第7話『お盆、夕暮れ、また逢う日まで!』の巻
“印旛沼の呪い?”そして“二人の恋の行方”、“2か月間の出来事で得た教訓とは…?”三者三様の中で其々が見つけた方向性はひとつ!世の中…いや水中世界の中ではあらゆる出来事が予測不能な日常の繰り返し!ま、何はともあれ、人間界でも同様に異常な日常を乗り切るために先ずは『自分を信じ、仲間を信じ、仲間を裏切らず誠実謙虚に生きていきましょう!』…なんて偉そうなことを言える義理ではありませんが、3人の今後の活躍を大いに期待してい期待です!…なんてね!(苦笑)
お盆休みは3日間!そう人間界と同じサイクルで魚人族も皆其々が各家庭に於いて先祖の霊を敬うべくお墓参りを済ませ、家族へお土産方々近況報告や友人達との再会を楽しんで過ごす貴重な骨休みに当たる。だが、今年は例年とは違い世相を反映してか、人間界の動きに鑑みて『外出自粛、おうち時間』の有効活用に専念するよう魚人族政府からの要請に従い、出向者全員が印旛沼会館独身寮にて昼夜を共にすることに!…が、しかし人間界同様、掟破りは何処にでも居るようで…。
「おい、ヌウマ!せっかくだから今日の夕方アヤメちゃん誘って
『サンセットビーチ』に行かないか?」と平八郎が提案すると
「あ?うん…ま、まぁ…うん!」と気乗りしないご様子のテガヌウマ!
「せっかく印旛沼に来たんだから、その景色を拝まずして沼の将来を語る資格はないぜ!」
って何度も誘いをかけるも依然と冴えない生返事を繰り返すヌウマにとうと痺れを
切らした彼は、徐に身を乗り出してヌウマへの背後からそっとタブレットPCを覗き込んだ。
~『13の悲劇!今も謎に包まれた“印旛沼の呪い”再び…?』(利根新報社説欄)~
「おい、おい、ヌウマ!お前まだ拘ってんの?あれって“幽霊の仕業なんか
じゃないぜ!”って散々言ったのに…それに…!」
「平八!その『サンセット何とか』って所の傍に墓地公園があるだろ?
俺、そこへ行きたい!って言うか、そこへ行ってみるよ!それならOKだろ?
調べたいこともたくさんあるし…。」
何だかモヤモヤした気分の平八郎ではあったが、気を取りし直して2人を連れ『印旛沼サンセットビーチ』へ!鮮やか過ぎる夕陽と沼地そして風車小屋の建物が絶妙なコントラストで花を添え、絶景空間に大満足の平八郎と管理栄養士の資格を持つアヤメ(←「へぇ、そうなんだ!今初めて知った!ナレーターのくせに調査不足とは…?失格の極み!」)
「アヤメちゃん、『下手賀沼』の出身なんだって?都会じゃん!俺さ、『古利根沼』出身!ハハ…田舎もんだね!」
「そ、そんなことないですよぉ!おじいちゃんの話だと元はあの雄大な『利根川』の一部で人間の都合で切り離され、干拓地化されたんでしょ?何て酷いことするのよ!って私、思いました!人間って本当許せない!自分勝手な都合で事を進める『手賀沼一族』となんか似てて…ヤダ、大キライ!」
「あ、有難う!俺の地元のこと、そんなに詳しく知ってるなんて…びっくりだなぁ!ってか凄く嬉しいなぁ!地元民だって知らない若者大勢居るのに…!大感謝!流石『下手賀のお竜さん』!ハハハ!」
二人の和やかなムードをよそに一人だけ離れた所で墓地公園入口に佇み、熱心に
慰霊碑に書かれた文言を一字一句端から端まで読み尽くすテガヌウマ。
~…13名の未だ救われぬ御霊に鎮魂の祈りを込め、湖底深く沈めんものとす~
夕食はいつも通り、寮の大広間にて定刻通り、定位置にてヌウマを含め、12名が一堂に会し合掌の合図で宴が始まる。…が、ひょんな事に(←「失礼!」)
今日に限っては、『盆の入り』、初日ということもあってアヤメも同席し
総勢13名が揃って会食を始めることに!
「あのぉ~平八郎さんの横、空いてるみたいなんでぇ、隣に座ってもいい
ですかぁ~?」アヤメの問いかけに当の本人はもう大はしゃぎ!一方のヌウマは
男二人の間に同席する彼女の強引さに困惑顔、浮かぬ顔して“命乞い”?!
「じゃあ、俺達3人の今後の活躍祈って“カンパーイ!”
ノンアルなのがちと空しいけど…!」
平八郎の音頭でいざ食べ始めるが早いか突然、部屋の明かり全てが消灯→点灯→消灯を繰り返し始めた!その不自然な動作が計6回、正にモールス信号みたく…
『コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!』
7回目で完全復活を遂げた明かりの下、更に一際大きく響くの“アヤメの悲鳴”!
「キャー!!!!」
何とヌウマ、アヤメ、平八郎の眼前で白目を剥いた寮生達10名が
箸やフォークを振り上げて暴れだし、3人目がけて一斉に襲い掛かって来た!
余りの恐ろしさにヌウマは、腰を抜かした上、アヤメに抱き付かれて身動き取れず
慌てふためき、しどろもどろの大絶叫!
「あ、あわわわ…!た、助けて…!もう、だ、ダメだぁ!水神様ぁー!」
「この言いなり、バカ集団ども!俺の大好きな“磯辺揚げ”を台無しにしやがってー!!!!」
殊、食べ物に関して目が無い平八郎だけに彼は異変に動じるどころか、
鬼の形相で怒鳴り声を上げ、即座に手に持った皿を
ある1点目掛けて力いっぱい投げつけた。
『ガシャーン!』→『パリパリパリ‼』→『リ、リ、リ、リ―ン…!』
非常ベルが大音量で鳴るや否や寮生達は皆正気に戻り、同時に幹部職員らが一斉に現場へと駆け付け、暴動はあっと言う間に鎮圧された。そしてその後3人は寮生10名らと共に散乱した椅子や食べ物を片づけることに…。
「食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ!バカ野郎!」そう呟く平八郎に寄り添い、
ヌウマは彼に向かって尊敬の意味も込め、そっと尋ねてみた!
「平八郎!君のその“祟り”にも動じない、その“くそ度胸”って一体どこから湧いて来るんだい?怖いもの絶対無いよね、この世の中に…!」
「“祟り”じゃないって!お前何処まで非化学的なんだよ!知らないの、『サブリミナル効果』の話?アイツら、ただ単に集団催眠状態に掛かってただけでどっかで一斉に目を覚まさせないと元に戻らないって分かってた!だから一種の“ショック療法”をかましてやったの!それと奴ら『ブーメラン効果』で自滅?(笑)指令班の1人をとっちめて訊いたら素直に白状したぜ!この間の“霊の声”事件!スマホの録音機能を利用して丑三つ時に再生するよう廊下にセットしてあったんだってさ!5963な奴ら、全く…!自分らで嫌がらせしといて逆に変な集団催眠に掛かってりゃ世話ないよ!(笑)」
翌日の幹部会議で昨日の暴動騒ぎが問題となり、アヤメを除く12名が罰として残り2日間を印旛沼の湖底内清掃作業に従事させられる羽目に…。除草、ごみ拾い、沼地整備全般!
「何で俺らもやらなくちゃらならないんだよ?」と独りぼやく平八郎に対し
「あれ?あれあれ?『俺達2人供、幹部に嫌われているからさ!』って
忠告してくれたの、一体誰だっけ?」とヌウマ!
そう問い詰めた後に彼は蚊の鳴くような声でぼそっと…
「だ、だってさ…最後の楽しみに取って置いた大好物、踏みつけるんだもん!」
「あんだって?小声じゃあ、じぇんじぇん聞こえましぇんよぉ!」とヌウマ!
「もう…ヌウマのイケズゥ~!」BY 平八郎!
~2日めの夕方、ヌウマは1人清掃用具を返しに地下1階の別室へ~
カミツキガメのトメさん(館内清掃作業員)から聞いた話だと
『あの曰くつき“沈んだ13の墓石”は未だ誰にも発見されてなくて…湖底深く
眠ったまま』なんだそうだ!
それを聞いてヌウマは一層心を痛め、供養も兼ねて沼の慰霊碑へと向かい、
献花を行い、そして更にその場で一人静かに黙とうを捧げた。
「平八郎が言ってた“丑三つ時”って確か夜中の2時頃だろ?しかも『アラーム音以外セットしてないって奴ら嘘言いやがってさ!』って平八郎が言ってたけど、だとすれば、あの“集団催眠”を仕掛けた張本人は、間違いなく…?」
あっと言う間の2カ月間が終わり、出向研修事業は無事閉幕…と!
ヌウマは『平八郎』と再会を誓い、固い握手を交わして散開することに!
それからと言うもの、彼とは8/31の退所式以来一度も会っていない。
一方『アヤメ』ともそれっきりで「『鮮魚街道』まで一緒に帰省して上げてもいいんだけど…!」っていう上から目線的お誘いにも僅か1秒で断ってしまった。
悪い奴じゃないんだけど…う~ん、何と言うか…“三角”?イヤ…????(←「『関係』
ではございません!」)
「ま、いいっか!な!」
「そうそう、『手賀沼』のPちゃん、トン吉にもお土産方々
いろいろと話して上げたいな!『まだ見ぬ世界を知る!』って
案外面白いもんだよ!」ってさ! (終わり)
全7回に渡り、ここまでご閲覧下さった皆様方へ心より深くお礼申し上げます。これを以って『湖沼血風録』(シーズン1)を終了します。内容に関しましては全て私自身の創作によるもので登場人物やその他史跡景観に纏わる噂話等につきましても一切事実無根、架空の話です。ご了承下さいませ。 のがみつかさ