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センセー殺しは神剣に  作者: ぷー
一年生一学期編・掌の上で踊れる少女
23/38

三    破剣の通常技訓練③

中間終わった!いやあすんません、一週間も空いてしまって。

中間の手ごたえ?……聞かないでください

「おーい。いつまで二人で話してるの。寂しいよ?」


 ハロンドがタラとロファに、口を尖らせて言った。


「ごめーん。今行く」


 タラは返事をすると、ロファに手を差し出した。


「ほら起き上がって。行くよ」


「おう」


 タラの手を握って起き上がる。その手には、確かな温もりがあった。

 タラはロファよりも先に駆け出した。そして……ロファには届かない声で、言った。



「愛情、か。ふふ、迷っちゃうなあ……」



 ハロンドの元へ行くと、彼は聞いてきた。


「どうだった?通常技を打ってみて、感想を教えてよ」


「なんであんなくっつくのかなっつーのが正直な感想だ。さらにポエムみたいなこと言うから、俺でさえあんなドキッとしたんだぞ?」


「くっつくのは血脈を意識しやすくするため。ポエムは相手の気持ちを扇情するためだよ」


「いや扇情させてどうすんだよ。アレか?わざと女難をおびき寄せたいっていう新手のドMか?」


「ロファ、ちょっと発言が過激になってない……?」


「お前せいじゃね」


 ハロンドはロファの非難をさらっと受け流すと、問いに答える。


「扇情させた理由は、破剣、いや奇剣の力の源が心だからだよ」


「「?」」


「あれ、説明したことなかったっけ」


「数十年鍛錬するか、精神的苦痛を体験することで奇剣を習得可能、とは聞いたことがある」

「私女子寮だからなのか、なんも聞いてないよ?」


 ハロンドはそうだったのか、と額に手を当てた。


「そうなのか。じゃあ一から説明しないとだな。長くなるからちゃんと聞いてね」

 

 ロファとタラは頷く。ハロンドは一回間を置いて、唇を舐めて湿らせた。


「僕たちは歩く時。息をする時。何かを考える時。何を使うのかな?」


「もちろん体だろうよ」


 ロファが何を言っているんだというふうに言った。


「そうだよ、正解だ。どんな生き物でも、“体”を動かして生きている。けどさ、人間に限って言えば、何で存在するのか分からない部分があるんだ」


「……?」


「心、だよ」


 ハロンドは胸に手をあてて言った。


「別にさ、心がなくたって、頭さえ良ければ生き残れるんだよ。むしろ、心っていうのは感情が発生するから、人間が生き残るためだけなら、いらないとさえ言える。大切な人が獣にやられて、怒り狂って復讐しようとしたら返り討ち。そんなこともあったろうしね」


 ハロンドは心に手を当てる。この心は今何を感じているのか、言葉では表せないし、よく分からない。


「けど人類は頭脳と共に心ーーー精神をも発達させてきた。さも、それが絶対に必要だと言うように。けれどどうして必要なのか。恋をして子孫を作るためか?ならば他の動物のように女がフェロモンを振り撒けばいいではないか。頭脳が発達するには必然的なものだったのか?ならばなぜ、人間に近い頭脳を持つ猿やチンパンジーには心という概念すらないのか。その答えを導き出したのが、奇剣の始祖と呼ばれる、五千年前の女だった」


 ロファとタラは黙って聞いている。


「その女は気づいた。人間って、怒った時は少しだけ力が増すし、深い悲しみを感じた時は無力感に襲われて力を発揮できなくなるよな、と。つまり、精神の揺らぎによって、ある程度は肉体の働きが左右されるんだ。それが精神の存在意義なのではないかと、女は思ったんだ。だけどそうだとすると、あまりに効果が薄かった。実験によれば、男の人が激怒しても素手でガラスを割れるようにはならなかったし、筋肉を鍛えている女に彼氏は死んだよと嘘を言ってみても、全然素手で林檎を潰すことが出来た」


 ハロンドは遠い目をしながら語る。この話をしてくれた、当時の情景を思い浮かべて。この話をしてくれたのは、まだまだ幼かったパララだった。


「女は結論を出した。精神は肉体の能力を上げるためにあるが、人間は精神の力を使いこなせていないと。だから彼女は、“精神の力”をいかに効率よく、かつ高出力で放出できるかに生涯を賭けて研究を重ねた。幸いにして彼女は剣が上手かった。殺傷能力の高い剣に精神の力を合わせるのが最適だと考えたんだね。彼女は試行錯誤を重ねた」


 彼女の突飛な推論は果たして正しかった。けれど、その研究を進めたことは、本当に正しかったのか。奇剣が出来上がったせいで、ハロンドはここにいるのだ。少なくともハロンドにとっては、彼女は間違っていたのだろう。


「まあ、実験過程はあまり関係ないからいいかな。数十年の研究を重ねた彼女は、ついに奇剣を編み出したんだ。さらに彼女は通常技をも編み出した。破剣が十、魔剣も十だね。さらには彼女は神剣さえ習得していたとされている。それほど研究に心血を注いだんだろうね。想像もつかないけどさ」


 ハロンドは全てを言い切り、達成感のため息をついた。


「これで昔話は終わり。つまるところ、君たちの精神の力ーーー通称、神力の基礎値の底上げを図るべくやったってわけだよ」


「ふーん……」


 タラが感心の相槌を打つ。でもふと気がついたのか、ぽつりと言った。


「でもさ、だったらする必要なかったよね?」


「どうして?」


「シンスに散々いじめられたじゃん。そのせいで特殊技に目覚めたんだし、あれを思い出させてくれれば良かったんじゃないの?」


「……」


 ハロンドは答えない。タラがハロンドを睨んだ。


「沈黙って時に言葉以上に肯定を示すよね」


「ボク、ソノコトニキガツカナカッタンダ」


「わざとらしいよ?」


「気がつかなかったのは本当ダヨ?」


「語尾隠しきれてないからね?ていうかさ、私の気恥ずかしさ想像したことある!?めっちゃ恥ずかしかったんだけど!?」


 そうタラが叫ぶと、ハロンドは少し驚いた目を向けた。


「いやなんで驚いてるの凹むよ?」


「いや……パララは普通にくっついて来たから」


「パララちゃんが異常なの!普通の女の子ってのをもう少し知りなさい!」


「……はい」


 タラは深々と疲れたようなため息をついた。


 

 こっそりとタラの隣に来たロファが、タラに告げ口をする。


「そんな酷いこと言って良かったのかよ?お前だってハロンドの思惑に気がついてんだろ?」


「誤魔化すには、これが最善だったのよ」


 タラは幾つもの訓練用の案山子を見て……辛い過去を思い出させないために気遣ってくれたハロンドに、思いを馳せるのであった。



 


 

 


 ここで昼食の時間になった。

 シンスの地獄のような授業もなく、落ち着いて食べる昼食は、意外に美味しいものだった。


「今日だったか?“学年会議”っつーもんがあるのは」


「そうだね。僕が今日の夜に呼ばれるーーー喚ばれる、かな?ーーーことになっているよ」


「緊張するね」


 世間話に花を咲かせて、楽しく昼食を済ませると、自主鍛錬の授業に入った。とは言え、午前と一緒の事をするだけである。

 ただ一つ違ったのは、監督の教師がいることだった。知らない教師だったが、授業内容は自主練習なので彼は関係ない。自主練習には監督の先生がつくということだろう。彼が行動する気配もなかったため、無視して各自自主練習を始めた。


「よし。じゃあ午前中に出来なかった、破剣技十個を全部覚えようか」


「マジで言ってんのか?」


 ロファが呆れた目でハロンドを見るが、知らんぷりをしてハロンドが続ける。


「非常識?知らないなあ。これが僕の常識だから?」


「開き直ると余計に性質が悪いわね」


 タラが吐き捨てるように言った。



「破剣・鮫咬み」


 ハロンドは案山子に向かって右上から左下に斬った。これもレリックで、斬られても自動で再生する。


「鮫咬み?なんか物騒ね」


 ハロンドは奇剣はだいたいこんなものさ、と笑って続ける。


「これは使用範囲が広くて、発動させやすい技だから、初心者におすすめだ。斜めに切り裂く技。多少雑でも発動するよ。元が鮫だからかな」



「破剣・獄中突破」


 今度は鋭い突きである。


「ハロンドって安定して速くて威力もあるよな」


 ロファが呟いた。


「修練の成果さ。これは突き。突きであればどうであれ発動してくれるしおすすめ」

 

 タラが獄中突破、と呟いて放つ。

 ハロンドにはまだまだ及ばない速度だが、もう破剣として成り立っていた。


「慣れるまでは破剣の元となる感情を呼び起こす記憶を思い出すといい。安定して威力が出る」


 タラはハロンドとの行為を思い出したのか、顔が真っ赤になる。


「そっちじゃねーだろ、ばーか」


 ロファが呟いた。



「破剣・吸首鋭糸」


 案山子の首から上が吹き飛んだ。ロファが思わず「わーお」と言った。


「言葉通り、首狙いの斬撃だ。首に狙いが絞られる分、斬撃が糸のように細く見えるというメリットもある。けど、使用頻度は低いかもね」


 タラとロファが次々に放つ。案山子の首が次々に飛ばされる様を見て、タラが


「ごめんね、恨みはないけど」


と謝った。



「破剣・上がり昇天」


 ハロンドの上から振り下ろす斬撃で案山子がきれいに真っ二つに割れた。


「単純に上からの斬撃だな。これの対極に位置する破剣がーーー破剣・下がり昇天」


 剣を真下に向けた状態から振り上げる。

 案山子は下から真っ二つに切られた。


「下がるのに、昇天なんだな」


「意外と細かいのね、ロファ」


 一気に二つ教えられたロファとタラは、淡々と案山子を真っ二つにしていく。



「破剣・上弦劫落」


 一刀両断。ただ、他の破剣とは違い、その斬撃に大した特徴はない。


「どんな技なんだよ、それは」


「ああ、これはねーーー破剣・下弦遷変」


 インターバルもなしに、次の破剣を放つ。


「破剣、いや奇剣の中で唯一、連撃が可能な破剣だよ」


 タラもそれを聞いて「上弦刧落」で案山子を切り裂き、「下弦遷変」も発動させるが……。

 「下弦遷変」はそこまでの威力が出なかった。


「なかなか、難しいわね」


「連撃はね」



「破剣・緩急灼微」


 ハロンドの斬撃が、途中で緩やかになり、急に速度が上がり、案山子の胴を切り落とした。


「途中で速度が上がるのか」


「緩やかになることもあるよ。斬る時よりも移動中の方が効果が出るね。移動中も効果のある破剣なんてこれ以外にないから、重宝するよ」


 ロファが緩急灼微を放つ。

 途中でゆっくりになり……そのままゆっくりのまま、案山子を切り裂いた。


「実践的にやりなさいよ」


 タラが諌める。母みたいだなと、ハロンドはこそっと思った。



「閃臨差幕」


 案山子を斬った。その一撃は他の破剣よりも目に見えて重かった。


「威力に全振りってやつね」


 ロファが頷きながら言った。


「そ。これだけインターバルも長いし、結構体力も消費する。デメリットも多いけど、威力だけは格別だね」


「閃臨差幕ーーーなんかしっくりこない技名だなあ」


「タラ、そんなこと考えてるから威力が低いんだ。真面目にやりなさい、真面目に」


「分かりました、ハロンド教官」


「うむ」


 二人の会話を聞いたロファがぼそっと言った。


「ハロンドの方こそ真面目にやってくんねえかな」

 



「一気に十の型全部やったけど、覚えられたかな?」


「一日で十個も覚えられる、天才がいたら、ぜひ、l紹介してくれ」


「疲れた」


 そういう二人は、膝に手を当てぜぇぜぇ言っている。

 破剣というのは、使うだけで体力をとられる技なのである。

 二人の反応を見て、ハロンドは苦笑する。


「そうだよね。無理した自覚はあるし」


「あるのかよたち悪いな」


「ここの教師よりは無茶してないと思うけどね」


「それはそう」


 タラはそう返しながら、そもそも比べる対象がおかしいと思った。


「これからするべきことは、素振りと特殊技・通常技の反復練習かな。出来るだけ早く剣を手に馴染ませよう」


「それ何回も言ってたけど、そんなに重要なんだな」


「剣を手足同然に扱えるくらいには馴染んで欲しいね。破剣使えるんだし」


「うへえ……」


 そして自主鍛錬の時間が終わる。

 ハロンドは、ここまで普通の鍛錬をするのは、この学校で初めてだと思った。

補足説明


感情の成り立ちがどうのこうの言いましたが、これは筆者の作品内での創作であり、実際は違うと思われます。ただし、感情が昂ると握力が上がったりするのは本当です。テレビで見ました(笑)

ミスや矛盾点とかあれば、教えてくれれば幸いです。


吸首鋭糸の“斬撃が糸のように細く見える”についてですが、これは一種の破剣の効果です。


長くなりましたが……良ければ、評価諸々よろしくッ!!

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