手
掲載日:2021/04/29
白い壁 鍵のかかった部屋
わたしは
そこから逃げ出した
外は
音に溢れていた
裸足のわたしは
人々の目には奇異に映ったのか
人々の目がわたしをみつめる
こわい
わたしは
耳をふさぎ
しゃがみこむ
目の前に
優しく
手が差し伸べられた
大丈夫?と言っているようだ
わたしはあなたの手に恋をした
髪をかきあげる手
タバコを吸うときの手
本をめくる手
わたしを優しく抱き上げる手
あなたの手を見ているだけで幸せだった
わたしはあなたの手をいたずらに
噛んでみた
あなたの手から
いつもとは違う香りがした
あの子の香り
あなたは笑って否定した
あの子の香りのする手で
わたしに触れた
わたしは
あなたの手が憎い
愛しい 愛しい
あなたの手
冷たくなってしまった
あなたの手
一緒にいられてしあわせ
窓の外は夕空が血のように真っ赤に染まっている




