意外なオファー
私たちはその後動物に襲われることもあったが、私が討伐し、無事に護衛任務を終えた。
「本当に助かったよ。ありがとう。それだけ腕が立つなら私が直接雇いたいぐらいだ。」
「どうも。」
「それでだが、護衛の任務を更に引き受けてくれないか?」
「いくらでですか?」
「金貨20枚はどうだ?」
「良いでしょう。」
それから一週間ナクルさんと行動を共にすることにした。私が災難を手繰り寄せるせいなのかもしれないが、毎日盗賊に襲われた。始末した人数は100人を超えてしまった。正確には109人だ。
「本当に素晴らしい腕だ。私は何回も死を覚悟したし、他の冒険者だったら死んでいただろう。」
「そうですか。まあ無事でよかったです。」
「それにしても亜空間収納というのは実に便利だな。古代魔術であって、今まで一人しか再現に成功できなかったそうだ。しかもその容量は小物を入れられる程度であったとか。」
「そうなんですか。」
「この街は私の実家の商会が本拠を構えるところなんだ。両親に紹介したいから是非一緒に来てほしい。」
「分かった。だが何かあればすぐに帰るからな。」
「それは分かっている。」
案内されて連れてこられたのはファーデル商会と書いてある豪邸の前だった。
「お坊ちゃま、お帰りなさいませ。そちらの方はお坊ちゃまのお友達でしょうか?」
「父上に紹介したい僕の護衛だ。」
「承知しました。ではお客様も中へどうぞ。」
私は執事とナクルさんに案内されて中に入った。そして長い廊下を歩き、大きな扉をくぐると陶器などの調度品であしらわれた厳粛な客間が広がっていた。
「康太さん、父上と母上が来るまで少しの間お待ちください。」
少しの待機時間の間、メイドが薬草茶を淹れてくれた。薬草茶をすすっているとシンプルで整った身なりの中年の男とシンプルな青色のドレスに身を包んだ若々しく見える女性が現れた。
「彼が康太という冒険者か?」
「はいお父様、かれが冒険者康太でございます。」
「康太と申します。」
「礼儀がよくできておる。私がナクルの父親、オルス、妻のニーナだ。」
「よろしくお願いします。」
「それでナクル、なぜこの方を紹介したいのだ?」
「はい父上、彼は亜空間収納を使えるだけでなく、護衛としても相当の実力を有しております。ここまでの道中我々は毎日盗賊の集団に襲われましたが、彼が全て始末してくれました。」
「そうか。亜空間収納を使えるとはにわかには信じられないが…、一度それを見せてもらっても良いかな?」
「見せるのは条件を呑んで頂いてからです。人払いをし、他言無用にしてください。これが守られない限り見せられません。」
「良いだろう。」
部屋の中からメイド、執事がいなくなると、私は部屋の中の調度品を全て収納した。
「まさか、部屋の物を全て亜空間に収納してしまったのか。」
「そうです。戻しましょうか?」
「ああ、やってくれ。」
私は調度品を元の場所に戻した。
「もう一度やりましょうか?」
「もう十分だ。にしてもナクル、お前はすごい逸材を見つけたな。さて康太殿、この能力を商売で生かしてみないか?」
「考えてみます。」
「それにナクルをここまで一人で守り切ったその手腕もある。是非、商会の輸送を依頼したい。依頼の度に追加で支払うが、基本給は金貨30枚でどうだ?それで我が商会との独占契約を結んでほしい。それとこの屋敷のゲストルームを自由に使ってくれ。」
基本給金貨30枚で、荷物の輸送か。悪くないな。安定した収入も欲しかったし。
「分かりました。その話乗りましょう。」