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どうして




 オークション会場の三階席、主催者のみが出入りする事ができる個室にて。


「もう君はいつでも天使と巨人と悪魔を肉体に下ろす事ができて、律希りつきを闇の世界から連れ出す事ができる。つまり君の今のその行為は、律希ともどもお世話になりましたという感謝の意思表示かな?」

「………いえ。理由は分かりません。ただ、頭を下げておきたいと思ったんです」


 だんは頭を下げたままの疑問にそう答えては、言葉を紡いだ。


「僕はまだ天使も巨人も悪魔も完全に肉体に下ろす事はできません。まだ、ほんの少し、天使の、巨人の、悪魔の力を貸してもらう事しかできません。ただ、ほんの少しでも僕にとっては過大な力です。どうしたって僕は、律希さんと違って、選ばれた人間ではありませんので、あとどれほどの時間が経てば、律希さんを闇の世界から連れ出せるのか。途方もないです」

「謙遜しなくていい。君は律希と同じく選ばれた人間だ。桔梗大太刀の鞘を抜けた事がその証拠だ」

「あなたたちには選ばれていない。そうでしょう?」

「ああ。そうだね。私たちは君を選んでいない。だから、君が闇の世界に居続けようが、抜け出そうがどうでもいい。ただ、律希が君をいたく気に入っているから、利用はさせてもらうけれどね。ふふ。見てごらん。君の右腕を誰にも渡すまいと、律希が持っているお金をとうに超えているというのに、まだ金額を言い続けている。身体を売り払うつもりかな? まあ、その前に私が借金を申し出て、事が収まる。と、言った処かな」

「そしてずっと律希さんを闇の世界に縛り続けるんですね」

「律希自身も望んでいる。君も知っている通り」

「はい。知っています。律希さんは闇の世界に居続ける事を望んでいる。天使と巨人と悪魔の力を使って闇の世界から抜け出して、僕と同じ大学に行きたいと言っていますけど。すぐに飽きて、闇の世界に戻りたいと言う律希さんしか想像できません」

「そうだと知っていても、無駄になると知っていても。君はその律希の望みを叶えてあげようとしているね。どうしてかな?」


 ぐるりぐるぐるぎゅるりぎゅる。

 吐きそうだ。と、暖は思った。

 木の実の重圧で、のゑの重圧で、自分の思考で、律希に対する不可解さで、喉元で発生しては消滅せずに増加し続ける渦巻きによって、激しい吐き気が催され続けていた。

 一刻も早く、自分に不要とされる細胞を全部を全部ぶちまけてすっきりしたい。

 切に望んだ。けれど、嘔吐できず。吐き気が留まり続ける。苦しみ続ける。


「どうしてでしょうか? 僕にもさっぱり分かりません。無駄だと重々承知で僕はどうして律希さんの望みを叶えようとしているんでしょうか? 律希さんが恐いから。律希さんに逆らえないから。律希さんが………ぐらついて見える時があるから。危うくて………支えなくちゃいけないって。どうしてか。思ってしまう時があるから。でしょうか?」











(2024.12.31)




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