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森が歓喜している。新たな世界樹の誕生を喜び、ダンジョンの中で外で、精霊たちが次々に生まれ、歌い踊る。

俺は世界樹の頂上付近の太い枝に座ってその夢のような光景を眺めていた。


「これは壮観だな。」


「この景色が見られるのもあるじ様のおかげぞ。妾はあるじ様に出会えて本当に幸運だったのじゃ。」


「それはそうとして、のじゃロリやめろ。」

「がーん。」

「いや、がーん。じゃないんだわ。」


元のハイエルフはそんな話し方してなかったぞ。要素詰め込みすぎだろ。話しずらいわ。


「あるじ様ひどいのじゃ。大人のときの方が紳士で優しかったのじゃ。妾には大人の姿をとるほどのチカラは残っておらぬ。本体の世界樹の成長を顕現できるギリギリで止めたから、残りのエネルギーで霊体を表に出せているにすぎぬのじゃ。

 魂のほとんどが本体にあるゆえ分体が幼くなるのは仕方ないのじゃ。大人になるためにはあるじ様のダンジョンのエネルギーを吸い尽くしてしまうぞ。」


わざとらしくエンエン泣くエリンだが、俺はその言葉に一瞬固まってしまった。

そうだよな、さすがにダンジョンだって気付いてるよな。


「エリン…。その…俺が神の子じゃないと気付いただろ?騙し討ちみたいになってしまってごめん。」


謝って済むことじゃないと分かるからこそ結構勇気を出して謝ったのに、エリンはきょとんとしている。


「あるじ様は神の御子であろう?ハイエルフは魔素に敏感じゃ。ダンジョンだとは入る前から気付いておったぞ。

 それでもあるじ様にお仕えしたいと思ったから、妾は今ここにいるのじゃ。あるじ様に騙されたなどと思うわけがなかろ。」


「いや、神の子なんかじゃ…。」

「あるじ様、違うならばそれでも良いのじゃ。あるじ様は妾を世界樹として生み出してくれた。それは妾の願いであり、すべてのハイエルフの願いであり、世界の願いなのじゃ。

 あるじ様は妾の神ぞ。妾にとってはそれがすべてじゃ。」


「そうか…。ありがとな。」


「礼を言うのは妾の方ぞ。妾はあるじ様に感謝しておるのじゃ。」


さすがに長く生きてきただけあるな。見かけの幼さにはそぐわない、田舎のおばあちゃんのような微笑みを湛えるエリンの言葉を噛み締める。コタツがほしくなっちゃうな。


「あるじ様、今何か失礼なことを考えなかったかの。」

「いや、気のせいじゃないか。」


『父ちゃん、ボクもボクも!ボクも父ちゃんといれて嬉しいよ。父ちゃんありがと!大好き。』


それまで俺の腕に絡みついたまま黙っていたロノも頭を擦り付けてくる。可愛い。


「ロノもいつもありがとな。」


わしゃわしゃと撫でくりまわしてもふもふを堪能する。

ロノはクルクルと気持ち良さそうに喉を鳴らしたかと思うと、突然ぽふっと口から光を吐いた。


「うわ、どうした。」


『うーん。父ちゃん、ここはマナがたくさんでボクもうお腹いっぱい。狼たちと遊んでくるね。』


「そうか、気をつけてな。」


ロノは背中の羽根を広げて羽ばたいて行った。

確かにここはダンジョンの中でも特段にマナが濃い。実のところ、世界樹の召喚に4%あったダンジョンコアの充填率が2%まで下がってしまった。エリンを吸収した分をほぼ使い果たしたと言える。

まぁ俺の強化やダンジョンの拡張にポイントを使ったりしたからマイナスではないんだが。


「エリン、新しく生まれた精霊たちはどうなるんだ?」


「これは世界の祝福のダンスなのじゃ。じき魔素に戻るのじゃ。」


ち、ポイント使わずに精霊ガッポリとはいかないか。

俺はコアの充填率を確認しつつ残りのポイントを計算する。世界樹のための魔素濃度はすでに十分キープされている。今後はコアからのエネルギーを持ち出さなくても大丈夫だろう。

エリンに仲間が必要なら呼び出す程度のポイントは残っている。


「エリンは作成してほしいエルフや精霊がいるか?

 ロノのときは遊び相手になるかとサラマンダーを呼び出したけど、あまり意思の疎通ができないみたいなんだ。」


ライブラリを具現化してエリンに配下の作成可能リストを見せながら尋ねる。

エリンはライブラリに驚きながらもリストを見て目を輝かせた。


「ドライアドが数体おれば助かるの。彼奴らは森の管理人。あるじ様のダンジョンの手入れに最適じゃ。」


「エルフは良いのか?」


「エルフとハイエルフは種族として根本的に違うのじゃ。彼奴らはハイエルフを崇めたがるが、我らからするとエルフもヒトも大差ない。特に欲しがる理由もないのじゃ。」


そういうものか。俺はエリンに言われるがままドライアドを適当に呼び出した。

…初めての女性体だ。長い髪を服がわりに身体に巻き付けている。なかなか扇状的じゃないか。


「あるじ様、今不埒なことを考えておらぬか。」

「気のせいじゃないか?お子さまは女性に数えないなんて…考えてないぞ。」


ぷりぷりしながらドライアドらを森に散らすエリン。ドライアドはエリンを揶揄うようにクスクス笑いながら四方に飛んでいった。


「ノームやサラマンダーよりも感情豊かに見えるな。」


「妾を吸収したからであろう。庭のノームらも多少は感情を見せるようになっているはずじゃ。」


「へぇ。ロノもサラマンダーと遊べるかな。」


「アレは元が龍であるからの。精霊よりは魔獣の類の方が親和が高いのじゃ。」


そうなのか。確かに森の魔物はほとんど獣ベースの魔獣だ。何にしてもロノに友達がいるならそれでいいか。





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