練習試合
U-18日本代表‥18歳以下の日本代表。
U-17日本代表‥17歳以下の日本代表。
サイドバック‥4バックのディフェンスラインの外側、左右両サイドに位置するディフェンダーのこと。
4-4-2‥キーパー以外のフィールドプレーヤーの選手のフォーメーションの呼び方の一つ。後ろからディフェンダー、ミットフィルダー、フォワードの順。4-4-2の場合はディフェンダー4人、ミットフィルダー4人、フォワード2人ということ。現在は4-3-1-2等4列表記が基本になっている。
ファンタジスタ‥奇想天外なプレーをする選手。システムや戦術を重要視する近代サッカーではなかなか存在するのが難しい。
エレンシア横浜ユースとの練習試合の日になった。
前日までの練習で阿部や大竹達はパスを出さないようになっていたが、北条達はパスを出していないままだ。
相手の練習場まで、バスでやって来た。
唐冲と違い練習場が3面あり、全て芝だ。
「すごいね〜」
木村が感心している。
「そうなの?」
「ユースの練習場だけでこれだけ広いのは日本ではかなりめずらしいんだよ〜」
「へぇ」
「あ、来ましたよ」
藤原が皆に伝える。
相手チームのエレンシア横浜ユースが姿を表す。
「‥‥フルメンバーだな」
「みたいね〜」
相手の選手が一人こちらを見て驚いたような表情になる。
男がこちらに向かって歩いて来る。
「君がキャプテン?」
男に話し掛けられた。
大石は首を横に振った。
「‥‥俺です」
阿部が前に出て来た。
「そう‥‥キャプテンの城明だ。今日はいいゲームにしよう」
二人は手を前に差し出し、握手をかわす。
城はくるりと背を向けるとチームメイトがいる方に戻って行った。
「どうしたんですか、キャプテン?」
ゴールキーパーであろう大柄な男が城に尋ねる。
「今日の試合は面白くなりそうだぞ、義明」
「‥‥?」
両チームともアップを始めた。
「あっちのキャプテンは有名な人なの?」
大石が周りを見渡しながら聞く。
ファンと思しき人達がちらほら見える。
「U−18日本代表のストライカーだからね〜。でもこの人達は城だけを見に来てるわけじゃないよ〜」
「そうなの? まぁ強豪なら他にも凄い選手いるだろうけど」
「ゴールキーパーの川口義明はU−17日本代表。時折みせる神懸かり的なセーブと味方を叱咤激励する姿から『軍神』って呼ばれてるよ〜。『ザ・ウォール』こと井原正樹は城と同じU−18日本代表〜。代表では4−4−2のフォーメーションだからセンターバックだけど3−5−2のフォーメーションのユースでは積極的に前線に上がって攻撃参加するリベロだよ〜。『ハマのファンタジスタ』中村俊也は中学時代には欧州留学にも行った横浜だけじゃなく日本中が期待してる選手〜。運動能力は並の上ってところだけど技術は日本屈指のトップ下だよ〜」
「つまり凄いんだ」
木村が頷く。
「今のままなら確実に勝てないよ〜」
「よ〜ってお前‥‥阿部達は説得出来たんだからお前の秘策って奴にかかってるんだ」
「大丈夫〜」
「すっげー不安なんだけど」
試合が始まろうとしている。
横浜も唐冲も3−5−2のフォーメーションだ。
唐冲のスタメンはゴールキーパー坪谷、センターバック小柳、北条、山井、ディフェンシブミットフィルダー大島、大竹、右サイドハーフ藤原、左サイドハーフ丸山、オフェンシブミットフィルダー阿部、フォワード永田、大石だ。
唐冲は円陣を組まずにピッチに散った。
試合が始まる。