目覚まし時計の激突
純白のシーツが赤く染まってゆく、、、
その赤は、無吾非の後頭部からにじみ出た血の色だった。
……………………………………………
ぴーぴーぴー!うずらの鳴き声が聞こえる。
明依美はゆっくりと身体を起こした。
モゾッ
「?」
手に何かが当たった。
気になって明依美は布団を持ち上げた。
「☆★✩❂❃✼✹✗○◇□♂♂♂♂♂✗✗✗✗✗♭♭!!!!!???」
一人の少年が明依美の隣で気持ちよさそうに寝ていた。
え?あ?え?何?は、え、あ?
(注)明依美は寝起きのため、昨日の出来事(金髪ポニーテールに追いかけられていた少年を家に入れたこと)についてすっかりサッパリ忘れていた
そのため、自分と同じベットに異性が眠っているという事実を受け止められなかった。
つまり・・・・・・・・・
明依美はとっさに近くにあったデジタル目覚ましをつかみ、明依美の隣ですやすやと気持ちよさそうに眠っている少年の頭部に思いっきり振りかざした。
ドゴッ
「ギャッ!?」
少年は突然の衝撃に頭部を抑え、フルフルと震えながらうずくまる。
『ピロン!』
『ビー!ビー!ビー!』
「!?な、何?」
突然の激しい機械音に明依美はびくつく
『エラー、エラー、システムに一度に投入できる一定関心数を大幅にオーバーしました。』
「へ」
『再インストールを開始します』
「あ」
『3・・2・・1・・・』
「え?」
『プッ』
「・・・・・・・・・」
いったいぜんたい何だったのだろう?
関心数?
エラー?
再インストール?
明依美は不思議に思い、機械音が鳴った少年の方を眺めた。
その少年は、深紫の髪に紺色の瞳をした美少年だった。
「?なんか見たことあるような、、、あ!!」
明依美は段々と思考が冴えていき、昨日の出来事を思い出した。
「そういえば昨日、明依美はこの美少年、無吾非君を自分の家に保護したんだった、、、。」
明依美は先程デジタル目覚ましで殴りつけた無吾非君の頭部を見て顔を青ざめた。
無吾非君の頭部からは今もなお、ダラダラと血が流れ続けている。
「やばっ!止血しなきゃ!!」
明依美は急いで救急箱を取りに行った。
明依美が救急箱を持って戻ってきたところ、なんと無吾非君の頭部の怪我はもう塞がっていた。
たった2分程度の時間でほぼ傷が完治していたのだ。
明依美はとても驚いたが、それと同時に納得もした。
「そういえば無吾非君って普通の人間じゃなかったんだよね、、、あの女の爆撃を受けてもすぐにケロリとしてたし。」
「それに無吾非君、宇宙人だって言ってたし・・・」
明依美はそう呟いて、無吾非君を見つめた。
――――――その後、三十分ほどたったころ、明依美の頭の中で、またあの機械音が聞こえた。
『ピロンッ』
『無事、37号【無吾非】の関心数ポイントボックスの再インストールを完了致しました。』
機械音が聞こえた後、無吾非君が目を覚ました。
無吾非は頭を抑え、ムクリと起き上がる。
『これより、あなたを正式に無吾非のパートナー《契約主》となりました。』
また、明依美の頭の中で機械音が聞こえた。
「え」
『こんにちは。私はこれからあなたと無吾非の生活をサポートする、システムです。初めに、このシステムの名前を設定してください。』
「ええ?ナニコレ!」
明依美は驚いて立ち上がった。
だってどうやら、このシステムとやらは、自分に向けて話しかけているようなのだ。
無吾非君はいきなり立ち上がった明依美を見るなり目を丸くした。
そして、焦ったように早口で明依美に話しかけた。
「ご、ごめんなさい!明依美ちゃん!勝手に布団の中に入ってしまって。あまりに明依美ちゃんが気持ちがよさそうに眠っていたから、、、つい!」
どうやら無吾非は、明依美が急に立ち上がったのを見て、明依美が無吾非に怒っていると思ったようだ。
「う、ううん!こちらこそ思っいっきり殴りつけてごめんなさい。」
「謝らないで、明依美ちゃん。きっと普通、昨日出会ったばかりの人が隣で寝てたら、怖くて殴っちゃうものだし!!」
明依美が謝ると無吾非君は、アッサリ許してくれた。
優しいね。
『このシステムの名前を設定してください。』
明依美の頭の中でまたあの機械音が聞こえた。
名前?
この機械音に明依美が名前をつければいいの?
ん~、何でもいいの?
『はい。何でも。』
じゃあ~、【蓮花】とか?
明依美は、自分の一つ上の学年の黒川蓮花先輩を思い浮かべた。
蓮花先輩といえば、うちの高校の誰もが認める黒髪お団子ヘアの美青年である。
うわさを聞くに、黒川ファンクラブは蓮花先輩がこの高校に来てから三日で設立したらしい。
イケメン好きな明依美は、もちろん、高校入学初日でこのファンクラブのメンバーになった。
『はい。では、【蓮花】で、設定します。今後、私に聞きたいことがありましたら、【蓮花】と、お呼びください。』
明依美が【蓮花】と会話をしている間、無吾非は不意に左手を肩の高さまで持ち上げた。
無吾非君は自身の左手にはめた指輪を見て、目を丸くしていた
どうしたんだろう?
明依美も無吾非君にはめてもらった指輪を見てみた。
指輪の中には【1200】と数字が浮かんでいた。
「【1200】?何、この数字。何を指してるのかな、、、?」
明依美がそうつぶやくと、頭の中でまたあの機械音、【蓮花】が聞こえてきた。
『この指輪の中に浮かんでいる数字は、明依美さんの無吾非に対する関心や思いの強さを表しています。私達はこの数を【関心数】と呼んでいるんですよ。』
「へぇ~。【関心数】ってこうやって簡単に確認できちゃうのね、、、。なんか嫌だなぁ。明依美の思いがダダ漏れじゃん!」
急に独り言を言い出した明依美を無吾非はじっと見つめて不思議そうにしていたが、次に明依美が発した言葉に、スゥーと顔を青ざめた。
「んっんっ!取れないなぁ。ねぇ、この指輪ってどうやったら取れるの?」