表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

よわい




 実際にはそんなに大きくないのだろうけれど。

 どうしたって、筋肉も骨も体形も線の細い自分よりもすべてがすべて二倍も三倍も大きく見える。

 肉体だけじゃない。

 生き方も、魂も、心も。

 褒められたものではないのかもしれないけれど。

 大きくて、強くて、しなやかで、揺らがなくて、恐い人。

 完璧な人間というのは色々あるだろうけれど、この恐い人も絶対に完璧な人間だ。


 なのに、


 ぐらついて見える時がある、なんて。

 危うくて、支えなくてはいけないって。どうしてか。思ってしまう時がある、なんて。











「もしかして、君が天使と巨人と悪魔を完全に肉体に下ろす事ができるまで、律希りつきともどもお世話になりたいですっていう情けない、もとい、現実的な懇願だったのかな?」


 オークション会場の三階席、主催者のみが出入りする事ができる個室にて。


 はシックな革張りのソファに座り、膝にのゑを乗せたまま、未だ頭を下げ続けるだんを真正面から見た。


「まあ。私たちが律希の援助を断ち切れば、安心して修行して眠って食べて談話する場所がなくなる事は確かだね。君は大学に行く事もお父様に会う事も叶わなくなる。ずっとずっとずっと。君たちは狙われ続ける。君が天使と巨人と悪魔を完全に肉体に下ろす事ができるのが先か。はたまた、囚われの身になって、君たちには考えも及ばないような残虐無比な事をされてしまうのが先か。律希はその限りではないだろうけれど。君は後悔するだろうね。私たちの援助を断ち切らなければよかったって。君はどうしたって、弱いから。私たちと違って」

「はい。全くその通りです。僕は弱い。人類史上最弱だって。胸を張って言えるくらいに、弱いです。律希さんが守ってくれているから、僕はここで生きていられている。そして、律希さんを守っているのは、木の実さんと卯のゑさんです。僕では、律希さんを守る事はできない」

「うん。そうだね。君だけだったら、どうしたって律希を守る事はできない。でも、幸か不幸か。君は君だけじゃない。ほんの少しだろうが、君は天使と巨人と悪魔の力を借りる事ができる。ふふ。全く本当に。選ばれた人間ではないなどと。どの口が言えたものかな?」


 思わず柄を掴んでいた暖。

 重圧に変化はない、殺気もない、身体を動かしたわけでもない。

 にも拘らず、木の実の何かが変化しては、暖は命の危機を察し、頭を下げたまま柄を掴んでしまったのである。


「ふふ。君はほんとうに、」




 よわいなあ。











(2025.1.1)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ