年はゆっくりと手を置き、しばらくすると球体から強い青い光が放たれた。


魔力の測定は非常に簡単だ。

灰色なら魔力が低いかほとんどない。

赤なら大量の魔力を持っている。

しかし青なら、使用者は膨大な魔力を持っていることになる。


ジェイソンは驚嘆した。

(だから魔物たちは彼を食べなかったのか。放出される魔力が平均以上だから、怖がって避けたんだ)


「素晴らしい、少年。お前は立派な魔法使いになれる素質がある。だが魔法使いにはさせたくないので、これを試したい」


今度は訓練場に向かった。

木の剣を一本取り、少年にも一本渡した。

「全力で打ちかかって来い。防ぐから。ただ力加減を見たいだけだ」

少年は渋そうだったが、命令に従った。

不器用に攻撃を開始し、しばらくするとジェイソンは木の剣を取り上げた。


「よし、これで評価は終わりだ」

「正直に言うと、お前はひどく臭い。子供だから仕方ないが」

「だが姿勢は良い。少なくとも10歳はないとこれを振れないはずだから、潜在能力はあると思う」

「そして膨大な魔力を持っている...よし、決めた」

「新しい選択肢をやろう。私の養子になれ」

「...っ!」


少年はその選択肢に面食らった。

「私の養子になれば、騎士になるだけでなく、貴族にもなり、市民権を得て土地や家を相続できる」

「もちろん剣術だけ教える。魔法については何も知らない。才能がないからな。だが魔法剣士はどの国でも最も珍しい人材だ」

「どうだ、少年?」


少年はじっと彼を見つめた。

「つまり、寝る場所がもらえるということですか?」

「もちろん、風呂付きで1日3食もつく」

「それなら受けます」

「良い返事だ」


ジェイソンは犬が芸をした時のように拍手した。

最も重要なことを思い出し、拍手をやめた。

「忘れていた。お前の名前は?」

「......」

「それも覚えていないのか?」

「いいえ」


「うーん、深刻なケースだな。気にしないなら、名前をつけてやろう」

少年は嬉しそうに頷いた。

「よし、名前、良い名前を...」


ある記憶が彼の脳裏をよぎった。

「レックス...アレックス」

「アレックスという名前はどうだ?」

「アレックス。気に入りました」

少年は頷き、ジェイソンは頭を撫でた。

「良い子だ」

「では私の番だ」

「私はブランシェット公国騎士団長、子爵ジェイソン・アーレン・レオーネだ」

「ジェ...ソン...?」

「ああ。どうした?」


ジェイソンは少年の笑顔が恐怖に歪んでいくのを見た。何か恐ろしい真実を聞いたかのようだった。

突然、少年は地面にしゃがみ込み、叫んだ。

「頭が痛い!」

「大丈夫か?」


ジェイソンは少年が頭を抱えて転げ回るのを見ていた。

すると少年は立ち上がり、ジェイソンの顎を殴りつけた。

地面に倒れながら、少年は恐怖で頬に触れ、子供らしからぬ言葉を発した。

「まさか!本当にあの乙女ゲームの世界に転生してしまったのか!」

「ただの端役になっただけでなく、養父がなんと一年生編のメインアンタゴニストだなんて!」

「灰の騎士!」

「誰に向かって灰の騎士だと言っている!? それにびっくりさせるな!」


ジェイソンは新たにアレックスと名付けられた少年の頭を強く叩いた。

元日本人の男は今、この乙女ゲームの世界にいた。

この予期せぬ出来事にもかかわらず、物語は何の変化もしていない。

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