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キセキの始まり

高校生の友情や恋愛を書く小説は初めてですが、なんとか頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします

4月4日、世間が入社や入学で慌ただしい頃、一人の男が来日した。


「ここが日本‥‥」


長く綺麗な茶髪、日本人にはない白さをもった肌、茶色の目。


すらっと長い足と端正な顔立ちはモデルのようだ。


彼のは国籍こそ日本だが父親は英系日本人、母親は仏系スペインという国際色豊かな両親を持つ。


この物語は、そんな彼―――大石未華瑠おおいしみげるが日本の小さな高校で起こした、大きなキセキの物語。




「大石ー!!」


どこかから大きな声がする。


「こっちこっち!!」


その声の方を見ると―――


「絵実香‥‥」


久保絵実香くぼえみか


大石が小学生までイングランドで一緒だった幼なじみ。


肩をゆうに越す長い黒髪に黒い目、170センチとやや高めの身長で、知性を感じさせる顔は幼なじみと久しぶりの再会でゆるんでいる。


大石が久保の方に歩き、久保の前に行くと久保が大石に抱き着き、彼の頬にキスをした。


「お、おい!」


大石が白い肌を赤く染め、久保はいたずらっぽく舌を出す。


「へへっ」


「へへっ、じゃねぇよ!」


「だって、久しぶりだし」


「全然理由になってないよね、キスした理由になってないよね」


「じゃ、鶴巻つるまきも待ってるから、早く行こっ!」


「無視かよ!」


久保は大石の手を掴み、走り出した。


「ちょ、ま、走るなー!」




「久しぶりだな、大石」


鶴巻は空港の外にいた。


鶴巻龍我つるまきりゅうが


久保と同様にイングランドで小学生まで大石と一緒だった幼なじみ。


黒い髪に黒い目。


180センチの身長もさることながら、日焼けした肌と筋肉質な体で独特な威圧感を放っているが、滅多にいないほどの美男子である。


「4年ぶりだな‥‥相変わらず、なんだな」


大石はなぜか少し複雑な表情になる。


「変わらないよ、4年くらいじゃ。前も言っただろ」


鶴巻は表情が少し暗くなった。


少し嫌な雰囲気になる。


「早く行こ!」


そんな空気に耐え切れなくなったのか、久保は大石と鶴巻の手を取り、タクシー乗り場まで連れて行った。




二日後‥‥


大石は今日から神奈川私立唐冲高校かながわしりつとうちゅうこうこうに編入することになっている。


唐冲高校は中高一貫の学校だが、編入もあり、人数はクラス毎にばらつきがある。


入学の手続きはほとんど鶴巻と久保がしてくれている。


そして今、始業式が終わり、大石は教室で紹介される直前だ。


「それじゃあ、大石君自己紹介を」


教師の声に促され、大石が教壇に立つと制服である水色のワイシャツにブレザーを着ている男子と、男子と同じワイシャツ、ブレザーで、チェックのスカートを履いた女子の視線は全部大石に集まる。


教壇に立つと全員こっちを見ているのが分かる。


「大石未華瑠です。イングランドから来ました。これからよろしくお願いします」


礼をして空いてる席を捜す。


「ここ開いてるよ」


席の一番後ろの背の高い、黒髪を後ろで束ねた女が隣の席を指して言う。


大石は女の言う通りに、その女の隣に行った。


「よろしくね、未華瑠君」


「大石でいいよ‥‥あなたの名前は?」


志賀早百合しがさゆり。早百合でいいよ、大石」


早百合が微笑む。


早百合の身長は大石より少し低いくらいで、180センチくらいはありそうだ。


黒い目は澄んでいて、赤みを帯びた唇が魅力的だ。


「なーにデレデレしてんのさ〜」


ちょっと可愛い、なんて思っていると早百合の席の前に座っていた、黒髪で160センチくらいのくりっとした目が特徴的な少年がこちらを振り返って言ってきた。


カッコイイ、というよりも少女のような可愛いらしく、母性本能をくすぐりそうな顔だ。


どことなくのんびりとした雰囲気をかもしている。


「別に‥‥」


「照れちゃて〜シャイなんだね〜」


少年がニコニコと笑う。


「じゃあ出席とるよ」


担任がそう言ったからか、少年は前を向き直した。




朝のホームルームが終わると、怒涛の質問攻めが待っていた。


大石が一つ一つなるべく丁寧に答えていく。


それは休み時間ごとに続き―――


「起立、礼」


「ありがとうございました」


いつのまにか一日が終わってた。


大石が机に突っ伏してると、早百合が微笑みながら話しかけてきた。


「お疲れ様」


「‥ありがと」


大石が机に突っ伏したまま答える。


「ところで、放課後どうするの? 学校案内しようか?」


「いや‥‥部活」


大石がそう言うと早百合は少し驚く。


帰国子女の大石がいきなり部活をする、とは思わなかったのかもしれない。


「へぇ‥何部?」


「サッカー部。イングランドじゃずっとサッカーやってきたしね」


「――そっか」


早百合は少し間をあけた。


顔から何故か笑みは消えていた。


その間は何だよ、と大石が少し心配になっていると、早百合が話を続けた。


「じゃ木村に案内してもらいなよ」


「‥‥誰?」


「俺だよ〜」


前にいた少年が間髪いれずに答える。


「俺の名前は木村瑠璃きむらるり。よろしくね〜」


木村が左手を出す。


「あぁ‥よろしく」


大石が右手を出すと木村がその手を掴む。


「じゃ行きますか〜」


木村がそのまま走りだす。


「ちょ、待てって!」


木村こいつなにげに足速い‥‥)




木村はある部屋の前で止まった。


「ここがサッカー部の部室だよ〜」


「ただの更衣室だろ‥‥」


そう、そこは体育館の更衣室だった。


「更衣室兼部室だよ〜」


木村がそう言いながら中に入ろうとしたが、更衣室兼部室から出て来た、180センチ前半くらいの身長、黒い目で赤みがかった黒髪を持つ男が大石達の前に立ち木村の肩を掴む。


男の腕は太く、小さな木村の肩を潰してしまいそうだ。


「おい、部外者を入れるつもりか」


ドスの効いた低い声がした。


男が冷たい眼でこっちを見ていた。


「“部外者”はひどいんじゃないの、北条〜今日からチームメイトなんだから〜」


木村が北条という男にのほほんと話し掛ける。


「俺は‥‥認めてないんだよ、コイツも‥‥阿部達もな」


北条はそういうと木村の肩を離し、部室兼更衣室の中に入って行った。


「アイツとなんかあったのか?」


俺は木村に質問する。


「ま、色々とあってね〜」


木村はそう言って更衣室兼部室に入っていった。




更衣室兼部室の中には、サッカー部員の荷物がごちゃっと置いてあった。


「汚いでしょ〜」


木村は笑いながらそう言うが、はっきり言って笑って済むレベルではないぐらい汚い。


「さっさと着替えないと練習遅れるよ〜」


木村はすぐに着替えだす。


「着替えるもなにも‥‥服これだけなんだけど。練習服とかないの?」


大石が自分の制服を指して言う。


「じゃあこれ着て〜」


木村が手渡したのは、床に置いてあった「永田」と名前が書かれた体操着だった。


「誰の?」


「チームメイトだよ〜」


木村が練習着であろう、紺色一色のシャツに、白いパンツに着替え終わっていた。


「早く着替え終わんないと〜練習始まるよ〜」


「分かったよ‥‥」


大石は渋々着替えだした。




意外とサイズはピッタシで、動きやすかった。


着替え終わると、木村がグラウンドに連れてってくれた。


グラウンドでは、もうすでに練習が始まっていた。


「‥‥遅い」


木村に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で最初に話しかけたのは、170センチくらいでかなり痩せ型の男。


頭にバンダナを巻いていて、まるで海賊のようだ。


後ろからまとめきれなかった髪が飛び出している。


髪はかなり長いようで、バンダナを外せば目は前髪で隠されてしまうだろう。


「さっさとアップしてきな」


北条が怒鳴るように大石達に言った。


「おーけ〜」


木村はそう言うと大石達の腕を掴んで走りだした。


「あんまり気にしないでね〜」


木村が走りながら小さな声で話しかけてきた。


「あの男のことか? 気にしないっつうか‥‥何であんな機嫌悪いんだ?」


「嫌いなんだよね〜」


「何が?」


「大石みたいに途中から加入した人〜北条だけじゃなくて中等部からいた奴はたいていそうだよ〜」


「何でだよ」


「教えてあげるよ〜このチームのこと〜それから‥‥何で大石をこのチームに呼んだかってことを〜」


木村が子供のように微笑んだ。


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