初練習
ピッチ‥‥試合する場所。
サイド‥‥ピッチの横。
オフェンシブミッドフィルダー‥‥フォワードの次に攻撃的な真ん中の位置のポジション。
サイドハーフ‥‥サイドに位置するポジション。
ディフェンシブミッドフィルダー‥‥ミッドフィルダーの中で一番後ろで守備的なポジション。
トラップ‥‥ボールを受け止めてコントロールすること。
ドリブル‥‥ボールを運ぶ技術のこと。
パス‥‥ボールを味方に渡すこと。
横パス‥‥横にパスすること。
シュート‥‥ゴールを狙ってボールをコントロールすること。
ナイシュー‥‥「ナイスシュート」の略。
アーリークロス‥‥センタリングの一種で相手DFが戻りきらないうちに、ディフェンラインとGKの間を狙って、浅い位置から早めに入れるクロスのこと。
ダイレクトシュート‥‥トラップせずにシュートを打つこと。
センタリング‥‥サイドからペナルティーエリアの中にボールを出すこと。
クリア‥‥自分達のゴール近くにあるボールを遠くにはね返すこと。
ヘディング‥‥空中でボールを頭に当ててコントロールする技術のこと。
スライディングタックル‥‥相手の足もとに滑り込み、ボールを遠くに蹴り出すタックル。
ゴールキーパー‥‥サッカーで唯一手が使えるポジション。基本的にゴール前で構えている。
センターバック‥‥ディフェンスライン中央のゴール前方に位置するディフェンダーのこと。
フォワード‥‥フォーメーション(布陣)で一番前にいる選手。基本的には得点能力が高い選手が起用される。
ミニゲームが始まろうとしている。
ミニゲームはピッチの半面を使い、右側から左に攻める攻撃側、その攻撃を抑える守備側に分かれている。
サイドの選手は攻撃側と守備側を交代しながらやるようだ。
最初はフォワードに大石と木村、オフェンシブミットフィルダーにバンダナ男、左サイドハーフには身長180センチくらい、中肉中背で黒い目に黒髪がボサボサの男。
右サイドハーフには容姿端麗、黒髪で長髪の身長165センチくらいの男。
小柄でかなり細身だから、一番接触プレーが少ないサイドに配置されたのだろうか、というくらいフィジカルが弱そうだ。
相手はサイドハーフが二人、ディフェンシングミットフィルダーが二人、センターバックが三人だ。
「試合、始めるよ!」
岡本が大きな声で叫んだ。
試合はバンダナ男がパスを出すところから始まる。
バンダナ男は右サイドハーフにパスを出す。
右サイドハーフの選手がボールをトラップ、そのままドリブルで仕掛けた。
相手サイドの選手と1対1の場面となるが、バンダナ男に横パスする。
バンダナ男から、まるでシュートのようなパスが大石に出される。
大石は相手のディフェンダーを背負いながら見事にボールの勢いを殺し、キープする。
2秒ほど待つと味方の左サイドハーフボールをもらいにサイドラインを駆け上がって来た。
そのまま左サイドハーフにパスを出すことも出来たが、大石の脳裏には木村の言葉が浮かぶ。
(こいつらの力だけで勝とうとするんだっけか、確か)
大石はディフェンダーの意識が左サイドハーフに移ったのを感じた。
大石はボールを相手の股を通し、自分は相手ディフェンダーの右側を通る。
完全に相手ディフェンダーを抜いた。
想定外の状況にゴールキーパーの反応が一瞬遅れて前に飛び出す。
すかさず、大石が真横にパスを出す。
そこに木村が走り込む。
木村の速さを計算したかのようなパスを木村がダイレクトでシュートを放つ。
ボールは無人のゴールに収まった。
「ナイシュー」
大石が木村に声をかけた。
「ナイスパス」
木村が大石に返した。
「次!」
岡本が大声で指示を出した。
次のミニゲームは大石は出なかった。
大石は座ってピッチの外からミニゲームを見ていた。
「‥‥お見事」
バンダナ男が声をかけて来た。
「ありがと‥えっと‥‥」
「‥‥阿部雅人だ、大石」
阿部は大石の隣に座る。
「‥‥相手の意識が自分から別な選手に変わるタイミングで抜いて、ゴールキーパーが前に出てくるところで木村がダイレクトで打てるぎりぎりのタイミングでパス‥‥広い視野と卓越した技術を持ち合わせてなきゃ出来ない」
阿部がぼそぼそと喋る。
「‥‥でもストライカーとしては0点のプレーだと思う」
「それって褒めてるの? けなしてるの?」
「‥‥どっちでもない。ただの事実」
阿部がそこまで言うと、岡本に呼ばれ、次のミニゲームに参加するべく、立ち上がった。
一時間程経ったころだろうか。
一人の男がグラウンドに現れた。
「すいません、遅くなりました」
男は大石と同じくらいの背格好でジャージ姿、黒髪を短く刈り上げてある。
「ホント遅いです、下山先生」
木村がそう言って、ミニゲームが中断する。
下山はそのままキーパーグローブをつけて使って使わなかった方のゴールに歩いている。
「次、全面使ってミニゲームやるから、2チームに分かれて」
木村がそう指示すると、じゃんけんが始まった。
勝ったチームと、負けたチームに分かれるらしい。
大石は木村とじゃんけんをして勝った。
二チームに分かれる。
大石はチームの面々に自己紹介してもらった。
さっきまでゴールキーパーをしていた170センチ弱しかなさそうな黒髪、短髪の少年は坪谷友紀。
やや淀んだ目をした180センチくらいの黒髪で長髪、髪が目にかからないように細い紐状のヘアバンドをつけた容姿端麗なセンターバックが小柳和洋、黒髪の短髪で身長が大石より若干高いプロレスラー並の筋肉を持つ大型CBが山井陽明。
大石と同じくらいの身長で、無造作に髪をいじってあるディフェンシブミッドフィルダーが大島穀人、先程の細身の右サイドハーフは藤原漣、ぼさぼさ頭の左サイドハーフは丸山向陽、オフェンシブミッドフィルダーには阿部。
フォワードは大石と背格好が大石と全く同じで、女性十人いたら十人全員が振り返るような顔立ちをし、長い黒髪をヘアゴムで縛った永田怜來。
岡本の笛で試合が始まった。
大石と永田がピッチ中央に行く。
永田が大石の前にボールを転がして試合が始まった。
大石は後ろにパスを出すと、阿部がさらに後ろにパスする。
小柳が左サイドの丸山にパスを出す。
丸山はすぐに永田にアーリークロスを入れ、永田は胸で一度トラップして走り込む阿部にパスを出す。
阿部がダイレクトシュートを打つが、相手ディフェンダーが足を出して弾いた。
ボールは右サイドの藤原に渡る。
藤原がドリブルでペナルティーエリアの隅まで運び右足で永田に向けセンタリングを上げた。
センタリングは相手ディフェンダーがヘディングでクリアしたが、クリアボールを大島が拾う。
大島がペナルティーエリアよりもずっと前にいて、ゴールに背を向けていた大石にパスを出す。
大石は永田にパスを出せば確実に一点が取れるような位置にいるのを確認していたが、先程の阿部の言葉を思い出した。
『‥‥でもストライカーとしては0点のプレーだと思う』
やってやろうじゃないか。
大石はゴールの方に振り向き、丸山の方に視線を移す。
相手がそれにつられ足に体重をかけたところで右から抜く。
右側から相手がスライディングタックルを仕掛けて来た。
大石はボールを足で挟んでジャンプする。
相手はスライディングしたまま大石の足の下を通り過ぎる。
ペナルティーエリアの中に入る。
そこからシュートを打つことも出来たが、もし目の前のDF一人を抜けばGKの下山と1対1になる。
大石はそちらを選択した。
DFが大石との間を詰める。
大石はボールをDFの股の間を通し、自分は左から抜けた。
ボールをラインぎりぎりで止めてラインの上でドリブルをする。
少し下山が前に出る。
大石はそこから右足で大きく蹴るふりをした。
下山はシュートを打つと思い、シュートを止める体制になったため、一瞬動きが止まる。
その隙に下山の右を抜き、無人となったゴールにボールを蹴りこんだ。
岡本が笛を吹く。
味方の選手が自陣に戻る。
阿部がぼそぼそと話し掛けて来た。
「‥‥お見事。それがイングランド流?」
「違うよ、オレ流だ」
大石がそう言うとそれまで無表情だった阿部が微笑んだ。
優しい、微笑みだった。
ミニゲームは1時間くらいで終わり、その日の練習は終わった。
元から唐冲にいた奴だと思われる選手は元から唐冲にいた奴にしか、よそから来た奴と思われる選手は元から唐冲にいた奴にはパスを出さなかった。
元から唐冲にいた奴にも、よそから来た奴にもパスを出していたのは大石を除けば木村、永田、山井の3人だけだった
練習が終わり、何人かがグラウンド整備をしているのを大石が見ていると、岡本が話し掛けて来た。
「凄かったね、さっきのプレー! 磐田のイ・グノみたいだったよ!」
イ・グノが誰だかは知らないが、引き合いに出すことはきっと凄いプレーヤーなのだろう、と思い「ありがとう」と言っておいた。
「あ、私の名前は‥」
「岡本瀬恋、でしょ」
「なんで知ってるの!? 言ったっけ?」
「木村に聞いた。鬼軍曹だって」
「ヒドーい! 私そんなに怖くないよ!」
その後も岡本が一方的に喋り続ける。
怖い、のではなくただ単に言葉が粗雑で声が大きいだけのようだ。
性格はかなり明るいようで、よく笑っている。
変な日本語にはなるが、笑い顔がとても似合っている人だ。
大石は頭の中の「怖い人」フォルダから「明るい人」フォルダに入れ替えた。
「瀬恋!」
女の子の声がした。
声がした方を向くと、長い黒髪を後ろで縛っていて、黒く澄んだ目をしている。
身長は160センチあるかないかぐらい、顔立ちは絵本のお姫様がそのまま出てきたような顔をしている。
小さな唇が再び開く。
「仕事サボらないでよ」
「はーい‥‥またね、大石君」
岡本が女の子の方に歩いて行く。
「‥‥一目惚れか?」
阿部が後ろから話し掛けて来た。
隣にはさっきの試合で相手のディフェンシブミッドフィルダーをやっていた身長180センチ弱ぐらいでかなり腕や足が細い痩せ型の男がたっている。
「競争率高いよ、アイツ。多分一番だよ、学年で」
既に二人の中では一目惚れしたことになっているらしい。
「一目惚れなんかしてねぇよ、ってかアンタ、名前は?」
「大竹。大竹美薗。よろしく、大石」
グラウンドの整備が終わったらしく、道具を片付けている。
「疲れた〜」
木村が道具を片付け終わるとすぐにへたっと座る。
さっきまでの真剣な顔はどこかに行ってしまった。
木村の周りに大石、阿部、大竹の三人が集まる。
「‥‥相変わらずスタミナないな」
「ダメじゃん、やっぱり」
「うるさいな〜」
四人でしばらくだべっていると、後ろから岡本が声をかけてきた。
「仕事手伝って!」
「え〜」
「‥‥やだ」
「やだ、めんどくさいし」
「仕事って何?」
大石だけ否定しなかった。
「ほら、大石君を見習いなさい! はい立って立って!」
「拒否権無し〜?」
「無いよ! ほら早く早く!」
仕事はボールを綺麗にしたり、数を数えたり、用具室を片付けたりと、平たく言えば雑用だった。
「いつもこれやってるの?」
ボール置場の前で岡本と二人でボールを磨いていた大石が聞いた。
「まぁね。大変だけど、やり甲斐あるし。それに―――」
岡本が、立ち上がり大石の目の前に立った。
「変えてくれるんでしょ、唐冲サッカー部を‥‥」
岡本が大石の目を見る。
そのまま吸い込まれてしまいそうな程大きな目に大石が移る。
「‥聞いてたんだ、さっきの話」
岡本が頷き、大石に近付く。
岡本の顔が大石のすぐ近くまで迫る。
「期待‥‥してるよ!」
岡本がデコピンをした。
「痛った!」
「へへっ、びっくりした?」
「そりゃびっくりするわ!」
大石の顔が少し赤くなっている。
「なんか楽しそうだね〜」
木村が声をかけた。
隣にはさっきの女の子がいた。
「自己紹介すれば〜」
木村が少女に言う。
「う、うん‥‥石川麻美です、よろしくお願いします」
「よろしく」
大石が右手をあげて挨拶する。
石川は恥ずかしそうに下を向いた。
岡本が大石の耳のそばまで顔を近付け、耳打ちする。
「麻美のめっちゃタイプの顔だから、恥ずかしがってるんだよ!」
「ちょ、瀬恋!」
岡本の声は大きくて石川に聞こえてしまった。
「あちゃー」
「あちゃーじゃないよ!」
石川が岡本の手を掴み、。
「じょ、冗談だからね、大石君!」
「う、うん‥」
石川の勢いに押されて頷く。
木村は文字通り腹をかかえて笑っている。
「楽しそうだね、なんか」
「‥‥何やってるの?」
阿部と大竹、それにもう一人石川よりも小柄で、長い黒髪にカチューシャをした女の子が立っていた。
「あ、あの‥大丈夫ですか?」
女の子のやわらかな声が、騒動から逃げた大石に問い掛ける。
「あ、ああ‥‥」
「わ、私、本間奈由未です‥‥よろしくお願いします」
本間が頭を下げる。
「あ、大石未華瑠です、大石でいいよ」
大石も頭を下げる。
「お見合いみたいだね、なんか」
大竹がニヤニヤしている。
「ちょ、な‥‥」
本間は顔を真っ赤になって言葉が詰まる。
「お見合いって何?」
大石が阿部に小さな声で聞く。
「‥‥気にするな」
阿部がぼそぼそと言う。
「帰っていいよね、仕事終わったから」
大竹が一騒動終わった岡本に聞く。
「あ、うん! ありがとね、四人共!」
岡本がそう言ったので、四人共部室に戻った。
大石達は部室に入った。
部室に残っていたのは制汗スプレーの臭いだけだ。
大石達がのろのろと着替え出す。
「あ、体操着借りっ放しだ‥」
「洗って明日返せば〜?」
「そうすっか‥‥」
そんなこんなで着替え終わった。
「いつもあんな練習なの?」
不意に大石が聞く。
「基本練習はやってたよ、お前が来る前に。ミニゲームはその次」
「なんでミニゲームばかりなの?」
「『感覚は実戦でしか磨けない』って下村先生は言ってたけど〜」
「先生‥?」
「顧問の先生であり、監督でもあるんだよ〜。日本はコーチが都会や強豪に集まりやすいしからね〜。唐冲みたいな弱小高や県立には専門の監督がいることは少ないんだよ〜」
「‥‥ちなみに体育の教師だから」
「監督としての力量は? さっき監督の能力が不足してるとかいってたこど」
「分かんない、赴任したの今年度だし。今年の春休みからだよ、練習内容変わったのは」
大竹が答える。
「まだ正式に発表する前から来てたからね〜」
「へぇ」
「‥‥もう質問は終わり?」
「ん、ああ。教えてくれてありがと」
部室を出て、玄関を出るとちょうどマネージャー達と一緒になった。
「あ、大石君の家どこ?」
「あっち。ってか大石でいいから」
大石が右を指す。
「じゃ、麻美と方向一緒だね!」
岡本が暗闇でよく見えなかったが、ニヤリと笑った気がした。
「ふぅん‥」
大石がそう言うと石川の方を向く。
「じゃ一緒に帰る?」
「え!」
石川がいきなり大きな声を出す。
「び、びっくりした‥」
「あ、ごめんなさい‥‥」
「じゃ俺達帰るから〜」
木村達が駐輪場に行く。
「‥‥じゃあね」
「上手くやってね!」
岡本がそう言うと石川が焦る。
「ちょ、瀬恋!」
「上手くって? 何やるの?」
「気にしなくていいの!」
「わ、分かった」
石川の迫力に押される。
「じゃ、帰ろうか」
「は、はい」
石川の声が上擦る。
木村が歩き出し、石川がされに合わせて歩き始めた。
大石と石川が二人並んで歩く。
が、ほとんど会話がない。
なんかしゃべらなきゃと石川が色々な質問をするが、すぐに会話が終わってしまう。
「日本語、上手いんですね」
「親父は日本人だからね」
会話終了、沈黙が始まる。
こんな感じが延々と続いている。
どうしよう、と石川がそんなことを考えていると、いきなり大石が石川に質問した。
「あそこの高校、まだ練習してるの?」
大石が指差す方を見ると、学校のグラウンドがある。
「えっと、あれは中学校ですけど、普通の学校の部活は、夜八時位までやってますよ。ウチは照明ないから暗くなったら終わりますけど‥‥」
「そうなの?」
「はい」
(あ、また会話終わっちゃった‥‥)
石川がしょぼくれていると、大石が再び口を開く。
「なんで敬語なの?」
「え?」
「同い年だろ、俺ら。なんかよそよそしいっていうか‥‥」
「すいません‥‥でも」
「ほら、また敬語。岡本とか木村とかとしゃべる時と違う。」
「あ、すみま――ごめん」
「謝らなくていい」
「え、ごめん、あ、だめなんだ‥えっと‥」
石川が焦りと緊張であたふたしている。
「俺と話してる時の顔、硬いんだよ。岡本達と話してる時は楽しそうだけど‥‥つまんない?」
大石の少し悲しそうな表情が照明に照らさせる。
「そんなことない、私も大石君と喋ってたいよって私、何言ってんだろ‥‥」
石川が少し顔を赤らめる。
大石が微笑む。
「やっと敬語とれた」
「え、あ、本当だ‥‥」
「やっぱそっちの方がいいよ、自然っつうか、似合うっつうか」
「あ、ありがとう‥」
石川の顔がさらに赤らむ。
石川はそれに触れられる前に話題を変えた。
「大石君は、なんで日本に来たの?」
「あ、大石でいいから」
大石はそう前おきして、木村に話した話をした。
「凄いね、大石君‥‥」
「大石でいいって‥‥で、何が凄いの?」
「まだ高ニで‥私と年齢変わらないのに‥‥私はそんなこと、考えたことなんかなかったよ‥‥」
石川が笑う。
大石に対する嘲笑でも、苦笑でも、もちろん喜びの笑みでもなかった。
「ダメだね、私‥‥」
石川は自らを嘲るように笑う。
「そんなことないと思う」
「え?」
「何かを変えるってことは、正しいかどうかなんか分かんないよ? 俺は所詮よそ者だから、日本人の価値観とか、なんかそういうのが気に入らない。けど、石川は変える必要はないって思ってる、だから変えようなんか思わなかったってだけだよ、きっと。それに早く決めたから凄いって訳じゃない。サッカーでもそうだ、本格的に始めたのは15才、なんて人間もいる。物事始めるのに遅すぎるなんてことはないって‥‥少なくても俺はそう信じてる」
大石が歩みを止める。
「ま、ゆっくり探せばいいさ。焦らなくてもそのうち見つかる」
「‥‥うん、分かった。ありがと、励ましてくれて」
「どういたしまして。ところで、石川の家はどっち?」
目の前は二手に別れている。
「あ、右の方。」
「俺とは逆だ‥送って行こうか?」
「い、いいよそこまでしなくて」
「そう? じゃ、また明日、部活で!」
大石はそう言って走って行った。
「‥私同じクラスなんだけどな」
石川がぽつりと呟いた。
イ・グノ‥‥2009シーズンに磐田に途中加入した韓国人ストライカー
大石のゴールは磐田対大宮戦の3点目を参考にしています。