ある人物からの電話
契約を結んだ日の次の日の朝、私のスマホに電話がかかってきた。異世界に来てスマホを持っていたことに気づいていなかったが、異世界でスマホが使えるはずがない。私は不審に思いながら通話ボタンを押した。
「おはよう。異世界11日目かな。」
「そうだが、その声は…」
「そうだ、私があなたに力を与えた。」
「今日は高みの見物の感想でも伝えに来てくれたのかな?」
「いやいや、私はそんな性格が悪くないからね。君に謝罪と力の説明でもしようかと思ってかけたのさ。」
「そうですか。こちらも喧嘩腰になってしまい申し訳ない。」
「それはそうだろう。実際私もあなたが異世界に旅立ってからこんな短期間で障害が沢山降りかかってくるとは想定していなかった。それはすまなかった。それでなんだが、君に授けた力を幾つか追加、強化をしておいた。これもお詫びの一環だ。」
「それはどうも。」
「それで詳細はそのスマホを見てほしいのだが、あなたに与えたスキルの一覧と詳細な説明がある。名称だけでも350種類あるからまあしっかりと見てくれ。インストールというスキルを使えば脳内に直接情報を入れられるから使ってみると良い。それではまた用事があれば連絡する。」
向こうから通話が切れた。
「インストール。」
独り言をつぶやくと頭の中に大量の情報が入ってきて眩暈が一瞬した。
『正常化を発動します。』
スキルブックをインストールするとセットで発動履歴も含まれていた。
「今まで使っていたのは異空間収納と、ガイド、そして装具召喚だったのか。」
ぶつくさと独り言を言っているとまた電話が鳴った。
「もしもし。」
「またで済まないね。言い忘れたことがあったと思って。」
「なんですか?」
「評議会の判定の結果、あなたへの賠償に不足があるという話になって、スキルの追加だけでなく、異世界間マーケットへの参画と異世界間マーケットの通貨発行権を譲渡することになった。」
「はあ、それで私にどんなメリットが?」
「異世界間マーケットは異世界の様々な産物を取引できる場所だ。それはそれは色々とある。それ以外にも様々なものがあるが流石に説明しきれないからそれも自分で見てくれ。最後にスキルに慢心せず、己を磨いてくれ。」
「分かりました。」
それで電話が切れた。
『コンコン、』
「はい。」
「康太殿、オルスだ。」
「どうぞ。」
「康太殿、おはようございます。今日から早速仕事を頼みたい。」
「おはようございます、オルス様。そんなにかしこまらないでください。」