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第1話「チームワークの意味」

月曜の朝、深山厳はいつもより早くオフィスに到着した。週末の休息を経て、彼の中では三つの魂——魔王ヴァルガス、武将・深山前、そして現代のビジネスマン・深山厳——が不思議と調和を始めていた。


「おはようございます、部長」


エレベーターを降りると、すぐに山田太郎が元気よく挨拶した。新入社員ながら、彼はいつも最も早く出社する社員の一人だった。


「おはよう、山田くん」深山は自然な笑顔で応えた。「今日も早いな」


「はい!NEXUS社のプロジェクト始動の日ですから、万全の準備をしておきたくて」


山田の目は輝いていた。彼の純粋な熱意は、かつて魔王に仕えた黒騎士タロスを思わせる忠誠心がありながら、それ以上に個人としての成長への意欲が感じられた。


「そうだったな」深山は頷いた。「誰が参加するんだ?」


「営業部からは私と佐藤さん、IT部門からは松本さんです」山田は即座に答えた。「部長はプロジェクトの統括責任者として、定例会議に参加する形になります」


深山は資料を受け取りながら考えた。この体制は深山厳が前から決めていたものなのか、それとも佐藤が調整したものなのか。記憶の隙間を埋めようとしたが、頭に一瞬の痛みが走った。


「わかった。みんな頑張ってくれ」


「はい!絶対に成功させます!」


山田の敬礼するような仕草に、魔王の側近であったころと同じ熱意があるように見え、深山は微笑まずにはいられなかった。


オフィスに向かうと、デスクの上には既に今日の予定表が置かれていた。佐藤の几帳面さが感じられる。11時からNEXUS社とのキックオフミーティング、午後からは社内チーム会議...スケジュールは詰まっていた。


「おはようございます」


静かな声に振り返ると、佐藤美咲が立っていた。週末を経て、彼女はいつもの冷静な表情に戻っていたが、その目には以前より柔らかな光が宿っているように思えた。


「おはよう、佐藤さん」深山は微笑んだ。「土曜日はありがとう」


彼の言葉に、佐藤の頬がわずかに赤くなった。彼女は咳払いをして平静を装った。


「こちらこそ。楽しい時間をありがとうございました」佐藤はビジネスライクな声に戻った。「本日のNEXUS社とのミーティングですが、事前に確認しておきたいことがあります」


「なんだ?」


「プロジェクトの進め方について、部長はどのようなスタンスで臨まれますか?」


佐藤の質問は単純なようで奥が深かった。彼女は深山の「変化」を感じ取っており、以前の彼なら独断専行だったかもしれないことを懸念しているのだろう。


深山は少し考えてから答えた。


「チームの意見を尊重する。特に佐藤さんと松本、それから山田の専門性を活かしていきたい」


佐藤の目が少し大きく見開かれた。


「それは…とても良いアプローチだと思います」彼女は驚きを隠せない様子だった。「部長が以前から言っていた『指揮系統の一元化』とは少し違いますが…」


「人は変わるものだ」深山は静かに言った。「異なる視点からの意見が、より良い結果をもたらすこともある」


佐藤はしばらく深山を見つめていたが、やがて小さく微笑んだ。


「了解しました。では準備を進めておきます」


彼女が去った後、深山は椅子に座り、自分の言葉を振り返った。かつての魔王ヴァルガスなら、すべての決断を自分一人で下し、部下に盲目的な服従を求めていただろう。しかし今の彼は、チームの力を信じることの重要性を理解し始めていた。


内ポケットからシャドウが小さな声で囁いた。


「魔王様、素晴らしい進歩です」


「進歩か…」深山は小声で返した。「ただ、この世界でうまくやるための適応のようなものだ」


「それでも、魔王様の中に変化が起きていることは確かです」


確かに、彼の中で何かが変わりつつあった。人を支配するのではなく、共に歩むという考え方。深山は自分の胸に手を当てた。「契約の呪縛」はここ数日、ほとんど痛みを伴わなくなっていた。


オフィスが徐々に活気づき始める中、深山はメールチェックを始めた。かつては戸惑いながら操作していたパソコンも、今では問題なく扱えるようになっていた。


「部長、これ見てください!」


突然、松本健太が興奮した様子で駆け寄ってきた。彼の手にはタブレットがあり、画面には複雑な図表が表示されていた。


「NEXUS社のプロジェクトのために、新しいアルゴリズムを改良したんです。これを使えば、データ処理効率が30%向上します!」


深山は松本に示された図表を見つめた。複雑な数式と図形の羅列だったが、不思議なことに彼にはその意味が理解できた。まるで魔法陣を読み解くかのように。


「これは素晴らしい」深山は心から感心した。「どうやって思いついた?」


「実は…」松本は少し声を落とした。「先日提案したモデルをさらに改良したんです。飲み会での部長のアドバイスを考慮して、データの流れを更に効率化しました!」


深山は驚いた。酔った勢いで話した「マグナ・インフェルノ」の魔法体系が、現実の技術に応用されるとは。


「そうか…君の才能は驚異的だな」


「いえいえ、部長のアイデアがなければ…」松本は照れながらも嬉しそうだった。


この会話の途中、高橋剛が営業部に姿を現した。彼はスーツの襟を正しながら、まっすぐに深山のデスクへと向かってきた。


「おはよう、深山部長」高橋の声には、わずかな緊張感が混じっていた。「NEXUS社の件、おめでとう」


「ありがとう」深山は立ち上がって応えた。

二人は一瞬見つめ合い、そこには敵意よりも相互理解のようなものが流れていた。


「実は話があってね」高橋は声を低くした。「NEXUS社のプロジェクト、協力できないだろうか」


「協力?」深山は意外な申し出に眉を上げた。


「ああ」高橋は頷いた。「彼らの要望を詳しく分析したんだが、一部のモジュールは我々の二部が得意とする分野なんだ。一部と二部で協力すれば、より完成度の高いシステムを提供できると思う」


深山は一瞬、罠を疑った。魔王としての警戒心がそうさせた。しかし、高橋の目には真摯な光が宿っていた。


「なぜだ?」深山は率直に尋ねた。「我々はライバルだったはずだ」


高橋は少し困ったように笑った。


「土曜の夜、少し考えたんだ」彼は窓の外を見ながら言った。「君のカラオケを聴いてね。なぜか懐かしい感覚があって…」


彼は言葉を切り、深山をまっすぐに見つめた。


「競争も大事だが、時には協力することで、より大きなものが生まれることもある。そう思わないか?」


その言葉に、深山は「光の勇者」の影を見た気がした。異世界では永遠の敵だった存在。しかし、この世界では…


「わかった」深山は決断した。「佐藤さんと詳細を詰めてくれ。チームの意見も聞いた上で判断しよう」


高橋は明らかに驚いた表情を見せた。彼は深山の即断を予想していなかったようだ。


「ありがとう」高橋は真摯に言った。「期待に応えるよ」


彼が去った後、佐藤が不思議そうな表情で近づいてきた。


「高橋部長と何を?」


「協力の申し出だ」深山は簡潔に説明した。「NEXUS社のプロジェクトで、一部と二部の共同作業を提案してきた」


「まさか…」佐藤は明らかに驚いていた。「部長、それを受け入れるんですか?以前なら絶対に…」


「以前の私ならな」深山は静かに言った。「だが、良いアイデアは取り入れるべきだ。チームでどう思う?」


佐藤は一瞬言葉に詰まったが、すぐに冷静さを取り戻した。


「技術的には理にかなっています」彼女は分析的に言った。「二部はデータベース設計に強みがありますし、私たちはユーザーインターフェイスとアルゴリズムが得意です。補完関係になりえます」


「だが、心配事もある?」深山は彼女の迷いを察した。


「はい」佐藤は正直に答えた。「高橋部長の真意が読めません。チーム間の軋轢が生じる可能性もあります」


「なるほど」深山は頷いた。「では、メンバー全員で話し合おう。君の意見を聞かせてほしい」


佐藤は再び驚いたように深山を見つめた。このような判断プロセスは、以前の深山厳からは考えられないものだった。


「承知しました」彼女はプロフェッショナルな表情に戻った。「準備します」


* * *


11時、NEXUS社とのキックオフミーティングが会議室で始まった。NEXUS側からは、CTOの村上と営業担当の西川が参加していた。


「改めまして、プロジェクトをお任せいただき、ありがとうございます」深山は礼儀正しく挨拶した。「本日は基本方針と進め方について合意したいと思います」


会議は順調に進み、システム要件の確認とスケジュールの調整が行われた。その最中、深山は意識的にチームメンバーの意見を促した。


「松本くん、この点についてはどう思う?」

「佐藤さん、スケジュールについて懸念事項はある?」

「山田くん、君の視点で見て、改善点はないか?」


彼の問いかけに、チームメンバーは最初は戸惑いながらも、徐々に活発に意見を述べるようになった。それぞれの専門性を活かした視点が、議論を豊かにしていった。


村上CTOは満足そうに頷いていた。


「深山さん、素晴らしいチームですね」彼は感心したように言った。「皆さんの一体感が伝わってきます」


「ありがとうございます」深山は誇らしく答えた。「彼らは優秀なスタッフです」


会議が終わり、関係者が退室する中、西川が深山に近づいてきた。


「深山部長」彼女は小声で言った。「以前、御社を訪問した時とは印象が違いますね」


「どういう意味でしょう?」深山は穏やかに尋ねた。


「以前は…」西川は言葉を選んでいた。「もっとトップダウン型のリーダーシップだったと思います。今日は違いました。チームの力を引き出す姿勢が素晴らしかったです」


深山は微笑んだ。「人は成長するものですから」


西川は頷き、会議室を後にした。


残されたチームメンバーたちも、どこか新鮮な表情を浮かべていた。特に佐藤は、深い考えに沈んでいるようだった。


「皆、お疲れ様」深山は彼らに向かって言った。「素晴らしい仕事ぶりだった」


「部長こそ」山田が興奮気味に言った。「あんなに私たちの意見を聞いてくれるなんて!」


「そうですね」松本も目を輝かせた。「初めてです、自分のアイデアをこんなに尊重してもらえたのは…」


佐藤は黙って深山を見つめていたが、彼女の目には明らかな驚きと…何か別の感情が浮かんでいた。


「午後からは社内ミーティングだ」深山は言った。「その前に昼食をとろう。今日は私がおごる」


「えっ!?」山田と松本が同時に声を上げた。


「部長、体調は大丈夫ですか?」山田が心配そうに言った。


「何を言っているんだ」深山は笑った。「チームの成功を祝うのは当然だろう」


「でも、部長が昼食を奢るなんて…」松本は首を傾げた。「小説のキャラクターが急に性格変わっちゃったみたいです」


深山は苦笑いした。魔王ヴァルガスの時は部下に食事を提供するなど考えもしなかっただろう。そして深山厳も、どうやら似たような性質だったようだ。


「たまには良いだろう」彼は肩をすくめた。「さあ、行こう」


* * *


社員食堂は昼時で混雑していたが、彼らは窓際の席を確保できた。深山がトレイを持ってくると、山田と松本は依然として驚いた表情を崩さなかった。


「本当に部長がおごってくれるなんて…」山田は感動したように言った。


「夢みたいです」松本が付け加えつつ頬をつねっていた。


「大げさだな」深山は笑いながら席に着いた。「ところで、高橋部長からの提案について話しておきたい」


彼は二部との協力案について説明した。山田と松本の反応は対照的だった。


「絶対反対です!」山田が即座に言った。「高橋部長は信用できません。きっと私たちの成果を横取りする気なんです」


「いや、技術的にはメリットがあるかも」松本は思慮深く言った。「彼らのデータベース技術は確かに優れているし…」


「しかし!」


「落ち着け、山田くん」深山は諭すように言った。「両方の意見に価値がある。佐藤さんはどう思う?」


ずっと黙っていた佐藤は、ゆっくりと顔を上げた。


「正直に申し上げると…」彼女は慎重に言葉を選んだ。「技術的メリットは確かにありますが、リスクも大きいです。特に情報管理や信頼関係の構築が課題です」


「では、どうすればいい?」深山は問いかけた。


「まずは小規模な協力から始めるべきです」佐藤は実務的に提案した。「全面協力ではなく、特定のモジュールに限った協業を提案します。そして、厳格な情報共有ルールを設けるべきです」


深山は満足げに頷いた。「素晴らしい提案だ」


「でも部長」山田はまだ納得していなかった。「最終判断は部長がするんですよね?」


「ああ」深山は頷いた。「だが、皆の意見を聞いた上でだ。チームの総意として最適な決断をしたい」


「チームの総意…」松本が感動したように繰り返した。「部長、本当に変わりましたね」


深山は苦笑した。「そう言われ続けると照れるな」


昼食を終え、オフィスに戻る途中、佐藤が深山に並んで歩いた。


「部長」彼女は静かに言った。「今日の雰囲気とても良かったです」


「そうか?」


「はい」佐藤は真剣な表情で続けた。「部長は元々優秀な方ですが、以前は…少し独断的で、部下の意見を聞かない傾向がありましたので…」


「そうだったのか」深山は正直に答えた。彼の中の深山厳の記憶は、まだ完全ではなかった。


「でも今日は違いました」佐藤の目には温かな光が宿っていた。「チームの力を引き出すリーダーシップ。これこそが、私が部長に期待していたものです」


その言葉は深山の胸に響いた。彼女の評価は、彼にとって予想以上に重要な意味を持っていた。


「ありがとう、佐藤さん」彼は真摯に答えた。「君の助言があってこそだ」


佐藤は少し頬を赤らめたが、すぐにプロフェッショナルな表情に戻った。


「午後の会議の準備をしておきます」


彼女が先に歩いていくのを見送りながら、深山は胸の左側に温かさを感じた。それはもはや痛みではなく、何か新しい感覚だった。


* * *


午後の社内ミーティングは、高橋部長も参加して行われた。協力の詳細について、両部門のメンバーが活発に議論した。


深山は会議を見守りながら、時折方向性を示す役割に徹した。彼は意識的に全員の意見を引き出し、バランスの取れた議論を促した。


「私たちが提案するのは、段階的な協業です」佐藤が説明した。「まずはデータベース設計の部分で二部のノウハウを活用し、UIとアルゴリズムは一部が担当する」


高橋は考慮深く頷いた。「理にかなっているね。リスクを最小化しながら、それぞれの強みを活かせる」


会議は予想以上に建設的に進み、具体的な協業計画が形作られていった。終了時間が近づくと、高橋が立ち上がって深山に向かって言った。


「深山部長、素晴らしいミーティングだった。正直、こんなにスムーズにいくとは思っていなかったよ」


「私も同感だ」深山は微笑んだ。「チームの力は偉大だな」


高橋は少し不思議そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔を見せた。


「協力して良いプロジェクトにしよう」


会議が終わり、社員たちが席を立つ中、松本が深山に近づいてきた。


「部長、すごかったです」彼は興奮した様子で言った。「あんなに対立していた二部と一部が、一緒に仕事するなんて…」


「チームワークの力だよ」深山は言った。


「そうですね」松本は真剣な表情になった。「部長が言っていた『マグナ・インフェルノ』の設定で、敵対していた種族が協力して強大な敵に立ち向かうエピソードを思い出しました」


深山は驚いた。そのような設定を深山厳本人が話したことがあったのだろうか?


「どんなエピソードだ?」彼は興味を持って尋ねた。


「魔王ヴァルガスと光の勇者が、古代の魔神に対抗するために一時的に同盟を結ぶんです」松本は熱く語った。「敵対者同士でも、より大きな目標のためには力を合わせることができる…そんな話です」


深山は考え込んだ。彼の魔王としての記憶にはそのようなエピソードはなかった。しかし、それは未来の可能性なのかもしれない。


「面白い設定だな」彼は言った。「いつか、その続きも聞かせてくれ」


「はい!」松本は嬉しそうに答えた。「部長の物語、早く完成させてくださいね」


彼が去った後、深山はふと窓の外を見た。夕暮れの空が、オフィス街のビル群の上に広がっている。


「魔王と勇者の協力か…」


彼は小声で呟いた。異世界では考えられなかったことが、この世界では可能になるのかもしれない。


デスクに戻ると、シャドウが内ポケットから顔を出した。


「魔王様、今日は大きな一歩を踏み出しましたね」


「そうか?」深山は小声で尋ねた。


「はい」シャドウは静かに言った。「チームワークの真髄を理解し始めています。単なる命令と服従ではなく、互いの強みを活かし合う関係…」


深山は椅子に深く腰掛け、シャドウの言葉を考えた。確かに、今日の彼の行動は魔王時代とは大きく異なっていた。しかし、それは単なる適応ではなく、彼自身の内側からの変化のように感じられた。


「まだわからないことが多すぎる」深山はため息をついた。「三つの魂の統合、契約の呪縛の正体、そして私の本当の役割…」


「少しずつ明らかになっていきますよ」シャドウは励ますように言った。「今日の経験は、その過程の重要な一部です」


夕方、社員たちが次々と帰宅する中、佐藤は最後まで残って仕事をしていた。深山が帰り支度をしていると、彼女が近づいてきた。


「お疲れ様でした、部長」彼女は丁寧に言った。「今日は素晴らしい一日でした」


「君のおかげだよ」深山は誠実に答えた。


「いいえ」佐藤は首を横に振った。「部長の変化があったからこそです」


彼女は一瞬躊躇ったが、続けた。


「実は…以前から部長には才能を感じていました。ただ、その才能が活かしきれていなかった。でも今は…」


「今は?」深山は彼女の言葉を促した。


「本来あるべき姿に近づいているように思います」佐藤は静かに言った。「力で人を従わせるのではなく、心で人を動かすリーダーとして」


深山はその言葉に深く考え込んだ。佐藤は彼の本質を見抜いているのかもしれない。三つの魂が融合しつつある今の彼の姿を。


「ありがとう、佐藤さん」彼は心からの感謝を込めて言った。「君がいてくれて幸運だ」


佐藤は少し照れたように目を逸らしたが、すぐに微笑んだ。

「それでは、お先に失礼します」


去っていく背中を見つめながら彼は思案に耽った。

(チームワークの意味か…)


力による支配ではなく、互いの信頼と尊重に基づく協力。それは魔王としての彼には無縁の概念だったが、今は違う。深山厳という存在を通じて、彼は新しい価値観を体験し、受け入れ始めていた。


胸の左側に手を当てると、「契約の呪縛」はもはや痛みを伴わず、代わりに穏やかな温もりを感じた。それは彼が正しい道を歩み始めている証なのかもしれない。


夕闇の中、オフィスビルを後にする深山の表情は、穏やかな決意に満ちていた。彼の魂の旅は、まだ始まったばかりだった。

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