開業中編
私はそれからモンスターの巣窟であるエリアの近くまでやって来た。夜間であるが、身体強化で視力を強化しているから昼と変わらない視界を確保できている。それで悩みに悩んだ作戦だが、歩兵戦闘車のM2ブラッドレーを20両召喚し、後方でゲパルト自走対空砲が空からの脅威に対抗するという作戦にした。同時に運用の為にアンドロイドを230体召喚し、内70体は私と一緒に残存したモンスターの掃討を行うことにした。口径も最大で35㎜なのでそんなモンスターがミンチになるようなこともないだろう。
「任務を始めるか。」
歩兵用の装備として召喚した小型ドローンの映像を戦闘車の車内で確認していたが、しっかりとまとまっているといった感じだ。
「ブラッドレー全車は横一列に並んで進行し、各自目標を捉えた時点で集中射撃を開始せよ。またゲパルトはその後方から同様に進行し、対空目標を発見次第、迎撃を開始せよ。」
この音声が独自の通信システムを通して配信されると、
「了解」
とどんどん報告されていった。それと同時に作戦が開始された。私は脳内に直接送られてくる情報を確認しながら次の一手を考えていた。M2による集中射撃が開始されたが、身を低くすることで弾幕を回避し、接近しようとする動きや、範囲外から回り込もうとする動きが早速確認された。私は持ち前の身体能力を生かしてそれらのモンスターを刀で切っていった。モンスターを切っていくが、レッドボアに比べてかなり一体一体切るのが重かった。大きさ以上に筋肉や骨が相当に発達しているからだろう。これは確かにこの世界の人間にとって手に負えるものではないことが容易に分かった。だからオルスさんは厄災と出発する直前に耳元で言っていたのか。それでも一応M2の25㎜機関砲は有効であるらしく、数を削ることが出来ていた。はじめは歩兵による最終的な掃討を考えていたが、歩兵の持つものは奴らにしてみれば豆鉄砲でしかない。
「作戦変更、M2を追加で20両召喚する。歩兵は乗り移れ。」
車列は一端前進をやめ、後ろ側に召喚したM2に搭乗員の一部が乗り移るのを確認すると前進を再開した。闘争心が強いのか死体を乗り越えて次々と奴らは突進していく。私は死体を適宜回収しながら撃ち漏らしを片付けていった。雄叫びをあげられればあげられるほど、奴らはどんどん興奮状態になっていくようだ。この作戦は骨が折れそうだ。
歩兵戦闘車を増派してから2時間が経過した。ほとんどのモンスターを始末できたと思う。しかし、問題はここからだった。
「こちらゲパルト一号車、対空目標を確認、かなり大きいです。」
「こちらゲパルト3号車、同様に確認。」
月を背にして巨大な翼を持った何かが羽を広げてこっちに向かってきていた。
「火気使用自由、射撃を許可する。」
射撃の号令を出したが、効いていないようだ。




