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前半戦

オーバーラップ‥‥ボールを保持しているプレイヤーを後ろの選手が追い越していくプレーのこと。

バックパス‥‥後方にいる味方へのパスのこと。

スルーパス‥‥ディフェンスラインの裏などのスペースへ抜けていく選手へ合わせるパスのこと。

落とす‥‥主に相手ゴール前でヘディング(頭でボールを頭に当ててコントロールする技術のこと)などを用い、味方がシュートできるようにパスすること。

ヒールキック‥‥踵で蹴るキックのこと。

ボレーシュート‥‥空中に浮いているボールをシュートすること。

インターセプト‥‥相手が出したパスを途中で止めてボールを奪うこと

ヘッド‥‥ヘディングのこと。

センターサークル‥‥ピッチの真ん中を中心とした半径9.15mの円のこと。

横パス‥‥横方向にいる味方へのパスのこと。

フリーキック‥‥試合中に何らかの反則があった時、反則を受けた側が反則を受けた地点からプレーを再開すること。

コーナーキック‥‥守備側の選手が触れたボールがゴールラインを越えてピッチの外に出たとき、コーナーアーク(ピッチの隅)からのキックによってプレーを再開すること。

ミドルシュート‥‥ペナルティエリア外やライン上付近から放たれるシュートのこと。


上が赤、下が黒のユニフォームを着た唐冲の選手と上が青、下が白の横浜の選手がピッチに散らばる。


唐冲ボールで試合が始まった。


大石が永田にパスを出し、永田が阿部に、阿部から丸山にパスが渡る。


丸山がドリブルで進み、対面した7番のサイドハーフを抜こうとする。


しかし相手の7番は時間をかけさせ、5番のディフェンシブミットフィルダーが守備をする時間を作る。


丸山がオーバーラップして来た北条にバックパスをする。


ボールを受けた北条が丸山にスルーパスを出す。


丸山がフリーでボールを受け、クロスを上げた。


永田が頭で左側に落とす。


そこには大石が待っていた。


誰もが大石のダイレクトボレーシュートを予想した。


しかし大石はボールを股の間を通し、ワンバウンド直後のボールをヒールでシュートした。


キーパーの川口は一歩も動けず見送るしかなかった。


ピッチの中は驚いた顔が並ぶ。


一人大石だけが控え目なガッツポーズをする。


「‥‥ナイッシュー」


阿部が手を叩いて称賛した。




横浜の選手がセンターサークルにボールを戻し試合再開される。


1点取られて本気になったのか、横浜の迫力ある攻撃が来る。


相手ボランチがパスを繋ぎ、リズムを作りながら中村からのスルーパス。


これは小柳がインターセプトした。


クリアボールが丸山に渡るがすぐに奪われる。


そこから相手の7番が一気にドリブルで持ち込み、北条を引き付けクロスを上げた。


これは山井がヘッドでクリア。


それを中村が拾う。


中村が城にパス、城がワンタッチで相手の11番に渡した。


11番が前を向く。


北条が前から、大島が後ろから当たりに行く。


11番は横パス、走りこんでいた中村がミドルシュートを放った。


坪谷が飛びついたがボールはゴールネットに突き刺さる。


同点に追い付かれた。


城が1点じゃ物足りないのかボールを持って中央に向けて走る。


事実、そこから横浜のゴールショーがスタートした。


こちらの守備陣の連携ミスから取られた相手のフリーキックを中村が直接、永田が下がり過ぎたためにオーバーラップして来た井原のミドルシュート、クリアが味方に当たり取られたコーナーキックから城のヘディングを決められて前半40分が終わる頃には1−4で3点差がついていた。


ハーフタイムになる。


雰囲気は最悪だ。


しかし下村だけが微笑んでいる。


全員が下村の周りに集まる。


「後半に向けて、何が必要だと思いますか?」


全員が面食らう。


そんなことを選手に聞く監督はおそらく世界でこの人以外いないだろう。


一番初めに北条が口を開いた。


「‥簡単だろ、こいつらのどっちかを木村に交代させろ」


北条と俺と永田を指差す。


「それは無理です。木村君のスタミナは後半40分は持ちません」


「なら津田を入れろ、今の2トップじゃダメだ」


津田春輝つだしゅんきはフォワード兼オフェンシブミットフィルダーの選手。


日本人版ロナウジーニョのような男だがテクニックはさほどではなく、身体能力がずば抜けている男だ。


「ダメ、じゃない」


永田が呟くように反論する。


「いつまでも前線に残って守備をしないから点取られてんだろうが!」


「俺が下がると、井原が上がって来る」


「2トップが前線に残ってないとあの3バックの誰か一人がオーバーラップしてくるからな」


大石が永田に便乗する。


北条が言葉に詰まる。


「こっちの失点は連携ミスと井原の個人技って言い切っていい。だからこのチームが変わるかどうかはお前らしだいなんだよ、北条」


「あぁ!? てめぇには関係ないだろうが!」


北条が大石の胸ぐらを掴む。


「北条!」


「やめろ!」


小柳と丸山が北条を羽交い締めにする。


「呼多真!」


誰かが北条の名前を呼んだ。


観客の中の一人だった。


「相変わらずだな」


「鈴木先生‥‥」


坊主頭で眼鏡をかけた小柄な男が鈴木良太のようだ。


唐冲の誰もが驚いている。


木村だけがニヤついている。


北条が鈴木の近くに行く。


「その茶髪君の言う通りディフェンスはいくら個々の能力が高くても連携がなければ上手くいかない」


「ですけど‥!」


「俺のために頑張ってくれるのはありがたいけどな」


「! 何で‥」


「木村から聞いた」


北条が木村を睨む。


木村はニコニコと笑うだけだ。


「お前らには才能がある。だからそれを潰すのは忍びない。お前らはお前らのためにサッカーをするんだ」


「‥わかりました」


「ちゃんとみんなて仲良くな」


「はい」


北条はそう言ってチームの中に戻る。


顔から怒りは消えている。


北条だけでなく、全員が勝つ、という意志を感じた。


木村の『秘策』は成功したようだ。


下村がポンと手を叩く。


「皆勝つために何をすればいいか、理解したみたいですね」


全員が頷く。


「交代はありません。では、行って来て下さい。あなた方なら必ず勝てます」


「ハイ!」


全員が返事して、11人がピッチの中に入った。


絶望的な点差、圧倒的に攻められ勝ち目はないような試合。


それなのに、負けるとは全く思わなかった。


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