第2話 魔人の国の戦い
いたるところで燃え上がる炎は悪意に満ちた復讐の炎のようだ…
世界各地で起こっている竜脈戦争は解決の糸口さえ見つからず何時しか世界が滅んでしまうのではと誰もがそう思ってるのではないかと思う…
「南の区画はもうだめだっ…!中央で施設を死守しろ!」
燃え上がる建物が崩れ落ちる中、味方の兵士の叫ぶ声が聞こえる。
まさか自分が住んでいる街が戦火にさらされるとは思ってなかったよ…
ジールが木の魔物の杖を握り街の中央、目指して駆け抜ける…
防衛戦より撤退戦に移行したほうが良いのではないか?
いやいや命令は施設を死守しろだ…
竜脈も引いていない街を攻撃するのは戦争ルールに反しているぞ…
戦争にルールなんかあるものか…
その一言で片付けられそうだ…
中央の施設に近づく程、回りを走る兵士の数が増えてくる。
おそらく西や東の区画の守備隊も人間どもの進軍を防ぎきれなかったのであろう。
この街は多腕多眼の魔人メレディア様が統治を魔人王様より任されている。
魔人メレディア様は魔人の国ゼリウスきっての剣の使い手だ相手が誰であろうと切り伏してくれよう、4本の魔剣を巧みに操る上に不思議な眼の力も使いこなすと言われている。
お師匠様の友人の一人で一応面識はあるが、挨拶をするくらいだ、恐れ多く会話などしたことがない。
「貴様はオキシルの弟子か?すぐに隊の魔術師達と防壁魔法の準備にとりかかれ!いやっ、少し待て。」
施設の防衛戦に入るまでの時間で魔術師達が防壁魔法を何重にも厚く重ねてゆく。
施設事態の防御力など無に等しい、薄い壁に鉄の柵で屋敷を囲っているくらいだ。
「はっ、承知しました」
即座の返しは戦場では当たり前だ、言葉を返すのに間を開けると、無能を見せているようなものだ。
「お前の師匠は今どこで何をしているんだ?」
四本腕を組ながらメレディアが無表情で問いかける。
「私は軍属では無いので勝手にやらしてもらうと言ったあと、私に中央の施設に行けと指示を出し、迎撃に向かわれました。」
二人の関係は一国の将軍とフリーの錬金術師だ有事の際には力を持った民間人に協力を求める事が多いが、決めるのは相手次第だ。
今回唯一心配の種があるとすれば、人間陣営に出現したと言われる魔神殺しだ。
すでに味方の将軍が二人、彼女に撃ち取られており、人間勢力のS指定要注意人物に上げられている、今回の軍事行動は間違いなくメレディア様に魔神殺しをぶつけてくると思われる。
「無茶は、しないと思われますが…!?」
「………………!!!?」
一瞬、空気が静寂するかの用に無音の世界になり、直後に大爆発音と共に衝撃波が辺りを突き抜ける…
「くっ」
南の区画から上がる空を覆う程の黒煙は大規模魔法を誰かが行使したのだ。
間違いない、あれはお師匠様の核撃魔法だ…
「あのバカ、先走りおって…急いで確認しに行き、内容を伝えよ!」
メレディアが控えている配下に指示を出すと、有翼の魔人と足の速そうな黒豹の獣人種が即座に行動を開始する。
「無茶をしておるではないか…」
黒煙を見上げ呟いたメレディアに思わず問い掛ける…
「オキシル様は大丈夫でしょうか…?」
「大丈夫であろう、かの魔法国家サルドーランの英雄だぞ、あいつは…」
突き抜けた風の熱さに思わず恐怖を感じた。




