幕間 もしもの話(前編)
※注: 過激な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
作者ではなく、悪役として描かれるキャラクターを憎んでください。
もしアレックスが転生せず、ゲームのストーリーが予定通り進んでいたら…
こんな結末が待っていた。
「ジェイソン…お願い…やめて…」
女王アンジェリカは、騎士ジェイソンに無情にも刺された夫を腕に抱えていた。
和平交渉からの帰路、雨は降っていたが大したことではない。
しかし、ジェイソンは突然立ち止まり、味方の御者を含む全員を斬り始めた。
「個人的な恨みじゃない。復讐のためだ」
「やめて!!!!!!」
女王は泣き叫び、命乞いをしたが、彼の心は動かない。
剣が振り下ろされ、彼女の首は飛んだ。
ゲーム同様、「王国」が国王夫妻を殺したことにされたが、真犯人はジェイソンだった。
◇◇◇
宮殿に戻り、両親の死に泣く王女アンネローゼとローズマリーに「真実」を告げた後、
ジェイソンはハリー・アーレン・ベルクマン伯爵のもとへ向かった。
この事件で、伯爵は閣僚の支持を得て首相の座に就くことができる。
「よくやった、レオーネ。遺体は?」
「飢えた狼の群れにやった」
「誓った王を裏切り、姫たちを孤児にした気分は?」
「次はお前の番か?」
「…まさか」
冷たい視線を浴びせた後、ジェイソンは自宅で従者に世話を受け、酒を飲みながら床についた。
しかし、自らの行いが心を蝕み始める。
◇◇◇
年月が流れ、ついに戦争が勃発。
「長年の苦しみと王国の混沌に、もう耐えられない」
「今こそ攻め、我々のものを奪還せよ!」
王位継承者アンネローゼは出陣する兵士たちに鼓舞の言葉をかけ、
ジェイソンも同行した。
演説後、ローズマリーと首相ベルクマンの元へ向かう。
「メアリー、行ってくる。戻ったら、新たな時代を祝おう」
「わかったわ、お姉様。…レオーネ司令官、彼女を頼んだわ」
孤児として育った姉妹は歪んだ性格となり、互いしか信じられなかった。
ジェイソンは彼女たちの人生に関わらなかったが、戦争は姉妹を引き裂く。
「ベルクマン首相、宮殿と妹の安全を預ける」
「ご安心を、ローズマリー殿下は無事ですよ、アンネローゼ女王陛下」
「よし、行こう、レオーネ」
「承知」
アンネローゼとジェイソンは出陣し、一方、ベルクマンは笑みを浮かべた。
その目はローズマリーの──より正確には、彼女の豊かな胸元へと向けられていた。
◇◇◇
夜、ローズマリーが寝ようとした時、部屋の外で叫び声がした。
王国の刺客かと思ったが、現れたのは武装した騎士たちを連れたベルクマンだった。
「ご機嫌よう、ローズマリー殿下」
「何のつもり? 武装した騎士を連れて私の寝室に?」
「摂政を奪う気か!?」
信じた者への裏切りに憤るローズマリーだったが、その感情は恐怖へと変わった。
「正解だ。だが、私が欲しいのは宮殿じゃない」
「戦争派はほぼ全滅し、生き残りも拘束した」
「何年もかけて計画した。王国にこの汚れた国を併合させるため、少しずつ争いを煽り…
陛下たちの暗殺も必要だった」
「…え?」
「母上と父上を…お前が…?」
ローズマリーは震えていた。
ベルクマンは舌を舐めながら言った。
「身代金にするか売ろうかと思ったが、『あの方』が王家の血は絶やすべきだと言うので…」
「王国軍が到着するまでの2週間、お前の体を存分に楽しませてもらう」
騎士たちが服を脱ぎ始めた。
「この上品に育った体、堪能させてもらおう」
「姉妹揃ってなら最高だったが、全ては叶わぬものだ」
ローズマリーは逃げようとしたが、無理だった。
ベッドに押し倒され、服を引き裂かれ、体中を舐め回される。
唇の純潔さえ、汚れた男たちに奪われた。
ベルクマンはズボンを下ろし、獲物を睨みながら悦に入り──
「これが王家に生まれた罰だ」
両親や姉に助けを求めるローズマリーの叫びは届かない。
もし最初から彼女たちを支える者がいたら…
もし別の道を示す手があったら…
こんな結末にはならなかったのに。
その後、ローズマリーはベルクマンと騎士たちに連日暴行され続けた。
人間の想像を超えるような行為に、彼女はやがて反応しなくなった。
「ボス、女、もう動きません。死んだか?」
「脈はある。ただ壊れただけだ」
その時、黒ずくめの男たちが現れた。
「キルヒナー侯爵からの使者だ」
「ああ、荷物はもう準備してある」
「荷物?」
混乱するベルクマンに、男たちは刃を抜き、虐殺を始めた。
リーダーは剣でベルクマンを押さえつける。
「待て! 約束と違う!」
「侯爵は『存在しない国との約束は守る必要がない』と言っていた」
首を斬り落とされ、ベルクマンの頭は転がった。
建物は燃やされ、ローズマリーも炎に飲まれた。
◇◇◇
敗残兵と帰還するアンネローゼ。
「王国の魔法は強すぎた… ベルクマンの援軍もなく、我が国は滅びる」
「でも、私は諦めない!」
しかし、首都は炎上し、宮殿は黒煙に包まれていた。
アンネローゼは崩れ落ちた。
「国も…宮殿も…メアリーも…」
泣き叫んだ彼女は、やがて笑い始めた。
目は虚ろで、血走っている。
「レオーネ、もう何も残っていない」
「なら、王国にやれるのは命だけだ」
復讐に燃えるアンネローゼとジェイソンは、王国軍に突撃し、あっけなく討たれた。
アンネローゼはヒロインに刺され、空を見上げながら思う。
(なぜ、こんな人生を送らねばならなかったのか)
(憎い…)
(母上、父上、メアリー…今、行くよ)
彼女の死に顔は苦痛に歪んでいた。
これがゲームで定められた、姉妹の運命だった。
だが今──
「レックス!!! メアリーの胸から目を離しなさい! あんたも、揺らすのやめなさい!」
「お姉ちゃん、意地悪だよ~? 頑張ったレックスにご褒美をあげてるだけ!」
「その胸を彼の顔から遠ざけろ!」
「お姉ちゃんもやりたければ、どうぞ」
「ふふ、娘たちは元気で何より。A君もモテるのね」
「母上、笑わないで! このバカを何とかして! ジェイソンも!」
「…私は不必要な損傷を避けたい」
この部屋には、本来なら悲惨な最期を迎えるはずの「悪役」たちがいた。
そして、全てを変えた「ある人物」がいる。
だが、これはゲームの未来を望んだのか? それとも、他人を救いたいという願いか?