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ハードワーク

マーク‥‥守備時に相手選手に張り付くこと。マークを行っている守備の選手をマーカー、マークすることをマーキングと呼ぶ。

カウンター‥‥攻め込まれていた側がボールを奪った際、相手チームの守備の体勢が整わないうちに素早く相手ゴール前にボールを運び攻撃する戦術


塚野浦戦の当日になった。


午前十時、唐冲高校のグラウンドでBグループの第1回戦が行われる。


唐冲は1試合目だ。


現在両チーム共アップを行っている。


アップ前、塚野浦のコーチの斎藤が挨拶にやって来た。


「ずいぶんお若い監督で‥問題児ばかりでさぞかし大変でしょう?」


斎藤は人を馬鹿にしたような喋り方をしてくる。


「そうでもないですよ。くせが強くて‥‥おもしろい素材ばかりです、きちんと活かすと素晴らしいチームになりますよ」


下村がニコリと笑いながら握手をかわす。


見事に挑発している。


斎藤の顔が怒りのせいで赤くなり、自分のチームの選手を怒鳴りちらしていた。




試合開始直前、久保と鶴巻がやって来た。


「どうしたの?」


「あんた達の応援に来たの、どうせ誰も来てないだろうからさ」


確かに少ない観客にも関わらず、唐冲の応援をしてる人はいない。


「ってまあそれはオマケで、本当はどのくらい大石が上手くなったか見に来たんだけどね」


「あ、そう」


大石は大して興味なさそうに答える。


「じゃ、頑張ってね」


久保と鶴巻が立ち去った。


試合が始まる。




唐冲ボールで試合が始まった。


塚野浦は予想通り、よく走り、ハードワークを心掛けていた。


唐冲はそれに対してボールを回し、パスを中心にして攻め立てた。


すぐにその効果が出て来る。


相手はボールを持っている選手にプレスをかけるが、すぐにパスするので全くつかまらない。


別にゴールに繋がるようなプレーでもないのに、相手の選手は焦り始めていた。


藤原にパスが渡り、藤原がこの試合ドリブルで一気に駆け上がる。


相手の焦りがパニックに変わった瞬間だった。


藤原が相手の左サイドの選手を簡単に抜くと、相手選手が二人がかりで止めに来る。


藤原がその二人も抜くと、相手選手が後ろからユニフォームを掴んで倒してしまった。


唐冲のフリーキックになる。


キッカーは阿部だ。


審判の笛が鳴り、阿部が右足を振り抜く。


阿部の蹴ったボールは大石の頭の上めがけてピンポイントでやって来た。


普通なら届かない場所だったが、大石がジャンピングボレーで決めた。


あっという間に先制する。


斎藤が真っ赤な顔で怒鳴りながら、指示を出す。


ポジション変更で抽選会の時にいたニキビ面の男が大石をマークした。


他にも永田と阿部にもマークがつく。


「マンマークか‥‥」


「もうお前らの好きにはさせねぇよ。お前らより走りきって、お前らを封殺してやる」


「それがお前らのハードワークか‥‥ってかさ、なんでお前らはあの監督に感謝してるんだ?」


「あの人が監督になってから8戦無敗なんだよ、特にここ2週間は6連勝だ。あの人のサッカーのおかげでな」


「そうか‥‥可哀相にな」


「は?」


「とりあえず見せてやるよ‥‥俺のハードワーク」


大石がそう言うと、ボールを持っていた大竹にパスを要求した。


大竹が大石にパスを出す。


トラップし、ゴールの方を向く。


ニキビ面が大石との間を詰める。


股抜きで簡単に抜いてゴールキーパーと1対1になる。


一つ簡単なフェイントを入れると相手ゴールキーパーは簡単に抜けた。


がら空きのゴールにボールを転がし、2点目を決めた。


戻り際に大石がニキビ面の男に話し掛ける。


「これが俺のハードワークだ」


「これのどこがハードワークなんだよ」


「ハードワークっていうのはいかに自分のチームに貢献するかっつうことだ。だからフォワードの一番のハードワークは得点、ディフェンダーの一番のハードワークはいかに失点を減らすかってことだ。ただ走ってるだけじゃ駄目なんだよ」




その後の試合は一方的に進む。


前半に大石がニキビ面の男を振り切り、3点目を決め、阿部がフリーキックを直接決め4点目、後半にコーナーキックから山井、北条、永田が決め、カウンターから藤原が決め試合終了10分前に8−0になっていた。


久保と鶴巻以外の観客は黙ってしまっている。


「圧倒的だね、流石は大石。このチームをここまで強くするなんて‥‥」


久保は嬉しそうに笑っている。


「このチームに一番必要だったのは味方を信頼するってことだけだったから、大石には楽な仕事だろ」


鶴巻の表情は暗い。


「まぁ、そうなんだけどさ、ここまで変わるとは思わなかったな。大石自身も凄い成長してるし」


「あぁ‥‥こんなところで才能を潰すべきじゃない」


「まだ言ってるの?」


久保が呆れたような表情になる。


「当たり前だろう‥‥プロからのオファーを断ったんだぞ」


「あいつがこれを選んだから別にいいじゃない。全国優勝すれば無駄にはならないし。鶴巻も手伝えば?」


「‥‥‥俺はもうサッカーを辞めたんだ。足手まといになるだけだよ」


「少なくとも大石はそう思ってないよ、きっと」


主審の笛がなった。


「あ、終わったね。行こう、鶴巻」


「ああ」




試合は終了前10分間で疲れで完全に足が止まった塚野浦から4点追加し12−0で唐冲が勝利した。


試合終了の瞬間、塚野浦の選手は呆然としていた。


「なんで‥‥俺達がお前らに‥‥負けるんだ‥‥」


試合終了後の礼が終わり、大石の後ろにいたニキビ面の男がぶつぶつと言っている。


「最初からウチを弱いと決めつけて、知ろうともしなかったお前らが勝てるわけないだろ。それに一一一」


大石が男の方を振り向く。


「全員自分のペースをつかめない奴ばかりなんだ、スタミナが切れるのは当然だ。試合をする前からお前らに勝ち目なんかなかったんだよ。だいたいな、2週間で6試合なんて試合し過ぎなんだよ。体に負担かかり過ぎる。お前ら、よく怪我人出なかったな」


「‥怪我人は‥出てた‥だけど‥‥結果が出てたから‥‥気にしなかった‥‥」


「やっぱりな。そんな無茶な練習して試合に挑めば当然負けるだろ」


「‥‥次は、負けない」


男は走り去った。



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