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「何者だ。」


斥候が雪を掻き分ける俺たちを確認して戻って行ったから頃合いだとは思っていたが、いきなり剣を突き付けられるとはな。

どうやら騎士殿はずいぶんとお行儀が良いようだ。


俺の住むログハウスは相変わらず攻撃を反射させる結界があるとはいえ、能力の高そうな目的の分からない集団を家の前で出迎える気にはなれない。ダンジョンに入って声が聞けるようになったので何か漏らさないかと思ったが、こいつらほとんど会話しないんだよ。進行速度が速すぎて明日にも家まで到着しそうだったし。


仕方ないのでロノとエリンを伴いダンジョンの半ばあたりまで出向き、偶然を装いエンカウントすることにしたのだ。ちなみに待つ間暇だったのでエリンに雪の下に花を咲かせる薬草の探し方を教えてもらっていた。

アナンシは念のため留守番だ。何かあればサリアかカムラの姿で対応してもらう。男女どちらにもなれるというのは存外便利だな。


「おや…。そのように大勢でどうされました。この森に何か御用ですか。」


敢えてゆったりと神の御使いモード。俺はもちろんエリンやロノにも結界魔法を張ってあるため突き付けられる剣に視線をやることもしない。信仰する神のある聖騎士に神の遣いなんて設定が通じる自信はあまりないけどな。

そもそも迷いの森はどこの国にも属していないし、俺のダンジョンの範囲内は俺の所有権を主張してもいいと思うんだけど。何者だはこっちの台詞だっての。


しかし予想に反して騎士どもは一瞬ざわめいた。


「教皇様よりも黒き御髪と瞳!神の御使いでは?」

「まさか。」

「しかしこの聖気は…大聖堂よりも神々しい。」

「滅多なことを言うな。」

「それよりも見ろ、聖獣様だ。」


全部聞こえてますよー。聞かれないように訓練されてるっぽいけどダンジョン内は俺の領域なので。

リーダーらしき男が一歩前に出てくる。


「失礼いたしました。我々は神聖ルクシア教国の聖騎士です。

 第二皇子ドルトイスタ様の(めい)により、聖獣たるホワイトドラゴン様をお迎えに上がりました。」


は?


ロノを迎えに来たってどういう意味だ?人間ごときが俺のロノを物扱いするのか。


抑えられない、抑える気もない怒りがダンジョンの空間をぐにゃりと歪ませる。騎士どもは苦し気に膝を付くが知ったことではない。


「白龍を迎えに来たとはどういう意味でしょう。この子は私が生み出した我が子にも等しい存在です。貴方方に迎えられる謂れなどないはずですが。」


「聖獣様を…生み出した…ですと?」


『ボクは父ちゃんのロノだぞ!お前たちとなんか行かないよ!』


ロノも俺の肩の上から怒りを剝き出しに牙を向いて騎士どもを威嚇している。首周りの毛が逆立ってすごく可愛い。


「その御姿…貴方様はもしやルクシア神…。」


「それは主神の名ですか?そんな訳ないじゃないですか。」


さすがにそれは否定するぞ。曖昧な『神』なら明言を避ければ誤魔化せるが、主神の名を騙るのはいろいろと面倒だ。こんな連中に崇められでもしたら国ごと滅ぼしてしまいそうだ。

よし、ライブラリで国滅に最適な魔法がないか調べておこう。



「頭が高いぞ、其方ら。あるじ様はこの地に住まう貴き御方じゃ。ハイエルフたる妾と白龍を従え、あるじ様の御力でこの地に世界樹が根を張り、精霊が生まれ来る。

 この御方の意に添わぬことを強硬しようというのなら、世界そのものが敵に回ると心得よ。」


エリンが俺を庇うように前に出た。正直怒りで穏やかな神の御使いモードを演じられなくなっていたから助かるな。

俺は騎士どもに背中を向けて冷静さを取り戻そうと深く呼吸をする。ダンジョン内だから背中を向けていてもすべて把握してるけどな。

それでも武装した騎士に気軽に背中を向けるのはインパクトがあったようだ。エリンに従うように平伏している。


「大変失礼いたしました。知らぬこととは言え、知られざる神へのご無礼とお膝元を荒らしてしまった無作法をお詫び申し上げます。」


ん?主神じゃないって言ったのに結局神と誤解されてしまったか。否定はしてやらんがな。


「分かったら早う去ね。其方らの目的は叶いはせぬ。」


「お言葉ですがハイエルフ様、それでは困ります。我々も主命を帯びて参上した身の上。手ぶらでは帰れません。」


「ほう、力付くで奪うと申すか。」


やれやれ。情報の価値というものが分からないのかね。

しかしこいつらはロノを誘拐しようとした連中だ。やるというならダンジョンの贄にしてやろう。

美味しそうな餌もあることだしな。


「お、お待ちください。知られざる神よ、争うつもりはございません。」


「エリン、話を聞きましょう。」


「あるじ様がそう仰るのでしたら。」


「我々が聖獣様と出会ったという証が欲しいのです。できれば聖獣様が第二皇子を支持していると…あ、いえ、申し訳ございません。」


厚かましくも調子に乗る騎士を威圧して黙らせる。しかしうーん、ロノと出会った証と言われてもなぁ。


『父ちゃん、ボク祝福できるよ。祝福ができる龍はボクたち白龍だけなんだ!』


龍の祝福?ライブラリによると、白龍は極々稀に出会った人間に祝福を施すことがあるらしい。…あらゆる能力が向上し位階が上がることもあるってよっぽどだぞ。祝福されれば(しるし)が現れ、白龍を裏切ることがあれば徴とともに祝福も失われる。

実際に白龍からの祝福の力で白龍を討とうとした愚か者がいたのか。


「ロノ、負担じゃないのか?」


祝福の力は大きすぎる。ノーリスクという訳ではあるまい。ロノに負担があるようなら断固拒否だぞ。


『父ちゃんのコアのエネルギーを借りれば大丈夫だよ!』


それならまぁ許容範囲か。だがこちらはコアからエネルギーを持ち出すというのに頼んで来た方が何もなしなんてあり得ないよな。







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