表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

使い魔となった魔人

私は魔法少女。


この力が使えるようになってそれなりに長いこと戦っている。


事故で家族を失った私の下に使い魔のシロは突然やってきた。

当時はいまさら何をって気分だった。

今はこの力が使えるようになってよかったと思えてる。


私の大切なもの。シロはよくそれを聞いて来る。

私はみんなの笑顔って答える。

そうあるべきだと思ってる。


ただ、本当の答えは別にある。

それは、私が「生きる」ことだ。


両親が命を懸けて守ってくれたこの命。

今でも母さんの「生きて」って言葉が耳に残っているから。


ある日、親友のさっちゃんの様子がおかしくなった。

大好きだったお母さんの長く患っていた病気が悪化して亡くなったらしい。

落ち込むだけならそっとしておくつもりだったけど、自分のせいだって大声を上げて頭を壁に打ちつけたりしていて、心配になった私は魔法少女に変身して彼女を見守ることにした。

シロはプライバシーを覗くのはやめた方が良いって止めたけど、見ていたらさっちゃんが飛び降り自殺をしそうになった。

慌てて止めに行った私は、その現場に魔人が居るのを見つけた。


あの魔人のせいに違いない、急いで後を追ったが魔人は早々に領域に逃げ込んでしまった。

何とかしないと!


シロに相談すると少し難しい顔をしたけれど、準備さえすれば領域に侵入できるらしい。

あの魔人は力は弱いけど人の感情を操ることができるらしく、

すぐに殺さず術を解除させたほうがいいとか珍しく助言ももらえた。


できれば複数で向かいたかったけれど、魔法少女は基本一人で戦うから、助けてもらえる仲間はいなかった。たまに共闘することもあるけど、変身している間はお互い誰か認識できないから、仲間意識が築けないのが原因だ。


領域に侵入すると魔人の配下が襲いかかってきた。

私は戸惑った。普段見る怪物と違い、襲ってくる配下はどう見ても人だったから。

みんな死んだような目をしていて、操られているに違いない。


やがて、魔人の居る広間にたどり着いた。

「魔人、覚悟!」


最後の配下を気絶させ、前に立つ。

「残るはあなただけだよ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


私はベットの上で目を覚ました。

体が固く重い。

何があったんだっけ?


手を上げて頭を押さえると、無機質な触感が伝わってくる。

何かおかしい。そう思った瞬間、思い出した。


私はシロに裏切られて死んだんだ!


ベットから飛び起きた。

服は魔法少女の衣装のままだ。

夢じゃない。


「どうなって・・・」

「ようやく起きたか」


慌てて声のする方を向くと、大きな黒犬が居た。

今の声はさっきの魔人に違いない。


「わざわざ蘇生するなんて何のつもり? 敗者を慰み者にするのがあなたの趣味?」

いつ襲ってくるともわからない黒犬に構える。


「犬に慰められるのが好きなら、してやらんでもないがな。そう構えるな、敵意は無い。そもそも貴様にほとんどの力を使ったせいで、今や先の使い魔以下の存在よ」


「私に力を? どうしてそんなことを?」

「それが趣味だからだ。できれば我を楽しませてくれるとありがたいが」


「大層なご趣味で。命を救ってくれたのには感謝するけど、あなたの言いなりにはならないわ」

「命を救った? 何か勘違いしているようだな。魔人は神ではない、命があるように動かすことは出来ても命を与えることは出来ぬ」


「それはどういう・・・」

私は自分の胸に手を置く。心臓は・・・わずかだが鼓動している。

だが異変に気が付いた。さっき頭に触れた時からあった違和感。そう、体温を感じない。


私は絶望に打ちひしがれる。やっぱり私は死んだんだ。


膝をつき落ち込む私に黒犬が近づいてくる。

「腹が減った。飯を用意せよ」


人の気も知らないで!

激しい怒りが湧き上がるが、次の瞬間怒りも絶望も霧散していった。

ああそういえば人の感情を操るとかエネルギーにするとか言っていたっけ。


「腹が減った。飯を用意せよ」

黒犬が同じことを繰り返す。


「今食べたでしょ」

「あれはエネルギーであって肉体を維持する食事ではない」


にらみ合うこと数分、私は根負けした。

怒りも悲しみも絶望も湧いた瞬間に吸い取られてる。

無駄にこいつをモフモフしたいだなんて気持ちだけが増えて、とてもじゃないが耐えられない。


「わかったわよ、食べ物を用意したらいいんでしょ! 食べ物を!」


ありあわせの食材でご飯を作りながら思う。


あいつは悪魔だ。不幸な気持ちを吸い取られ理解しているのに、このままだといずれあいつのモフモフに流される。配下が自分の意思で居ると言っていた理由が分かった。

死体には興味が無いって言っていたけれど、さっちゃんの時は絶望でも吸おうとしていたのだろうか? 魔人て一体何なんだろうか。


そんなことを考えていたら包丁で自分の手まで刻んでいた。痛みは無い。

いつももの調子で魔法を使うと傷はすぐさま回復した。


乾いた笑いが出る。私、死体になっちゃった。

でも、まあ、まだ私はここに居る。そう思うことに決めた。


死体になった魔法少女と使い魔になった魔人の生活が始まった

黒犬「これは・・・?」

魔法少女「玉ねぎの千切りだよ」

黒犬「赤黒いが・・・」

魔法少女「ちょっと私が入っちゃった」

黒犬「・・・モフモフしていいから、もうちょっと何とかならないか?」

モフモフの結果、待遇が良くなりドックフードを貰えた魔人であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ