我異世界に転生せり
鈴木康太は自転車通学中に事故に遭い、現実世界から退場した。車道を走っていたら後ろで駐車されていた車を避けて車線に復帰してきた車がそのまま突っ込んできたのだ。ひかれた直後に視界が真っ赤になってからすぐに意識が途絶えた。
「お兄さんよ、地球世界はどうであったか?」
真っ暗な世界にいた私に何かが話しかけてくる。それには何故か取り繕って答える気すら起きなかった。
「そんなに悪くなかったよ。でももう少し生きたかったな。」
私は素直に答えた。
「まあ、そうであろう。そなたの魂は未練を強く残している。だが残念ながら前の世界に戻れない。だからどうだ?異世界に転生してみるというのは?」
なにか本能がそうしたいと叫んでいる感覚がした。
「それなら転生したい。」
ひとりでに言葉が出てきた。
「そうじゃろう。そなたは本来この時に死すべき人間ではなかったのだからな。このようなことになったのだから転生先で未練なく過ごせるように私がとっておきのスキルを与えよう。私が初めて犯した失態だ。しっかり償うさ。」
その言葉が聞こえた直後、私は真っ暗すら見えなくなり、意識が途絶えた。
意識が覚めると私は人混みの中にいた。その人混みはそれぞれ鈍器や剣を持って私の方に闘志をむき出しにしている。こんな状況だったら普通パニックになるか動けなくなるかだが、私はなぜか冷静だった。そしてどうするべきかが感覚的に分かった。私は感じたように刀を出し、気がついたらその人混みをまるですし職人がネタを捌くようにサクッと両断し、更に気が付けば一瞬でこの場所を血の海に変えていた。
「ほう、これらは強盗殺人、略奪、人身売買を行っていた集団の一味だったのか。実に面倒なのと関わってしまったな。」
独り言を言うと私は今度は草むらのほうに気配を感じた。
「あれを逃がすと面倒なことになるな。」
私は今度はサプレッサー付きのアサルトライフルで隠れていた奴にヘッドショットを決めた。奴は即死だった。
死肉や血は他の動物たちを寄せ付けてしまう。私は収納に遺体と血の混ざった土を全て回収した。それからヘッドショットで仕留めた間諜らしき人物がいたところに向かってみると、石板のようなものがあった。これは魔法の通信具だろう。私は直観で感じ取った。それからその遺体も回収すると、私はひと段落したので、私は転生から今までの5分間に起こったことを考え直した。不思議なことは以下の点だ。
①何をすべきなのか瞬時にわかり、その通りに動ける
②刀を出せた
③銃を出せた
④別の空間に収納できた
⑤常に冷静だった
この5つはやはりあの声が授けてくれたものであろうか?私はそう思った。