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センセー殺しは神剣に  作者: ぷー
一年生一学期編・掌の上で踊れる少女
24/38

四   第一回学年会議

なんか、最初説明文ばっかになった

 円状のテーブルに等間隔に三人ずつ、四組座っていた。

 他の組との間にはテーブルに割れ目があり、その割れ目はテーブルの中心部に繋がっていた。

 中心部にはドーナツの穴のような空間があり、中央には細い柱の上に黒い炎を灯した蝋燭があった。

 円柱状になっている壁には重厚感があり、等間隔に金属の盃のような形の大きな燭台が十一個設置されていた。

 そこに燃え盛る炎の色が異常だった。白、黄色、緑、青、赤ーーー色とりどりの炎がばちばちと燃えていた。黒を除いた基本十ニ色のようだった。

 

 自分が今いる場所を分析し終えると、ハロンドは状況整理をした。学年会議が始まるのを寝室で待っていると、急に知らない場所に転移させられた。ここが会場ということだろう。なんとも物々しい場所であった。

 ハロンドは一組の代表であり、三人の中でも真ん中に座っていた。左にはガンムがいる。不機嫌そうにハロンドのことを睨んでいる。右にはーーー見知らぬ美女がいた。


 その少女を見た途端に絶句する。腰まである艶やかな黒髪、やや細く猫のような瞳孔、ふっくらとした唇。艶のある長髪は魅力的に過ぎた。あまりに整いすぎていた。陶磁のように白い肌は髪や瞳と真逆の色のため、より際立っている。

 服装が学校指定の質素なものであることが残念でならなかった。

 彼女はうちのクラスにはいなかった。いや、シンスが『一週間遅れてきた人間がいる』というようなことを言っていたので、それが彼女だったということだろう。一週間も入学を遅らせた彼女は一体何をしたのか気になった。


 ハロンドは知らぬうちに止まっていた息をほうっと吐いた。彼女が一言声を発するだけで洗脳されてしまうような気がして、頭を振った。


 他のクラスの代表者を見てみると、見知った顔があった。シャルとナーナである。二人とも同じクラスに入り、無事代表者に選ばれたのだ。二人とも文句なしの美少女だが、さすがに隣の美少女には分が悪いと思った。二人ともハロンドの隣の少女に釘付けになっていて、真隣にいる自分には気づいてもらえないのだろうなと苦笑いした。


 ハロンドが他のクラスに目移りしていると、不意に隣の少女がすっくと立ち上がった。驚いたハロンド含めた十一人が彼女を見る。彼女は集まる視線に何の反応も示さず、テーブルの中央に歩いていった。


 凍りついたような空気の中、彼女の足音だけが響く。彼女が足を止めると、十一人全員が絶句した。

 あまりに似合いすぎていた。黒い蝋燭と、彼女の類稀な美貌が。

 呆然とする彼らに向かって、彼女は頭を下げた。


「ようこそお越し頂きました。私は学年会議一組代表の一人、イサーシャと申します。名前だけでもお覚え頂ければ幸いでございます。今回は第一回学年会議の司会を仰せつかった為、この場所に立たせて頂いております」


 透き通るような美しい声。その容姿と声は相まって、催眠とそう変わりないものとなっていた。ぼうっとする頭をもう一度振って、凄惨な過去を思い出し落ち着こうとする。


「今回の議題でございます。定例報告、討伐する教師の選定、自由の話し合い。この三つでございます。まず、定例報告から始めていきたいと存じます。また、一組から進めていきたいと存じます。中央の席の人、お願い致します」


 中央の席の人というのはハロンドのことだろう。

 いきなり指名されて驚くが、一組から順というのも妥当なので立ち上がり、口を開くが……何を言えば良いか分からず、聞くことになった。


「あの……何を言えば」


「ああ、説明がまだでしたね。誠に申し訳ございません。話すべきことは、一週間の主な出来事、死者数、その他話したいことですね。但し、時間は限られておりますので、特にその他話したいことは出来るだけ簡潔にお願いいたします」


 その他話したいこと、か。ならば、あれを聞くのが妥当だろう。


「了解したよ。この一週間は初めての一週間だから、出来事は他のクラスとそう変わりないのではないかな。特に剣技科の授業がきつかった。破剣を覚えられるくらいにね。死者数は一人。このクラスで一番弱く、一番漢気のあった少年だった。あと話したいことはーーー司会の君は誰だい?うちのクラスの授業には一回も出ていなかったけど」

 

 剣技科の部分では同感だと思っている人が多かった。

 最後の司会への質問に、各クラスの代表者たちがざわついた。だが、イサーシャは変わらない凛とした表情で受け答えする。


「一週間の間、追っ手から逃走しておりました。神力解放(オーラ)の訓練をしている最中に性別不詳の怪しげな二名が感知に引っかかり、以降逃げ回っておりました。訓練場所が慣れた森の中ということもあり、地の利を生かせたのと、追っ手二名が魔剣は使えますが基礎身体能力がそれほどだったのが大きかったのでしょうね。さて、定例報告ありがとうございました。次、二組の人、お願いいたします」


 神力解放とは、一時的に奇剣の類い全てを強化する方法のこと。体内の神力を一気に消費し、余剰神力が体外に放出されるのだ。放出された神力が通常の奇剣にかかる神力に上乗せされるため、威力はより上がる。余剰神力は微風を作り出し、発動者に風格をもたらす。

 発動条件は神力を一気に解放して持続可能な量の神力を所持していることと、神力を一気に解放するような、『精神』を刺激する感情を保持していることだ。

 ちなみに、授業では必ずそれを封じるレリックがあり、使用できる者もそれを察していたため、使ったりしなかったのだ。


「分かった」


 ざわめく代表者を無視して、落ち着いた様子の二組代表が立ち上がった。ざわめく代表者の中でも目立っているのはシャルとナーナだ。「え?なんかすご!えぐ!」「語彙力おかしくなってるよ、シャル」もう少しお静かにと言いたくなったのを堪えた。


 各クラスの主な出来事を総括すると、クラス全員がシンスのお陰で破剣に覚醒したこと、どの授業も実技分野でこてんぱんにされたこと等。あとは大なり小なりであった。死者は四組だけ三人だったが、他のクラスは一人。四組は何をやらかしたのだろう。

 他に話したいことについては、シャルが「授業のせいでMになりそう」と憂鬱に呟いたことが印象的だった。シャルとナーナ、存在感ありすぎじゃない?


「次に、討伐する教師の選定を行いたいと存じます。とはいえ、討伐期限は四か月後。今決定する必要はないため、あくまで話し合いという形にしたいと存じます」


「分かったわ。他の代表者も異論はないね?」


 二組の中央に座る女子生徒が言った。異議は上がらないので、彼女は発言した。


「さてと。まずは自己紹介ね。アタシはマーラ=ドラウ。キャラ的には三組の子に被ってる気がするけど、まあそこは髪の色で許してね。ほら、アタシはオレンジ色だから」


 シャルが反応した。


「呼んだー?」


「呼んではないよ、アタシの話ちゃんと聞いてよー」


「私の名前?シャニール=ラナ、シャルって呼んでねっ」


 とてもズレた発言にナーナが突っ込んだ。


「自己紹介してって言ってなかったよね?」


「きゃはっ。面白いね、シャルとその友達」


「ナーナですよろしく」


「よろしくー。で、話が逸れちゃったけどさー。剣技科で約一ヶ月後にバトルロワイヤルがあるでしょ?」


「あるね」


 シャルが答えた。ハロンドは他のクラスも同じなんだなと納得した。


「つまり、それって殺し合い?」


「まあ、そうなるね」


 シャルがそう答えた瞬間、マーラが目を輝かせた。


「やった!やったぁ!殺し合い!今からでも楽しみになっちゃうよ!!アタシの胸のときめきが止まらないよ!きゃっはっ!」


 いきなり叫んだ彼女に、シャルは引きながら、


「そ、そう……」


 と言った。

 なんというか、意外だなと思った。

 こういう人種は教師陣だけだと思っていたから。

 けどまあ、殺し合いが大好きなだけなら、取るべき棘もないし大丈夫だろう。


「なんというか、意外……」


 ナーナも呟いた。その後に続く言葉は、遠すぎて聞き取れなかった。

 そんな中、その雰囲気に水を差す男子生徒がいた。


「いいのですか。これは討伐すべき教師を選別する良き機会でしょう。雑談に時間を費やすべきでは……」


 場所的に四組だった。その問いにも、司会役のイサーシャは物腰柔らかに対応する。


「今回は初回ということもありますし、ひとまず互いに知り合うのも悪くないかと。ということで、今質問して頂いた貴方、自己紹介をお願い致します」


「ナイサン=テラスラードです。ナイサンとお呼び下さい」


 ナイサンの右隣にいた男子生徒も元気に自己紹介する。


「俺はラールンド=ナ=ロラルエーリでッス。できればここにいるみんなと一緒に、生きて卒業したいッスね。これからよろしくッス!」


 左側の女子生徒は、同じクラスの二人も自己紹介したのを見て、仕方なくと言った感じでため息をついてから言った。


「イトル=パライトル。ポーカーフェイスは苦手だから、だから……まあ、仲良くしてね?」


 自己紹介一つでもこれだけ違いが生まれるのかと、ハロンドは感心した。イトルは会話が苦手そうな感じだった。


「イトルさ、ポーカーフェイス苦手って自白する辺り、本当に苦手そうだよねー」


「うっさい」


 シャルは誰とでも仲良くできる人柄なのだろう。少し羨ましいと思った。この学年会議において、ムードメーカーというか、中心人物は彼女とナーナになるのだろうなと感じた。


「次は二組でしょうか。自己紹介、お願い致します」


 なんか自己紹介に主旨が変わっていた。


「アタシはマーラ=ドラウだけど?きゃは」


 お前はもう聞いたと、この場にいた全員が思った。

 その思いを代弁したのは、左隣の少年だった。


「あんたは聞いてないよ?僕はポロー=サロー。ポジティブだけが取り柄なんだ。よろしく」


「ララク=ノナッセウ。好きなことは火に油を注ぐこと。よろしくね」


 右隣の少年も言った。自身の性格をあまりに堂々と明かすので、シャルが「ポーカーフェイス苦手なの、代表会議なのに多くない?」と呟いていた。


「次、三組の人」


 個性豊かな代表達にも無表情を貫く司会もすごいと思った。


「シャルでーす」


「ナーナでーす」


「ミドロです」


 最後は知的な雰囲気のある少年だ。

 シャルやナーナとミドロとの落差がすごかった。


「では次、四組の方」


「ちょっと、司会さん、もうちょっとかまってよ!」


 かまってちゃんかよ、と誰もが思った。


「もう少し落ち着きましょう?」


「ミドロが落ち着きすぎなんだってー!」


「四組の方ー」


「司会さん、シャル無視してる(笑)」


「ちょっとナーナ、(笑)って何よ、(笑)って!」


「四組の方ー」


「もうしただろッス」


「ああ、そうでした」


 そういえば、さっき発言していたな。

 

「それよりさー、ずっと気になってたんだけど、ハロンドの隣の子、誘拐された時に切りかかってきた子じゃない?」

 

 ナーナがガンムに言った。

 ああ、そういうこともあったなとハロンドは遠い目をする。一週間が濃密すぎて言われてからしか思い出せなかった。


「だからなんだよォ?殺試合(ころしあい)の誘いかァ?だったら――」


「じゃなくて。名前教えてよ。仲良くなろ」


 ナーナは首を傾げてふわりと微笑んだ。途中でぶった切ったのは、マーラが「殺し合い!?」と介入してくるのを避けるためかもしれない。

 一瞬ガンムは顔を強張らせて……「あァ?」と凄んだ。

 ナーナは全く動じない。


「まあまあ、落ち着いて下さいませ」


 イサーシャもそう言った。ガンムは不機嫌そうに舌打ちすると、短く言った。


「ガンムだ」


「おっけー!ガンム、よろしくー!」


「おめェと馴れ合う気はねェ!」

 

 ガンムはそう言いながらも、最初ほど強気ではなかった。

 シャルといいナーナといい、本当に人の懐に入るのが上手いなと思った。


 




 結局、この騒動も口喧嘩程度に留まり、雑談会のようになって、解散となった。

おもしろい!と思ってくれたそこのあなた!

評価諸々、ぜひぜひよろしくッ!

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