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「じゃあ、勇者の剣を吸収しても因子は増えないのか。」


「妾の見立てではそうなのじゃ。見たところその剣に含まれるのは微量な聖力。対魔の力であれば世界樹たる妾を吸収したあるじ様の方がよほど強い。

 むしろ最初から精霊を生み出せた時点ですでにあるじ様には聖なる神の因子があったと予想がつくのじゃ。」


『父ちゃんは最初に会った時から神様みたいにキラキラしてたよ!』


「ロノ、神と会ったことがあるのか?」


『ボクたち龍は龍の神様が粘土を捏ねて作るんだよ。今のボクは父ちゃんが生んでくれたけど、前のボクは龍の神様が粘土に草の汁を混ぜて作ったんだ。神様はね、とってもキラキラしていてお顔が見えないんだよ。』


それは初耳だな。龍の神の情報はまだライブラリにも載っていない。エリンもほうほうと頷いているし、ひょっとしてものすごく貴重な話ではないだろうか。


「龍は生殖では増えないのか?」


『あのね、龍があまり増えすぎると龍の神様が食べちゃうんだよ。だから龍は仲間同士で仲良くならないんだ。それに会うと喧嘩するから、子どもは作れないんだって。今のボクはなんとも思わないけど、前のボクは他の龍のことを考えるとイライラしちゃっていたよ。』


なにそれ、怖っ。

どんな理由かは分からんが、龍同士で生殖しないようにお互いを敵と認識させていたのか?それでも子作りするような逸脱者は神が喰って始末する…?

そもそも神という超越者は創造物にとっては理不尽な存在であることが多いが、なんだか龍が哀れだな。


「その神の姿は見れなかったのか?前の龍のときはいつまでその神といたんだ?」


『龍の神様はね、龍の姿をしているんだ。自分に似たものを造れる神様は偉いんだって。それなのに人間の神に不器用だから龍しか作れないと笑われるって怒ってたよ。白龍だと思っていたけど、キラキラしているから白く見えただけかもしれない。父ちゃんもいつもは黒いのに、時々とってもキラキラしているときは白く見えるから!

 龍は卵の間は神様のところにいて、神様がお話したり新しい龍を造る音を聞いているんだ。それでどこかの龍が死んじゃったり、龍の神様が神罰を与えたいときに、卵から孵して地上に落とすんだよ。龍の神様がすごく怒ったときには神様の唾を混ぜて捏ねた紫の龍を人間の国に投げたって言ってたよ。』


なにそれ、怖っっ。

それってまさか人間の神とやらにムカついた龍神が、怒りを任せて人間の国を滅ぼしたってことか?


「懐かしいのぅ。昔は神同士の喧嘩もよくあったのじゃ。巻き込まれる地上の者はたまったものではないがの。

 特に龍神の怒りの証たる紫の龍を見たら全速力で逃げるのはハイエルフの教えの一つ。それで失われた世界樹もあったのじゃ。」


エリンの光を失った眼が、過酷な時代を物語っているな。

ハイエルフも全力で逃げたりするのかと、妙なところに感心してしまう。


「その神たちは今はどうしているんだ?今の人間どもは神罰など信じていないだろう。」


「地上に魔素が減りすぎて、神の好き勝手に出来なくなったのが一つ。一番のトラブルメーカーだった人神ルクシアが主神となり大人しくなったのが一つ、と言ったところかの。

 他にも神にしか知り得ぬ理由があるやも知れぬのじゃ。」


人神ルクシアか。確かに龍神にマウント取ったり、ろくな奴じゃなさそうだな。


「主神は変わるのか?どんな基準なんだ?」


「信仰エネルギーとでも言おうかの。どれだけ崇められれ、祈られているか。神の力はそれで決まる。

 以前は生き物としての位階の高い龍の神が主神であったが…人間の数が増えたこともあるし、人神は情報操作に長けておる。世界樹や精霊への信仰も全てルクシアの威光と人間に思わせたのじゃ。世界樹は創造神様が直接お造りになられた世界のはじまりだと言うのに。

 妾が生まれたばかりの頃はまだ人神が暗躍しておっての。何度か追い払ったが、ヘラヘラしていけ好かぬやつよ。」


あれ?エリンって俺に御子様とか言ってなかったっけ。


「ハイエルフが神と崇めるのは創造神様一柱のみじゃ。

 創造神様は世界をお創りになり、一樹の世界樹をお創りになった。世界樹はハイエルフを生み出し、ハイエルフは世界の王となった。創造神様は次に様々な形の生き物を次々お創りになり、しばし人形遊びに興じられた。やがて創造神様は世界に飽いて次なる遊びをされにお隠れになったのじゃ。

 創造神様が人形遊びに使われた生き物たちは、やがて自我をもち自分に似せた生き物を作り神を名乗り始めた。しかし創造神様のお創りになられた楽園を穢されるのを厭うた世界樹が、自らの全てを使って地上を造り、偽造物らが原初の世界に立ち入ることを禁じたのじゃ。しかし偽造物らは生きているだけで瘴気を撒き散らし、地上を魔の地に変えてしまう。見かねた世界の王たるハイエルフは自ら地上に降り、新たな世界樹となり世界の浄化装置たる役割を引き受けたのじゃ。対魔の力、聖なる気を持つのは世界樹のみ。人神がいくら聖気を自らの神気と騙ろうと事実は変わらぬよ。」


それはまた…つまり神を名乗る者たちは元々創造神に捨てられたおもちゃで、地上の俺たちはそのさらに劣化版ということか。それにしても世界樹もハイエルフも神の楽園からいなくなったなら、今頃あちらはどうなっているのか分かったもんじゃないな。

というかハイエルフに伝わる創造神話だとしたら多少ハイエルフ寄りに話が盛られているんじゃないか?


「ハイエルフは皆原初の世界樹の記憶を持っておる。あるじ様からは創造神様の気配がするのじゃ。」


…と言われてもなぁ。



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