第6話『‟真夏の世の…ヒステリー?”』の巻
何と前回といい、前々回といい主役を食っちまいそうな勢いの『古利根沼平八郎』!何か滝沢馬琴先生の書かれた『南総里見八犬伝』にでも出てきそうな侍染みた名前だな?(←「いえいえ、絶対パクってませんよ!それだけは絶対!盗作は犯罪です!」)余りの個性の強さに圧倒されてるだけの話でして「おい、主役よ!もちっとしんかりせんかい!」とお叱りを受けそうなテガヌウマ君!それにしても“草木も眠る丑三つ時”って昔の人間も考えたもんだなぁ?ミステリーじゃあ、ござんせん!「怒れ、平八!“意思無き、言いなり、エリート育ち供に天誅を!”「喝―っ!」
2週間の研修期間も終わり、愈々今週から残り1ヶ月ちょっとは当沼の臨時自治体職員として水中住民のお魚さんや魚民の方々のサービス向上に努める運びとなり、忙しさも倍増!座学に苦しんでた頃とは違い、如何に素早く、如何に的確に問題を対処できるかが勝負の世界!口ばっかしで行動が伴わない者は即地元へ強制送還され兼ねない事態の中、朝礼を通して指令班と行動班の発表が成されることに…。前年度だと研修を受講したほぼ全員が指令班に回る筈が今年度は異例の発表に驚く2人の若者!
「え~それでは指令班の主力メンバーを発表致します!まずは班長の沼井!」「ハイ!」
「続けて“沼野、沼底、沼地獄、沼浅井、沼深杉”…以上10名ヨロシク!」「ウィース!」「りょーかい!」
「…で、本年度に限りですが、行動班は“古利根沼”そして“テガ”の2名と致します!以上!」
「へぇ~驚いたねぇ!おい、ヌウマ!今の発表聞いたか?まさかとは思ったけど、こんな結果になるとはねぇ…俺、思いも寄らなかったよ!10名全員‟沼なんとか“で始まる名前だなんてさ?最後の奴なんて“沼志吹飛蔵”だって!『ぬましぶきとぶぞう』?(笑)」
「あのね、平八!そこじゃなくてさ、何で俺とお前だけ外されんの?しかも今年だけ…?」
「いいって事よ!気にしない、気にしない!俺もヌウマも幹部の奴らにとては目の上のたん瘤、嫌われ者なんだろうて…!上等じゃねえか!思いっきり暴れてやるぜ!」といきり立つ平八をよそにヌウマはこれまでの自分を振り返ってみるも中々思い当たる節が見当らず、更に自問自答して苦しむことに…!
「なぜだ…なぜなんだ?Why?」
…と悩む暇なくその日から早速仕事開始!ということで印旛沼コールセンターに朝早くから鳴りっ放しの電話のベル!その大半が苦情と要望の嵐!何台もの電話が鳴ると同時に全ての指令が2人に集中!一つが解決しないうちに立て続けに次の指令が…?
「はい、こちらテガ!えっ?今どこ?って沼地Aだけど…『えっ?B地点からD地点迄の点検整備よろしく!』って…まだA終わってないよ!それに…⁈」そう言うが早いか、電話は『プツリ!』と切れ、更に別の電話で指令が…!平八郎も同様にヌウマとは離れた所でガチ切れの塩対応!
「るせぇ!お前ら、『あれやれ!これやれ!』ってやらされる身にもなってみろよ、この野郎!人を何だと思ってやがんだ!ふざけんな!」
『プチ!ツッツッツー…!』この繰り返し!
~どう見たって、どう考えたって10対2じゃ合わないからせめて5対5にして欲しい!~
そう要望したにも拘らずその後幹部が下した人数は6対4止まり!それでも日によっては7対3でやらされることも…!一気に2人は地獄の日々を送る羽目に…!あちらこちらと動き回っては肉体労働の毎日!キツイにも程があるのだけど、平八郎には楽しみな夕食タイムが彼を支えていたと言っても過言ではないだろう!正に“愛の力”…恐るべしである!
その日もいつも通り一日の仕事を終え、大広間で平八郎と並んで夕食を食べてると彼から穏やかな口調で前回の一件を切り出されることに!
「ヌウマさ!この間デザートの件でアヤメちゃん怒鳴ったんだって?血相変えてさ!」
「あ…あ、まあね!いろいろとあってさ!思うところもあって、つい感情的にね!悪いことしたって思ってる!反省したよ!もう絶対怒鳴らないって約束もした!」「誰に?」
「鏡の中の自分に…!」
ヌウマがそう言うと平八郎は大声で笑った!
「少女漫画かよ、お前? ま、いいんじゃないの!それくらいあってさ!男ってそんなもんだろ、大体…!何でもかんでも『Yes!』しか言えねぇ馬鹿供にくらべりゃ上出来だよ!最高!」
そう言うと周りにわざと聞こえるよう大声で笑う平八郎と対照的にざわつき始める大広間。
するとヌウマはただならぬ気配というか殺気を感じ、慌てて止めに入ることに…!
何と大広間で食事を共にしてた指令班の奴ら全員がもの凄い目つきで2人を終始睨みつけているのだ!
「マ、マズイよ、平八!何か知んないけど、変な空気になってるよ⁈」心配顔のヌウマ!
「ほっとけ、ほっとけ!って!今始まったことじゃないんだからさ!自覚症状作戦、大成功!」
そう言うと平八郎は、ヌウマを残し厨房へ小走りし、お盆を返す傍ら愛しの君にお礼を一言!
「ご馳走様でした!あ、そうそう、アヤメちゃん!ヌウマがさ、『この間はご免ね!』だって!こんどアイツが怒ったらタバスコ、ハバネロ入りジュース飲ますといいよ!バイビー!」
真っ赤な顔して一言も言えず、お盆を返すテガヌウマ!(←「『ご馳走様!』ぐらいきちんと言いましょうね!」)
翌朝午前0時、いつも通り平八郎と相部屋で就寝していたヌウマは廊下から微かに聞こえて来る異様な物音に目が覚め、暗い部屋を電気も点けずきょろきょろと見渡す彼!
「ん?き、聞こえる!な、なんだ?このガマガエル潰したような濁声の叫びは…?」って言うが早いか、平八郎の鼻をぎゅっと摘み、寝顔に向かって一言!「うるちゃい!」
「ヒタ!ヒタ、ヒタ、ヒタ…!」足音は次第に小走りするように鳴り響いて来る!
「だ、誰だろ?今時分こんな夜更けに廊下を走ってるなんて?何でだ?トイレだったらこの部屋とは逆方向だろ?こっちはここで行き止まり!俺達以外に用は無い筈だし…」
話を蒸し返すようで悪いが、ヌウマはまたアヤメのこと、連想してた!『アイツ、性懲りも無くまた?』って…それにしてもこんな夜更けに随分度胸のあること!『下手賀のお竜』って一体何だ?“女忍者”かよ?…と。
下らぬ想像とは裏腹にドアをそっと開けて廊下を見渡すもそこに人影はなくただ赤い通路灯が無言のまま、光ってるだけ…。だが次の瞬間ヌウマは背筋に冷たく凍るものを感じずにはいられない事態に…!
「殺せ!殺せ!13揃えて 皆殺せ!
あの日の恨み 晴らす今宵の 宴にて!」
「殺せ!殺せ!13揃えて…!」
廊下全体に幾度となく聞こえて来るお経じみた呪文のような暗く悲しい叫び声!
そして足音は更に数を増して徐々に大きく音が鳴り響いて来る!
「ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ…」そして「殺せ、殺せ…」の大合唱が永延何度も繰り返され…!
余りの恐怖に体が震え、ドアを閉めると思わず毛布被って蹲り、半金縛り
状態のテガヌウマ!でも疲れからか、そのまま熟睡し朝を迎えることに…。
「おい!ヌウマ、起きろ!遅刻するぞ!
早く行かなきゃ、また怒鳴られるぜ!」
いつもならヌウマが先に起きて平八郎を起こして仕事場へ向かうんだけれど、
その日に限って立場が逆転し、何も喋れず一人黙々と布団を片し、着替える
テガヌウマ。すると平八郎は何気なく真顔でポツリ、彼に向ってこう告げた。
「そう言や真夜中に誰かこの部屋訪ねて来たみたいだな!13がどうの、こうの
って…うるせぇったらありゃしねぇ!“印旛沼の妖怪、遂に姿を現す!”ってか?しかもこの俺様の大事なお鼻ちゃん、摘まみやがって!見つけたら、絶対ただじゃおかねえからな!ぶっ飛ばしてやる!」
ヌウマは平八郎の言葉に顔を引き攣らせ乍も終始無言のまま…。それよりも昨夜の一件は『もしかしたら指令班の奴らの嫌がらせなのかも…?』と無理矢理自分に言い聞かせ、彼らとはなるべく距離を置いて行動するよう心に決めた。
次回もお楽しみに のがみつかさ
「はーい!どうも!テガッちの刺客『下手賀のお竜』こと、鯉アヤメでぇ~す!(←「そこ、明るく言うところじゃないから…?!」)相変わらずJK言葉が抜けましぇ~ん!愈々回も大詰め、次回は涙、涙の(…にはならないと思いま~す!)最終回…(⁈)かどうかも良く分かりませんが、私の出番はあるのかなぁ?セリフも一言だけ?…なんて止めてよね!もしそうなら迷わず『お命、頂戴致します!』それじゃ、またね!チャンネル登録はコチラから!(←「Youtubeじゃないんだぞ!他人の仕事横取りするんじゃない!」って…!BY ナレーター