CMがないテレビ番組をつくりたい、男の話。
誰もが一度、思った事はないだろうか? CMが一切流れない、映像作品を観たい!! …と。
子供の頃、アニメやバラエティ等の番組を観る度に、俺は常々に思いながら、テレビを観ていた。
CMが流れる度に、中断されたアニメやバラエティの盛り上がりな部分への情熱が、待たされる時間が長い程に冷めていくからだ…。
だから俺は、CMがない番組を求めて、映像制作の会社に入社し、現在ーーそれはほぼ不可能なのだという現実を、突き付けられていた。
コマーシャル・メッセージ…略して“CM”は、企業の広告が主だ。
番組を制作する上で、会社から出される予算は、アクシデントがなかったとしても足りない事がほぼである。なので、企業に出資をしてもらう代わりに、番組の何処かでCMを流す。それにより、制作側は番組が作り易くなり、企業側はCMが流れる事で、会社や商品の紹介をし易い。上手くいけば商品は売れて、儲かった企業は、更に此方へ出資額を上げてくれる…場合もある。
だから、番組作りとCMは、切っても切れない関係性なのだと、制作側に立って思い知らされた。
「そっ…其処を、なんとかぁ……」
「しつこいなぁッ!!! 君ねぇ!? こちとら不景気の煽りを受けて、社員に給料を出すのだって精一杯なんだよ? 」
「わっ…それを承知の上で、ZX会社様に、出資の程を頼んでいます!100万ッ!! …いえ、50万…うんん、30万だけでも、出資を宜しくお願いしますッッ!!!! 」
人目も気にせず、俺は多くの人間が行き交う街中で、土下座をして出資を求めた。それに、ZXの社長は、「ちょっ…!? 頭を上げなさいっ!!! 」と、狼狽えてるっぽい。
……この社長。人の目を、かなり気にするタイプみたいだなぁ? という事は、こーゆう感じで、大勢の目がある中で頼み込めば、出資の援助の約束を取り付ける事が出来るぞッ!!
俺はなるべく大きな声で、出資の協力を頼み込んだ。それにより、なんだなんだ? と近くを通り掛かる他人が俺達へ注目する。社長もその視線に耐えかねたのか、出資の援助を約束してくれた。
*
「なにをするにも、“金”、かぁ…」
自局の番組の宣伝は流れるが、何処かの企業と契約したCMが流れる事はない国営放送を除いて…。
CMのないテレビ番組を、観た事がない。緊急時等で一部の差し替え、または番組内容を変更したとしても、CMは流れるのだから。
昔はそんなにCMが流れる事が無かったマイチューブでさえも、最近はなにかしらの企業の宣伝が流れてくる。マイチューブの有料コンテンツに登録すればCMを流さなくする事が出来るらしいが、俺が求める、“機材や光熱費を除いた、無料で観られる映像に、一切の広告が流れない”では、無い。
チャプターで区切られた事により、CMが一切流れない、本編だけを再生出来るDVDとかじゃ、駄目だ。
「制作会社に援助が出来るぐらいの金が、俺にあればなぁ…」
そうすれば、広告が流れない、テレビ番組をつくってもらうのに…。
俺には夢がある。子供の頃、テレビを観てる途中を妨げる、CMというタイムラグのせいで、番組を満足に楽しめなかった。だから、同じ様な苦い経験を、一人でも多く持たせたくないッ!!という夢が。
CMが流れている間に、展開を予想させて視聴者を楽しませるのも、番組を盛り上がらせる上では必要な演出だと、会社に入社してから上司に言われた事がある。だがそれは、視聴者にCMを慣れさせて、時間の無駄には目を瞑ってもらう為の演出だと、俺は思ってしまった。
解ってる。そんな、現実的ではない夢など、持ってはならない、って。それに……少しの煩わしさがあるから、それを美味しく、または楽しむ事が出来る…みたいな話を、聞いた事があった様な、なかった様な気がする。それでも…一度でイイ。
いつか、CMのないテレビ番組が、お茶の間に流れたらイイなぁ、って。
了
番組を少しでも見逃したくなくて、トイレ休憩が出来ないっ!!!という事が起きない為にも、CMはあった方がイイと思います。(By楽十)