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死体となった魔法少女

「魔人、覚悟!」


一人の魔法少女が配下たちを蹴散らして我に向かってくる。

「主様、お逃げください」

近くの配下が言葉を掛けてくる。


「無理だな」


力の差は歴然だ。魔法少女に我々が正面から戦って敵うはずがないのだ。

やがて全ての配下を打ち倒し、我が前に迫る。


「残るはあなただけだよ!」

「さすがだな魔法少女、誰も殺さずにここまで来るとはな」


魔法少女は顔を真っ赤にして怒る。

「っ! あなたが仕向けたことでしょう! みんなを元に戻しなさい!」

「なんの話だ?」

「とぼけないで! さっちゃんを操って自殺させようとしたのは分かってるんだから! ここで襲ってきた人たちだって町で見たことがあるわ!」

「あれはあの娘が勝手にしたことだ。ここにいる奴らとて自らの意思で―――」


瞬間、魔法少女が肉薄し我に拳を叩き込んだ。

殴り飛ばされ勢いよく壁に叩きつけられる。


「かはっ、全く恐ろしい力だ。」

肋骨が何本か折れたようだ。


「次は頭を割るわ。死にたくなかったら言うことを聞きなさい」

「まったく、正義の味方が弱者を脅迫するか」

「弱者? 弱者を食い物してきた悪者に掛ける情けは無いわ」

「家畜が聞いたら泣いて喜びそうだな。使い魔にもそう言ってやるがいい」


魔法少女の腕が振り下ろされ、

「そこまでだよ」

背後の壁を砕いだ。


顔の前に白い魔法生物が浮いている。


「シロ、邪魔をしないで」

「すぐ殺しちゃ駄目だって伝えたよね」

「でもコイツ、シロの事を侮辱して」


「侮辱ではない。類共だといったのだ」

我の言葉に反応して魔法少女が手を振り上げるが、

「うっ」

胸を押さえてその場にしゃがみ込んだ。


「なかなか持ったね。一時はどうなるかヒヤヒヤしたよ」

魔法生物は慌てた様子もなく魔法少女を見下ろす。

「うう、シロ、、何を言って・・・?」


「ここに侵入させた時点でどうかと思うがね。せめて一言連絡をくれればもう少し準備ができたものを。貴様、共倒れしても構わないといった魂胆だったろう」

「君は頭の良い害虫だよ。廃棄物の管理に徹していればいいものを、光のあたるようなところに出るから踏みつぶされるのさ。さて本題だけど、この子ちょっと問題があってね。不良債権になちゃいそうなんだ」

魔法少女は息も絶え絶えで話に入ってくることもままならないようだ。


「理由を聞いても?」

「ちょっとした偶然もあるけど、この子は自分以上に大切な、失なって困るモノが無いんだよ」

「ふむ。それは確かに厄介だが・・・それだけならここに連れてくる必要はないだろう」

「外で魔法少女の死体を出せと? とてもじゃないけど無理だね。君だったら死体でも愛でられるだろ? 害虫」

魔法生物は可愛い外見をして毒を吐く。


「突然押し掛けて来た上に害虫呼ばわりとは、まったく人に物を頼む態度ではないね。我とて死体には一切興味はない」

「これは警告だよ害虫。次はもう少し元気な魔法少女がここを襲う。死にたくなければ今迄通り裏方に徹することだね」

「身に染みる警告だ。ああわかった、今後は気を付けるとも」


我は死にかけの魔法少女に近づき話しかける。


「聞いていた通りだ、使い魔は君を裏切った。君は死ぬ。さっちゃんもここにいる奴らも助けられずに。深く絶望すると良い、全ては無駄になったのだ」


魔法少女は渾身の力で床に爪をたて起き上がろうとするが、力及ばず倒れ伏す。

やがて激しかった呼吸が小さくなり静かになった。

シロと呼ばれた魔法生物は魔法少女が事切れたことを確認すると領域から出て行った。


我は手を叩く。

「終わったぞ。動けるものは怪我人の救護にあたれ。掃除は後回しで良い」


隠れていた配下が出てきて、怪我人を運んでいく。

重傷者は我以外居ないようだ

配下の一人が近づいてきた。

「お怪我は大丈夫ですか?」

「この程度放っておいても問題ない。いずれ再生する」

凄く痛いが。


「彼女はどうされますか」

「どうするも何も、拾うか捨てるの二つしかあるまい」

「急ぎ棺を用意します」

「なに、それはまだ必要ない。害虫にも害虫の意地があるのだよ」

「主様、何をなさるおつもりで?」

「当分の間、この領域は閉じる。活動拠点は追ってを知らせる、それまで外で待機せよ」

有無を言わさず配下をさがらせる。


数刻後、配下たちは全て撤収し、領域には我と魔法少女の死体だけとなった。

我とて死者を生者に戻すことは出来ない。


しかし、死体を動かすことぐらいであれば力さえあれば出来るのだ。

今居る領域の全てを力に変え、魔法少女に注ぎ込む。

我は廃棄物が好きだ。


魔法生物共に騙され、大切なものの命を力として消費し、

至上の幸福から奈落の底に落ちた際の感情をエネルギーと吸われ、

生きる気力さえなくなった元魔法少女達。

同じように力や幸福を与えても元の様には充電されず、

他の魔法少女に真実を伝え活動を妨害する廃棄物。


魔法生物たちは知らない。

効率は悪く僅かであるが、負から正に進む感情もエネルギーとなるのだ。

そろそろ一矢報いるのもありだろう。


自身の命以上に大切なものを持っていなかった魔法少女、

さて、どれほどの活躍をしてくれるだろうか。

QとかBとか。

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