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あ、俺ダンジョンマスターだったわ。


と、本を開いた瞬間唐突に思い出した。

同時にこの空間以前の記憶がないことも、記憶とは違う知識のような情報が脳内に存在することも。


ここは俺のダンジョンだ。

正確にはダンジョンの卵の中と言うべきか。


さっきまで何もなかった薄暗闇の空間に、俺は座り心地の良いソファを創り出す。

まぁこの身体もソファもただのイメージで、物理的にはこの空間には何もないんだけど。


ともかく気分的に本を読むのにちょうど良いソファに座り、長い足を組む。

自分で長い足とか言うなって?

くくく、何せこの身体も俺のイメージ次第だからな。

せっかくだからスタイル抜群のイケメンにしたいし、実際自分がそうなったらそれを自慢したくなるものだ。


とバカなこと言ってないでさっさとライブラリを確認しよう。


──────────

【NON NAME】Level Ⅰ

【種族】ダンジョンマスター(未顕現)

【強さ】弱い

【固有魔法】ライブラリ 閲覧レベルⅠ

【特徴】人型で知能が非常に高く、比較的温厚。ダンジョン未顕現につきコアを内包していない。

──────────


うーむ。ダンジョンマスターは種族なのか。

まぁレベル1だし弱いのは仕方ないな。


ライブラリは俺の固有魔法だ。

閲覧レベルⅠの現在はこの世界での一般的な知識程度しか扱えないものの、いずれはもっと深い情報までアクセスできるようになるはずだ。

今は本の形で手元にあるが、消したり出したりは自由に可能だし、PCやタブレット型にもできるし、なんなら消したままでも閲覧可能。


これは俺の知識欲から生まれた能力であり、本能に刻まれているのか使い方は直感的に理解できる。

そう、極めれば他人の隠された秘密を暴いてしまうだけではなく、魔王や神へと至る知識さえ閲覧可能な、チョー絶危険なシロモノなのだ。



ダンジョンマスターである俺は、マイダンジョンを造らなければならない。

なぜと言われても困る。

ダンジョンマスターとはそういう生き物だからだ。

これはライブラリとは関係のない俺自身に由来する本能だ。



ダンジョンとは生き物を喰らって成長する空間で、ダンジョンコアを内包しているダンジョンマスターを倒すことでその空間を消滅させることができる。

ダンジョンはそのダンジョンマスターの性質を活かせるような環境であったり同じ属性の魔物が多く存在することから、ダンジョンマスターを元にしてダンジョンが成長していると考えられる。


とはいえほとんどのダンジョンは自然環境を模しただけの空間で野生の動物などを誘い込むような罠がある程度、弱肉強食の食物連鎖が営まれているだけの言わば無害な空間だ。

一部の成長したダンジョンになってくると人間を誘い込むような『お宝』が置かれていたりするが、生き物を誘い込む罠という点では他と大差ないだろう。


そんなダンジョンを人間が躍起になって探し出し攻略しようとするのはなぜか。

ダンジョンマスターを倒すことでダンジョンコアが得られ、それは荒廃する土地を豊かにしたり、強力なエネルギー装置として使われたりするためだ。というか人間の生活事態、ダンジョンコアがなければ成り立たないしな。

人間が扱うにはあまりにも強力すぎるため、基本的には国が管理しているはずだが歴史的にダンジョンコアを悪用したトラブルは後を絶たない。


…というのが人間の一般的な認識らしい。ライブラリによると。



ダンジョンマスターである俺からの補足としては、ダンジョンマスターとはコアを吸収した生き物だ。

つまり俺は知らぬ間にダンジョンコアを吸収したため、今まさにダンジョンを造るという本能に突き動かされているともいえる。

ライブラリにあった『コアを内包していない』の意味はちょっと分からないが。


コアを吸収した元となる生き物の性質がそのままダンジョンマスターの自我として反映されるため、知能の低い多くのダンジョンマスターは直感型というか本能型というか、とにかく己の習性にあったダンジョンを造っている。

元の生き物がゴブリンや低級な魔獣の場合がこれにあたる。

ダンジョンマスターにとって活動しやすい環境だったり、得意とする狩場が必ず反映される。

それは恐らく巣作りの延長なのだろう。

ダンジョンに生み出されるモンスターにしても、ダンジョンマスターの生き物としての因子が強く反映されるのだ。子を生み出している感覚なのかもしれない。


それがドラゴンやヴァンパイアなどのように知能の高いダンジョンマスターになると、元々の繁殖域が定まっていない生き物も増えてくるし、ダンジョンに罠のような遊び(・・)が出てくるようにもなる。

ダンジョンの構成も階層によって環境が大きく変化するなど複雑になるので、元の生き物の身体能力に関わらず、人間にとっては難易度の高いダンジョンとなることが多い。


ただし長く生きたダンジョンマスターはその分生き物を多く喰らい様々な因子を取り込むことになるので、元が低級な生き物であったとしても知能が上がる場合があり注意が必要だ。

何せダンジョンで命を落とすのは大半が人間だからな。

人間には生き物の因子という概念はないようだが、たくさんの人間を喰らえばその分ダンジョンは強力になるというのが定説だ。

俺に言わせてもらえば小賢しくなる、という方が適当だと思うけど。



俺?俺は…人間だったのだろうか?

他のダンジョンマスターが生前(?)の記憶を引き継いでいるのかは分からないが、俺の場合記憶や容姿を含むあらゆるリソースをコアが分解してエネルギー源にしたようだ。


多少は自我として引き継いでいるのだろうけど、なにせ何も思い出せないからな!

今の姿にしても適当にどうせならイケメン!とイメージして生み出したものだし。

とはいえ一人称が俺だったり、姿をとるのにヒト型の男が自然に感じるのは、まぁそういうことなのだろう。

ヴァンパイアなどのヒト型の魔物だった可能性もあるし、知能が高い生き物でいえばケンタウロスなんてのもいるので一概には言えないが。


まぁその辺りはどうでも良いだろう。





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